【傷害罪は68%が不起訴】その理由は?不起訴率を高める方法も解説

傷害罪で起訴されないためには?
弁護士 若林翔
2024年07月03日更新

傷害事件を起こすと「起訴されるのではないか」という不安で、押しつぶされそうになる人も多いと思います。

・「傷害罪は起訴される?」

・「起訴されるとどうなる?」

・「不起訴を目指すにはどうすればいい?」

こんな不安を抱えている方は、この記事を参考に、今すぐ行動を起こしましょう。

法務省によれば、傷害罪の不起訴率は「68%」です。

ただし、もしも起訴されると「99%」が有罪判決となってしまうため、決して軽視できる数字ではありません。

起訴されないためには、被害の回復に向けて、被害者と示談するなどの行動を起こすことが必要です。

本記事では、

・傷害罪が不起訴となる理由

・傷害罪で起訴されやすいケース

・起訴を防ぐための方法

について解説します。

傷害罪で起訴される不安を抱えている方は、是非ご一読ください。

傷害罪の不起訴率は68%

傷害罪の不起訴率

(引用 令和5年版犯罪白書 罪名別の検察庁終局処理人員

法務省が公表しているデータによれば、傷害罪の不起訴率は「68%」程度となっています。

つまり、傷害事件を起こして検察庁に送られる人のうち、実際に起訴される人の割合は「10人に3人」程度なのです。

因みに、刑法犯全体の起訴率は「64%」となっています。

傷害罪は、他の犯罪と比較しても若干ではありますが、起訴されにくい犯罪だといえるでしょう。

ただし、一度起訴されてしまうと、「99%」の確率で有罪判決となり、前科が付いてしまいます。

さらに、傷害罪で公判請求されると「84%」が懲役刑になるというデータも出ています。

傷害罪で起訴されると99%が有罪判決

(引用 令和5年版犯罪白書 通常第一審における終局処理人員(罪名別、裁判内容別)

起訴されたときのリスクを考えると、「10人に3人」という起訴率は、決して軽く見てはならない数字です。

傷害事件を起こしてしまった場合は、速やかに不起訴に向けた行動を起こしましょう。

不起訴になるための方法については、5章で後述します。

傷害罪が不起訴になるのはなぜ?理由の62%が起訴猶予

次に、傷害罪が不起訴となる理由について見ていきましょう。

法務省によれば、傷害罪が不起訴となる理由の「約62%」は「起訴猶予」によるものだとされています。

※傷害罪の起訴猶予とは?

加害者に傷害罪が成立することは明らかで、証拠も十分ある。

しかし刑事裁判にかける程ではないという検察官の判断によって不起訴になること

傷害罪が不起訴になる理由の62%が起訴猶予

(引用:令和5年版犯罪白書 処遇  起訴猶予率(罪名別、年齢層別)

つまり、傷害罪で起訴されなかったケースの半分以上は

・証拠が揃わなかったから

・犯人が誰か分からなかったから

といった理由で不起訴となった訳ではありません。

あくまでも「刑事裁判にかける程ではない」という検察官の判断によって、不起訴になっているのです。

傷害事件で「不起訴」となるためには、

被害者と示談を成立させる

謝罪や、反省の意思を伝える

再犯の可能性が低いことを説明する

などの方法で、検察官に「起訴する必要性が低い」と判断してもらうことが重要だと言えるでしょう。

※関連記事

「証拠がないと逮捕されない?傷害罪の検挙率は◯%!証拠の種類も解説」

傷害罪で起訴されやすいケースは?具体例を紹介

傷害罪で起訴されやすいのは、次のようなケースです。

傷害罪で起訴されやすいケース

再犯の場合

過去に傷害事件を起こしたことがある場合、再犯として扱われ、起訴されるリスクが高まります。

前科があると、検察官が「また同じことを繰り返すかもしれない」と判断する可能性が高くなるからです。

起訴された後も、求刑が重くなったり、執行猶予が付きにくかったりと、初犯より厳しい対応がされるケースが多いです。

ケガの程度が大きい場合

被害者のケガの程度が大きいほど、起訴されるリスクは高くなります。

例えば、重いケガを負わせてしまった場合や、後遺症が残るようなケガを負わせてしまった場合などです。

特に、後遺症が残るようなケースでは、被害者に支払う慰謝料の金額も、莫大な金額になる可能性があります。

すぐに弁護士に相談して、対応方法を検討することが必要です。

被害感情が強い場合

被害者の被害感情が強い場合も、起訴されるリスクが高まります。

被害感情の大きさは、検察官の判断にも、大きく影響するからです。

さらに裁判が開始された後も、「被害者参加制度」などによって、被害者本人や親族が、直接裁判に参加するケースが増えています。

被害者の意向は、検察官の起訴判断だけでなく、裁判の判決にも大きな影響を与えるのです。

被害感情が大きい場合は、示談金を支払うなどして、被害者と和解するための行動を起こすことが必要です。

被害者と示談していない場合

示談が成立していない場合も、起訴されるリスクが高いと言えるでしょう。

加害者と被害者の間で示談が成立すると、検察官に「裁判にかける必要性が低い」と判断される可能性が高まります。

逆に、示談が成立していない場合は、被害の回復に最善を尽くしていないと判断されて、起訴される可能性が高くなるのです。

示談の成立は、傷害罪の起訴を免れるために、最も効果的な方法の1つです。

傷害罪で起訴されたらどうなる?

それでは、傷害罪で起訴されてしまうと、どのような不利益があるのでしょうか。

傷害罪で起訴されると?

罰金や懲役が科せられる

傷害罪で起訴されると、99%の確率で有罪判決が下され、罰金刑や懲役刑が科せられます。

刑法204条

「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」

実際の量刑は、傷害の程度や犯行の動機、反省の度合いなどを総合的に判断して決定されます。

ケガの程度が軽い場合は、罰金刑で済むこともありますが、重傷を負わせた場合などは、懲役刑に処されるリスクが高まるでしょう。

ただし、起訴されてしまった場合も、判決までに示談を成立させたり、弁護士を通じて反省の意思を伝えることができれば、執行猶予が付いたり、減刑になる可能性が高くなります。

前科がつく

「罰金」や「執行猶予」になったとしても、前科が付くことに代わりはありません。

一度付いた前科は、犯罪の記録として、一定期間残ることになります。

例えば、国家資格の取得制限を受けたり、海外渡航の制限を受けたりする等、日常生活にも大きく影響するでしょう。

さらに会社によっては、就業規則の「懲戒事由」として定められている場合もあります。

前科を防ぐためには、不起訴となるための行動を起こすことが必要です。

傷害罪で起訴されないためには示談が重要

傷害罪で不起訴処分を得るには、被害者との示談を成立させることが極めて重要です。

示談が成立すれば、被害者の処罰感情が和らぎ、検察官も起訴を見送る可能性が高くなるからです。

特に初犯であったり、被害者のケガが軽い場合は、示談することで、かなりの確率で不起訴となることができるでしょう。

また、前述の起訴されやすいケースでも、早期に示談することで

不起訴の可能性が高まる

執行猶予が付きやすくなる

罰金や懲役が軽くなりやすい

などの様々なメリットを得ることができます。

ただし、示談交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。

適切な示談金の額を提示したり、難しい交渉をスムーズに進めたりするには、専門的な知識と経験が不可欠だからです。

当事者同士で直接交渉を進めようとしても、

・連絡先が分からない

・示談条件の提案に失敗する

・感情的なトラブルに発展する

などの理由から、交渉が難航する可能性が高くなるでしょう。

弁護士に相談すれば、豊富な示談交渉の経験を活かして、示談の成立に導いてくれるはずです。

早期に弁護士に相談し、示談交渉を開始することが、起訴を避けるために重要です。

※関連記事

傷害罪の示談金の相場は?示談金を決める要素や示談の流れを解説

 

傷害罪で弁護士へ相談するメリット

傷害罪を弁護士に相談することには、示談交渉以外にも様々なメリットがあります。

傷害罪で弁護士に相談するメリット

心理的な負担が軽くなる

傷害事件に巻き込まれると、多くの人は不安やストレスを抱えてしまいます。

しかし、弁護士に相談すると、そうした心理的なストレスが軽減します。

事件について、過去の経験や法律的な観点から見通しを立てて、解決への道筋を示してもらえるからです。

また、事件について誰かに相談できるというだけでも、心の支えになるはずです。

弁護士に依頼することで、「もう自分一人で抱え込まなくていい」と思うことができるしょう。

警察への対応や、被害者との示談交渉についても、弁護士がサポートしてくれるため、精神的な負担を大幅に軽減できます。

起訴されない可能性が高まるだけでなく、心理的な負担も減少することは、弁護士に相談する大きなメリットだといえるでしょう。

相手が示談に応じない場合の対応もできる

被害者によっては、いくら粘り強く交渉しても、示談に応じてくれない可能性もゼロではありません。

そうしたケースでも、弁護士に相談していれば次善の策として、様々な方法を取ることができます。

例えば、示談に代わる方法として、「供託」「贖罪寄付」等の方法が考えられます。

示談するために最善の方法を尽くし、それでも示談に応じてもらえない場合は、「供託」や「贖罪寄付」などをすることで、「被害の回復に最善を尽くした」と評価される可能性が高くなるでしょう。

専門的な法律知識や、豊富な経験を元に、臨機応変に対応できるのが弁護士の強みです。

粘り強く弁護活動を行うことで、不起訴に持ち込める可能性は格段に高くなります。

起訴されても減刑や執行猶予が期待できる

弁護士に相談するメリットは、不起訴を目指せることだけではありません。

万が一起訴されてしまった場合でも、刑事事件に強い弁護士が味方についていれば、様々な弁護活動を行ってもらえます。

事件の詳細を踏まえた上で、減刑や執行猶予を勝ち取るために、最善を尽くしてくれるでしょう。

加害者にとって有利な事情を汲み取り、的確に主張することで、経済的・社会的な損失を抑えることができます。

刑事事件に強い弁護士に相談することで、仮に起訴されたとしても、その後の影響を最小限に食い止めることができるでしょう。

【Q&A】傷害罪の起訴に関するよくある質問

傷害罪の起訴に関するよくある質問

傷害罪で起訴される確率は?

令和5年版犯罪白書によれば、傷害罪の起訴率は「32%」程度です。

ただし、これはあくまでも平均値です。実際に起訴されるかは、被害の大きさや示談の有無など、個別のケースによって変わってきます。

傷害罪の初犯で起訴される確率は?

傷害罪の初犯の不起訴率に関するデータはありません。

ただし、

・「初犯」が加害者にとって有利な事情として働くこと

・傷害罪で起訴された人のうち、前科者の割合が「40%」程度であること。

などを踏まえると、一般的な起訴率である「32%」よりも低くなる可能性が高いです。

※関連コラム

傷害罪の初犯での刑罰とは?不起訴処分を獲得するポイントを解説

示談なしの場合の傷害罪の起訴率は?

示談なしの場合の起訴率について、公的なデータはありません。

ただし、示談が成立していないことは、加害者にとって不利な事情として働きます。

そのため、必要な弁護活動を行っていない場合、傷害罪の一般的な起訴率「32%」よりも高くなる可能性が高いです。

起訴されるまでにかかる時間は?

ケースによって大きく異なります。

例えば、身柄事件の場合、検察官の起訴判断まで、最大23日間にわたって拘束される可能性があります。

早期釈放には、弁護士が接見に行き、必要な弁護活動を行うことが必要です。

起訴された後の流れは?

傷害罪で起訴されると、刑事裁判にかけられます。

「在宅起訴」となる場合もありますが、被告人勾留に移行して、拘置所で裁判を迎える場合もあります。

刑事裁判の第一回公判期日は、通常であれば、起訴されてから1ヶ月前後の日程で入れられるケースが多いです。

その後必要な手続きを経て、判決を迎えます。

夫によるDVが傷害罪で起訴されることはある?

DV事件では、傷害罪で起訴される可能性がある他、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律違反)によっても処罰される可能性があります。

DVでお悩みの方も、まずは弁護士にご相談ください。状況に応じて、刑事告訴以外の方法をご提案することも可能です。

傷害罪で起訴されないためにはどうすればいい?

傷害罪で起訴されないためには、弁護士に依頼して、被害者との示談交渉を開始することが必要です。

グラディアトル法律事務所には、傷害事件の豊富な解決実績を持つ弁護士がたくさん在籍しているため、まずは一度ご相談ください。

傷害罪で悩んだら、グラディアトル法律事務所へ

最後に、今回の記事の要点を整理します。

・傷害罪の不起訴率は「68%」だが、起訴されると「99%」有罪判決になる

・不起訴の多くは「起訴する程ではない」という検察の判断によるもの

・起訴されないためには、被害の回復に向けて最善を尽くすことが必要

・特に、被害者と示談をすることは大きな意味を持つ

・弁護士に相談して、示談交渉することが最善の方策

傷害罪で起訴されるリスクは、決して軽視することはできません。

不起訴率が高いからといって放置するのではなく、示談交渉を開始するなど、解決に向けた行動を起こしましょう。

グラディアトル法律事務所では、これまでにも数多くの傷害事件の相談を受けて、警察や検察と交渉を行ったり、被害者との示談を成立させる等の弁護活動を行ってきました。

勇気をもってご相談いただいたことで、事態が好転したご相談者様は数え切れません。

傷害事件で悩んだら、暴行・傷害事件に強いグラディアトル法律事務所へご相談ください。

グラディアトル法律事務所では、24時間365日、全国対応可能な体制を整備しています。

LINEでの無料法律相談も受け付けているので、是非お気軽にご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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