「傷害罪で懲役刑になるのはどのくらいの割合?」
「傷害罪で懲役刑となったらどのくらいの量刑になるのだろうか?」
「傷害罪の懲役期間は、どのような要素で決めるの?」
他人に怪我をさせてしまった場合には、傷害罪が成立しますので、どのくらいの刑罰が科されるのか気になっている方もいるでしょう。傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められていますので、懲役刑と罰金刑のいずれかが科されることになります。
法務省が公表している「令和5年犯罪白書」によると傷害罪で検挙された場合に懲役刑になる割合は11%とされていますので、懲役刑が科されるケースは多くはありません。しかし、犯行態様が悪質であったり、被害者に重大な結果が生じた場合には、懲役刑が科される可能性もありますので、しっかりと対策を行うことが大切です。
本記事では、
- 傷害罪で懲役刑になる確率
- 傷害罪の懲役刑の量刑相場
- 傷害罪の懲役刑の量刑を判断する5つの要素
などについてわかりやすく解説します。
傷害罪は、被害者と示談することで逮捕・起訴のリスクを大幅に軽減できますので、早期に弁護士に相談して、被害者との示談交渉行うようにしましょう。
目次
傷害罪の懲役刑の上限は15年!
傷害罪とはどのような犯罪なのでしょうか。以下では、傷害罪の概要と法定刑について説明します。
(1)傷害罪とは?
傷害罪とは、他人の身体を故意に傷つけた場合に成立する犯罪です(刑法204条)。
傷害という言葉からもわかるとおり、傷害罪は、殴る蹴る、ナイフで切りつけるなどの行為により相手に怪我をさせることが代表的なケースです。しかし、嫌がらせ行為などにより相手がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したようなケースも傷害罪に問われる可能性があります。
(2)傷害罪の法定刑
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。
傷害罪で有罪判決となった場合には、懲役刑または罰金刑のうちいずれかの刑罰が選択され、さまざまな事情を踏まえて法定刑の範囲内で量刑が定められます。
なお、身体的拘束を伴う懲役刑の方が罰金刑よりも重い刑罰とされています。
傷害罪で懲役刑になる確率は11%
傷害罪で起訴された場合に、どのくらいの割合で懲役刑になるかが気になる方も多いと思います。法務省が公表している「令和5年犯罪白書」によると、傷害罪での終局処理人員は、以下のようになっています。
- 起訴……5429件(公判請求:2042件、略式命令請求:3387件)
- 不起訴……1万1535件
- 家庭裁判所送致……1654件
- 終局処理総数……1万8618件
また、検察官により起訴(公判請求・略式命令請求)された事件での科された刑罰の内訳をみると以下のようになっています。
- 懲役刑……1796件
- 罰金刑……3728件(公判請求での罰金:341件、略式命令による罰金:3387件)
これらのデータに基づき計算すると、傷害罪の終局処分全体からみた懲役刑の割合は11%、起訴された事件全体からみた懲役刑の割合は33%ということになります。
傷害罪の懲役刑は何年?懲役刑の量刑相場
法務省が公表している「令和5年犯罪白書」の統計データによると、傷害罪の懲役刑の量刑相場は、以下のようになっています。
このグラフからもわかるように、傷害罪の懲役刑は、6か月以上~3年以下の刑期に集中していることがわかりますので、これが懲役刑の量刑相場といえるでしょう。
なお、懲役刑が科されたのは合計で1800件ですが、そのうち執行猶予(一部執行猶予を含む)となったのは、1115件ありました。そのため、懲役刑が科された事件のうち執行猶予が付いたのは、全体の約62%ということになります。
傷害罪で懲役刑の量刑を判断する5つの要素|実刑と執行猶予との分かれ道
傷害罪の懲役刑の量刑を決める要素としては、以下の5つの要素があります。傷害罪で執行猶予が付くためには、3年以下の懲役である必要がありますので、以下の5つの要素は実刑か執行猶予かを決める要素ともいえるでしょう。
実刑になると判決確定後直ちに刑務所に収容され、懲役期間が満了するまでは基本的には刑務所から出ることはできません。判決では「被告人を懲役○年に処する」とだけ言い渡されます。
一方、執行猶予が付くと刑の執行が一定期間猶予されますので、有罪判決ではありますが直ちに刑務所に収容されることはありません。判決では「被告人を懲役○年に処する。この裁判確定の日から○年間その刑の全部の執行を猶予する」と言い渡されます。したがって、同じ懲役○年との刑との判決が下っても、執行猶予がついているかどうかにより、判決後の過ごし方が180度違うと言っても過言ではありません。
犯行態様の悪質さ
犯行態様の悪質さは、量刑判断において重要な要素となります。
傷害罪では、凶器の有無・種類、暴行の程度・回数・部位などが悪質性を判断する際の考慮要素になります。
たとえば、ナイフを利用した怪我をさせた事件と素手で殴った事件とでは、前者の方が悪質性が高いといえますので、量刑が重くなる傾向にあります。また、素手での暴行であっても、顔面への暴行と腕への暴行とでは、前者の方が危険性が高いため、量刑が重くなる傾向にあります。
傷害結果の軽重
被害者に生じた怪我の程度や後遺障害の有無は、量刑判断の考慮要素になります。
被害者に重篤な後遺障害が生じた事案と軽い打撲の事案では、前者の方が結果が重大だといえますので、より重く処罰されることになります。
同種前科の有無
被告人に同種前科がある場合には、再犯のおそれが高いと評価されて、刑が重くなる傾向にあります。また、異種前科であった場合には同種前科ほどは考慮されませんが、初犯の傷害事件に比べれば、量刑の加重要素となります。
他方、前科・前歴のない初犯であれば、再犯のおそれが低く更生の可能性があるとして、量刑判断で有利に扱われることになります。
被害者の処罰感情
被害者の処罰感情が強い場合には、量刑を重くする要素となります。
他方、被害者との示談が成立して、被害者が被告人を宥恕した(許した)という事情がある場合には、量刑判断で有利に扱われることになります。
再犯防止の取り組み
被告人に再犯の可能性がある場合には、量刑を重くする要素となります。
他方、被告人に以下のような事情がある場合には、更生の可能性が高いとして、量刑判断で有利に扱われることになります。
- 更生の意欲を示していること
- 罪を認めて反省の態度を示していること
- 親族や勤務先による監督が期待できること
- 被告人が定職に就いていて経済的に安定していること
- 被告人の年齢が若いこと
傷害罪で懲役の実刑判決を回避するための4つの方法
傷害罪で懲役刑が科される割合は、11%と多くはありません。しかし、犯行態様が悪質な事案や被害者に重篤な後遺障害が生じたような事案では、懲役の実刑判決が科される可能性もあります。そのため、懲役の実刑判決を回避するためには、以下のような対処が必要です。
被害者との示談
傷害罪で懲役の実刑判決を回避するためには、被害者との間で示談を成立させることが重要になります。刑事事件において、被害者との示談は、以下のような有利な事情として考慮されます。
- 示談により被害届が取り下げられれば、逮捕を回避できる
- 検察官による終局処分前に示談が成立すれば、不起訴処分になる可能性がある
- 公判請求をされてしまったとしても、示談が成立していれば執行猶予の可能性が高くなる
傷害罪で懲役刑の実刑判決が濃厚な事案であっても、被害者との示談を成立させることができれば、実刑判決を回避できる可能性が高くなります。そのため、傷害事件の当事者となってしまったときは、早期に被害者との示談交渉に着手し、示談を成立させることが重要です。
本人の反省の態度
傷害事件を起こした加害者で間違いない場合には、捜査機関の取り調べにおいて、素直に罪を認めることも大切です。本人が罪を認めて反省の態度を示しているという事情は、量刑判断において有利な事情として考慮してもらうことができます。
被害者との示談に比べれば、量刑判断において大きな要素とはいえませんが、被告人自身で左右できる要素ですので、少しでも罪を軽くしたいのであれば、真摯な反省の態度を示すことが必要です。
再犯防止に向けた対策
被告人が再犯防止に向けた対策に取り組んでいるということは、量刑判断において有利な事情として考慮してもらうことができます。
たとえば、お酒が原因で暴力を振るってしまったのであればアルコール依存症の治療に向けた専門医を受診する方法、被害者との接触を断つために遠方に引っ越しをする、家族や勤務先の上司などに監督をお願いするなどの方法が考えられます。
早期に弁護士に相談する
傷害罪で懲役の実刑判決を回避するために有効になる対策は、個別具体的な事案によって異なります。より効果的な対策を講じるためには、専門家である弁護士のアドバイスが不可欠となりますので、早期に弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談をすれば、事案に応じた最適な対処法をアドバイスしてもらうことができますので、傷害罪で懲役の実刑判決を回避できる可能性を高めることができるでしょう。
傷害事件を起こしてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所にご相談を
傷害罪で起訴されるのは全体の約30%で、そのうち懲役刑が科されるのは起訴された事件の約33%の割合になります。また、懲役刑が科された事件の約62%で執行猶予が付いていますので、傷害罪で懲役の実刑判決となる事案は、全体から見ればそこまで多くはありません。
しかし、それは懲役の実刑判決となるような事案が少ないだけで、何もしなくても大丈夫というわけではありません。事案によっては、執行猶予のつかない実刑判決になる可能性も十分にありますので、しっかりと対策を行っていくことが重要です。
グラディアトル法律事務所では、傷害罪に関する豊富な解決実績がありますので、実刑判決の可能性のある事案であっても、早期に被害者との示談を成立させるなどして、実刑判決を回避できるよう全力でサポートいたします。早期に相談・依頼することで、より充実した弁護活動を行うことができますので、傷害事件を起こしてしまったという方は、早めに当事務所までご相談ください。
まとめ
傷害罪で懲役の実刑判決が下されるケースは多くはないとはいっても、決して安心してはいけません。犯行態様が悪質であったり、被害者に重大な傷害結果を生じさせたような事案では、執行猶予のつかない実刑判決になる可能性もあります。
このようなリスクを回避するためには、早期に弁護士に依頼をして、被害者との示談をまとめることが重要です。傷害事件を起こしてしまったという方は、お早めに経験豊富なグラディアトル法律事務所までご相談ください。