痴漢事件のDNA鑑定とは?痴漢冤罪を立証するためのDNA鑑定を解説

痴漢事件のDNA鑑定とは?痴漢冤罪を立証するためのDNA鑑定を解説
弁護士 若林翔
2024年10月11日更新

「痴漢事件で行われるDNA鑑定とはどのようなもの?」

「DNA鑑定の結果は、痴漢事件でどのような意味を持つ?」

「痴漢冤罪を立証するためのDNA鑑定とは?」

痴漢事件では、犯人性を立証するために、被疑者の手指から皮膚や体液などを採取して、DNA鑑定が行われることがあります。

DNA鑑定により、被疑者の手指から検出されたDNAが被害者のDNAと一致すれば痴漢の有力な証拠となります

他方、痴漢冤罪事件でも自らの身の潔白を立証するために、DNA鑑定が行われることがあります。DNA鑑定の結果と被害者供述とが矛盾していることが判明すれば、被害者供述の信用性に疑いを生じさせる重要な証拠になります。

本コラムでは、

・痴漢におけるDNA鑑定とは

・DNA鑑定以外で痴漢事件の証拠になるもの

・痴漢冤罪を立証するために行われるDNA鑑定とは?

などについてわかりやすく解説します。

あなたが痴漢をやっていないのであれば、無罪を立証するために弁護士のサポートが不可欠となりますので、一刻も早く痴漢事件に強い弁護士に依頼するようにしましょう。

痴漢におけるDNA鑑定とは?

痴漢冤罪を立証するためのDNA鑑定とは?

DNA鑑定とは、一人ひとりのDNAに異なる部分があることに着目して、異なる部分を比較することによって個人を高い精度で識別する鑑定方法です。

痴漢事件では、犯人が被害者の身体に直接触れたり、膣内に指を挿入するなどの痴漢行為をすると、犯人の手指には被害者の皮膚などの細胞様片や体液などが付着することがあります。

DNA鑑定により被疑者の手指から被害者のDNAが検出されれば、被疑者が被害者に触れた証拠となりますので、痴漢を立証する有力な証拠となります。

DNA鑑定でDNAが検出されれば痴漢を裏付ける証拠となる

DNA鑑定で被害者のDNAが検出された場合、どのような意味があるのでしょうか。

DNA鑑定以外で痴漢事件の証拠になるもの

被疑者の指から被害者のDNAが検出された場合

被疑者の指から被害者のDNAが検出された場合、被疑者が被害者に何らかの方法で触れたことが推認されますので、痴漢を裏付ける証拠となります。

悪質な痴漢行為になると、被害者の衣服や下着の中に手を差し入れて直接被害者の身体を触るものや被害者に膣に指を挿入するなどの痴漢行為もあります。このような痴漢行為をした場合、犯人の手指には被害者のDNA(皮膚や体液など)が付着していることがあり、DNA鑑定をすることで、その有無を明らかにすることができます。

DNA鑑定の結果が被害者の供述する被害状況と合致していれば、被害者供述の信用性を補完する証拠になるとともに、犯人性を立証する有力な証拠になります。

被害者の身体・衣服から被疑者のDNAが検出された場合

痴漢事件のDNA鑑定は、被疑者の手指だけでなく、被害者の身体や衣服を対象に行われることがあります。これは、痴漢行為により犯人のDNAが被害者の衣服や身体に付着している可能性があるため、それを調べるのが目的です。

被害者の身体・衣服から被害者以外のDNAが検出され、それが被疑者のものと一致した場合、被疑者が何らかの方法で被害者に触れたことが推認されますので、痴漢を裏付ける証拠になります。

DNA鑑定で不検出となっても無罪になるわけではない

痴漢事件のDNA鑑定で被疑者の手などから被害者のDNAが検出されなかったとしても、そのことだけで直ちに無罪になるわけではありません。なぜなら、痴漢行為の態様によっては、実際に痴漢行為をしていたとしても、犯人の手指に被害者の皮膚や体液が付着するとは限らないからです。

ただし、被害者が「犯人が膣内に指を挿入してきた」などと供述している場合、犯人の手指には被害者の体液が付着するのが通常ですので、DNA鑑定で被害者のDNAが検出されなければ、被害者供述の信用性に疑いが生じ、無罪立証の証拠として利用できるケースもあります。

DNA鑑定以外で痴漢事件の証拠になるもの

DNA鑑定以外で痴漢事件の証拠になるものとしては、以下のようなものが挙げられます。

DNA鑑定以外で痴漢事件の証拠になるもの

微物検査(繊維鑑定)

微物検査・繊維鑑定とは、被疑者の手や指などから微細な物質や繊維を採取して、その種類や性状などを検査・鑑定する捜査手法です。

被害者の衣服の上から痴漢行為をした場合、犯人の手指には、被害者の衣服の繊維が付着している可能性があります。微物検査(繊維鑑定)により、被疑者の手指から被害者の衣服の繊維が検出されれば、被疑者が被害者に触れた証拠となります。

ただし、DNA検査と同様に微物検査(繊維鑑定)により、被害者の繊維が検出されたからといって直ちに有罪になるわけではなく、また、被害者の繊維が検出されなかったとしても直ちに無罪になるわけではありません。

微物検査(繊維鑑定)により被害者の繊維が検出されれば、痴漢の有罪立証に役立つ程度に考えておけばよいでしょう。

※微物検査の記事が完成したら内部リンク

防犯カメラ映像

駅構内や路上には、多数の防犯カメラが設置されていますので、防犯カメラに痴漢現場が映っていれば、痴漢の犯人を立証する重要な証拠になります。

痴漢行為をする瞬間が映っていなかったとしても、被疑者の顔が映っていれば犯人を特定するための証拠になりますし、被疑者と被害者との位置関係によっては被害者供述の信用性を補完する証拠にもなります。

被害者の供述

痴漢事件では、他の客観的証拠が一切なく、被害者の供述のみを証拠として有罪になることがあります。そのため、被害者供述の信用性は、痴漢の有罪または無罪を判断する上で、重要な証拠となります。

痴漢の冤罪事件では、主に被害者供述の信用性を争うことで、無罪を目指していくことになりますので、被害者供述の信用性の判断要素を理解しておくことが大切です。

被害者供述の信用性は、主に以下のような要素によって判断されます。

・客観的な証拠との整合性
・供述内容の一貫性
・供述内容の具体性、迫真性
・供述態度が真摯であるか
・虚偽供述の動機の有無

目撃者の証言

痴漢行為を目撃した人がいる場合、目撃者の証言も重要な証拠になります。痴漢の被害者および被疑者と利害関係のない目撃者であれば、証言の信用性も高いといえますので、証言内容によって有罪・無罪の判断に大きな影響を与えることになります。

目撃者がいる事案で痴漢の冤罪を争っていくには、被害者供述の信用性とともに目撃者供述の信用性も争っていかなければなりません。基本的な信用性の判断要素は、被害者供述の場合と同様ですが、目撃者供述の信用性では、以下の点も考慮する必要があります。

・痴漢行為時に目撃者がいた位置(痴漢行為を視認できる位置であったか)
・目撃者の視力
・視認状況
・目撃者と被害者、被疑者との人間関係(虚偽供述の動機の有無)

痴漢の証拠についての詳細は、以下の記事もご参照ください。

痴漢の証拠は8つ|被害者証言だけで逮捕される実態を解説

痴漢冤罪を立証するために行われるDNA鑑定とは?

痴漢をしていないにもかかわらず、痴漢の犯人だと疑われてしまったときは、捜査機関により行われるDNA鑑定だけでなく、あなたの側でも無罪を立証するためのDNA鑑定が必要になります。

痴漢冤罪を立証するために行われるDNA鑑定とは?

犯行再現実験でDNAが検出されるかを検証

犯行再現実験とは、実際の犯行状況を再現して検証することをいいます。

痴漢事件の犯行再現実験では、マネキンに衣服や下着を着用させ、被害者の供述に沿った内容で痴漢行為を行い、実際に使用した着衣から被疑者のDNAが検出されるかどうかを検証します。

このような被疑者側で行われた犯行再現実験の結果と捜査機関において行われたDNA鑑定の結果を比較することで、冤罪立証の証拠となることがあります。

被害者供述の信用性に疑いを生じさせる証拠となり得る

警察が実施したDNA鑑定により被害者の着衣から被疑者のDNAが検出されなかったにもかかわらず、被疑者側で行われた犯行再現実験では被疑者のDNAが検出された場合、両者の結果には矛盾が生じることになります。

これは、被害者の供述に沿って痴漢が行われた場合、通常、存在するはずのDNAが存在していないことを示す証拠になりますので、被害者供述の信用性に疑いを生じさせることができます。痴漢事件では、被害者供述が重要な証拠となりますので、その供述の信用性に疑いを生じさせることができれば、無罪判決の獲得に一歩近づくといえるでしょう。

痴漢冤罪事件でDNA鑑定に関する裁判例

以下では、痴漢冤罪事件でDNA鑑定の結果が争点になった裁判例を紹介します。

痴漢冤罪事件でDNA鑑定に関する裁判例

さいたま地裁平成22年6月24日判決

【事案の概要】

被告人は、電車内において乗客である当時17歳の女性に対し、スカート内に左手を差し入れて臀部を下着の上からなぞるなどの痴漢行為をしたとして、迷惑防止条例違反により起訴された事案です。

【判断のポイント】

被告人の左手の甲と掌から採取された繊維と同種または類似の繊維は、被害者の下着と着衣から採取した繊維からは検出されていない。また、被害者の下着に細胞様片の付着が認められ、ヒト成分が検出されたが、そのDNA型は被告人のDNA型とは一致しなかった

これらの事情は、直ちに被告人が痴漢の犯人ではないことを示すものではないが、被害者の供述する痴漢の態様がかなり執拗なものであったことに照らすと、被告人が痴漢の犯人であることに相当強い疑念を抱かせる事情であることは疑いない。

なお、この事案では、被害者が痴漢の犯人ではない人物の手をつかんだという可能性を否定することはできないとして、被告人が無罪となりました。

神戸地裁平成23年11月15日判決

【事案の概要】

被告人は、深夜の歩道上において、歩行中の当時24歳の女性に対し、その前方から右手の平を着衣の上から被害者の右胸部に押し当てて触ったという、迷惑防止条例違反により起訴された事案です。

【判断のポイント】

逮捕後の鑑定の結果、被告人の右手掌部から粘着テープにより採取された微物からは、被害者が着用していたニットジャージの繊維は検出されず、また、ニットジャージの右胸部から採取された微物についても人由来のDNAは検出されなかった。ただし、被告人の右手の平が被害者の右胸を触ったものの、一瞬であったために繊維やDNAの付着には至らなかったという可能性もあり、したがって、これらの鑑定結果が直ちに本件わいせつ行為がなかったことを意味するものではない

なお、この事件では、被害者供述の信用性には疑いがあることを理由として、被告人が無罪となりました。

東京高裁平成21年6月11日判決

【判断のポイント】

原審の鑑定書によると被告人の左右の手指および手掌面から採取された付着物の中に、被害者が着用していたパンティの股の内側布部分を構成する繊維の一部である無色綿繊維と類似した繊維があったものの、それ以外に、パンティおよび短パンの構成繊維に類似した繊維は付着しておらず、無色綿繊維は生活環境下でどこでもしばしば認められる繊維であるため、パンティに由来するか否かは不明であるとしている。

なお、当審においてした鑑定の結果によれば、前記の付着物から、被害者のDNAは検出されなかった

被害者が着用していたパンティ等の無色綿繊維以外の構成繊維が、本件の犯行によって、犯人の手指等に必ず付着するとはいえず、また、犯人の手指等から被害者のDNAが必ず検出されるともいえないから、これらの繊維および被害者のDNAが検出されなかったからといって、被告人が直ちに犯人でないとはいい得ないものの、少なくとも、これらの鑑定結果は、被告人が犯人であることの証拠にならない

なお、この事件では、被告人が犯人であるとの証明がないことを理由に被告人を無罪としました。

痴漢の疑いをかけられたときはすぐに弁護士に相談を

痴漢の疑いをかけられてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

痴漢の疑いをかけられたときはすぐに弁護士に相談を

痴漢冤罪の場合の対処法をアドバイスできる

実際に痴漢をしていないにもかかわらず、痴漢の疑いをかけられてしまった場合、その場での言動やその後の取り調べ内容によっては、あなたにとって不利な状況になるおそれがあります。焦ってその場から逃走してしまう、やってもいない罪を認めてしまうなどの誤った行動をとってしまう方が多いですが、絶対にしてはいけません。

痴漢の疑いをかけられたときに適切な行動をとるためには、専門家である弁護士のアドバイスが必要になりますので、すぐに弁護士に助けを求めるようにしましょう。

痴漢冤罪をでっち上げられた!初期対応と冤罪を立証する方法を解説

痴漢冤罪の立証に向けたサポートができる

痴漢が冤罪であるときは、否認事件となりますので逮捕・勾留されてしまう可能性があります。長期間の身柄拘束を受けると、心身ともに疲弊してやってもいない痴漢の罪を認めてしまうこともあるでしょう。

弁護士に依頼をすれば身柄拘束中も定期的に面会に訪れて、取り調べ状況のアドバイスをしてくれますので、不安な気持ちも多少は改善されるはずです。弁護士が犯行再現実験などにより被疑者本人の冤罪を立証するために、動いてくれますので、痴漢冤罪の立証に向けた強力な味方になるでしょう。

痴漢が事実なら被害者との示談交渉を任せられる

痴漢が事実であるときは、すぐに被害者との示談を成立させることが重要です。被害者との示談が成立すれば、逮捕や起訴を回避できる可能性が高くなり、身柄拘束されている場合でも早期の身柄解放を実現することができます。

ただし、被害者との示談交渉は、痴漢の加害者である本人が対応するのは困難ですので、弁護士に対応を委ねるようにしましょう。弁護士であれば、被疑者の代理人として被害者と交渉することができますので、被害者としても安心して交渉を行うことができます。

痴漢事件の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

痴漢事件の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

痴漢の疑いをかけられてしまった場合、実際に痴漢をしていたかどうかにかかわらず、すぐに弁護士に相談するようにしてください。冤罪事件を争うのであれば早期に弁護士のサポートが必要になりますし、痴漢が事実であっても被害者との示談交渉などのサポートが必要になります。

グラディアトル法律事務所では、盗撮事件ついての豊富な実績と経験がありますので、盗撮事件で、逮捕や起訴を回避するためのさまざまな対処法を熟知しています。ご依頼者さまの状況に応じて適切な弁護活動を行うことで不利な処分を回避できる可能性がありますので、まずは当事務所までご相談ください。

当事務所では、初回相談料無料、24時間365日相談を受け付けていますので、盗撮販売で不安を感じたときはすぐに当事務所までお問い合わせください。

まとめ

痴漢事件では、DNA鑑定が行われることがあります。DNA鑑定の結果によっては、痴漢の有罪を立証する証拠となることがありますが、それだけで有罪・無罪が決まるわけではありません。痴漢事件で有罪・無罪を判断するためには、被害者供述の信用性を争うことが重要となりますが、そのためには痴漢事件に強い弁護士のサポートが必要です。

痴漢の疑いをかけられてしまった方は、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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