「詐欺事件の保釈金はいくら必要?」
「そもそも保釈金って何?」
詐欺事件で起訴されたご家族を釈放するには、保釈金を支払うことが必要です。
保釈金の金額は150万〜200万が相場だと言われていますが、明確な基準があるわけではありません。
実際に納付する金額は、事件の内容や被告人の属性、被害金額によって大きく変わってきます。
「保釈金=裁判所に”人質”として預けておくお金」といった意味合いが強いため、支払うのが苦しい金額となることは避けられません。
納付したお金は、刑事裁判が終了すれば返金されますが、保釈中に裁判所の命令に違反すると没取される可能性もあるため注意しましょう。
本記事では、次の点を取り上げました。
◉この記事を読んで分かること ・詐欺罪の保釈金の相場 ・保釈金が没取されるケース(返金されないケース) ・保釈金が支払えない場合の対処法 ・保釈金についてのよくある質問と回答 |
詐欺罪の保釈金を調べている方は、是非ご一読ください。
目次
詐欺罪の保釈金とは?
保釈金(保釈保証金)とは、被告人が起訴された後、保釈してもらう代わりに裁判所に預けるお金のことを指します。
そもそも「保釈」とは、
「証拠を隠滅したり逃亡したりしないから、身柄拘束は解いて欲しい。 代わりにお金(保釈金)を預ける。もしも約束を破ったら、お金は没収しても構わない」 |
という制度です。
つまり、「保釈金=裁判所に”人質”として預けておくお金」というイメージで捉えると分かりやすいでしょう。
ただし、保釈金を支払えば必ず保釈されるわけではありません。
保釈金に「人質としての効力がない」…つまり、保釈金を支払っても逃亡・証拠隠滅をする恐れがあると判断されると、保釈は認められないからです。
保釈金を支払っても認められないケースの典型例は、死刑や無期懲役の可能性が高いような重罪事件です。上記のようなケースでは、どれだけ高額な保釈金を支払っても、証拠隠滅・逃亡を抑止する効果は期待できないでしょう。
そのため、保釈が認められる可能性は低くなります。
詐欺罪で保釈が認められるかは、事件の状況によって大きく異なります。
詐欺の金額の大きさだけで決まるわけではなく、また初犯だからといって必ず認められるわけでもありません。
保釈の可能性が知りたい場合は、弁護士に相談することが必要です。
詐欺罪の保釈金は150万〜200万が目安
詐欺罪の保釈金は、一般的に150万〜200万円程度が目安とされています。
ただし、これはあくまでも目安でしかありません。
実際には、次のような要素を考慮して裁判官が決定します。
・詐欺事件の内容や悪質性 ・被害金額 ・予想される罪刑の重さ ・被告人の収入や資産額(経済的な状況) |
例えば、収入が平均的で、目立った資産もなく、事件もとりわけ悪質とは言えないようなケースでは、150万〜200万円の保釈金でも十分な抑止力があると考えられるでしょう。
しかし、多額の資産や収入がある場合、150万〜200万円程度の保釈金は被告人にとって高額とは言えません。そうすると、証拠隠滅・逃亡を抑止する効果が期待できないのです。
そのため、被告人の資産状況によっては、数千万円、数億円の保釈金が必要となるケースもあります。
保釈金は、あくまでも被告人の属性を踏まえつつ、ケースバイケースで金額が決定されるのです。
詐欺罪の保釈金は判決から「1週間程度」で返金される
詐欺罪の保釈金は、通常、判決から1週間程度で返金されるケースが多いです。
前述のとおり、保釈金は、身柄拘束を解いた被告人が逃亡・証拠隠滅することを防ぐための人質のような役割を果たしています。
そのため、刑事裁判が終わると、有罪・無罪に関わらず返金されます。
実刑になった場合についても、無罪になった場合や執行猶予がついた場合と同様に、判決から1週間程度で保釈金が返金されるケースが多いです。
ただし、刑事裁判が終わるまでに、被告人が証拠隠滅・逃亡をはかったり、裁判所の命令に従わなかった場合は、保釈金の全額または一部は没取される場合もあります。
保釈金が没取される具体的なケースについては、次章で後述します。
詐欺罪で保釈金が没取される4つのケース
前述のとおり、詐欺罪で収めた保釈金は、刑事裁判が終わった後、全額返金されることが原則です。
ただし、保釈中に、被告人が刑事訴訟法96条に規定された行為を行うと保釈金は没収(没取)されるため、注意が必要です。
(参考)刑事訴訟法 第九十六条 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。 一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。 二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。 五 被告人が、正当な理由がなく前条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。 六 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。 ② 前項の規定により保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で、保証金の全部又は一部を没取することができる。 |
正答な理由なく裁判に出頭しない
被告人は保釈された後も、刑事裁判に出席しなければなりません。
保釈中は、完全な自由が認められているわけではなく、正当な理由がない限り、裁判所の指示に従って、公判期日に出頭する義務があるからです。
これに違反してしまうと、保釈が取り消されて、保釈金が没収されてしまいます。
さらに「不出頭罪」として、「二年以下の拘禁刑」が処せられる可能性もあります。
なお、正当な理由として認められるのは、基本的に「病気やケガ、災害」などのやむを得ないケースのみです。公判期日を忘れていたなどの事情は考慮されません。
証拠を隠滅したり、逃亡したりする
保釈中に、証拠を隠滅したり、逃亡を図ったりした場合も保釈金は没収されます。
海外への逃亡を図るなどの典型的なケースはもちろん、共犯者と連絡を取ったりするだけでも、証拠隠滅と捉えられる場合があるため注意が必要です。
被害者等の関係者に接触する
保釈後、被害者に接触することも避けなければなりません。
「報復やお礼参りが目的では?」と疑われる可能性があるからです。被害者本人以外にも、家族や親族、目撃者などの証人も同様です。
四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。 |
上記に該当すると判断されると、保釈は取り消され、保釈金も没収されます。
謝罪したい、示談金を支払いたいなどの理由がある場合は、必ず弁護士を通して接触することが必要です。
保釈の条件に違反する
保釈の際に、裁判所から保釈の条件が付けられる場合があります。
例えば、居住場所の制限、旅行の制限などが典型例です。
「被告人は、〇〇市〇〇番地に居住しなければならない。住居を変更する必要ができたときは、書面で裁判所に申し出て許可を受けなければならない」 「海外旅行又は3日以上の旅行をする場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。」 など |
こういった条件に違反した場合も、保釈が取り消されて、保釈金は没収されてしまいます。
詐欺罪の保釈金が払えない場合はどうする?
保釈金は高額になるケースが多いため、被告人本人や家族が用意できない場合もあるでしょう。
しかし、保釈金が払えないからといって、諦める必要はありません。保釈金の支払いに関して、以下のような制度が用意されているからです。
・保釈保証金立替制度 ・保釈保証書発行制度 |
「保釈保証金立替制度」とは、日本保釈支援協会が行っている保釈金の立替事業です。
保釈金が準備できない場合、被告人の関係者が申込みをすることで、最大500万円まで保釈金の立替をしてくれます。利用するには審査が必要で、主に被告人の更生等の観点から審査が実施されます。
ただし、保釈保証金の立替を利用するには、必ず弁護士の協力が必要です。
「保釈保証書発行制度」も日本保釈支援協会が実施している事業です。
保釈保証金立替制度と比べると、手数料や上限額、立替期間などが異なっているため、弁護士とも相談の上、状況に応じて選択することになります。
いずれも、積極的に推奨するわけではありませんが、保釈金を準備できない場合には、検討する余地はあるでしょう。
保釈保証金立替制度 | 保釈保証書発行制度 | |
立替限度額 | 500万円 | 300万円 |
立替期間 | 立替金送金日より2ヶ月間 | 裁判終了まで |
手数料 | 50万円ごとに2ヶ月間で¥12,500(保釈許可決定額200万円の場合、 立替手数料は50,000円) | 保証金額の1.5% (保釈許可決定額200万円の場合、 保証料は30,000円) |
自己負担金 | なし(※但し、一部自己負担金を 要する場合も有) | 保証金額の5% (保釈許可決定200万円の場合、100,000円) |
申込みから保釈までの所要日数 | 手続き次第で当日保釈も可能 | 手続きより概ね2日~3日 |
詐欺罪の保釈金について知りたい9つの質問
詐欺罪の保釈金はいつ支払えばいいですか?
保釈金は、保釈が決まった日に支払うケースが一般的です。
明確な期限は決められていませんが、保釈金が支払われない限り、被告人が釈放されることはありません。
なお、詐欺事件で保釈申請ができるのは、起訴されることが決まって以降です。
そのため、逮捕から保釈までの流れは次のようなイメージとなります。
① 逮捕→勾留 ② 起訴決定 ③ 保釈申請 ④ 保釈許可(申請後、2〜3日) ⑤ 保釈金の支払い(即日) ⑥ 釈放 |
詐欺罪の保釈金は誰が・どうやって支払うのですか?
保釈金は、被告人本人やご家族が用意した保釈金を、弁護士が預かって裁判所に納付します。
以前は現金で裁判所に持参するケースが一般的でしたが、最近は電子納付(インターネットバンキングや Pay-easyを利用するケース)が増えています。
詐欺罪の保釈金は返金されますか?
刑事裁判が終わった後、原則として全額が返金されます。
判決の結果(有罪・無罪など)も関係ありません。
ただし、保釈中に証拠隠滅・逃亡などを図ったり、裁判所の命令に従わないと没取されるケースもあります。
保釈金を払えば必ず保釈されますか?
詐欺罪で保釈されるには、まず保釈申請を行い、裁判官に保釈を許可してもらうことが必要です。
保釈が許可された場合は、保釈金を支払えば釈放されます。
保釈申請を行えば、必ず保釈は許可されますか?
保釈申請を行ったからといって、必ず保釈が許可されるわけではありません。
「証拠隠滅・逃亡のおそれがあるか」等について裁判官が判断し、保釈が許可されるかが決まります。
保釈申請をして、保釈が許可される可能性はどれくらいですか?
最高裁判所のデータによれば、詐欺罪の保釈率は「34.9%」です。
勾留された人員 | 保釈人員 | 保釈率 | |
詐欺罪 | 3,029人 | 1,058 | 34.9% |
刑事事件全体 | 33,538人 | 10,507 | 31.3% |
(引用:最高裁判所|令和5年 司法統計年報(刑事編))
刑事事件全体の保釈率は「31.3%」なので、若干ではあるものの、詐欺罪は保釈されやすい犯罪だと言えるでしょう。ただし、いずれにせよ決して高い数字ではありません。
保釈を認めてもらうには、速やかに弁護士に相談して、示談などの行動を起こすことが必要です。
保釈申請をしてから保釈されるまで、どれくらい時間がかかりますか?
保釈金申請をした後、数日〜1週間程度で保釈を許可するかが決定されます。
保釈決定後、保釈金を納付して数時間で釈放されるケースが多いです。
保釈申請は弁護士無しでもできますか?
保釈申請をご家族だけで行うことは不可能ではありません。
ただし、保釈申請は、申請すれば必ず認められるものではありません。
保釈金の支払いだけでなく、証拠隠滅・逃亡のおそれがないことを裁判官に説明し、理解してもらうことも必要となります。
身元引受け人を設定したり、裁判官が懸念している事項を客観的に説明するなどの対応も必要となるため、できる限り弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士ができることについてはこちらでも詳しく記載がありますのでご覧ください。
【加害者向け】詐欺事件を今すぐ弁護士に相談するべき3つの理由!
保釈された後はどうすればいいですか?
保釈はあくまでも、身柄が一時的に釈放されている状態に過ぎません。
刑事裁判で有罪になると、執行猶予が付かない限り、刑務所に収容されて長期間拘束されることになります。
執行猶予を得るには、速やかに弁護士を通じて示談交渉を行い、被害者と示談することが必要です。
ご家族が詐欺罪で逮捕・起訴されたらグラディアトルへご相談ください
最後に、今回の記事のポイントを整理します。
・保釈金とは、被告人の身柄を釈放してもらうために裁判所に預けるお金
・金額の目安は150万〜200万だが、事件の内容や被告人の経済状況によって変わる
・保釈金は、刑事裁判が終わった後、一週間程度で全額返金される
・保釈金が没取されるのは次のようなケース
・正答な理由なく裁判に出頭しない ・証拠を隠滅したり、逃亡したりする ・被害者等の関係者に接触する ・保釈の条件に違反する など |
※保釈金が支払えない場合は、日本保釈支援協会の立替制度の利用する方法もある
以上です。
詐欺事件で逮捕・勾留されたご家族を釈放するには、一刻も早く保釈申請を行い、保釈金を支払ってあげることが必要です。
身柄拘束が長期化するほど、ご家族にかかる負担も甚大なものとなるでしょう。
詐欺事件の保釈申請に不安を感じたら、ぜひ私たちグラディアトル法律事務所へご相談ください。
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