「淫行条例ではどのような行為が処罰対象になっているの?」
「未成年者と性交をしても淫行条例違反にならないケースはある?」
「淫行条例違反と他の犯罪とではどのような違いがあるの?」
淫行条例とは、別名を「青少年健全育成条例」といい、青少年の保護と健全な育成を目的として、各都道府県が制定している条例です。淫行条例は、その名のとおり、未成年者の淫行を禁止しており、違反した人に対しては刑罰が科されます。
ただし、未成年者との淫行であっても、未成年同士の性交、結婚を前提として交際している未成年者との性交など淫行条例違反にならないケースもありますので正確に理解しておくことが大切です。
本記事では、
・淫行条例とは?
・淫行条例で処罰されない4つのケース
・淫行条例犯と他の犯罪との違い
などについてわかりやすく解説します。
ご自身の行為が淫行条例に違反するかどうか不安なときは、専門家である弁護士に判断してもらう必要がありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
目次
淫行条例とは
淫行条例とは、青少年の保護と健全な育成を目的として、各都道府県が制定している条例です。正式名称は、各都道府県により異なりますが「青少年健全育成条例」という名称であるところが多いです。主に未成年者との淫行を規制対象としていることから、「淫行条例」という通称で呼ばれています。
たとえば、東京都には、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」という名称の淫行条例があり、未成年者淫行について、以下のように規定しています。
これに違反した場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
都道府県によって規制内容や罰則に多少の違いはあるものの、ほとんど同じような内容になっています。
淫行条例違反が成立する要件
要件 | 内容 |
---|---|
青少年 | 18歳未満の人を対象とし、被害者の属性や性別を問わない。18歳以上の場合は淫行条例の対象外。 |
みだらな行為 | 未成年者の心身の未成熟に乗じた不当な手段や、性的欲望を満たすために行われる性交等。未成年者の同意があっても成立する可能性がある。 |
性交または 性交類似行為 | 性交、肛門性交、口腔性交、身体の一部や物を膣・肛門に挿入する行為、手淫、裸で抱き合う行為などが含まれる。 |
淫行条例が規制する「淫行」とどのような行為なのでしょうか。以下では、淫行条例違反が成立する要件について説明します。
青少年
青少年とは、18歳未満の人のことをいいます。「青少年=未成年」と考えてもらえればよいでしょう。
淫行条例では、被害者を年齢で限定していますので、18歳以上の人と性交等をしても淫行条例に違反することはありません。また、年齢以外の限定はありませんので、被害者の属性(学生、社会人、無職など)や性別を問わず、18歳未満の未成年者であれば淫行条例の対象となります。
みだらな
淫行条例では、未成年者との性交等のすべてを規制しているのではなく、「みだらな」性交等が規制対象になります。
「みだらな」とは、福岡県の青少年育成条例に関する最高裁判例を参考にすると、以下のような内容を指すものと考えられます(最高裁昭和60年10月23日判決)。
・青少年を誘惑、威迫、欺罔、困惑させるなどその心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為
・青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交または性交類似行為
このような考えを前提にすると、未成年者が性交等について同意していたとしても、淫行条例違反が成立する可能性があります。
性交または性交類似行為
性交または性交類似行為とは、以下のような行為を指します。
・性交
・肛門性交
・口腔性交
・膣や肛門に陰茎以外の身体の一部または物を挿入する行為
・手淫
・裸で抱き合う
淫行条例で処罰されない4つのケース
未成年者との性交または性交類似行為をしたとしても、以下のようなケースは、淫行条例の処罰対象にはなりません。
未成年同士の性交等
未成年同士の性交等について、東京都青少年の健全な育成に関する条例は、以下のような規定を設けています。
(青少年についての免責)
第三十条 この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない。
すなわち、未成年同士の性交等については、淫行条例違反とは扱わないとしています。
他の都道府県の淫行条例でも同様の規定を置いていますので、未成年同士の性交等については、淫行条例では処罰されることはありません。
結婚を前提として交際している未成年者との性交等
淫行条例の処罰対処となる性交等とは、みだらな性交または性交類似行為ですので、結婚を前提として交際している未成年者との性交等であれば「みだらな」性交等とはいえず、淫行条例違反にはあたりません。
ただし、被害者の年齢が13歳未満の場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長である場合には、結婚を前提として交際していたとしても「不同意性交等罪」(刑法177条)が成立しますので、犯罪として処罰の対象になります。
そのため、未成年者と結婚を前提に交際する際には、相手の年齢および相手と自分との年齢差に注意が必要です。
真摯な交際関係にある未成年者との性交等
結婚を前提としていなかったとしても、お互いに自由恋愛の範疇で真摯に交際している場合には、未成年者との性交等があったとしても「みだらな」性交等とはいえませんので、淫行条例で処罰されることはありません。
ただし、未成年者との交際にあたって対価の支払いがある場合には、真摯な交際関係とは評価されず、淫行条例違反や児童買春として処罰される可能性もありますので注意が必要です。
また、結婚を前提とした交際のときと同様に、相手の年齢および相手と自分との年齢差によっては、「不同意性交等罪」(刑法177条)が成立しますので、これも注意が必要です。
未成年者だと知らずにした性交等(※自治体により異なる)
交際相手が年齢を偽るなどして、未成年者だと知らずに性交等をしてしまうことがあります。多くの都道府県では、未成年者との淫行を故意犯として定めていますので、相手が未成年者であることを認識していなかった場合には、淫行の故意がないため淫行条例違反にはなりません。
しかし、たとえば神奈川県の淫行条例では過失犯も処罰する規定となっていますので、未成年者であることに気付ける状況であったのに、必要な注意を行ったため知り得なかった場合には、過失が認められますので、淫行条例違反となります。
このように、未成年者だと知らずにした性交等は、都道府県によって淫行条例違反になるかどうかが異なりますので注意が必要です。
淫行条例違反と他の犯罪との違い
未成年者との性交等をした場合に成立する犯罪には、淫行条例違反以外にも以下のようなものがあります。
罪名 | 行為 | 被害者の年齢 | 法定刑 |
児童買春・児童ポルノ禁止法違反 | 金品を供与または供与する約束をして行う性交等 | 18歳未満 | 5年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
児童福祉法違反 | 支配関係にある人による性交または性交類似行為 | 18歳未満 | 10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科 |
不同意性交等罪 | 同意のない性交または性交類似行為 | 限定なしただし、13歳未満の場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長である場合には、被害者の同意の有無にかかわらず犯罪成立 | 5年以上の有期拘禁刑 |
不同意わいせつ罪 | 同意のないわいせつ行為 | 限定なしただし、13歳未満の場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長である場合には、被害者の同意の有無にかかわらず犯罪成立 | 6月以上10年以下の拘禁刑 |
児童買春・児童ポルノ禁止法違反|児童買春罪
児童買春罪とは、18歳未満の男女に対して、金品を供与または供与する約束をして性交等をした場合に成立する犯罪です。
淫行条例とは異なり、金品の供与または供与の約束が条件となっています。
児童買春罪が成立すると、5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
児童福祉法違反|児童淫行罪
児童淫行罪とは、18歳未満の未成年者(=児童)に対し、児童と支配関係にある大人(教師など)性交や性交類似行為を行った場合に成立する犯罪です。
淫行条例とは異なり、被害者と加害者との間に支配関係があることが要件となります。
児童淫行罪が成立すると、10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
不同意性交等罪
不同意性交等罪とは、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせ、またはそのような状態に乗じて性交等を行う犯罪です(刑法177条)。
淫行条例とは異なり、不同意性交等罪では、被害者との性交等にあたり、以下のような行為または状況が必要になります。
・暴行または脅迫
・精神的、身体的な障害を生じさせること
・アルコールや薬物を摂取させること
・眠っているなど、意識がはっきりしていない状態であること
・拒絶するいとまを与えないこと
・恐怖、驚愕させること
・虐待による心理的反応があること
・経済的、社会的関係の地位に基づく影響力で受ける不利益を憂慮していること
被害者の年齢が13歳未満の場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長である場合には、被害者の同意の有無にかかわらず、不同意性交等罪が成立します。
不同意性交等罪が成立した場合、5年以上の有期拘禁刑に処せられます。
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪とは、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせ、またはそのような状態に乗じてわいせつな行為をする犯罪です(刑法176条)。
淫行条例とは異なり、不同意わいせつ罪では、以下のような行為または状況でわいせつ行為をすることが必要になります。
・暴行または脅迫
・精神的、身体的な障害を生じさせること
・アルコールや薬物を摂取させること
・眠っているなど、意識がはっきりしていない状態であること
・拒絶するいとまを与えないこと
・恐怖、驚愕させること
・虐待による心理的反応があること
・経済的、社会的関係の地位に基づく影響力で受ける不利益を憂慮していること
被害者の年齢が13歳未満の場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長である場合には、被害者の同意の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪が成立します。
不同意わいせつ罪が成立した場合、6月以上10年以下の拘禁刑に処せられます。
淫行がどのような犯罪に該当するかの詳細は、以下の記事もご参照ください。
淫行とはどのような犯罪?成立し得る5つの犯罪とその刑罰を解説
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未成年者と性行為をしてしまい不安を感じている方は、グラディアトル法律事務所にご相談ください。
淫行条例違反などの犯罪の成否を判断できる
未成年者と性交等をすると、被害者の年齢や行為態様、関係性によって成立する可能性のある犯罪が変わってきますし、犯罪が成立しないこともあります。
ご自身のケースが淫行条例違反などの犯罪が成立するかどうかを判断するには、法的知識が不可欠になりますので、まずは弁護士にご相談ください。グラディアトル法律事務所では、24時間365日相談を受け付けておりますので、不安を感じたときはすぐに当事務所までお問い合わせください。
淫行条例違反の疑いがあるときは示談交渉のサポートができる
淫行条例違反の疑いがある場合には、早期に被害者の親との間で示談交渉を行うことが重要です。
しかし、淫行条例違反は、事案の性質上、被害者の親の処罰感情が強く示談交渉が難航するケースも少なくありません。グラディアトル法律事務所では、このような示談交渉が難航する事案について豊富な解決実績がありますので、被害者側の感情にも配慮しながら適切に示談交渉を進めていくことができます。示談の成否は、弁護士の経験の有無によって左右されますので、示談の成立を希望するなら経験豊富な当事務所の弁護士にお任せください。
逮捕や起訴の回避に向けたサポートができる
淫行条例違反で逮捕された場合、その後の勾留も含めると最大で23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。また、淫行条例違反で起訴されてしまうと、99%以上の割合で有罪判決となりますので、前科は避けられません。
逮捕されたり、起訴されてしまうと家族や職場にバレるリスクがあり、実名報道によりその後の人生にも重大な悪影響が生じるおそれがあります。このようなリスクを回避するには、早期に弁護士に相談して、サポートしてもらうことが大切です。
グラディアトル法律事務所では、逮捕や起訴の回避に向けた最適な手段を選択し、迅速に対応いたしますので、まずは当事務所までご相談ください。
淫行を弁護士に依頼する4つのメリットと淫行に強い弁護士の選び方
まとめ
淫行条例は、未成年者とのみだらな性交等を禁止しています。淫行条例違反となる行為をしてしまうと、刑事責任のみならず民事上の賠償責任や日常生活への影響などさまざまなリスクが生じます。
そのようなリスクを最小限に抑えるためにも、まずは淫行事件の弁護に強いグラディアトル法律事務所にご相談ください。