傷害罪での罰金刑の相場とは?罰金刑が科されるケースや手続きを解説

傷害罪の罰金刑の相場と罰金刑になるケース
弁護士 若林翔
2024年05月07日更新

「傷害罪の刑罰で罰金刑が科される割合はどのくらいなの?」

「傷害罪の罰金刑としてはいくらが相場なの?」

「傷害罪の罰金刑はどのような手続きで科されるの?」

傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められていますので、懲役刑または罰金刑のいずれかが科されます。どのような刑罰が選択されるかは、具体的な事案によって異なりますが、罰金刑が科されるケースが多いです。

法務省が公表している「令和5年犯罪白書」によると、起訴された事件のうち、罰金刑が科されたのは68%罰金刑の量刑相場は10~50万円となっています。

本記事では、

・傷害罪が罰金刑になる確率と量刑相場
・傷害罪が罰金刑になる可能性のある代表的な3つのケース
・傷害罪で罰金刑が科される手続きの流れ

などについてわかりやすく解説します。

罰金も前科となりますので、罰金を回避するためには早期に被害者と示談を成立させることが重要です。被害者との示談をお考えの方は、まずは弁護士にご相談ください。

 

傷害罪が罰金刑になる確率は68%|統計からみる傷害罪の量刑相場

 

傷害事件を起こしてしまった場合、どのような刑罰が科されるのでしょうか。以下では、傷害罪で罰金刑が科される確率と傷害罪の量刑相場について説明します。

 

傷害罪で罰金刑が科される確率

法務省が公表している「令和5年犯罪白書」によると、検察官により起訴(公判請求・略式命令請求)された傷害事件は5429件(公判請求:2042件、略式命令請求:3387件)ありますが、刑罰の内訳をみると以下のようになっています。傷害罪での終局処理人員は、以下のようになっています。

・懲役刑……1796件

・罰金刑……3728件(公判請求での罰金:341件、略式命令による罰金:3387件)

傷害罪で起訴された事件における罰金刑の割合

引用:「令和5年犯罪白書 資料2−2

これらのデータに基づき計算すると、起訴された事件全体からみた罰金刑の割合は68%ということになります。

 

傷害罪の罰金刑の量刑相場

法務省が公表している「令和5年犯罪白書」の統計データによると、傷害罪の罰金刑の量刑相場は、以下のようになっています。なお、以下の表には略式命令請求となった事件は含まれていません。

傷害罪の罰金刑の量刑相場

引用:「令和5年犯罪白書P47 2−3−3−4表第一審における課金・科料科刑状況(罪名別)」

 

このグラフからは、傷害罪の罰金刑は、10~50万円の範囲に集中していることがわかります。そのため、傷害罪の罰金刑の量刑相場としては、10~50万円程度といえるでしょう。

 

傷害罪で罰金刑になるケースとは?代表的な3つのケースを紹介

傷害罪で罰金刑になる代表的なケース

傷害罪は、罰金刑になるケースが多いですが、その中でも罰金刑になりやすい代表的な3つのケースを紹介します。

 

同種前科がないケース

前科前歴の有無は、傷害罪の量刑を決める際の考慮要素の一つになります。過去にも傷害罪を犯して刑罰が科されている人が再び傷害罪を犯したような場合、再犯のおそれが高く、更生の可能性が低いと考えられるため、量刑判断では刑を加重する方向で考慮されます。

他方、同種前科がない場合や初犯であった場合には、再犯のおそれが低く、更生の可能性が高いとして、懲役刑ではなく罰金刑(または不起訴)となる可能性が高いです。

 

犯行態様が悪質ではないケース

犯行態様の悪質性は、量刑判断において重要な要素の一つとなります。傷害事件では、凶器の有無、暴行の頻度、暴行の箇所、計画性の有無などが考慮され、以下のような事情がある場合には、犯行態様が悪質ではないと評価されます。

  • ・ナイフなどの凶器を利用せず、素手での暴行
  • ・1回限りの単発的な暴行
  • ・頭部などの急所以外の部位への暴行
  • 計画性のない突発的な暴行

犯行態様が悪質ではないと評価されれば、懲役刑ではなく罰金刑(または不起訴)となる可能性が高いです。

 

被害者に生じた怪我の程度が軽微であるケース

傷害罪は、被害者に対して怪我を負わせる犯罪ですので、被害者に生じた怪我の程度も量刑判断の考慮要素となります。

被害者に生じた怪我が打撲やかすり傷程度であれば、比較的軽微な怪我といえますので、懲役刑ではなく罰金刑(または不起訴)となる可能性が高いです。他方、被害者に生じた怪我が重篤な後遺障害を伴うような重い怪我であった場合には、罰金刑ではなく懲役刑が科される可能性があります。

 

傷害罪で罰金刑が科される手続きの流れ|略式手続き

傷害罪で罰金刑が科される略式手続きの流れ

傷害罪で罰金刑が科される場合、通常の公判手続きではなく、略式手続きという簡易な手続きにより罰金が科されるケースが多いです。以下では、罰金刑が科される略式手続きの流れについて説明します。

 

検察官による略式手続きの説明

略式手続きとは、検察官による公判請求という正式な裁判手続きによらずに、書面審理のみで罰金または科料の刑罰を科す特別な裁判手続きです。通常の刑事裁判と比べて、略式手続きには、以下のようなメリットがあります。

・裁判所に出廷する必要がないため被告人の負担が少ない

・裁判が公開されないため第三者に見られる心配がない

・書面審理のみで終了するため手続きが早く終わる

このような略式手続きは、すべての事件が対象なるわけではなく、以下の要件を満たす必要があります。

・簡易裁判所の管轄に属すること

・100万円以下の罰金または科料を科す事件であること

・被疑者が略式手続きに同意していること

事件を担当する検察官が略式手続きを相当と判断した場合には、被害者に対して略式手続きの説明を行います。

 

被疑者による略式手続きへの同意

検察官から略式手続きの説明を受けた、被疑者は、略式手続きを利用するかどうかを検討します。略式手続きを利用することに同意をする場合は、検察官から提示された略式手続きに同意する旨の書面に署名・押印を行います。

略式手続きを利用するためには、被疑者の同意が要件となりますので、同意がなければ略式手続きを進めることができません。また、被疑者の同意は、必ず書面により行わなければなりませんので、口頭での同意だけでは足りません。

 

略式起訴

検察官は、被疑者から略式手続きへの同意が得られたら、簡易裁判所に略式請求の手続きを行います。これを「略式起訴」といいます。略式起訴は、起訴状に略式命令を請求する旨の文言が加えられ、被害者の同意書が添付されます。

 

裁判所による略式命令

簡易裁判所が略式命令を相当と判断した場合、略式起訴から14日以内に、略式命令が下されます。略式命令の内容に不服があるときは、略式命令の告知を受けた日から14日以内であれば、正式な公判手続きを求めることが可能です。

なお、簡易裁判所が略式命令を不相当と判断した場合には、略式手続きではなく正式な裁判が開かれることになります。

 

罰金の納付

身柄拘束をされていない在宅事件の場合には、裁判所から略式命令書と罰金の納付書が送られてきますので、期限内に罰金の納付を行わなければなりません。

逮捕・勾留されていた場合には、略式命令に従い罰金を納付することで刑の執行が終了し、直ちに釈放となります。ただし、身柄事件では本人が罰金を支払うだけの現金を持っていないことも多いため、事前に検察官から家族に連絡が行き、罰金の支払いのための現金の準備を促されることが多いです。

なお、罰金が払えない場合には、労役場留置という身柄拘束の措置がとられます。労役場では、一般的に1日あたり5000円の刑務作業を行い、それを罰金の支払いに充てることになります。たとえば、罰金額が20万円であった場合には40日間の労役場留置となります。

 

傷害罪での罰金刑を回避し不起訴になるには被害者との示談が重要

傷害罪での罰金刑を回避し不起訴になるには被害者との示談が重要

傷害罪は、罰金刑が科されるケースが多いですが、罰金刑も前科となります。前科が科されることにより、職業や資格への影響が生じたり、解雇などの社会的制裁を受けるリスクが生じますので、できる限り罰金刑を回避する方向で考えていかなければなりません。

そのためには、被害者との示談を成立させることが重要です。

被害者と示談が成立すれば、処罰感情の鎮静化、被害者に生じた損害の回復がなされたことになりますので、量刑を決める際に有利な事情として扱われます。検察官が起訴または不起訴の判断をする前に、被害者との示談を成立させることができれば、不起訴処分を獲得できる可能性も高くなります。

ただし、傷害事件では怪我をさせられた被害者は、被疑者に対して、恐怖心や嫌悪感を抱いていますので、当事者同士の話し合いではスムーズに示談できない可能性もあります。そのため、被害者との示談交渉を行う際には、弁護士のサポートを受けながら進めていくのがおすすめです。

 

傷害罪で不起訴処分を目指すならグラディアトル法律事務所に相談を

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傷害罪で不起訴処分を目指すなら、傷害事件の解決実績が豊富なグラディアトル法律事務所にご相談ください。

 

刑事事件に強い弁護士が被害者との示談交渉をサポート

 

傷害事件の加害者から被害者に対して連絡を取ろうとしても拒否されるケースが多いです。また、お互いに面識がない場合には被害者の連絡先がわからず連絡がとれないというケースもあります。

弁護士であれば、加害者の代理人として被害者と交渉をすることができます。被害者としても直接加害者と顔を合わせる必要がありませんので、安心して示談交渉に臨むことができます。また、被害者の連絡先がわからないというケースでも、弁護士であれば捜査機関を通じて被害者と連絡を取ることができます    

グラディアトル法律事務所では、傷害事件をはじめとしたさまざまな刑事事件を取り扱っており、被害者との示談交渉にも豊富な実績と経験を有しています。被害者の感情にも配慮して示談交渉を進めることで、スムーズに示談を成立させることが可能です。

 

迅速に身柄解放に向けた弁護活動に着手

傷害事件を起こしてしまい、逃亡または罪証隠滅のおそれが認められる場合には、逮捕・勾留により身柄拘束されてしまう可能性があります。逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間にも及びますので、被疑者に生じる不利益は計り知れないものとなります。

弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や捜査機関・裁判所への働きかけなどにより、早期の身柄解放に向けた弁護活動に着手することができます。身柄拘束による不利益を最小限に抑えるためには、早期に弁護士に依頼することが重要です。グラディアトル法律事務所では、相談をした当日または翌日に迅速に対応することが可能ですので、まずは当事務所までご相談ください。

 

初回相談無料・24時間365日全国対応

グラディアトル法律事務所では、刑事事件の法律相談については、初回相談料無料で対応しています。経済的な理由で弁護士への相談を躊躇している方でも安心してご相談ください。

また、刑事事件はスピード勝負といわれるくらい迅速な対応が重要となります。当事務所では、24時間365日全国対応をしていますので、お困りのことがありましたら、すぐにご連絡ください。

 

まとめ

傷害罪で起訴された事件全体からみた罰金刑の割合は68%ですので、傷害罪は罰金刑が一般的な犯罪といえます。罰金刑が想定される事件では、被害者との示談など適切な弁護活動を行うことで、不起訴処分を獲得できる可能性もあります。そのため、早期に弁護士に依頼をして、適切な弁護活動を進めてもらうことが大切です。

傷害事件を起こしてしまったという方は、早めにグラディアトル法律事務所までご相談ください。



弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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