占有離脱物横領罪とは?成立要件・法定刑・時効や逮捕の可能性を解説

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弁護士 若林翔
2025年02月15日更新

「占有離脱物横領罪とはどのような犯罪?」

「占有離脱物横領罪と他の犯罪とはどのような違いがあるの?」

「占有離脱物横領罪を犯してしまうとどうなる?」

占有離脱物横領罪とは、あまり聞きなれない犯罪かもしれませんが、簡単に言えば、他人の占有を離れた物を自分の物にしてしまう犯罪です。

たとえば、道に落ちていた財布を拾って自分の物にする、ゴミ捨て場に落ちていた自転車を拾って自分の物として使うなどの行為が占有離脱物横領罪に該当します。

占有離脱物横領罪は、横領罪と呼ばれる犯罪類型の中でも比較的軽微な犯罪になりますので、早期に弁護士に相談し、適切な弁護活動を行うことで微罪処分や不起訴処分で終わる可能性も十分にあります。そのため、占有離脱物横領罪を犯してしまったときはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

本記事では、

・占有離脱物横領罪とは
・占有離脱物横領罪の成立要件、法定刑、時効
・占有離脱物横領罪を犯してしまったときの検挙率、逮捕率

などについてわかりやすく解説します。

占有離脱物横領罪の基本的なから具体的な対処法まで解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

占有離脱物横領罪とは?

占有離脱物横領罪とは?

占有離脱物横領罪とは、あまり聞きなれない犯罪かもしれませんが、簡単に言えば、他人の占有を離れた物を自分の物にしてしまう犯罪です。

具体的には、以下のような行為をすると占有離脱物横領罪に問われる可能性があります。

・道に落ちていた財布を拾って警察に届けずに自分の物にする
・ゴミ捨て場に落ちていた自転車を拾って自分の物として使う
・お釣りを多くもらっていたことに気付いたのに指摘せずにそのままもらってしまう
・セルフレジで前の客が取り忘れていたお釣りを持ち去る
・誤配送された荷物であることを知りながら、開封して自分で使う

このような例からもわかるように誰でも当事者になってしまう可能性のある犯罪です。

占有離脱物横領罪の成立要件

占有離脱物横領罪は、どのような場合に成立するのでしょうか。以下では、占有離脱物横領罪の成立要件を説明します。

占有離脱物横領罪の成立要件

遺失物、漂流物など人の占有を離れたもの

占有離脱物横領罪は、遺失物、漂流物、その他占有を離れた他人の物が対象になります。

遺失物とは、占有者の意思に基づかずに占有を離れた物をいいます。典型例としては落とし物がこれにあたります。

漂流物とは、水の中にある遺失物をいいます。

その他占有を離れた他人の物とは、遺失物や漂流物にあたらない物で占有者の意思に基づかず占有を離れた物をいいます。たとえば、店員がおつりを多く渡してきた場合、誤配達された郵便物などがこれにあたります。

横領すること

横領とは、不法領得の意思をもって占有離脱物を自己の事実上の支配下に置くことをいいます。簡単にいえば、他人のものを自分のものにしてしまう行為が横領にあたります。

たとえば、落とし物の財布を警察に届けずに、そのまま自分のものにしてしまえば、占有離脱物横領罪が成立します。

自分のものにしてやろうという意思(不法領得の意思)

占有離脱物横領罪が成立するには、行為者に「自分のものにしてやろう」という意思が必要になります。これを「不法領得の意思」といいます。

たとえば、道に落ちている財布を拾ったまま、警察に届けずにいたとしても、忙しくて警察に届けるのが遅れただけであれば、不法領得の意思がないため占有離脱物横領罪は成立しません。

占有離脱物横領罪の法定刑

占有離脱物横領罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料と定められています。

刑法上の横領罪には、単純横領罪、業務上横領罪、占有離脱物横領罪の3種類がありますが、以下のとおり、占有離脱物横領罪がもっとも刑罰の軽い犯罪になります。

罪名法定刑
占有離脱物横領罪1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料
単純横領罪5年以下の懲役
業務上横領罪10年以下の懲役

占有離脱物横領罪の公訴時効は3年

公訴時効とは、犯罪行為が終わってから一定期間が経過すると、検察官が事件を起訴することができなくなる制度です。

公訴時効期間は、犯罪の種類や法定刑によって定められており、占有離脱物横領罪の場合は、3年が公訴時効期間になります。そのため、落ちている財布を拾ったときから3年が経過すれば、公訴時効が成立し、罪に問われることはなくなります。

 

占有離脱物横領罪と他の犯罪との違い

占有離脱物横領罪と他の犯罪との違い

占有離脱物横領罪と似た犯罪として、遺失物横領罪、単純横領罪、窃盗罪があります。以下では、占有離脱物横領罪とこれらの犯罪の違いを説明します。

占有離脱物横領罪と遺失物等横領罪の違い

占有離脱物横領罪と遺失物等横領罪は、名称は違いますが、どちらも同じ犯罪を指しますので両者には違いはありません。

なお、刑法では、「遺失物等横領罪」が正式名称として用いられています。

占有離脱物横領罪と単純横領罪との違い

占有離脱物横領罪と単純横領罪は、どちらも他人の物を横領するという犯罪である点では共通しています。

しかし、占有離脱物横領罪は、他人の物の占有が失われており誰にも属していないのに対して、単純横領罪は、他人から預かった物を横領する犯罪ですので、行為者に他人の物の占有があるという違いがあります。

占有離脱物横領罪と単純横領罪の違いをまとめると以下のようになります。

 占有離脱物横領罪単純横領罪
対象遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物自己の占有する他人の物
信任委託関係の有無なしあり
法定刑1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料5年以下の懲役

 

占有離脱物横領罪と窃盗罪との違い

占有離脱物横領罪と窃盗は、どちらも他人の物を自分の物にする犯罪という点では共通します。

しかし、占有離脱物横領罪は、占有が失われた物を横領する犯罪であるのに対して、窃盗罪は、他人が占有する物を占有者の意思に反して奪う犯罪であるという違いがあります。すなわち、物に対する占有の有無によって両罪は区別されます。

たとえば、他人のポケットにある財布をこっそりと抜き取った場合、財布の占有は本人にありますので窃盗罪が成立しますが、他人が道に落とした財布は誰も占有していないものですのでそれを拾って自分の物にすれば占有離脱物横領罪が成立します。

占有離脱物横領罪と窃盗罪の違いをまとめると以下のようになります。

 占有離脱物横領罪窃盗罪
対象遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物他人の占有する他人の物
行為横領(他人のものを自分のものにしてしまう行為)窃取(他人の意思に反して占有を奪う行為)
法定刑1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料10年以下の懲役または50万円以下の罰金

占有離脱物横領罪を犯してしまったらどうなる?

占有離脱物横領罪を犯してしまうとどうなってしまうのでしょうか。以下では、実際の統計資料に基づいて、占有離脱物横領罪の検挙率・逮捕率・微罪処分で終わる割合を説明します。

占有離脱物横領罪を犯してしまったらどうなる?

占有離脱物横領罪の検挙率は約72%

令和5年犯罪白書によると、令和4年における占有離脱物横領罪の認知件数は1万2335件で、そのうち検挙された件数は8842件です。検挙率でいうと約72%ということになります。

刑法犯全体の検挙率が41.6%ですので、占有離脱物横領罪の検挙率は、非常に高いことがわかります。そのため、捜査機関により占有離脱物横領罪が認知されると、ほとんどのケースで検挙されることになります。

占有離脱物横領罪の逮捕率は約14%

警察庁が公表している「犯罪統計 令和5年の犯罪」によると、占有離脱物横領罪で検挙された人数が8929人で、そのうち逮捕されたのは357人でした。逮捕率でいうと約14%ということになります。

刑法犯全体の逮捕率が約34%ですので、占有離脱物横領罪の逮捕率は、非常に低いことがわかります。検挙率は高いものの逮捕率は低いため、占有離脱物横領罪で検挙されてもほとんどのケースが在宅事件で処理されることになります。

微罪処分で終わる割合は約46%

警察庁が公表している「犯罪統計 令和5年の犯罪」によると、占有離脱物横領罪で検挙された8929人のうち、微罪処分で終わった人数は4087人でした。微罪処分で終わる割合としては、約46%ということになります。

微罪処分とは、警察が捜査した事件のうち、一定の軽微な犯罪について検察官に送致することなく、警察だけで事件を終了させる処分です。微罪処分になれば、刑事裁判の対象になることはありませんので、前科が付くのを回避できます。

占有離脱物横領罪は、約半数が微罪処分で終わっていることになりますので、適切な弁護活動を行えば、前科を回避できる可能性の高い犯罪といえるでしょう。

占有離脱物横領罪で逮捕されてしまったときの流れ

占有離脱物横領罪で逮捕されてしまったときの流れ

占有離脱物横領罪は、逮捕されずに在宅事件として処理される可能性の高い犯罪です。しかし、事件によっては警察に逮捕される可能性もあります。その場合、以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。

逮捕・取り調べ

警察で逮捕されると、警察署内の留置施設で身柄が拘束されて、警察官による取り調べを受けます。逮捕には時間制限がありますので、警察は逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を解放するか、検察官に送致しなければなりません。

なお、占有離脱物横領罪は、微罪処分で終わるケースが多いため、逮捕されたとしても、検察官に送致される前に身柄が解放される可能性もあります。

検察官送致

検察官は、被疑者に対する取り調べを行い、引き続き身柄拘束する必要がある場合には、裁判官に勾留請求を行います。

勾留請求をする場合には、検察官送致から24時間以内に行わなければなりません。

勾留・勾留延長

裁判官は、被疑者に対する勾留質問を実施し、勾留を認めるかどうかの判断を行います。

裁判官が勾留を許可すると原則として10日間の身柄拘束となり、その後、勾留延長も許可されるとさらに最長10日間の身柄拘束となります。

ただし、占有離脱物横領罪は、比較的軽微な犯罪ですので、勾留・勾留延長により長期間の身柄拘束になる可能性は低いでしょう。

起訴または不起訴の決定

検察官は、最終的に被疑者を起訴するか不起訴にするかの判断を行います。

占有離脱物横領罪は、比較的軽微な犯罪ですので、不起訴処分になる可能性も十分にあります。また、起訴されたとしても略式命令請求により罰金刑になるケースが多いです。

占有離脱物横領罪の初犯なら示談により不起訴になる可能性が高い

占有離脱物横領罪は、比較的軽微な犯罪ですので、初犯でありかつ被害品を返還し、本人も十分に反省しているなどの事情があれば不起訴になる可能性が高いです。他方、行為者に前科・前歴があり、被害額が高額になると逮捕・起訴される可能性もあります。

そのため、占有離脱物横領罪を犯してしまったときは、被害者に対して被害品を返還するまたは返還が難しい場合には被害弁償をすることが重要になります。

ただし、占有離脱物横領罪は、犯罪の性質上、被害者と犯人との間に面識がないため、本人では示談交渉が難しいケースも少なくありません。早期に被害者と示談を成立させるためには、弁護士によるサポートが不可欠となりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士の尽力で示談を成立させ、不起訴を獲得した当事務所の解決事例

弁護士の尽力で示談を成立させ、不起訴を獲得した当事務所の解決事例
【事例の概要】

関東地方にお住まいのKさんは、ある日、駅のホームのベンチにうっかり置き忘れられた財布を拾いました。
その日はKさんも仕事で疲れており、また、次の日も朝早い予定が入っていたため、「明日以降に届けよう」と考えていました。
しかしながら、Kさんは多忙な日々を過ごしていたため、そのことを忘れていました。
当時、Kさんは経済的に苦しい状況にあり、生活費の工面にも頭を悩ませていました。
そんな折、魔が差してしまい、拾った財布をネットオークションで売却してしまいました。
数週間後、警察から連絡を受け、Kさんは占有離脱物(遺失物)横領の疑いで事情聴取を受けることになりました。
Kさんは、自身の軽率な行動から「このままでは、本当に大変なことになる」と強い危機感を抱き、当事務所にご相談くださいました。

【解決プロセス】

Kさんからご依頼を受けた後、当事務所の弁護士は、直ちに被害者との示談交渉を開始しました。

被害者の方は、当初、Kさんの行為に対して強い憤りを感じており、迷惑料として100万円程度を想定されていました。

しかし、弁護士が粘り強く交渉を続け、Kさんが深く反省していること、経済的に困窮している状況であることなどを丁寧に説明しました。

その結果、財布と現金の弁償と、迷惑料を含めた示談金を40万円とすることで合意を得られました。また、Kさんの経済状況を考慮し、示談金は分割でお支払いすることで、被害者の方にもご納得いただきました。

並行して、弁護士は、検察官に対し、Kさんが深く反省していること、被害者と示談が成立していること、被害者が処罰を望んでいないことなどを詳細に記載した意見書を提出し、不起訴処分を求めました。

【結果】

弁護士による迅速な示談交渉と、検察官へ提出した意見書が功を奏し、最終的に不起訴処分を獲得することができました。
Kさんは、刑事処罰を受けることなく、再び平穏な生活を取り戻すことができました。

事件解決までの期間は、ご相談から約4か月でした。

【本事例のポイント】

本事例のポイントは、迅速な示談交渉と検察官への働きかけにより、不起訴処分を獲得できたことです。

占有離脱物(遺失物)横領をはじめとする刑事事件では、被害者との示談が極めて重要であり、早期に示談を成立させることが、不起訴処分の可能性を高めます。

また、依頼者の反省の情を丁寧に検察官に伝え、不起訴処分を求める意見書を提出したことも、本件の解決に大きく寄与しました。

占有離脱物横領罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

占有離脱物横領罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

占有離脱物横領罪は、比較的軽微な犯罪ですので早い段階から弁護士が関与することで、微罪処分や不起訴処分で終わる可能性が高いです。また、被害金額が大きい事案だと占有離脱物横領罪であっても逮捕・起訴されるリスクがありますので、有利な処分を獲得するには弁護士のサポートが不可欠です。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件の弁護に関する豊富な経験と実績がありますので、占有離脱物横領罪の弁護もどうぞ安心してお任せください。ご依頼があればすぐに弁護活動に着手し、早期に被害者との示談をまとめるなどして有利な処分獲得に向けて全力でサポートいたします。相談・依頼が早ければ早いほど有利な処分を獲得できる可能性が高くなりますので、占有離脱物横領罪を犯してしまったときは、一刻も早く当事務所までご相談ください。

なお、当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料です対応しています。

まとめ

占有離脱物横領罪は、落とし物などを拾って警察に届け出ず、自分の物にしてしまった場合などに成立する犯罪です。横領罪と呼ばれる犯罪の中では比較的軽微な犯罪ですが、被害額や前科前歴の有無などによっては逮捕・起訴されて実刑になるリスクも否定できません。

他方、早期に適切な弁護活動をすることで微罪処分や不起訴処分になる可能性の高い犯罪であるともいえますので、占有離脱物横領罪を犯してしまったときは、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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