【傷害罪の起訴率32%!】起訴される3つの事情について解説

【傷害罪の起訴率32%!】起訴される3つの事情について解説
弁護士 若林翔
2024年07月17日更新

「傷害罪の起訴率は?」

「傷害罪で起訴されやすい事情は?」

「傷害罪で起訴されたらどうしたら?」

 

傷害罪は、暴力行為で相手を怪我させた場合に成立する犯罪で、起訴されれば懲役刑や罰金刑が科されることになります。ただし、起訴に至るまでの割合は32%と、そこまで高い数字ではありません。

そういった背景もあり、「傷害罪の疑いがかかっても半数以上が不起訴になる」と思われがちですが、正確には違います。

正しくは、『不起訴に向けた行動の結果、68%の不起訴率を獲得している』です。

そのため、傷害罪の疑いが掛かった場合、“何も行動しなければ”起訴される可能性が高くなりますので、その点は念頭に置いてください。

当記事を簡単にまとめますと、

  • ・傷害罪の起訴率は32%と高くはない
  • ・起訴された場合のリスクは4つ
  • ・傷害罪で起訴されやすい事情は3つ
  • ・傷害罪で起訴を回避するには被害者との示談が重要
  • ・自力交渉ではなく弁護士に交渉をした方が良い

といったことが分かります。

詳しくは以下で深掘りしていきます。

傷害罪の起訴率は32%!不起訴になる可能性の方が高い

傷害罪の起訴率は32%!不起訴になる可能性の方が高い

令和5年犯罪白書によると、令和4年における傷害罪の起訴率は約32%となっております。

言い方を変えれば、約68%が不起訴になっていますので、起訴される可能性は低いと言えます。

ただ、起訴された場合の有罪率は99.9%というデータもありますので、それの意味するところは、『起訴の可能性は低いものの、起訴されてしまった場合は有罪になる可能性が非常に高い』とも言えるでしょう。

他方、傷害罪が成立した場合、「15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法204条)」に処されますので、起訴されれば、最高で15年の懲役刑が科されることになります。

そのため、傷害罪の疑いで逮捕された場合は、いかに不起訴処分を獲得するかが重要になります。

※不起訴処分を獲得する方法については、4章で解説します。

傷害罪で起訴された場合はどうなる?

傷害罪で起訴された場合、以下のリスクを負うことになります。

傷害罪で起訴された場合はどうなる?

99.9%で有罪判決になる

傷害罪の疑いで逮捕された場合、まず警察官の取り調べを受けます。

そこで不利な供述をしてしまったり、違法性が高いと判断されれば、検察官に送致され、起訴・不起訴の判断がなされます。

ここで不起訴処分を獲得することができれば、晴れて釈放(=前科は付かない)となりますが、起訴となってしまえば刑事裁判に発展します。特に日本においては、有罪率99.9%と非常に高い確率で有罪になりますので、「刑事裁判≒有罪」と思った方がいいでしょう。

他方、弊所において「起訴後でも弁護士に依頼すれば不起訴になるか?」というご相談をいただきますが、有罪率を見ても分かるように、非常に難しいと言わざるを得ません。

そのため、弁護士に依頼される際は、起訴が確定してしまう“前に”ご依頼いただくことをおすすめします。

刑事罰が科される

前述の通り、起訴された場合の有罪率は99.9%ですので、何らかの刑事罰が科されることになります。

傷害罪の刑罰は、「15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法204条)」と定められており、犯行態様や諸般の事情などを加味して、刑罰が確定します。

そのため、数万円程度の軽い罰金刑で終了することもあれば、違反性の高さによっては、最高で15年の懲役刑が科されることもありますので、注意が必要です。

前科が付く

傷害罪が確定し、何らかの刑罰が科された場合、共通して前科が付くことになります。

前科は、警察や検察、本拠地の市町村が管理する「犯罪人名簿」に載りますので、前科という過去を背負って生活することになる点は、覚悟しなくてはなりません。

ただ一方で、「前科が付いた場合、一般人と比べて不遇な扱いを受ける」という噂がありますが、少し誇張されているように感じます。

仮に前科があったとしても、

  • ・選挙権を失うことはない
  • ・国や自治体からの支援制度はこれまでと同様に受けられる
  • ・ローンや借り入れに関わる信用情報に記録されることはない
  • ・前科の記録は厳重に管理されるので、外部に漏れることはない

このように、一般人と比較して不遇な扱いを受けることはありません。

ですが、会社員に従事している場合は、解雇のリスクはあります。

なぜなら、就業規則における懲戒の事由に、「何らかの罪を犯した場合は懲戒処分(=解雇)に相当する」と明記されていることが多いためです。

また、経歴詐称についても同様で、前科があることを偽って就業したことが発覚した場合も解雇の理由になりますので、覚えておきましょう。

Q、経歴詐称はバレる?

経歴詐称をしたからといって即座にバレることは少なく、企業側においても、犯罪名簿を閲覧できるわけではないので、経歴詐称を見破ることは困難です。

では、どういったタイミングでバレるのかというと、

  • ・メディアサーチ
  • ・第三者や関係者からの告発

この2つが多いでしょう。

また近年において、SNSの発達により、情報発信が容易且つ急速に拡散されてしまう時代です。さらに、一度WEB上に出てしまえば、その情報は半永久的に残り続ける(=デジタルタトゥー)ことになりますので、「隠したらバレない」というのは、すでに過去の話と捉えるべきでしょう。

社会的信用が低下する

前科が付いてしまえば、社会的信用の低下は否めません。

社会的信用が低下した場合、

  • ・解雇される可能性がある
  • ・就職(再就職)が困難になる
  • ・家族や友人、知人から白い目で見られる
  • ・配偶者や恋人も白い目で見られるようになる

といった状況下に置かれてしまうことになります。

前科が付くことは、百害あって一利なしです。

前科を避けるためにも、逮捕されてしまった場合は、速やかに不起訴獲得に向けた行動を心がけましょう。

傷害罪で起訴されやすい3つの事情

次に、傷害罪で起訴されやすい事情について、以下にまとめます。

傷害罪で起訴されやすい3つの事情

犯行態様に違反性・悪質性がある

傷害罪は、暴力行為を行って怪我をさせた場合に成立する犯罪です。

例えば、

  • ・相手の顔面を殴って、鼻血が出た
  • ・ナイフなどの凶器で、刺し傷を負わせた
  • ・木刀を振り回し、打撲を負わせた
  • ・嫌がらせの電話をして、うつ病を負わせた

といった行為が挙げられます。

もちろん、これらの行為でも傷害罪は成立しますが、犯行態様に違反性(悪質性)が認められれば、相応に起訴の可能性も高くなります。

上記の行為に当てはめると、

  • ・相手の顔面を執拗に殴って、結果失明した
  • ・ナイフなどの凶器で複数回指して、全治数ヶ月の重症を負わせた
  • ・木刀で何回も殴り、結果、相手は歩けない身体になった
  • ・嫌がらせの電話やストーカー行為を繰り返し、重度のPTSDに陥った

といった行為が挙げられるでしょう。

特に傷害罪は刑罰の範囲が広いため、軽い打撲程度なら罰金刑の可能性が高いですが、重症を負わせたり、執拗な行為に及んだ場合は、最高で15年の懲役刑になる可能性もあるということです。

前科(前歴)がある

傷害罪において、初犯かどうかも重要な要素になります。

例えば、

~ケース1~

AはBを殴って怪我をさせた。ただ、Aは初犯であり反省もしている。

このような場合は、仮に傷害罪が成立しても軽い刑罰で収まる可能性が高いです。

ですが、

 

~ケース2~

AはBを殴って怪我をさせた。しかも、Aは前科(前歴)があり、今回の傷害事件が初めてではなかった。

例え同じ行為であっても、前科(前歴)があった場合、「反省の色なし」と判断され、起訴の可能性は十分に高まります。

また、前科(前歴)の回数や過去の犯行態様によっても、起訴や刑罰が重くなることもあるので、注意が必要です。

被害者との示談が不成立

傷害罪で不起訴を獲得するにあたって、被害者との示談が明暗を分けます。

詳細については後述しますが、被害者との示談が成立すれば、検察官は「起訴の必要はなし」と判断しますので、不起訴を獲得することが可能です。

ですが、被害者との示談は容易ではありません。

被害者からすれば、暴力行為を行った加害者を到底許すことはできませんし、無理に交渉しようものなら、さらに関係が悪化して、起訴どころか刑罰が重くなるリスクもあります。

被害者との示談は不起訴獲得のカギになりますが、一方で、やり方を間違えれば悪化させることにもなる諸刃の剣であることを、肝に銘じておきましょう。

不起訴の獲得には被害者との示談がカギを握る

不起訴の獲得には被害者との示談がカギを握る

傷害罪で起訴を回避するには、被害者との示談成立が不可欠です。

ただし、前述でも解説したように、被害者としては「許せない」「罪を償ってほしい」と思っていますので、示談交渉どころかテーブルを用意することすら困難を極めます。

また、被害者と示談をしようにも、所在や連絡先が不明では示談しようもないですし、逮捕されてしまった場合も同じことが言えます。

では、加害者になってしまった場合はどうしようもないのかというと、そうではありません。

加害者の立場で交渉を持ちかけようとするから、被害者は抵抗や恐怖するのであって、第三者が仲介役になることで、その問題も解決できます。

とはいえ、仲介役は誰でもいいわけではなく、交渉力に優れ、法律の観点から示談成立を目指せる弁護士が適任であると言えるでしょう。

以下の関連記事も併せてご覧ください。

【傷害罪は68%が不起訴】その理由は?不起訴率を高める方法も解説

自力交渉は困難|交渉を弁護士に依頼するメリット

示談交渉を弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。

自力交渉は困難|交渉を弁護士に依頼するメリット

独自の調査権がある

被害者と示談交渉をしようにも、連絡先が不明ではどうしようもありません。また、逮捕されてしまった場合は、最大で72時間、外部との連絡が取れませんので、誰かに協力を仰ぐことも不可能です。

弁護士であれば、弁護士照会(23条照会)という独自の調査権を持っておりますので、被害者の連絡先を調べ、迅速に示談交渉を行うことが可能です。さらに、72時間の接見禁止期間においても、唯一接見が認められた存在ですので、逮捕された場合でも、有利に事を進めることが可能になります。

被害者が示談に応じやすくなる

被害者の立場を考えれば、加害者本人との交渉は恐怖でしかなく、「示談交渉に応じろと脅してくるのでは?」と警戒心を見せます。

実際に、連絡先を知っているからと加害者本人が被害者に示談を持ち掛け、交渉に応じなかったため脅した、というケースがあります。

そのような行為が自分の立場を不利にするだけでなく、起訴が早まり、刑罰が重くなる要因にしかなりませんので、交渉を無理強いする行為は、絶対に止めましょう。

弁護士が間に入ることで、被害者は安心して交渉に応じてくれるようになり、示談成立の可能性が高まります。

また、被害者によっては高額な慰謝料を請求してきたり、厳罰を望んでくることもありますが、これまで培った交渉力と過去の経験を武器に、円満な解決を模索することも可能です。

取り調べを有利に進めることができる

傷害罪で逮捕された場合、まず最初に警察官の取り調べを受けることになります。そこで不利な供述をしてしまうと、それが供述調書として残り、検察官送致や勾留、起訴の可能性が高まります。

とはいえ、外部との連絡が閉ざされた状態で、且つ何の対策も無しに取り調べに臨めば、思わず不利な言動が出てしまうこともあるでしょう。

その点、弁護士は逮捕後の接見禁止期間においても、唯一接見が許されておりますので、より専門的なアドバイスを行うことが可能ですし、取り調べの流れ、対策方法を具体的に説明することもできます。

取り調べを有利に進めるためにも、逮捕後、速やかに弁護士に依頼することをおすすめします。

傷害罪で不起訴を目指す弁護はグラディアトル法律事務所へ

傷害罪の起訴率と、起訴されやすい事情について解説しました。

記事の内容をまとめますと、

・傷害罪の起訴率は32%。起訴された場合は99.9%が有罪。逮捕時は不起訴を目指すことが重要。

・傷害罪で起訴されると、ほぼ有罪判決。刑事罰が課せられ、前科が付き、社会的信用が低下するリスクがある。

・傷害罪で起訴されやすい事情として、悪質な暴力行為や重大な被害、前科の有無、示談成立の難しさが挙げられる。

・傷害罪で不起訴を得るには、被害者との示談が鍵。弁護士の仲介が効果的で、法的な交渉力が不可欠。

・弁護士に示談交渉を依頼するメリット:

 ①独自の調査権を持つ

 ②被害者が安心して交渉に応じてくれるようになる

 ③取り調べを有利に進めることができる

といった内容でした。

傷害罪における起訴率は32%と決して高い数字ではありませんが、逆を言えば、3人に1人は起訴されている(=前科が付く)と言い換えることもできます。

また、傷害罪の疑いで逮捕されてしまった場合、何も行動しなければ、起訴の可能性は高まり、罪が重くなるリスクも十分にあります。

速やかに弁護士に依頼すれば、逮捕前であれば逮捕回避、逮捕後であっても早期釈放、不起訴処分の可能性が上がりますので、「どうしたらいいか分からない」という方は、ぜひ弁護士を頼ってください。

 

グラディアトル法律事務所は、初回相談無料(LINE相談可)、24時間365日相談受付、全国47都道府県対応できますので、お気軽にご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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