「キスだけでも不同意わいせつ罪は成立する?」
「無理やりキスした証拠がなくても逮捕される?」
こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、相手の同意が無かったのであれば、キスだけでも不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
無理やりキスした証拠がなくても、被害届が提出されると、捜査が開始されて逮捕にいたるリスクがあるのです。
因みに、検察庁のデータによれば、不同意わいせつ(旧:強制わいせつ罪)の検挙率はここ20年間で2倍以上に急増しています。
性犯罪に対する注目が高まる中、キス等による不同意わいせつ罪の検挙率も年々高まっているのです。
【不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)の検挙率】
平成14年 | 平成24年 | 令和4年 | |
検挙率 | 35.5% | 53.9% | 86.3% |
(出典:令和5年犯罪白書|強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移)
同意がない状態でキスしてしまい、トラブルに発展したのであれば、速やかに弁護士に相談して、示談を進める等の行動を起こすことが必要です。
そこで本記事では、次の点を取り上げました。
◉この記事を読んで分かること ・キスによって不同意わいせつ罪が成立するケース ・不同意わいせつ罪で逮捕されるリスク ・なぜキスした証拠が無くても、逮捕されるのか ・逮捕を回避する方法 |
「同意がない」又は「はっきりしない」状況でキスしてしまった方は、是非ご一読ください。
目次
無理やりのキスで不同意わいせつ罪は成立する?
無理やりのキスによって、不同意わいせつ罪は成立するのでしょうか?
結論から言うと、相手の同意なくキスをした場合、不同意わいせつ罪が成立する可能性は十分にあります。
不同意わいせつ罪は、次の2つの要件を満たすと成立するところ、キスだけでもこれらの要件を満たす可能性は高いからです。
【不同意わいせつ罪の成立要件】
・相手の同意がないこと ・わいせつな行為であること |
1つ目の要件は、相手の同意がないことです。
相手が拒否しているにもかかわらず無理やりキスした場合はもちろん、お酒で酔っているなど、相手が正常な判断ができない状態でキスをしても、同意がないとみなされる可能性があります。
2つ目は、行為がわいせつであることです。
「わいせつ」とは、「いたずらに人の性欲を刺激し、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」とされています。
例えば、海外諸国のようにキスが挨拶代わりとして行われており、性的な意味が含まれていないのであれば、「不同意わいせつ罪」となる可能性は低いかもしれません。
しかし日本では、ほとんどのキスが性的目的で行われているのが通常です。
特に、「同意があったのか」が問題となるようなケースでは、キスが性的な目的でなかったと判断される可能性は非常に低いでしょう。
キスによって不同意わいせつ罪が成立するケース
それではどのようなケースで、キスによる不同意わいせつ罪が成立するのでしょうか?
具体的なケースを4つ紹介します。
明らかに同意がない状態で無理やりするキス
キスによって不同意わいせつ罪が成立するケースの典型例は、相手が明確に拒絶しているのに、無理やりキスをするケースです。
・「やめて!」と言っているのに無視してキスをする ・腕をつかんで逃げられないようにして、強引にキスをする ・背後から抱きついて、無理やりキスをする など |
このようなケースでは、不同意わいせつ罪が成立する可能性が高いでしょう。
実際、知人の女性に無理やりキスをしてしまい、逮捕まで至ったケースはいくつも存在しています。
・県内の路上で、知人の20代の女性に抱きつき口にキスをしようとしたところ、女性が抵抗して警察に相談。不同意わいせつ未遂の疑いで逮捕されたケース。 (出典:とちてれニュース) |
・乗用車内で20代の知人女性に抱きつき、首にキス。女性が警察に相談して、監禁と不同意わいせつの疑いで逮捕されたケース。 (出典:産経新聞) |
相手の意思に反してキスをすれば、たとえ軽いキスであったとしても、不同意わいせつ罪が成立する場合があるのです。
お酒で酔っ払った状態でのキス
お酒で酔っ払った状態の相手にキスをしても、不同意わいせつ罪になる可能性があります。
はっきりと拒否していなくても、お酒に酔って正常な判断ができない状態であれば、同意があったとはみなされません。
・泥酔して意識がない状態で、キスをする ・酔っ払って判断力が低下している状況を利用してキスをする ・お酒を無理に飲ませた上でキスをする など |
お酒に酔った本人が気づいていなかったり、覚えていなかったとしても、目撃者から通報されて逮捕にいたるケースもあります。
繁華街の路上で、泥酔して寝ていた22歳の女性にキスをしたところ、目撃した女性から「寝込んでいる女性に男性が何かしようとしている」と110番通報。駆けつけた警察官によって確保。 鑑定により女性の口腔内から採取したDNA型と小川容疑者のDNA型と一致。 そのまま逮捕されたケース。(出典:RKBオンライン) |
上司と部下、取引先などの上下関係を利用したキス
「上司と部下」や「取引先」などの上下関係を利用したキスも、不同意わいせつ罪に該当する可能性があります。立場の差を利用しているケースでは、相手が嫌だと感じていても、拒否できない可能性があるからです。
例えば、次のような状況が考えられます。
・上司と部下、先輩と後輩などの上下関係を振りかざして、キスをする ・取引先との契約を餌にして、キスを要求する ・バイト先の店長が、アルバイトに対してキスを迫る |
不同意わいせつ罪が成立するのは、相手が「イヤ」と言っているケースだけではありません。
はっきりと拒絶していなくても、キスをした状況から、相手が「イヤ」と言えない又は「イヤ」を貫くことが難しい状況だったと判断されると、不同意わいせつ罪となる可能性があるのです。
未成年の女性に対するキス
未成年、特に16歳未満に対するキスは、たとえ相手の同意があったとしても、不同意わいせつ罪に該当する可能性があります。
未成年者は、必ずしも性行為についての判断力が十分とはいえないため、キスに対する同意自体がそもそも有効とみなされないからです。
そのため、相手がはっきりと同意していたり、同意した証拠が残っていたとしても、不同意わいせつ罪として扱われる可能性が高くなります。
また、相手が16歳未満だと知らなかったケースでも注意が必要です。
16歳未満だとはっきりと分かっていなくても、「もしかしたら16歳未満かも?」程度の認識さえあれば、不同意わいせつ罪となる可能性があります。
キスによる不同意わいせつ罪で逮捕されるとどうなる?
それでは、無理やりのキスによって不同意わいせつ罪に問われると、どのような事態に直面するのでしょうか。逮捕後に生じるリスクを4つ紹介します。
長期間にわたって身柄が拘束される
不同意わいせつ罪で逮捕されると、長期間にわたって身柄を拘束されます。
警察の取り調べから検察官送致を経て、勾留が決定すると、身柄拘束は最大23日間にわたって続くこととなるのです。
この間、外部との接触が制限され、仕事や日常生活にも大きな支障をきたしてしまいます。
なお、逮捕されたからといって直ちに、会社や学校へ連絡がいくわけではありません。しかし、拘束期間が長くなると、逮捕された事実が発覚する可能性は高くなるでしょう。
起訴されると、6月以上10年以下の懲役刑になる
不同意わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役刑です。罰金刑は設けられていません。
つまり、キスによって不同意わいせつ罪が確定すると、執行猶予が付かない限り、必ず懲役刑(実刑)となってしまうのです。
日本の刑事裁判では、一旦起訴された後の有罪率は99%になるとも言われています。
そのため、懲役を防ぐには、不起訴を得ることが最も現実的な方法となります。
不同意わいせつ罪の起訴率はまだ公表されていませんが、前身の「強制わいせつ罪」の起訴率は32%でした。
そうすると不同意わいせつ罪でも、同じような数字となる可能性は高いでしょう
こちらの記事も併せてご覧ください。
不同意わいせつ事件の量刑相場は懲役1~3年・執行猶予率は約77%
(出典:令和5年犯罪白書|資料2−2 検察庁終局処理人員(罪名別))
10人中3人と聞けば低く感じる人もいるかもしれませんが、一旦起訴された後の有罪率は99%にも達します。
起訴された後のリスクを考えると、決して軽視はできません。
会社や学校から懲戒処分される
不同意わいせつ罪で逮捕、起訴されると、会社や学校から懲戒処分を受ける可能性も高くなります。
大半の会社や学校では、就業規則(学則)で、刑事事件となった場合の懲戒処分が定められているからです。
もちろん、逮捕・起訴されたからといって一律に懲戒処分となるわけではありません。
ただし、例えばキスした相手が、上司と部下のような関係性であったり、仕事上の取引先だったりするケースでは、会社の信用失墜につながると考えられます。
そうすると、懲戒処分をされる可能性は非常に高くなるでしょう。
友人・知人にバレる
友人・知人にバレてしまうリスクも見過ごせません。
逮捕・起訴されたことが発覚し、噂が広まる原因は様々ですが、例えば次のような要因が考えられます。
・身柄拘束が長期化して会社の欠勤が続いてしまう ・逮捕されたことが報道されて友人・知人が気づいてしまう ・キスをされた被害者や、家族から噂が広まってしまう |
たとえ不起訴になったとしても、不同意わいせつ罪で逮捕・起訴されたことが伝わると、信用を失ってしまう可能性は大いにあるでしょう。
これを防ぐには、速やかに被害者と示談をすることが必要です。
例えば、示談の条件として「口外禁止条項」などを盛り込めば、被害者本人から噂が広まる可能性は格段に低くなります。
不同意わいせつ罪の逮捕率は約59%!逮捕のリスクや回避方法を解説
キスした証拠がなくても、不同意わいせつ罪で逮捕される?
ここまで、キスでも不同意わいせつ罪が成立して、逮捕される可能性があることを説明してきました。とはいえ、次のような疑問を持つ人も多いかもしれません。
「キスした証拠なんて残っていないのではないか?」 「証拠がないのに、なぜ逮捕されるの?」 |
確かに、刑事事件では証拠がなければ逮捕されないことが原則です。
無理やりキスした証拠が全くなければ、逮捕されることはないでしょう。
ただし、ここで注意が必要なのは、不同意わいせつ罪では「被害者の証言」それ自体が有力な証拠として扱われることです。そのため、被害届が提出されて捜査が始まると、後日になっても逮捕される可能性があるのです。
また、被害者の証言以外にも、思わぬ証拠が見つかるケースは決して珍しくありません。
例えば、次のようなものが見つかると、有力な証拠として扱われます。
・店舗やエレベーター内、路上などの防犯カメラの映像 ・目撃者の証言 ・被害者が家族や友人に相談した内容 ・キスの前後のやり取り(LINEやSNSのメッセージ、メールなど) |
さらに、キスをした状況によっては、2章で紹介したケースのように、口腔内のDNA鑑定が実施される場合もあります。
「証拠がないから大丈夫」と思っていても、後日になって被害者が相談し、いきなり警察から連絡が来るケースも十分に想定できるのです。
不同意わいせつ罪を立証する6つの証拠と同意を立証する4つの証拠
不同意わいせつ罪の逮捕を防ぐには示談が重要
キスによって不同意わいせつ罪が成立し、逮捕されるのを防ぐには示談が重要です。
「キスをされた被害者が激怒している」 「もしかしたら被害届が提出されるかも」 |
このような状況が分かったら、速やかに弁護士に相談して、示談交渉を開始しましょう。
証拠がないからといって安心せず、早い段階で示談交渉を開始することで、逮捕のリスクを大幅に下げることができます。
示談の成立が早いほど、深刻な事態を回避できる
キスによる不同意わいせつ罪の示談は、できるだけ早期に成立させることが重要です。
示談の成立が早ければ早いほど、事件の発端となったキスが、深刻なわいせつ事件に発展する可能性が低くなるからです。
例えば、事件直後に示談を成立させることができれば、被害届の提出を阻止できるでしょう。
そうすると、そもそも刑事事件化しないため、逮捕・起訴の不安は解消され、日常生活への影響も最小限に抑えることができます。
示談の条件として「口外禁止条項」などを盛り込めば、無理やりキスしたことが周囲に広まることも防げるでしょう。
逮捕・起訴された後でも、示談が重要なことに変わりはない
すでに被害届が提出されたり、逮捕・起訴された後であったとしても、示談が重要なことに変わりはありません。
成立するタイミングによって、示談の効果は変わってくるものの、いずれのケースでも事件の進行に大きな影響を与えます。
示談の成立時期 | 示談の効果 (対:捜査機関、裁判所) | 示談の効果 (対:被害者) |
事件直後 | ・被害届の提出を阻止 ・家族や友人、知人バレを回避 | |
被害届の提出後 | ・捜査の中止 ・逮捕を阻止 | ・被害届の取り下げ ・家族や友人、知人バレを回避 |
逮捕後 | ・早期釈放 ・不起訴の獲得 | ・民事訴訟の回避 |
起訴後 | ・刑罰の軽減 ・実刑の回避(執行猶予の獲得) |
ただし、被害者との示談交渉は、必ず弁護士を通じて行いましょう。
連絡先が分からない場合はもちろん、被害者が昔からの友人であったり、キス以前は良好な関係であったりしたケースでも同様です。
そもそも、同意がない状態でキスをされた被害者は、加害者と顔を合わせたくないと思っていることが通常です。
事件後に、加害者やその家族が連絡すると、被害感情が悪化して、逆に解決が難しくなってしまいます。
・感情的なトラブルに発展する ・「言った」「言わない」の水掛け論になる ・法外な慰謝料を要求される など |
第3者である弁護士が間に入って、専門的な法律知識を元に、客観的に交渉を進めていくからこそ、スムーズに示談を成立させることができるのです。
キスによる不同意わいせつ罪はグラディアトルにご相談ください!
同意が曖昧な状態でキスをしてしまい、不同意わいせつ罪で逮捕されるかもとお悩みの方は、私たちグラディアトル法律事務所へご相談ください。
弊所は、性犯罪に強く、刑事事件の加害者弁護を数多く取り扱ってきた法律事務所です。
難しい性犯罪の事件で、被害者の方が強い精神的ショックを受けていたり、激しくご立腹されている状態からでも、粘り強く交渉に取り組み、示談を成立させてきました。
【グラディアトル法律事務所の解決実績(一例)】
宅飲みから、複数人での性行為に発展(加害者3人、被害者1人)。 1ヶ月以上経った後、わいせつ目的誘拐、監禁、強制性交等罪などで逮捕。 →示談を成立させて不起訴処分 |
旅行中に酔っ払って女性をナンパ。ビルへ連れ込み、無理やりキスをしたり、口腔性交。警察の取り調べ後、弊所へご相談をいただくも、同日中に逮捕されてしまう。 →検事を介して、何度も示談の申し入れを行い、示談の場を設けて示談を成立させる。 執行猶予付き判決を獲得。 |
弊所では、24時間365日全国対応可能な体制で、ご相談を受付しております。
「つい同意が曖昧な状態でキスをしてしまった」
「不同意わいせつ罪が成立するか不安」
こういった方もまずはお話をお聞かせいただければと思います。
相談したからといって、必ず依頼しなければいけない訳ではありません。
実際にお話を聞かせていただいた上で、あなたが抱えている不安が少しでも軽減されるよう、アドバイスをさせていただきます。
まとめ
最後に、今回の記事のポイントを整理します。
・不同意わいせつ罪は、キスだけでも成立する可能性がある
・無理やりキスした場合はもちろん、同意が曖昧なケースでも成立し得る
・典型的なのは次のようなケース
・相手が拒絶している状態で、無理やりキスした場合 ・お酒で酔った相手にキスした場合・上司と部下、取引先などの上下関係を利用した場合 ・キスした相手が未成年だった場合 |
・キスによる不同意わいせつ罪で逮捕されるリスクは4つ
・長時間にわたり拘束される・起訴されると、6月〜10年の懲役になる ・会社や学校から懲戒処分される ・友人や知人にバレる |
・無理やりキスした証拠がなくても、逮捕される可能性はある
・逮捕を阻止するには、示談が重要
・弁護士に依頼して、速やかに示談できれば、日常への影響は最小限に抑えられる
以上です。
キスによる不同意わいせつ事件を起こしてしまった方は、この記事を読み終わったら、すぐに弁護士に相談して、示談などの行動を起こしましょう。
一刻も早く、事件が解決し、あなたの不安が解消されることを願っています。
この記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。