「告訴」は捜査機関に対して犯罪の事実を申告し、加害者への処罰を求めるための手続きです。
そのため、痴漢をしてしまったことに不安や焦りを感じていながら、「告訴されなければ処罰されないのではないか」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、結論からいうと、痴漢行為は告訴がなくても起訴される可能性があります。
そのため、淡い期待を抱いて時が過ぎるのを待つのではなく、まずは弁護士に相談し、不起訴処分や減刑に向けてやるべきことをアドバイスしてもらうことが大切です。
本記事では、告訴がおこなわれることによって生じる影響や告訴されたあとの流れなど、痴漢事件と告訴の関係性についてわかりやすく解説します。
告訴と被害届との違いや告訴されたときの対処法なども記載しているので、参考にしてみてください。
目次
痴漢は告訴がなくても起訴される可能性がある
痴漢事件を起こした場合、告訴がなくても起訴される可能性があります。
多くの痴漢行為に対して適用される罪は、いずれも非親告罪です。
つまり、被害者が告訴していなくても、検察は加害者を起訴することができます。
たとえば、電車内で痴漢行為に及んだ場合、被害者が告訴しなくても、目撃者の証言や防犯カメラの映像などの証拠があれば、捜査機関が独自に捜査を進め、起訴に至る可能性も出てくるわけです。
痴漢事件は親告罪?非親告罪であっても示談が重要になる理由を解説
痴漢で告訴された場合に生じる法律上の効果・被害届との違い
痴漢に適用される迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪は非親告罪であり、起訴に告訴を必要としませんが、告訴自体に意味がないわけではありません。
そもそも「告訴」とは加害者への処罰を求めるためにおこなうものであり、被害を報告するために用いる「被害届」とは役割が大きく異なります。
具体的には、告訴状が警察に受理されると、以下のような法律上の効力が発生します。
- ・警察は速やかに書類・証拠物を検察官に送付しなければならない
- ・検察は起訴・不起訴の処分結果を被害者に通知しなければならない
- ・不起訴処分にした場合は被害者からの請求により処分理由を告げなければならない
告訴状が受理されると、警察による捜査がほぼ確実に進められることになるため、法律上の効果は被害届よりも大きいといえるでしょう。
そのため、痴漢が発覚した場合は被害者が告訴する前に示談を成立させ、速やかな事件解決を目指すことが重要です。
【関連記事】
痴漢で被害届が出されたら?受理後の捜査の流れと示談の重要性を解説
痴漢で告訴された場合に受ける影響
次に、痴漢で告訴された場合に受ける影響を詳しく見ていきましょう。
積極的に捜査が進められる
痴漢で告訴された場合、警察による積極的な捜査が進められます。
警察は告訴を受けた以上、可能な限りの捜査を尽くす義務があるためです。
捜査の方法は、被害者や目撃者への事情聴取や現場検証など、状況に応じて適切な方法が選択されます。
告訴は、痴漢事件の捜査を本格化させる重要な契機となることを覚えておきましょう。
起訴・不起訴や量刑の判断に際して不利に働く
痴漢で告訴されると、起訴・不起訴や量刑の判断に際して不利に働くことがあります。
検察官は被害者の処罰感情を考慮したうえで、起訴・不起訴や量刑を判断します。
そのため、加害者への処罰を望む告訴がおこなわれた場合には、起訴されたり、量刑が重くなったりするケースが多くなるのです。
場合によっては、懲役刑になる、執行猶予がつかないなどといった判断につながる可能性も否定できません。
ただし、告訴されたとしても、証拠が不十分な場合や情状酌量の余地がある場合は、不起訴や軽い刑になることもあるので、早期に弁護士へ相談し、適切な対応を取ることが重要です。
痴漢で告訴されたあとの流れ
次に、痴漢で告訴されたあとの流れを詳しく解説します。
告訴状を受理した警察が捜査を開始する
まず、痴漢で告訴された場合、告訴状を受理した警察による捜査が始まります。
事件ごとに違いはありますが、主に以下のような捜査が実施されることになるでしょう。
- 被害者からの事情聴取
- 目撃者の特定・聞き取り
- 現場の状況確認
- 防犯カメラの映像収集
- ICカード利用履歴の確認
捜査の過程で加害者が特定されれば、任意での取り調べがおこなわれるケースもあります。
状況次第では逮捕される
痴漢で告訴されたあとの捜査結果によっては、逮捕されるおそれがあります。
逮捕の要件は、以下のとおりです。
たとえば、防犯カメラに容疑者の姿が映っていたり、複数の目撃証言が一致したりした場合は嫌疑が強くなるため、逮捕の可能性が高まります。
また、再犯の場合や取り調べに対して激しく抵抗した場合なども、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕に至ることがあるので注意しておきましょう。
犯行からしばらく経過したあとに、後日逮捕されるケースも少なくありません。
検察に送致される
警察の捜査が終わると、検察に送致されます。
送致とは、警察から検察に事件を引き継ぐ手続きのことです。
逮捕されている場合は、48時間以内に捜査資料とあわせて身柄も検察に引き渡されます。
なお、送致するかどうかは警察が判断しますが、痴漢で逮捕されているのであれば、ほぼ確実に送致されるものと考えておきましょう。
なお、逮捕されずに在宅事件となっている場合は、送致までの期限が設けられていないため、警察の捜査が長引くこともあります。
必要に応じて勾留され、取り調べを受ける
検察に送致されたあとは、必要に応じて勾留され、取り調べを受けることになります。
検察官は送致を受けてから24時間以内に、起訴・不起訴・釈放・勾留請求のいずれかを決定しなければなりません。
とはいえ、さらなる捜査のために勾留請求がおこなわれるケースが一般的です。
そして、勾留請求を受けた裁判所が許可した場合は、原則10日間、最長20日間の身柄拘束を受けることになります。
勾留されると仕事や学校生活への影響も大きくなるため、弁護士と連携しながら、早期釈放に向けて対策を講じることが重要です。
起訴・不起訴が決定される
検察官による取り調べが終わると、起訴・不起訴が決定されます。
不起訴処分を獲得できれば、その時点で罪に問われる可能性はなくなり、元の生活を取り戻すことが可能です。
起訴された場合は、裁判に移行し、裁判官によって有罪・無罪の判決が下されることになります。
なお、起訴には、略式起訴と通常起訴の2種類があります。
・略式起訴:軽微な事件に用いられ、書面審理のみで罰金刑が科される
・通常起訴:悪質性の高い事件や十分な審理が必要な事件に用いられ、公開の法廷で裁判がおこなわれる
一般的な痴漢行為に対しては、不同意わいせつ罪もしくは迷惑防止条例違反が適用されます。
不同意わいせつ罪の刑罰は「6か月以上10年以下の拘禁刑」であり、そもそも罰金刑がないので、略式起訴されることはありません。
迷惑防止条例違反の刑罰は自治体ごとに異なりますが、基本的には罰金刑の規定があるため、初犯である場合や示談が成立している場合などは、略式起訴で済む可能性も十分あります。
関連記事
痴漢の不起訴率は約6割!不起訴処分を獲得するためのポイントを解説
痴漢で告訴されたときにやるべきこと
次に、痴漢で告訴されたときにやるべきことを解説します。
適切な対応がとれるかどうかで、その後の人生が大きく変わることを念頭に置いて、迅速な行動を心がけましょう。
被害者との示談を成立させる
痴漢で告訴された場合は、被害者との示談を早急に成立させることが重要です。
示談が成立すれば、被害者の処罰感情が和らぎ、告訴を取り下げてもらえるかもしれません。
仮に告訴が取り下げられなかった場合でも、示談の成立が逮捕回避や不起訴処分、減刑につながる可能性は十分あります。
ただし、示談交渉は被害者の心情を考慮したうえで、慎重に進めなければなりません。
当事者間で話し合おうとすると余計なトラブルが生じかねないので、示談交渉は弁護士に任せるのが賢明な判断といえるでしょう。
【関連記事】
痴漢示談金(慰謝料)相場は30〜150万円!減額する方法解説
できるだけ早く弁護士に相談する
痴漢で告訴された場合は、できるだけ早く弁護士に相談してください。
痴漢事件を得意とする弁護士に相談・依頼すれば、関係法律や過去の事例をもとに、個々の状況に合わせた最善の対応策を提案してもらえます。
被害者との示談交渉や捜査機関への働きかけなども一任できるため、不当な身柄拘束を防ぎ、不起訴処分を獲得できる可能性は格段に高まるはずです。
とはいえ、状況が悪化したあとでは、弁護士がサポートできることも限られてしまいます。
初期段階での適切な対応が、不利益の最小化や事態の好転につながることを覚えておきましょう。
【関連記事】
痴漢事件は迷わず弁護士を呼べ!理由と早期に不起訴獲得した事例
痴漢の告訴に関するよくある質問
最後に、痴漢の告訴に関するよくある質問を紹介します。
痴漢の冤罪で告訴された場合にできることは?
痴漢の冤罪で告訴された場合、虚偽告訴罪で訴え返せる可能性があります。
虚偽告訴罪とは、刑事罰や懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の申告をした場合に成立する犯罪です。
たとえば、痴漢をしていない人を事実ではないと認識したうえで告訴した場合、虚偽告訴罪に該当することがあります。
ただし、相手方が「故意に」虚偽の内容を申告したことを証明するのは簡単ではありません。
虚偽告訴罪で訴える場合には、まず刑事事件が得意な弁護士に相談することが大切です。
痴漢の告訴に期限はある?
痴漢に関しては、基本的に告訴の期限がないものと考えておきましょう。
痴漢は迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪にあたるケースが一般的ですが、それらは非親告罪であり、告訴期限が設けられていないためです。
ただし、時効の影響は受けることになります。
迷惑防止条例違反なら3年、不同意わいせつ罪なら12年が経過すると公訴時効が成立し、そもそも起訴されることがなくなるので、告訴も意味を成しません。
ただし、何年も時効の成立を待ち続けるのは賢い判断といえないので、痴漢事件を起こしてしまった場合は、今後の対応について弁護士に助言を求めるようにしてください。
痴漢に関する悩みはグラディアトル法律事務所に相談を
痴漢で告訴された場合は、警察による捜査が開始され、状況次第で逮捕される可能性も出てきます。
そのため、痴漢行為が発覚したときは、できるだけ早く弁護士に相談・依頼してください。
弁護士が迅速に示談を成立させることで、告訴を食い止めたり、告訴を取り下げてもらったりできる可能性があります。
仮に告訴されてしまった場合でも、弁護士のサポートがあれば、不起訴処分や減刑に大きく近づきます。
実際にグラディアトル法律事務所では、これまでに数々の痴漢事件を解決してきました。
痴漢事件を得意とする弁護士が24時間365日体制で対応しているため、今後の流れや処遇について不安を抱えている方はまず弊所へご相談ください。
初回相談は無料、LINEでの相談も受け付けているので、お気軽にどうぞ。