詐欺罪の量刑相場は懲役1~3年!量刑判断では被害金額が重要な要素

詐欺罪の量刑相場は懲役1~3年!量刑判断では被害金額が重要な要素
弁護士 若林翔
2025年01月07日更新

「詐欺罪の量刑相場はどのくらい?」

「詐欺罪の量刑相場を決める要素とは?」

「詐欺罪の被害金額に応じた判例の量刑判断はどうなっている?」

詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められており、罰金刑は存在しません。そのため、詐欺罪で起訴され有罪判決となれば懲役刑が言い渡されることになります。

そこで気になるのは、詐欺罪の量刑相場がどのくらいになるのかという点です。

詐欺罪の量刑は、さまざまな要素を踏まえて決められますが、その際に重視されるのが被害金額です。被害金額が高額な事案だと、初犯であっても実刑判決になる可能性が高いため、執行猶予を獲得するには被害者との示談が重要になります。

本記事では、

・詐欺罪の量刑相場はどのくらい?

・詐欺罪の量刑判断の基準

・判例から見る詐欺罪の被害金額に応じた量刑判断

などについてわかりやすく解説します。

被害金額が大きい詐欺事件を起こしてしまったときは、すぐに被害者と示談をする必要がありますので、一刻も早く刑事事件に強い弁護士に相談するようにしてください。

詐欺罪の量刑相場はどのくらい?

詐欺罪の量刑相場はどのくらい?

詐欺罪の量刑相場はどのくらいなのでしょうか。以下では、詐欺罪の量刑相場と執行猶予になる確率について説明します。

量刑相場は懲役1~3年程度

詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められていますので、有罪判決が言い渡される場合は、この法定刑の範囲内で懲役刑の期間が決められます。

令和5年犯罪白書によると、令和4年に詐欺罪で有罪となった事件は3239件あり、その科刑状況は以下のとおりです。

懲役7年超10年以下5年超7年以下3年超5年以下2年以上3年以下1年以上2年未満6月以上1年未満6月未満
人数6人52人340人1706人1063人71人2人

この表からは、有罪となった事件の約85%が懲役1年以上3年以下の範囲に収まっていますので、詐欺罪の量刑相場としては、懲役1~3年程度といえるでしょう。

詐欺罪で執行猶予になる確率は約60%

令和5年犯罪白書によると詐欺罪で有罪になった3239件のうち、執行猶予(一部執行猶予を含む)が付いたのは、1928件ありました。このことから詐欺罪で執行猶予になる確率は、約60%ということになります。

実刑になればそのまま刑務所に収監されてしまいますので、被告人としては、執行猶予付きの判決を獲得することが重要といえるでしょう。

詐欺罪の量刑判断では被害金額が重要な要素|量刑判断の基準

詐欺罪の量刑判断では被害金額が重要な要素|量刑判断の基準

詐欺罪の量刑は、どのような要素によって決められるのでしょうか。以下では、詐欺罪の量刑判断の基準となる要素について説明します。

量刑判断の基準内容影響
詐欺の結果の重大性(被害金額)被害金額が大きいほど悪質と判断され、重い量刑が科される傾向。被害額1000万円超では示談がなければ実刑判決の可能性が高い。
犯行の悪質性特殊詐欺や組織的犯罪は悪質性が高く、量刑が重くなる。初犯でも特殊詐欺は実刑判決の可能性が高い。
被害者との示談の有無示談が成立していれば、財産的被害の回復と評価され、執行猶予が付きやすい。高額被害でも示談が成立していれば実刑を回避できる可能性がある。
被告人の反省罪を認め反省している場合は量刑が軽くなる可能性がある。反省が認められない場合、重い量刑が下される可能性が高い。
前科前歴の有無同種前科があると再犯リスクが高いとみなされ、重い刑罰が科される。初犯であれば執行猶予が付きやすい。

詐欺の結果の重大性(被害金額)

詐欺罪の量刑判断において重要となる要素が「被害金額」です。

詐欺罪は、被害者に財産的な損害を与える財産犯ですので、被害の程度は被害金額の大小によって判断されます。そのため、被害金額が高額な事案だと悪質な事案と判断されやすく、量刑判断も重くなる傾向があります。

たとえば、被害金額1000万円を超えるような事案になると、被害者との示談が成立しなければ、実刑判決になる可能性が高いといえます。

犯行の悪質性

犯行の悪質性も詐欺罪の量刑判断において重要な要素の一つになります。

たとえば、特殊詐欺(オレオレ詐欺、振り込め詐欺など)のような組織的犯罪に関しては、悪質性の高い事件であるとして重い処罰が下される傾向があります。このような事案では、初犯であっても実刑判決になる可能性もありますので注意が必要です。

被害者との示談の有無

被害者との間で示談が成立していれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなります。

なぜなら、詐欺罪は財産犯ですので、被害者との間で示談が成立すれば財産的被害が回復されたと評価されるからです。被害金額が高額な事案であっても、被害者との間で示談を成立させることができれば、実刑判決を回避できる可能性が高くなります。

被告人の反省

被告人が罪を認めて反省している場合、量刑判断において有利な情状として考慮してもらうことができます。

他方、詐欺を否認していて反省の態度を一切示していないような事案では、自白事件に比べて重い量刑が下される可能性があります。

前科前歴の有無

前科前歴の有無も量刑判断に影響を与える要素となります。

特に、同種前科があるような事案では再犯のリスクが高いとして、量刑判断においても重い刑罰が下される可能性があります。他方、前科前歴がなく今回の事件が初犯であれば、その他の事情にもよりますが、執行猶予付きの判決を獲得できる可能性が高いといえます。

判例から見る詐欺罪の被害金額に応じた量刑判断

判例から見る詐欺罪の被害金額に応じた量刑判断

判例では、詐欺罪の量刑についてどのような判断がなされているのでしょうか。以下では、被害金額に応じた判例の量刑判断を紹介します。

福岡地裁令和6年5月7日判決|被害金額6億円・懲役4年

被告人は、新型コロナウイルス対応支援資金による無担保無保証融資を医療法人の代行として申し込むにあたり、医業収入に関する内容虚偽の合計残高試算表等を作成・提出して本件融資を申し込み、融資金6億円をだまし取ったという事案で、懲役4年の実刑判決が言い渡されました。

被告人には、前科前歴がなかったものの、被害金額が6億円と高額で、融資金の40%を手数料として受領していることから被害結果が重大で、悪質な犯行であるといえることから、執行猶予の付かない実刑判決となっています。

高知地裁令和6年4月24日判決|被害金額1950万4995円・懲役3年6月

被告人は、新型コロナウイルス感染症の影響による売上げの減少を理由として雇用保険被保険者でない従業員を休業させた場合に支払った休業手当の助成制度である緊急雇用安定助成金制度を利用して、国から同助成金の名目で現金をだまし取ろうと考え、虚偽の申請をして、合計1950万4995円をだまし取ったという事案で、懲役3年6月の実刑判決が言い渡されました。

本件事案は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業継続が困難になった事業者を救済するための制度を悪用し、報酬目的で虚偽の申請を引き受けていたというものであり、動機や経緯に酌むべき点はなく、被害金額も高額であるため悪質な犯行であると評価されています。

また、被告人には、執行猶予付き懲役刑前科2犯と罰金刑前科1犯があり、被害弁償をしてはいるものの28万円に留まっていることから、上記のとおり執行猶予の付かない実刑判決となっています。

東京地裁令和6年3月19日判決|被害金額4900万円・懲役7年

被告人は、中小企業庁が所管する持続化給付金制度を利用して同給付金の名目で現金をだまし取ろうと考え、虚偽の申請を繰り返して、合計49件で4900万円をだまし取ったという事案で、懲役7年の実刑判決が言い渡されました。

本件事案は、申請名義人、勧誘役、書類作成役、確定申告役、申請手続役、これらの者の管理者等とそれぞれ分業されて組織的に行われた大規模な持続化給付金詐欺事案であり、被告人はこれらを取り仕切っていた首謀者の立場にありました。このような組織的な詐欺事件では、非常に重い処罰が下される傾向があり、本件でも懲役7年の実刑という長期間の懲役刑が言い渡されています。

名古屋地裁令和6年3月14日判決|被害金額5600万円・懲役2年4月

被告人は、内容虚偽の決算報告書等を利用するなどして、保証協会から不正に信用保証を受けて、金融機関から融資名目で現金をだまし取ろうと考え、融資金5600万円をだまし取ったという事案で、懲役2年4月の実刑判決が言い渡されました。

本件事案は、5600万円という高額な被害金額であり、税理士に内容虚偽の書類を作成させて利用するなど巧妙かつ悪質な手口であることから、疾呼猶予の付かない実刑判決となりました。

名古屋地裁令和5年11月9日判決|被害金額170万円・懲役2年執行猶予4年

被告人は、知人女性である共犯者と共謀の上、共犯者が借金をしているなどとの嘘を言うなどして、共犯者に好意を寄せていた被害者を誤信させ、被害者から現金170万円をだまし取ったという事案で、懲役2年執行猶予4年の判決が言い渡されました。

本件事案は、計画的かつ巧妙な犯行であり、被害金額も相当に大きいといえますが、合計200万円の被害弁償金・慰謝料を支払っており、被害者も被告人を宥恕していること、被告人には前科がないことなどを考慮して、執行猶予付きの判決となりました。

被害金額が大きい詐欺事件で執行猶予を獲得するなら示談が重要

上記の裁判例からもわかるように被害金額が数千万円規模になると実刑判決になる可能性が非常に高くなります。そのような事案であっても被害者との示談が成立し、被害回復ができているという事情があれば、起訴されたとしても執行猶予付き判決を獲得することが可能です。そのため、執行猶予付き判決の獲得を目指すのであれば、被害者との示談が必須となります。

もっとも、被害金額が大きくなると一括での返済が難しいケースもあります。そのようなケースでは分割払いで対応せざるを得ませんが、長期の返済計画になると被害者側も簡単には応じてくれませんので、頭金としてある程度の金額を準備するなど誠意ある対応が求められます。

詐欺事件で有利な処分の獲得を希望する方はグラディアトル法律事務所に相談を

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経験豊富な弁護士が被害者との示談交渉をサポート

詐欺事件では、被害者と示談を成立させることで逮捕や起訴の回避、不起訴処分の獲得の可能性が高くなるなど示談が非常に重要な要素となります。しかし、被害者は、加害者に対して不信感や警戒心を抱いていますので、加害者本人から示談の提案をしても「また騙そうとしているのでは?」と考え、簡単には示談に応じてくれません。

被害者との示談を円滑に進めるには、弁護士が窓口となって交渉をするのが有効な方法ですので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。当事務所では、刑事事件の示談交渉に関する豊富な経験と実績がありますので、スムーズに示談交渉をまとめられる可能性があります。示談の成否は、弁護士の能力によって大きく左右されますので、被害者との示談をお考えの方は、経験と実績豊富な当事務所の弁護士にお任せください。

不利な調書をとられないように迅速な面会を実施

詐欺罪で逮捕されてしまうと、その後の交流も合わせて最長で23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。その間は、警察による取り調べを受けることになりますが、詐欺事件では主観面の立証のために、警察から厳しい取り調べを受ける可能性があります。不利な供述をしてしまうとその後の裁判で重い刑罰が下されるリスクがあるため、取り調べの対応も重要になります。

逮捕中に被疑者と面会できるのは弁護士だけですので、逮捕されたときはすぐに弁護士の面会を依頼することが大切です。当事務所では、逮捕されたご家族から依頼があれば、最短で当日面会に駆けつけることもできます。迅速な対応を希望される方は、当事務所までお早めにお問い合わせください。

初回相談料無料・24時間365日相談受付

当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。

まとめ

詐欺罪は、被害金額によって量刑が大きく左右される犯罪です。被害金額が数千万円規模にも及ぶ事案になると初犯であっても実刑判決が下される可能性がありますので、早期に弁護士に依頼して、被害者との示談交渉を進めるようにしてください。

被害者との示談交渉は、刑事事件に強い弁護士に依頼する必要がありますので、被害者との示談交渉をお考えの方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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