詐欺事件の示談金相場はいくら?払えないときの対処法も解説

詐欺事件の示談金相場はいくら?払えないときの対処法も解説
弁護士 若林翔
2025年01月04日更新

詐欺の加害者になってしまったとき、できるだけ穏便に事件を解決するためには速やかな示談の成立が必要不可欠です。

しかし、「示談金はいくら支払えばいいのか」「高額な示談金を支払ってまで示談を成立させることに意味はあるのか」など、さまざまな疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。

詐欺事件の示談金は「騙し取った金額+10~50万円」程度が相場といえます。

しかし、示談金の額は個々のケースごとに判断されるべきものなので、まずは弁護士に相談し、適正額や支払い方法などに関する助言を受けることが大切です。

本記事では、詐欺事件の示談金相場や示談金を支払うメリットなどについて解説します。

金銭的な余裕がなく、示談金を支払えない場合の対処法なども記載しているので、少しでもスムーズな問題解決を望むのであれば、本記事を参考にしてみてください。

詐欺の成立要件に関してはこちらの記事をご覧ください。

詐欺罪の成立要件とは?詐欺罪に問われる主な犯罪の手口と種類を解説

詐欺事件の示談金相場は「騙し取った金額+10~50万円」

詐欺事件の示談金相場は「騙し取った金額+10~50万円」程度を目安に考えておくとよいでしょう。

詐欺事件の示談では、単に騙し取ったお金を返せばよいというものではありません。

詐欺被害によって相手方には精神的苦痛が生じているため、慰謝料を上乗せして支払うケースが一般的です。

詐欺事件の示談金相場は「騙し取った金額+10~50万円」

とはいえ、示談金の額はさまざまな要因によって変動します。

騙し取った金額が大きく、被害者の処罰感情が強い場合などは、より高額な費用を上乗せしなければ示談が成立しないこともあります。

詐欺事件の示談金が変動する要因

次に、詐欺事件の示談金が変動する要因を解説します。

大きく5つの要因が挙げられるので、それぞれ詳しくみていきましょう。

詐欺事件の示談金が変動する要因

被害の程度

被害の程度が大きい場合は、詐欺事件の示談金も高額になる傾向があります。

騙し取ったお金が多ければ多いほど、悪質な行為だとみなされるためです。

たとえば、被害額が100万円と1,000万円では、当然示談の成立に必要な金額も当然変わってきます。

もちろん示談金は当事者間で自由に決められるため一概にはいえませんが、騙し取ったお金が高額な場合は相応の負担を求められることになるでしょう。

被害者の処罰感情

被害者の処罰感情も、詐欺事件の示談金を変動させる要因のひとつです。

一般的に、示談が成立すると加害者の刑事責任が軽減されます。

そのため、処罰感情が強い被害者は、簡単に示談を成立させようとはしないのです。

結果として、高額な示談金の支払いを求められ、示談交渉に苦戦するケースは少なくありません。

少しでも示談金を抑えたいのであれば、反省の態度を示し、被害者の処罰感情を和らげることも重要になってきます。

加害者側の資力・社会的地位

加害者に十分な資力がある場合は、より高額な示談金を求められることがあります。

たとえば、加害者の年収が300万円の場合と3,000万円の場合とでは、示談交渉に望む被害者のスタンスも大きく変わってくるでしょう。

被害者からすると「支払い能力が高い相手からなら相応の示談金をとれる」と考えるのが通常であり、強気な姿勢で高額な示談金の支払いを求めようとします。

一方で、加害者側に資力がない場合も、示談金が高額になるケースがあります。

被害者側としては「お金がない人を相手に裁判しても意味がない。示談で少しでも回収しておきたい」という心理が働くためです。

また、加害者が公務員・会社役員などの社会的地位が高い人物である場合も、裁判に発展したときの社会的影響が大きいため、高額な示談金を支払ってでも、示談を成立させようとする傾向があります。

事件の注目度

事件の注目度によっても、詐欺事件の示談金は変動します。

示談が成立しているかどうか、裁判にまでもつれ込んでいるかどうかは、加害者の社会的評判に直結するものです。

そのため、事件がメディアによって公にされているケースなどでは、加害者側が示談の成立を強く望み、高額な示談金も受け入れる傾向にあります。

証拠の有無

証拠の有無も、詐欺事件の示談金を変動させる要因のひとつです。

確かな証拠がある場合、裁判に持ち込まれると敗訴する可能性が高いので、加害者としてはなんとしてでも、示談を成立させなければならなくなります。

一方で、被害者としては「納得のいく示談金がもらえなければ、訴えるつもりでいる」といったように、強気な姿勢を見せながら示談を有利に進めることができるのです。

その結果、加害者は被害者の高い要求を受け入れるほかなくなるため、示談金も自然と高額になってしまいます。

詐欺事件で示談金を支払うメリット

次に、詐欺事件で示談金を支払うメリットを解説します。

主に4つのメリットが挙げられるので、それぞれ詳しくみていきましょう。

詐欺事件で示談金を支払うメリット

事件化する前に問題を解決できることがある

詐欺の被害者に対して示談金を支払い、示談を成立させれば、事件化する前に問題を解決できることがあります。

金銭的補償をおこない、反省の態度を示すことで被害者の処罰感情が和らぎ、被害届の提出や告訴を踏みとどまってもらいやすくなるためです。

すでに被害届が出されているような場合でも、示談金の支払いを条件として、被害者が取り下げに応じるパターンは多く見られます。

警察が関与した時点で事件解決の難易度は一気に高まるため、まずは、事件化する前の解決を目指すことが大切です。

逮捕を回避しやすくなる

逮捕を回避しやすくなることも、示談金を支払うメリットのひとつです。

示談金を支払い、被害届の提出や告訴を阻止できれば、警察が事件を認知することも基本的にないので、逮捕の心配がなくなります

また、示談が成立していると、逮捕の要件である「逃亡・証拠隠滅のおそれ」がないと判断されやすくなります

つまり、警察が逮捕に乗り出す理由がなくなるわけです。

令和4年における詐欺事件の逮捕率は約48%で、検挙された事件のうち約半数は逮捕にいたっています。(参照:令和5年版犯罪白書

詐欺事件は刑法犯全体と比較しても逮捕の可能性が高い犯罪なので、示談の成立がより重要になってくるでしょう。

不起訴の可能性が高まる

詐欺事件で示談金を支払い、示談を成立させることができれば、不起訴の可能性が高まります。

示談の成立は、当事者間で和解していることの証明です。

被害者自身が加害者を許している状況であれば、検察もあえて起訴する必要はないと判断し、不起訴処分を下しやすくなります

令和4年に検挙された詐欺事件のうち、起訴されたのは7,669件、不起訴になったのは8,324件です。(参照:令和5年版犯罪白書

逮捕率と同様、詐欺罪の起訴率は比較的高いといえるため、不起訴を目指すのであれば、示談の成立を最優先に考えましょう。

減刑や執行猶予獲得が期待できる

減刑や執行猶予獲得が期待できることも、示談金を支払うメリットのひとつです。

刑事事件においては、情状酌量が認められた場合に、減刑や執行猶予の判断がなされます。

そして、情状酌量を得るための手段として、最も有効なのが示談です。

示談の成立は、加害者が反省し、被害者の処罰感情が弱まっていることの証となるため、量刑の判断にあたって有利な情状として扱われます

ただし、示談が成立しても必ず減刑や執行猶予が得られるわけではありません。

悪質性が高い詐欺事件などは示談が成立しても実刑判決を受ける可能性があるため、早期に弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。

詐欺事件で示談金を支払うまでの流れ

ここでは、詐欺事件で示談金を支払うまでの流れを紹介します。

詐欺事件で示談金を支払うまでの流れ

被害者に対して示談を申し入れる

まずは、被害者に対して示談を申し入れる必要があります。

被害者の連絡先がわかっている場合は、加害者自身が示談を申し入れることも可能ですが、現実的な方法とはいえません。

疑いの気持ちを持った被害者は、加害者と直接やり取りすることを嫌う傾向にあります。

そのため、示談交渉に関しては、申し入れの段階から弁護士に依頼するケースが一般的です。

そもそも被害者の連絡先がわからない場合も、弁護士に依頼すれば、捜査機関を通じて情報を入手してくれます。

示談交渉をおこない、合意内容を示談書にまとめる

被害者と連絡が取れるようになれば、示談交渉を進めていきましょう。

まずは、加害者側から謝罪をおこなったうえで、示談金の金額や支払い方法などの条件を提示するケースが一般的です。

そして、お互いが合意した内容は示談書にまとめていきます。

示談書は覚書としての役割があるだけではなく、検察や裁判所に提出し、情状酌量を得るための重要な書類にもなることを覚えておきましょう。

なお、示談書を作成する際には、以下のような項目を盛り込む場合もあります。

  • ・宥恕条項(「被害者が加害者を許すこと」を意味するもの)
  • ・清算条項(「示談で合意した内容以外に権利関係がないこと」を意味するもの)
  • ・秘密保持条項(「事件に関することを口外しないこと」を意味するもの)
  • ・接触禁止条項(加害者に被害者との接触を禁じるもの)
  • ・誓約条項(示談金の支払いが遅れた場合の対応など、お互いが同意した約束を示すもの)

示談交渉では、明らかに割高な示談金を要求されるケースも少なくありません。

だからといって、被害者の要求を突き返していると示談不成立となり、逮捕や起訴の可能性が高まってしまいます。

そのため、示談交渉においては法律の専門家であり、交渉のプロでもある弁護士のサポートが必要不可欠です。

合意した方法で示談金を支払う 

示談が成立したあとは、合意した方法で示談金を支払うことになります。

支払い方法は当事者間で取り決めることになりますが、弁護士を通じて手渡ししてもらったり、口座に振り込んだりするケースがほとんどです。

示談は当事者間での約束ごとを取り決めた契約行為であるため、適切に履行しなければ解除される可能性があります。

また、示談金を支払っていない状態では、捜査機関からも示談が成立しているものとして扱ってもらえないことがあるので、速やかな対応を心がけましょう。

詐欺事件の示談金を支払えない場合の対処法

詐欺で奪い取ったお金をすでに使っている場合などは、示談金を支払えないことがあるかもしれません。

ここでは、示談金を支払えない場合の対処法を紹介するので、参考にしてください。

詐欺事件の示談金を支払えない場合の対処法

示談金の減額を打診する

示談金を支払えない場合は、減額を打診してみましょう。

示談金の金額は当事者の話し合いによって、自由に決められるものです。

示談金の支払いが難しい事情を丁寧に説明すれば、減額に応じてもらえるかもしれません

また、「示談金の減額を認めてでも、示談を早く成立させたい」と考える人も多いので、ダメもとでも一度は打診してみることを検討してみてください。

しかし、減額の打診は、相手の印象を悪くする可能性もあります。

打診のタイミングや希望する減額幅などについては、弁護士と十分に話し合っておきましょう。

分割払いを認めてもらう

今すぐにまとまったお金を用意できない場合は、分割払いを認めてもらうのもひとつの方法です。

被害の程度にもよりますが、被害者全員が金銭的な補償を急いでいるわけではありません。

「最終的に被害金や慰謝料を全額受け取れるなら、ある程度時間がかかってもいい」といったスタンスだった場合、数か月から数年程度の分割払いを受け入れてもらえる可能性があります。

ただし、被害者の立場で分割払いを認めるメリットは少ないため、経済状況や返済計画などをしっかりと説明したうえで、慎重に分割払いの打診をおこなうようにしましょう。

詐欺事件の示談成立には弁護士のサポートが必要不可欠

詐欺事件の示談を成立させて、刑事責任を最小限に抑えるためには、弁護士のサポートが必要不可欠です。

示談の相手方は強い処罰感情を抱いている可能性が高いので、心情に十分配慮しながら、慎重に話し合いを進める必要があります。

そのうえで、ときには駆け引きも交えながら、できるだけ不利な条件にならないように戦略的に交渉していかなければなりません。

つまり、示談交渉には高度な技術が求められるため、自力で対応するのは困難です。

その点、弁護士に依頼すれば、豊富な経験に基づく交渉ノウハウを活かして、スムーズに示談を進めてくれます

また、弁護士が出てきた途端、これまで感情的だった相手が態度を変え、冷静に話し合えるようになるケースも少なくありません。

自力で示談交渉を始めると、足元を見られて高額な慰謝料を請求されることもあるので、刑事事件を得意とする弁護士に任せるのが賢明な判断といえるでしょう。

関連記事:

【加害者向け】詐欺事件を今すぐ弁護士に相談するべき3つの理由!

詐欺の示談金に関するよくある質問

最後に、詐欺の示談金に関するよくある質問を紹介します。

詐欺の示談金に関するよくある質問

示談金を支払って示談が成立すれば罪に問われない?

示談金を支払って示談が成立したとしても、罪に問われないわけではありません

被害者に対する金銭的な補償は、あくまでも民事上の責任です。

刑罰に関する刑事上の責任は残ったままなので、罪に問われる可能性はあります。

ただし、示談の成立が不起訴や減刑につながることは確かです。

少しでも罪を軽くしたいのであれば、示談の成立を急ぐようにしましょう。

被害者が複数人いる場合の示談金はどうなる?

被害者が複数人いる詐欺事件の場合、基本的には一人ひとりに示談金を支払い、示談を成立させていく必要があります。

相手が多い分、示談交渉の難易度も高くなるので、弁護士のサポートが欠かせません。

場合によっては、複数の弁護士で対応しなければならないケースもあるでしょう。

詐欺事件を起こしたときはグラディアトル法律事務所に相談を!

本記事のポイントは以下のとおりです。

  • ・詐欺事件の示談金相場は「騙し取った金額+10~50万円」
  • ・示談金の額には被害の程度・被害者の処罰感情・加害者側の資力などが影響する
  • ・刑事手続きを有利に進めるには示談の成立が必要不可欠
  • ・示談金が支払えない場合は、減額や分割払いを打診してみるのも選択肢のひとつ

詐欺事件において逮捕回避や不起訴処分の獲得、減刑を目指すのであれば、示談の成立が必須です。

しかし、被害者と交渉したり、適切な示談金の額を見極めたりすることは決して簡単ではありません。

自力で対応しようとすると、余計なトラブルを起こしてしまうおそれもあるので、示談交渉は弁護士に一任することをおすすめします。

詐欺事件が得意な弁護士であれば、交渉ノウハウを駆使して、円滑に示談を成立させてくれるはずです。

実際にグラディアトル法律事務所でも、これまでに数々の詐欺事件をサポートし、解決へと導いてきました。

実践経験豊富な弁護士が24時間365日体制で対応しているため、困ったときは、まず弊所へお問い合わせください。

初回相談は無料、LINE相談にも対応しているので、お気軽にどうぞ。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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