他人に暴行を加えてケガさせてしまった場合、傷害罪の罪で刑事処分を受けるだけでなく、慰謝料をはじめとした損害賠償責任を負うことになります。
実際に傷害事件を起こしてしまい、どの程度の慰謝料を支払うことになるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。
傷害の程度によっては高額な慰謝料を請求されるおそれもあるため、まずは弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしてください。
本記事では、傷害罪の慰謝料相場を紹介します。
慰謝料が高額になりやすいケースや支払わないことのデメリットなども解説するので、参考にしてみてください。
目次
傷害罪が成立する場合の慰謝料相場
傷害罪が成立する場合の慰謝料額は、交通事故における入通院慰謝料の金額を基準にするケースが一般的です。
もちろん個々のケースによって金額は変動しますが、軽傷・重傷の場合に分けて慰謝料相場を紹介するので、目安のひとつとして参考にしてみてください。
軽傷の場合:10万円~50万円
傷害の結果が軽傷だった場合の慰謝料は、10万円~50万円程度が相場といえます。
数回の通院、数週間程度の入院であれば、比較的少額で済むケースがほとんどです。
慰謝料の算定基準は以下の表を用いることが多いので、参考にしてみてください。
(参照:民事交通事故訴訟 上巻(基準編)|公営財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)
たとえば、通院期間が10日間だった場合は、
- ・(19万円÷30日)×10日間=約6万3,000円
といったように慰謝料額を計算します。
重傷の場合:50万円~200万円
傷害の結果が重傷だった場合の慰謝料相場は、50万円~200万円程度と考えておきましょう。
被害者が数カ月以上にわたって入院・通院を余儀なくされた場合などは、高額な慰謝料の支払いが必要になります。
慰謝料の算定にあたっては、以下の表を用いることが多いので参考にしてみてください。
(参照:民事交通事故訴訟 上巻(基準編)|公営財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)
慰謝料に明確な上限はなく、仮に後遺障害が残った場合は数百万円~数千万円の支払いを求められることもあります。
いずれにせよ、法的知識のない個人が適切な慰謝料額を算定するのは難しいので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
傷害罪の慰謝料が高額になりやすい主なケース
次に、傷害罪の傷害罪の慰謝料が高額になりやすい主なケースを解説します。
自身が置かれている状況と合致する部分がないか確認しながら、読み進めてみてください。
ケガの程度が重い場合
傷害によるケガの程度が重い場合、慰謝料が高額になる傾向があります。
ケガの程度が大きければ、身体的苦痛だけでなく精神的苦痛も大きくなるため、それに見合った補償をおこなわなければなりません。
仮に後遺症が残るような事態になった場合、被害者が受ける精神的なダメージは計り知れないでしょう。
結果として、数百万円以上の慰謝料が認められることもあります。
ただし、慰謝料の算定にあたっては、ケガの程度以外の要素も影響してくるため、個々のケースごとに適切な金額を検討することが重要です。
犯行の悪質性が高い場合
慰謝料が高額になりやすいケースのひとつは、犯行の悪質性が高い場合です。
悪質性の高い犯行は、被害者に大きな精神的苦痛を与えるものであり、長期的なトラウマを引き起こす可能性もあるため、相応の補償が求められます。
たとえば、ケガの程度は同じでも、喧嘩の延長線上で暴行したときと、金属バットを用意して計画的に暴行したときとでは、慰謝料の金額に差が生じてくるでしょう。
また、子どもなどの弱者に対する暴行も、慰謝料が高額になりやすいケースのひとつです。
上記のようなケースに該当する場合には、できるだけ早く弁護士に相談し、慰謝料の減額に向けて対処することをおすすめします。
示談のなかで慰謝料を支払わないことのデメリット
示談のなかで慰謝料を支払うかどうかは、加害者自身が決められることです。
しかし、慰謝料を支払わないことには以下のようなデメリットがあります。
慰謝料を支払うかどうかで今後の処遇が大きく変わるので、デメリットをしっかりと理解したうえで、最終的な判断を下すようにしましょう。
逮捕・起訴される可能性が高くなる
慰謝料を支払わないデメリットのひとつは、逮捕・起訴される可能性が高まる点です。
慰謝料の支払いを拒否していると、被害者に反省の意思が伝わらず、強い怒りや処罰感情を招いてしまうおそれがあります。
その結果、警察に被害届や告訴状が提出され、逮捕・起訴につながってしまうのです。
また、捜査機関からも反省の態度が不十分と見なされ、より厳しい対応をとられてしまうおそれがあります。
明らかに高額な慰謝料請求に応じる必要はありませんが、事件を円滑に解決するためには、しかるべき金額を速やかに支払うことが大切です。
刑罰の軽減が期待できなくなる
刑罰の軽減が期待できなくなることも、慰謝料を支払わないデメリットのひとつといえるでしょう。
裁判官は量刑を決定する際、被害者との示談状況や被害弁償の有無を確認するケースが一般的です。
慰謝料が支払わずにいると、「加害者に反省・謝罪の意思表示が見られない」と解釈され、量刑の判断に悪影響を与える可能性があります。
慰謝料の有無だけで量刑が決まるわけではありませんが、実刑判決を招く要因にもなりかねません。
適切な慰謝料の支払いは、刑事裁判での有利な結果につながることを覚えておきましょう。
民事訴訟に発展するおそれがある
慰謝料を支払わないデメリットとしては、民事訴訟に発展するおそれがあることも挙げられます。
傷害事件を起こした場合でも、示談のなかで慰謝料などの損害賠償金を支払えば、そこで事件を解決できるケースがほとんどです。
反対に、慰謝料の支払いを拒否した場合、被害者側から刑事裁判とは別に損害賠償を求める民事訴訟を提起されることがあります。
民事訴訟に発展すると、時間的・経済的コストや精神的負担が生じます。
裁判が長期化した場合には、仕事や学業に支障が出ることもあるかもしれません。
慰謝料の金額に納得できないときなどは訴訟で争うことも選択肢に入れておくべきですが、事件の早期解決を目指すのであれば、示談の成立を最優先に考えておきましょう。
傷害事件で慰謝料以外に請求される可能性のある費用
傷害事件を起こした場合、請求される可能性があるのは慰謝料だけではありません。
たとえば、以下のような損害賠償の支払いを求められることがあります。
傷害によるケガの程度によっては、慰謝料に加えて、多額の支払いが発生する可能性も十分あります。
仮に被害者が要介護状態になった場合などは、一生分の介護費用の損害賠償もおこなわなければなりません。
とはいえ、少しの解釈の違いで損害賠償額が変わることもあるので、適切な金額は弁護士とも相談しながら慎重に見極める必要があります。
傷害罪の慰謝料に関するよくある質問
最後に、傷害罪の慰謝料に関するよくある質問を紹介します。
疑問を解消できれば、今後の不安も少しは解消されるはずなので、ぜひ参考にしてみてください。
刑事処分を受けても慰謝料は支払わなければならない?
刑事処分を受けても、被害者に対して慰謝料を支払わなければならない可能性は残されています。
懲役刑や罰金刑を受ける「刑事責任」と、損害賠償をおこなう「民事責任」は別問題です。
刑事処分を受けたからといって、被害者に対する賠償責任が自動的に消えるわけではありません。
たとえば、傷害罪で罰金刑を受けた場合でも、被害者が別途民事訴訟を起こして慰謝料を含む損害賠償を請求してくるケースはあります。
ただし、刑事処分を受けたことが、損害賠償額の算定に間接的な影響を与える可能性はゼロではありません。
複雑な状況に対処するためには弁護士のサポートが必要不可欠なので、速やかに相談することをおすすめします。
慰謝料が高額で支払えないときの対処法は?
慰謝料が高額で支払えない場合には、以下のような対処法が考えられます。
- ・減額交渉をおこなう
- ・分割払いを認めてもらう
被害者との合意があれば、慰謝料の金額や支払い方法は自由に決められます。
そのため、自身の経済状況などを丁寧に説明し、まずは減額を求めることから始めましょう。
減額が難しい場合には、確実に全額支払うことを前提として、分割払いにしてもらえないか打診してみてください。
しかし、減額や分割払いを認めることに被害者側のメリットはほとんどないので、弁護士の力を借りながら、うまく交渉を進めていく必要があります。
傷害罪の慰謝料に関する悩みはグラディアトル法律事務所に相談を
傷害罪における慰謝料は、ケガの程度や犯行の悪質性などによって決定されます。
軽度の傷害では数十万円程度、重度の場合は数百万円以上になるケースも少なくありません。
金銭的には大きな痛手にはなりますが、逮捕・起訴の回避や減刑を目指すのであれば、しかるべき金額を支払う必要があります。
とはいえ、慰謝料の金額や支払い方法を適切に判断することは簡単ではありません。
そのため、傷害事件を起こした場合は、できるだけ早く弁護士に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。
必要であれば、示談交渉や訴訟への対応を依頼することも検討してください。
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