薬物で逮捕されたらどうなる?時系列順流れ・押さえておくべき注意点

薬物で逮捕されたらどうなる?時系列順流れ・押さえておくべき注意点
弁護士 若林翔
2024年06月27日更新

違法な薬物を使用している、使用してしまった方、また、親族・知人が薬物で逮捕されてしまった方は、

「薬物で逮捕されたらどうなっちゃうの?・・・」「薬物で逮捕されたときの対処法が知りたい・・・」等の疑問を持っていることと思います。

薬物で逮捕されてしまった場合、最大で23日間の身体拘束、再逮捕、再勾留がされれば、それ以上の身体拘束がされる可能性があります。

その身体拘束から解放されるには、勾留に対する準抗告等、専門的な手続が必要であるため、弁護士の迅速な対応が不可欠です。

そこで今回は、薬物で逮捕されたときの時系列、身体拘束期間、取調べの態様等を解説していきます。

薬物で逮捕されたら?薬物で逮捕された後の流れ

薬物で逮捕された後の流れ薬物に限らず、何らかの犯罪の疑いで逮捕されてしまうと、起訴される(刑事裁判にかけられる)までの身体拘束は、最大で23日間にも及びます。

【フェーズ1】逮捕段階での身体拘束(最大3日間)

何らかの犯罪を行い逮捕されると、48時間以内に、検察へ身柄が送られます。

検察へ身柄が送られた後、検察は、24時間以内に、逮捕された人をさらに身体拘束をするよう請求をする(勾留請求)か、釈放するかの決定をします。

つまり、逮捕段階での身体拘束は、48時間+24時間で、合計最大72時間(3日間)になります。

逮捕段階で弁護士ができること

逮捕段階で弁護士がで逮捕段階で弁護士ができることとしては、まず、初回接見があります。

初回接見では、今後の見通しや、警察・検察の取り調べに対して、どのように対応をすれば良いか等を伝えます。

その後、希望があれば、家族や職場への伝言や連絡をします。また、意見書の提出等、勾留阻止のための手続を行います。

【フェーズ2】勾留段階での身体拘束(最大20日間)

検察による勾留請求がなされ、裁判所がこれを認めると、逮捕された人は、さらなる身体拘束(勾留)がされることになります。

最初の勾留期間は、最大で10日間に及び、検察がさらに身体拘束が必要だと判断すると、勾留延長請求がされます。

勾留延長がなされると、延長期間が最大で10日間ですので、勾留期間は最大で20日間となります。

勾留段階で弁護士ができること

被疑者が勾留されてしまった場合、弁護士は、勾留から解放するための手続として、勾留の取消し請求や準抗告を行います。

また、勾留されている被疑者は精神的に苦しい状況に置かれるため、被疑者の要請にしたがって何度も接見を行い、法律面のアドバイスだけでなく精神的な面でもサポートします。

【フェーズ3】勾留後の処分

勾留期間が終わると、検察官は、逮捕された人を起訴(刑事裁判にかけること)するか、不起訴にするかの判断をします。

つまり、身体拘束の期間は、逮捕期間は最大で72時間(3日間)、勾留期間が最大で20日なので、起訴されるまでの身体拘束期間は最大で23日間にも及ぶことになります。

起訴された場合、起訴後1~2カ月後から刑事裁判が始まります。

その間、引き続き身柄拘束されるのが原則です。

不起訴獲得のために弁護士ができること

被害者がいる事件では、被害者と示談をすることによって不起訴の獲得を目指しますが、薬物犯罪では、基本的に被害者は存在しません。

不起訴になる場合としては、証拠がなく嫌疑不十分で不起訴になる場合や、犯罪が軽微であるとして起訴猶予になる場合等があります。被疑事実を否認して、嫌疑不十分として不起訴を目指すか、被疑事実を認めたうえで、悪質性や再犯の恐れがないことを主張して起訴猶予を目指すかは、ケースバイケースになります。

したがって、薬物犯罪こそ、弁護士の弁護活動が重要になります。

 薬物の逮捕は再逮捕、再勾留のおそれがある

薬物犯罪では、所持、使用などで犯罪が分かれているため、再逮捕、再勾留により拘束期間が長くなることがあります。

例えば、覚せい剤所持の罪で現行犯逮捕し、その後尿検査を行い、鑑定結果が出た後に覚せい剤使用の罪で改めて再逮捕するようなことがあります。

また、大麻と覚せい剤など、複数の違法薬物を使用していたような場合には、それぞれ別の犯罪が成立するため、再逮捕、再勾留により身体拘束の期間が長引く可能性が高くなります。

<例>

 薬物の逮捕で再逮捕、再勾留される際の流れ

薬物で逮捕されたときの取調べの際の注意点

薬物で逮捕されたときの取調べの際の注意点

安易に喋らないこと

薬物犯罪に限らず、逮捕されると取調べが行われますが、取調べに臨む際に一番重要なことは、安易に喋らないことです。

取調べをする捜査官は、常日頃から「被疑者は嘘をつくものだ」と教えられ、実際にそのように信じて取調べをしており、最初から聞く耳を持っている人はほとんどいません。

そして、取調べでは、「自白した方が早く終わる」、「罰金で終わらせてやる」、「自白しないと実刑だぞ」など、自白を促すような言葉を投げかけてきます。

捜査官は取調べのプロであるため、安易に話してしまうと、虚偽の自白をとられてしまう可能性があります。

しかし、逮捕された人には、黙秘権があります。

黙秘権とは、取調べや裁判の場などにおいて、言いたくないことは言わなくてもいいという権利のことをいいます。

取調べでは、裁判で不利な証拠を作られることを防ぐため、弁護士のアドバイスを受けるまでは何も喋らない、つまり、黙秘権を行使することが重要です。

何かを話すにしても、弁護士と相談してからでも全く遅くありません。

安易に供述調書に署名・押印しないこと

取調べでは、供述調書が作られますが、取調べに臨む際の注意点の二つ目は、安易に供述調書に署名・押印しないことです。

供述調書は、捜査官が様々な質問をした後、聴取した内容を自分の頭の中でまとめて、作文のような形で作られます。

その後、その内容に間違いがないか、署名・押印を求められます。

質問した内容をそのまま調書にするのではなく、先入観をもった捜査官が、自分の頭の中でまとめたものを作文するため、細かなニュアンスが変えられていたり、自分の言ったことと異なることが調書にまとめられていることがあります。

例えば、単純所持のつもりで供述したのに、営利目的で所持していたという内容で供述調書がまとめられていたり、一度しか使用していないのに、常習的に使用していたという内容で供述調書がまとめられていることがあります。

安易に供述調書に署名・押印してしまうと、裁判で不利な証拠が作られてしまうのです。

供述調書に署名・押印に応じる必要はなく、署名押印に応じなければ、後に裁判で証拠として使われることはありません

もし、供述調書に自分の認識と異なることが書かれていたら、その内容の変更・訂正を申し立てることができます。

一度供述調書に署名・押印をしてしまうと、内容を変更・訂正することはできませんので、安易に署名・押印をしてならないのです。

薬物の逮捕は尿検査により身体拘束が長引く可能性

薬物で逮捕されると、尿検査が行われ、その鑑定結果が出るまでに時間がかかることがあるため、身体拘束が長引く可能性があります。

尿検査の鑑定結果は、早いと1~2日で出ることがありますが、遅いと1か月程度かかる場合もあります。

また、逮捕されている場合、強制採尿令状に基づいて強制採尿が行われるため、尿検査を拒否することができません。

強制採尿は、病院で尿道からカテーテルを挿入して尿を強制的に採取されます。したがって、逮捕されている場合に採尿を求められた際、精神的ショックを減らすためには、自分で尿を提出する方が良いでしょう。

薬物で逮捕されたときの身体解放のための活動

薬物で逮捕されたときの身体解放のための活動

上記例のように、薬物で逮捕された場合における身体拘束は、46日間、あるいはそれ以上に及ぶ可能性があります。しかし、弁護士が行う身体解放のための活動によって、途中で身柄が解放されることがあります。

身体解放のための活動には、代表的なものとして、準抗告、保釈請求がありますので、順次解説していきます。

準抗告で身体解放を!

勾留に対する準抗告は、逮捕された人が勾留された場合に、その勾留から身柄を解放するために行うものです。

勾留は、以下の要件を満たさない限り許されません。

(1)罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(犯罪の嫌疑

(2)下記のいずれかの要件に当てはまること

  • ・定まった住所を有しないとき
  • ・罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  • ・逃亡し、又は逃亡するに疑うに足りる相当な理由があるとき

(3)勾留の必要性があること

しかし、検察官が勾留請求をした場合、勾留の認容率は90%以上であり、不当な勾留がなされることがしばしばあります。

したがって、逮捕された人が勾留されてしまった場合、身柄が解放されるには、弁護士による勾留決定に対する準抗告が不可欠なのです。

保釈請求で身体解放を!

起訴された場合、約1~2カ月後から刑事裁判が始まりますが、その間、引き続き身柄拘束されるのが原則です。

しかし、弁護人による保釈請求により、身体解放がされる場合があります。

保釈請求は、被告人本人のほか、弁護人や一定の親族なども、保釈請求をおこなうことがでますが、本人が保釈請求をしても裁判所に認めてもらうことは困難です。専門家である弁護士に依頼することによって、保釈請求が認められる可能性が高まります。

なお、薬物犯罪の場合、被疑事実を認めると、保釈が認められる傾向にあることは事実です。

しかし、被疑事実を認めるにせよ否認するにせよ、虚偽の自白の証拠を作られることを防ぐため、取調べには弁護士のアドバイスを聞いてから応じることが重要です。

薬物で逮捕・起訴された際の保釈金の相場は150万円~300万円

薬物で逮捕・起訴された際の保釈金の相場

保釈が認められるには、裁判所に対し、保釈金を納めなければなりません。

保釈金の相場は、150万円~300万円程度ですが、犯罪の量刑が重い場合や、高収入の場合は高額になります。他方で、定職に就いていたり、身元引受人の下で生活できるような場合は、逃亡の恐れが低いと考えられ、相場は低くなる傾向にあります。

保釈金は、逃亡したり、裁判に正当な理由なく裁判に出頭しないなどの事情がない限り、後で返ってくるものです。

薬物で逮捕されたときの法定刑

覚せい剤や大麻で逮捕されたときの法定刑は、以下のようなものになります。

覚せい剤の場合

覚醒剤で逮捕されたときの法定刑

大麻の場合

大麻で逮捕されたときの法定刑

薬物犯罪における刑の見通し

薬物犯罪の場合、単純所持かつ初犯だと執行猶予がつくことが多いですが、再犯だと実刑になる場合がほとんどです。

また、営利目的が認められた場合は、初犯でも実刑になる可能性があります。

薬物ごとの執行猶予、実刑の見通しは、以下のようなものとなります。

薬物ごとの執行猶予と実刑の見通し

薬物で逮捕されたらすぐ弁護士へ依頼すべき理由2つ

薬物で逮捕されたらすぐ弁護士へ依頼すべき理由2つ

理由① 虚偽自白の危険性を防ぐことができる

取調べでは、「認めたら罰金で終わらせてやる」「認めないと実刑になるぞ」等と、虚偽の自白を引き出そうとしてくる可能性があります。

これを防ぐには、早めに弁護士に依頼して、弁護士と話ができるまで、取調べでは何も喋らない、調書に署名・押印しないようにすることが重要です。

理由② 早期に身体拘束解放の手続がとれる

弁護士に依頼するのが早ければ早いほど、弁護士は、早期に準抗告等の身体拘束を解放する手続をとることができます。したがって、弁護士をつけるのが早ければ早いほど、早期に身柄が解放される可能性が高まります。

勾留に対する準抗告が認容される確率は約18%で、約5人に1人は準抗告が認められますので、1日でも早く身柄が解放されるために重要な手続となります。

薬物で逮捕された際の弁護士への依頼の方法

薬物で逮捕された際の弁護士への依頼の方法

逮捕されてしまった場合、弁護士に相談する方法としては、留置所から弁護士を呼んでもらう方法と、知人、親族に弁護士を頼んでもらう方法があります。

留置所から弁護士を呼んでもらう際には、目星の弁護士がいる場合には、警察官にその弁護士を呼んでもらうよう伝え、目星の弁護士がいない場合には、「当番弁護士を呼んでください」と伝えることによって、当番弁護士を呼んでもらうことができます。

しかし、当番弁護士は、初回の接見のみ無料で来てくれるだけですので、薬物犯罪について経験豊富な弁護士に依頼したい場合には、あらかじめ逮捕されたときに相談する弁護士の目星をつけておき、その弁護士を呼んでもらうとよいでしょう。

薬物逮捕における私選弁護人と国選弁護人との違い

薬物逮捕における私選弁護人と国選弁護人との違い

国選弁護人とは、国が選任した刑事弁護人です。被疑者は、弁護士を自由に選択することはできず、国が弁護士報酬を決め、弁護士に報酬を支払います。

そして、国選弁護人が選任されるのは、勾留されてからになります(刑事訴訟法37条の2)。

また、国選弁護人は迅速に対応してくれない可能性があります。国選弁護人と私選弁護人では、認められている権限は同じですので、本来、弁護活動に違いはありません。しかし、現実問題として、国選弁護人は、私選弁護人と比べて対応が遅い、熱意がないと言われているのは事実です。

そして、国選弁護人は、迅速に対応してくれない場合であっても、自由に解任することができません(刑事訴訟法38条の3)。国選弁護人を解任し、違う弁護人をつけたい場合には、新たに私選弁護人をつける必要があります。

また、国選弁護人として選任された弁護士は、薬物犯罪の弁護の経験がある弁護士とは限りません。刑事事件の経験がほとんどない弁護士が来る可能性もあります。

薬物逮捕の解決事例:覚せい剤陽性反応が出たが不起訴になった事例

グラディアトル法律事務所が担当した薬物逮捕の解決事例

弊所では、尿検査で覚せい剤の陽性反応が出たものの、不起訴になった事例があります。

配偶者が薬物を使用しており、本人は薬物を使用していた自覚はなかったものの、逮捕されてしまった事件です。

・尿検査で覚せい剤陽性になるも不起訴に!

・当事者の情報

ご依頼者は30代前半の女性

・事例の概要

ご依頼者はクラブ帰りに職務質問をされました。何もやましいことがなかったため、荷物検査、尿検査に応じました。尿検査を行ったところ、覚せい剤の陽性反応が出てしまいました。ご依頼者は大麻を使用したことがあったものの、覚せい剤を使用したことがなかったため、陽性反応が出たことについて全く思い当たるふしはありませんでした。ご依頼者である奥様が覚せい剤使用の罪で逮捕されてしまったため、旦那さんから弊所にご連絡をいただき、ご依頼を引受けました。

・解決までの道のり

警察での取調べでは、警察官からは、「覚せい剤を使用していなかったら陽性反応が出るわけがない」、ご依頼者は、「身に覚えがない」などと堂々巡りのやりとりが繰り返し行われました。他には、「認めたら早く出られる」「認めた方があなたのためになる」等と言われ、ご依頼者は、やっていないのにやったと言おうかと揺れ動くほどでした。

また、検察での取調べではご依頼者が嘘をついていることを前提としたような取調べが行われ、ご依頼者は眠れない日々を過ごしました。

しかし、弁護士は勾留決定に対する準抗告等、身体拘束からの解放のための活動は当然の他、何度も接見に赴き、旦那さんからの伝言、親族からの伝言、差し入れをし、時に励ましながら、取調べに対してどのように答えればよいかのアドバイス等を続けました。

・結果

ご依頼者は不起訴となりました。

・解決のポイント詳細

覚せい剤については、尿検査で陽性反応が出ると、覚せい剤が禁制品であり、日常生活でこれが何かに紛れ込むことは考え難いことから、通常は故意に摂取する以外で体内から排出されることはないと考えられ、尿から覚せい剤が検出された場合は、特段の事情がない限り故意が推認される(東京地裁平成24年4月26日判タ1386号376頁)ため、不起訴を獲得することは容易ではありません。しかし、本件のように、覚せい剤の陽性反応が出ても不起訴になる可能性はあります。

また、警察の取調べでは、「認めたら執行猶予になる」、「認めなかったら実刑になるぞ」等、自白を促す取調べが行われます。今回は早期にご相談いただいたおかげで、虚偽の自白を引き出されるようなことはなく、不起訴を獲得することができました。また、警察の取り調べでは、弁護士が来るまで何も話さないことが重要となってきます。

そして、刑事弁護人には私選弁護人と国選弁護人がいますが、国選弁護人がつくのは勾留がなされてからであり、逮捕段階ではつきません。また、国選弁護人は自分で選ぶことができないため、より弁護士によって対応の差が生まれます。

したがって、弁護人を選ぶにあたっては、刑事事件の経験が豊富であること、信頼のおける弁護士に事件を依頼することが重要となってきます。

身近な人が薬物事件で逮捕されてしまった場合、刑事事件を多く取り扱っている弊所弁護士にご相談ください。

まとめ

弊所では、解決事例のように、薬物犯罪での刑事事件の実績が多数あります。

薬物犯罪では、ある程度刑の見通しを立てることができるため、特に国選弁護人による弁護活動はおざなりになるケースが見られます。

しかし、早期に弁護士に相談することによって、弁護人の弁護活動によっては、不起訴を獲得することができる場合があります。

現在、薬物を使用している、使用してしまった、親族、友人が薬物で逮捕されてしまったような場合には、刑事事件について経験豊富な弊所弁護士にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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