「痴漢は初犯でも逮捕される?」
「痴漢の初犯だと量刑はどのくらいになる?」
「痴漢の初犯でも懲役刑が科されることはある?」
初犯とは、過去に一度も罪を犯したことがなく前科がない状態をいいます。前科がある人と比べると初犯の人の方が不起訴処分になりやすく、量刑も軽い傾向があります。しかし、痴漢は、犯行態様によって成立する犯罪が異なりますので、初犯であっても逮捕・起訴されたり、実刑が科されることもありますので注意が必要です。
本記事では、
・痴漢の初犯でも逮捕される可能性がある
・痴漢の初犯の量刑相場
・痴漢の初犯でも懲役刑になる可能性がある5つのケース
などについてわかりやすく解説します。
初犯だからといって何も行動しないと、逮捕・起訴される可能性もありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
目次
痴漢が初犯でも十分逮捕される可能性がある
痴漢が初犯だからといって、絶対に逮捕されないというわけではありません。
痴漢が初犯でも十分逮捕される可能性があります。
逮捕は、以下の要件を満たした場合に行うことができます。
・被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
・逮捕の必要性があること(逃亡または証拠隠滅のおそれ)
痴漢の初犯と再犯とを比べると、再犯の方が重い罪になる傾向があります。そのため、痴漢の再犯は、それを避けるために逃亡または証拠隠滅をするおそれが認められやすいため、初犯に比べると逮捕される可能性が高くなります。
しかし、初犯であることは逮捕を回避する理由にはなりませんので、初犯であっても逮捕の要件を満たしている場合には、逮捕される可能性も十分にあるといえます。
初犯の痴漢で特に逮捕されやすいケース
痴漢は、初犯でも逮捕される可能性がありますが、どのようなケースが逮捕の可能性が高いのでしょうか。以下では、逮捕の種類ごとに特に逮捕されやすいケースを紹介します。
「現行犯」での痴漢行為による逮捕
現行犯逮捕とは、現に犯罪を行っている、または現に犯罪を行い終わった犯人を逮捕状なしで逮捕する手続きです。痴漢事件の逮捕では、現行犯逮捕になるケースがほとんどといえます。
満員電車などで痴漢をすると、被害者や目撃者などによって取り押さえられ、通報を受けて駆け付けた警察官により警察署に連れて行かれます。通常は、任意同行という形がとられますが、以下のような事情がある場合には、現行犯逮捕となる可能性もあります。
・現場から逃げようとして暴れている
・痴漢を否認している
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悪質性の高い痴漢行為での「後日逮捕」
後日逮捕とは、犯罪行為後に捜査を進め、犯人が特定できた段階で逮捕状に基づいて逮捕する手続きです。逮捕状に基づく逮捕が通常の手続きですので、後日逮捕のことを「通常逮捕」と呼ぶこともあります。
痴漢事件では、逮捕に至るケースは現行犯逮捕がほとんどであり、後日逮捕になるケースは少ないといえます。しかし、以下のような悪質性の高い痴漢行為であった場合には、重い刑罰を避けるために逃亡または証拠隠滅をするおそれがありますので、後日逮捕になる可能性もあります。
・着衣の中に手を入れて直接身体を触るケース
・被害者の膣や肛門に指を入れるケース
・痴漢行為の際に被害者に怪我を負わせたケース
・1人の被害者に対して執拗に痴漢を繰り返すケース
なお、後日逮捕のタイミングには、法律上の決まりはありませんので、「もう逮捕されることはないだろう」と思い始めたころに逮捕されることもあります。
痴漢で適用される可能性のある罪名5つ
痴漢は、具体的な犯行態様や結果によって成立する犯罪が異なります。以下では、痴漢で適用される可能性のある5つの罪名を説明します。
迷惑防止条例違反
迷惑防止条例とは、公衆に対する迷惑行為を防止する目的で、都道府県ごとに定められている条例をいいます。刑法などの法律とは異なり、実際の規定内容や刑罰は、都道府県によって異なります。
たとえば、東京都では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」において、痴漢行為に関して以下のような規制をしています。
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に
人の身体に触れること。
迷惑防止条例違反となる痴漢をすると、以下のような刑罰が科されます(※東京都の場合)
・常習性のない痴漢行為……6月以下の懲役または50万円以下の罰金
・常習性のある痴漢行為……1年以下の懲役または100万円以下の罰金
痴漢は迷惑防止条例違反?不同意わいせつ罪との違いや示談を解説
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪とは、以下のような行為または事由により、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせたり、その状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(刑法176条1項)。
・暴行または脅迫
・心身の障害
・アルコールまたは薬物の摂取
・睡眠または意識不明瞭
・拒絶するいとまを与えない
・恐怖または驚愕させる
・虐待
・立場による影響力
典型的な痴漢行為に関しては、迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪のいずれかが成立します。両者の成立要件は、明確に区別できるわけではありませんが、一般的な傾向として着衣の上から身体を触るといった比較的軽微な痴漢は迷惑防止条例違反、着衣の中に手を入れて直接身体を触るといった悪質な痴漢は不同意わいせつ罪が成立します。
不同意わいせつ罪となる痴漢をすると、6月以上10年以下の拘禁刑に処せられます。
不同意わいせつ致傷罪
不同意わいせつ致傷罪とは、不同意わいせつ罪となる行為により被害者に怪我を負わせた場合に成立する犯罪です(刑法181条1項)。
電車やバス内での痴漢だと被害者に怪我を負わせるまでのケースは少ないですが、路上痴漢では、痴漢行為の際に被害者を押し倒したり、無理やり引っ張るなどして被害者に怪我を負わせるケースがあります。このような場合には、不同意わいせつ致傷罪が成立することになります。
不同意わいせつ致傷罪となる痴漢をすると、無期または3年以上の懲役に処せられます。
不同意性交等罪
不同意性交等罪とは、不同意わいせつ罪と同様の行為または事由により、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態になることに乗じて、性交等をした場合に成立する犯罪です(刑法177条1項)。
不同意性交等罪の「性交等」とは、以下の行為を指します。
・性交
・肛門性交
・口腔性交
・膣や肛門に陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為でありわいせつなもの
痴漢行為のうち、被害者の性器に指を入れるなどの悪質な痴漢行為については、不同意性交等罪で処罰される可能性があります。
不同意性交等罪となる痴漢をすると、5年以上の有期拘禁刑に処せられます。
不同意性交等致傷罪
不同意性交等致傷罪とは、不同意性交等罪となる行為により被害者に怪我を負わせた場合に成立する犯罪です(刑法181条2項)。
被害者の膣や肛門に指を入れるなどの痴漢行為の際に、被害者の身体を傷つけてしまった場合には、不同意性交等致傷罪が成立する可能性があります。
不同意性交等致傷罪となる痴漢をすると、無期または6年以上の懲役に処せられます。
以下に、提供された情報を項目と量刑の相場でまとめたテーブルを作成しました。
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痴漢の初犯の量刑はどのくらい?
痴漢により有罪となると、各犯罪の法定刑の範囲内で具体的な刑罰が科されます。では、実際の痴漢の量刑はどのくらいになるのでしょうか。以下では、痴漢で成立する犯罪ごとの量刑相場を説明します。
迷惑防止条例違反|罰金20~30万円程度
迷惑防止条例違反となる痴漢は、初犯であれば起訴されたとしても、略式手続きより罰金刑で済むことがほとんどです。
痴漢の罰金額としては、20~30万円程度が相場になります。
不同意わいせつ罪|懲役2~3年程度
不同意わいせつ罪は、迷惑防止条例違反の痴漢とは異なり、法定刑に罰金刑がありませんので、起訴されると拘禁刑(懲役刑)一択となります。
法務省が公表している「性犯罪の量刑に関する資料」によると、不同意わいせつ罪(強制わいせつ罪)の一般的な量刑としては、懲役2~3年程度が相場になります。
痴漢の初犯であれば、相場の中でも比較的軽い刑が選択されることになるでしょう。
不同意わいせつ致傷罪|懲役3~5年程度
法務省が公表している「性犯罪の量刑に関する資料」によると、不同意わいせつ致傷罪(強制わいせつ致傷罪)の一般的な量刑としては、懲役3~5年程度が相場になります。
痴漢の初犯であれば、相場の中でも比較的軽い刑が選択されることになるでしょう。
不同意性交等罪|懲役3~7年程度
法務省が公表している「性犯罪の量刑に関する資料」によると、不同意性交等罪(強制性交等罪)の一般的な量刑としては、懲役3~7年程度が相場になります。
痴漢の初犯であれば、相場の中でも比較的軽い刑が選択されることになるでしょう。
不同意性交等致傷罪|懲役5~15年程度
法務省が公表している「性犯罪の量刑に関する資料」によると、不同意性交等致傷罪(強制性交等致傷罪)の一般的な量刑としては、懲役5~15年程度が相場になります。
痴漢の初犯であれば、相場の中でも比較的軽い刑が選択されることになるでしょう。
初犯でも懲役刑になる可能性がある5つのケース
軽微な痴漢行為であれば、初犯であることも考慮して起訴猶予や罰金刑で済むケースが多いですが、以下のような悪質な痴漢行為に関しては、初犯であっても懲役刑になる可能性があります。
常習的に痴漢を行っていたケース
初犯とは、前科がない状態をいいますが、初犯だからといって痴漢が初めてというわけではありません。これまで常習的に痴漢を行っており、たまたま捕まっていなかっただけというケースもあります。
迷惑防止条例違反となる痴漢でも常習的な痴漢については、通常の痴漢よりも厳しく処罰されますので、罰金刑ではなく懲役刑が選択される可能性があります。
特定の人物に対して繰り返し痴漢をしていたケース
特定の人物に対して繰り返し痴漢をしていた場合、被害者も犯人のことを覚えていますので、過去の痴漢行為も含めて処罰の対象となる可能性があります。
このようなケースは初犯であっても悪質な痴漢行為といえますので、迷惑防止条例違反ではなく、不同意わいせつ罪が適用され懲役刑になるでしょう。
長時間にわたり執拗に痴漢をしていたケース
着衣の上からの痴漢行為であったとしても、長時間にわたり執拗に胸や臀部を触り続けるといった態様であった場合には、悪質な痴漢行為として、迷惑防止条例違反ではなく不同意わいせつ罪が適用される可能性があります。
不同意わいせつ罪には、罰金刑はありませんので、起訴されれば懲役刑になるでしょう。
衣服の中に手を差し入れて痴漢をしていたケース
衣服の中に手を差し入れて直接被害者の身体を触るといった痴漢行為は、悪質な痴漢行為にあたりますので不同意わいせつ罪が適用されます。また、触った部分が被害者の膣や肛門であった場合には、より重い不同意性交等罪が適用される可能性もあります。
不同意わいせつ罪および不同意性交等罪には、罰金刑はありませんので、起訴され有罪になれば初犯であっても懲役刑になるでしょう。
路上痴漢で被害者に怪我をさせてしまったケース
路上痴漢で被害者を押し倒したり、被害者が逃げる際に転倒したようなケースでは、不同意わいせつ致傷罪や不同意性交等致傷罪が成立する可能性があります。
いずれも痴漢行為の中では相当悪質な行為といえますので、起訴され有罪になれば初犯であっても懲役の実刑となる可能性も十分にあるでしょう。
悪質な痴漢行為は懲役刑になる可能性あり!懲役刑の回避法を徹底解説
痴漢で懲役刑になっても初犯なら執行猶予はつく?
痴漢で懲役刑になったとしても、執行猶予が付けば直ちに刑務所に収容されることはありませんので、通常の社会生活を送ることができます。以下では、痴漢で執行猶予が付く条件などについて説明します。
執行猶予が付くための条件
執行猶予とは、刑の執行を一定期間猶予することができる制度です。有罪判決が言い渡されたとしても、執行猶予が付けば直ちに刑務所に入らずに済みますので、通常の社会生活を送ることができます。
このような執行猶予は、以下の条件を満たす場合につけることができます。
・判決内容が3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金
・禁錮以上の刑に処せられたことがない
・禁錮以上の刑に処せられたことがあっても5年よりも前で
初犯であれば執行猶予の可能性が高い
執行猶予が付く条件を満たしたとしても、執行猶予を付けるかどうかは裁判官の判断に委ねられています。
一般的には初犯であれば執行猶予が付く可能性が高くなりますので、痴漢で起訴され有罪となったとしても、執行猶予が付く可能性が高いといえます。
痴漢の初犯で実刑となった事例
痴漢の初犯は、不起訴や罰金刑で済むケースも少なくありませんが、犯行態様によっては初犯であっても実刑判決となることもあります。
2024年9月に電車内で通学中の女子高生(当時15歳)のお尻を触るなどして、不同意性交等罪に問われた被告人に対し、裁判所は、懲役4年の実刑判決を言い渡しました。この事案は、女性のお尻を触るだけでなく、下着の中に手を入れて性器にも触れたというものであり、初犯ではあったもののこれまで50回程度痴漢行為を繰り返していたとのことです。
従来であれば、迷惑防止条例違反または強制わいせつ罪で処罰されていた痴漢行為についても、刑法改正により不同意性交等罪の対象になるものも増えましたので、痴漢の初犯であっても、一発で実刑になることもある点に注意が必要です。
痴漢の初犯なら示談により不起訴となる可能性が高い!
痴漢の初犯であれば、被害者と示談を成立させることにより不起訴処分(起訴猶予)となる可能性が高くなります。痴漢事件で起訴されてしまうと、ほとんどのケースで有罪となってしまいますので、前科を回避するには、検察官による起訴または不起訴の判断の前に被害者と示談を成立させることが重要になります。
もっとも、痴漢の加害者本人では、被害者に接触しようとしても拒否されてしまったり、被害者の連絡先がわからず示談交渉ができないといったケースも珍しくありません。痴漢事件で被害者との示談を進めるには、痴漢事件に強い弁護士のサポートが不可欠となりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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痴漢事件の弁護ならグラディアトル法律事務所にお任せください
痴漢事件の弁護を依頼するのであれば、痴漢事件に強い弁護士に依頼するのが重要なポイントになります。特に、痴漢の初犯であれば適切な弁護活動を行うことで、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなりますので、誰に依頼するかによって結果は大きく変わってくるでしょう。
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痴漢事件は迷わず弁護士を呼べ!理由と早期に不起訴獲得した事例
まとめ
痴漢の初犯であれば、被害者との示談を成立させることができれば不起訴処分を獲得できる可能性が高いといえます。ただし、痴漢行為の態様によっては、初犯であってもいきなり実刑になるケースもありますので、初犯だからといって安心していてはいけません。
ご自身の事案でどのような犯罪が成立し、どのような刑罰が想定されるのかを正確に把握するためにも、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
痴漢をしてしまったという方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。