「痴漢の冤罪がどうしても許せない」
「名誉毀損や虚偽告訴は成立しないの?」
「どうにかして相手を訴え返したい」
痴漢で訴えられると、たとえ冤罪であったとしても大きな損失を被ります。
・精神的なダメージ
・家族や友人からの信頼
・会社での信用
・経済的な損失 など
自分は全く悪くないにも関わらず、精神的・経済的にダメージを受けてしまい、納得がいかないという方も多いでしょう。
痴漢冤罪で相手を訴え返す方法は次の3つです。
ただしいずれの方法でも、痴漢の冤罪について、被害者にも責任があったことを証明しなればなりません。
立証は簡単ではないため、痴漢に強い弁護士に相談することが不可欠です。
そこで本記事では、次の点を取り上げました。
・名誉毀損や虚偽告訴で相手を訴え返す方法
・痴漢冤罪で虚偽告訴が成立した裁判例
・痴漢冤罪に強い弁護士の選び方
痴漢冤罪が許せず、相手を訴え返したいと考えている方は、是非ご一読ください。
目次
痴漢冤罪で名誉毀損・虚偽告訴は成立する?相手を訴え返す3つの方法
痴漢の濡れ衣を着せられた場合、相手を訴えたいと思うのも無理はありません。
もしも、相手が冤罪であることを知りながらわざと訴えていた場合は、次のような方法で訴え返すことができます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
名誉毀損罪で訴える|刑事責任を追求する
1つ目の方法は、名誉毀損の刑事責任を追求することです。
名誉毀損罪が成立する要件は、刑法230条で次のように決まっています。
※第230条(名誉毀損) 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。 |
たとえば、電車やショッピングモールの中など、不特定多数の人々が見ている中で
「この人痴漢です!」
と訴えることは、公然と事実を摘示して、人の名誉を毀損することに該当します。
そのため、客観面だけで考えると、痴漢冤罪によって名誉毀損罪が成立するのです。
ただし、相手の刑事責任を追求するには、名誉毀損に対する故意が必要です。
具体的には「相手が冤罪であることを知りながら、わざとあなたを痴漢で訴えてきた」といった事情が求められます。
虚偽告訴罪で訴える|刑事責任を追求する
2つ目の方法は、虚偽告訴罪として刑事責任を追求することです。
虚偽告訴が成立するケースは、刑法172条で定められています。
※第172条(虚偽告訴等) 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する。 |
虚偽告訴で最も問題となりやすいのが、「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で」と言えるのかという点です。
単に「痴漢が冤罪だった」という事実だけでは、相手を虚偽告訴で訴えることはできません。
・示談金を払わせる目的で、痴漢冤罪をでっち上げていた ・あなたに恨みがあって、刑を受けさせる目的で痴漢だと嘘を付いていた |
上記のような理由があった場合にのみ、虚偽告訴の刑事責任を追求することができます。
不法行為で損害賠償・慰謝料請求をする|民事上の請求
3つ目の方法は、相手に対して、損害賠償や慰謝料を請求することです。
痴漢の冤罪で訴えられたとき、あなたはきっと言葉では言い表せない程の苦痛を味わったでしょう。
・心に大きなダメージを負った ・何日も留置場に拘束された ・家族や友人からの信頼を失った ・会社から解雇されそうになった ・仕事を何日も休むことになった ・お店の営業がストップした 等 |
精神的にも、経済的にも大きなダメージを被ったはずです。
このような不利益が、相手の故意・過失によって生じたと立証できる場合は、相手の不法行為責任(民法706条)を追求することができます。
請求が認められると、冤罪に対する慰謝料や賠償金を支払ってもらえるでしょう。
ただし民事事件では、相手の女性に故意・過失があったことを、あなたが証明しなければなりません。
法律上は請求できても、裁判で認められるのはかなり難しいです。
慰謝料や損害賠償を請求する場合は、必ず痴漢事件に強い弁護士を見つけて相談することをおすすめします。
痴漢冤罪で被害者の責任を証明するのは難しい
ここまで、痴漢の濡れ衣を着せられた場合に、名誉毀損や虚偽告訴、民事裁判で訴えることができると説明しました。
いずれのケースでも、訴え返すには相手に一定の責任があったことが必要です。
冤罪が不可抗力で発生したのではなく、被害者にも故意や過失があったことが求められるのです。
それでは、具体的にどのようなケースで、相手に故意・過失があったと判断されるのでしょうか?
裁判例では、痴漢冤罪で損害賠償請求が認められる基準について、次のように示されています。
捜査機関に対し,特定の人物がある犯罪の犯人であると申告し,あるいは告訴することは,その対象となった者の名誉をはじめ種々の法益に甚大な損害を与える蓋然性のある行為であるから,告訴等をする者は,十分な注意を持って犯人と対象との同一性を確認しなければならず,これを怠った場合には,被告訴者等に対し,不法行為責任を負うというべきである。 もっとも,被害者が捜査機関の捜査に対して協力することは,刑事政策上望ましいことであるから,告訴等をする者にあまりに高い注意義務を課すことは相当ではなく,通常人であれば被告訴者等が犯人であると信じるであろう相当の根拠に基づいて被告訴者等が犯人であると信じ,告訴等を行った場合には,告訴等を行った者には過失がないと言うべきである。(参照:東京地判平成15年2月17日) |
つまり、痴漢の冤罪では、被害者側に高い注意義務が課されているわけではありません。
必要とされているのは、「通常人であれば被告訴者等が犯人であると信じるであろう相当の根拠」です。
「常識的に考えて、近くにいたこの人が痴漢っぽい」といった程度の根拠さえあれば、「被害者に過失は無かった」と判断される可能性が高いのです
このような基準で、相手の故意・過失を立証するには、かなり難しいです。
あなたが痴漢冤罪により失った名誉を回復させたいのであれば、痴漢冤罪の解決実績を持った弁護士に相談しましょう。
難しいケースだからこそ、痴漢を得意とする弁護士に依頼しないとスムーズに解決できる可能性は低くなります。
痴漢冤罪で虚偽告訴が認められた判例
痴漢冤罪で、被害者を訴えることは簡単ではありません。
しかし過去には、痴漢冤罪によって虚偽告訴罪が成立した判例もいくつも存在しています。
実際に、痴漢冤罪で「虚偽告訴罪」が成立した判例を紹介します(大阪地判平成20年8月8日)。
(事件のポイント)
・電車内で痴漢をされたと嘘を付き、虚偽告訴罪が成立した。 ・被告人は「近くにいた男が痴漢をしてきた」と警察に訴えた。 ・目撃者も存在しており「その男が女性のお尻を撫で回していた」と証言した。 ・しかし、男性が痴漢をした事実はなく、被害者の計画的な犯行だった。 ・目撃者も女性の共犯者だった。 |
(罪となるべき事実)※抜粋
(大阪市営地下鉄御堂筋線)天王寺駅駅長室において,痴漢発生の通報を受けて駆けつけた警察員らに対し,同線で乗り合わせた乗客であるC(当時58歳)が被告人の身体に触った事実はないのに,Cが刑事処分を受けることを認識しながら,被告人が「近くにいた男が,服の上から私の下腹部やお尻を触ってきました。」旨申し向け,Aが「女性の後ろに立っていた男が,女性のお尻を触っていました。撫で回すように触っていました。僕は男の腕をつかみ,痴漢された女性と一緒に駅長室に連れて来ました。」「あの男が痴漢の犯人です。」旨申し向け,Cが大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反をした旨の虚偽の被害申告をし,もって,人に刑事処分を受けさせる目的で虚偽の申告をした。 |
(裁判所の判断)※抜粋
被告人は,Aとの間で,予め男性客を痴漢犯人に陥れるための役割分担を決めた上,Aの助言に従いスカートを履いて,痴漢にねらわれ易い外観をとり,地下鉄に乗って帰宅途中の中年男性にねらいをつけて,互いの身体が接触するほどの位置に佇立した上,同人に身体を触ったなどと嘘を言い,驚いて反論を試みようとした同人にすかさず近づいたAが,触るのを見たなどと嘘を言って加勢し,被害者を駅長室に連れて行き,同室において,臨場した警察官らに対し,被告人があたかも痴漢の被害に遭ってショックを受けている被害女性を演じつつ,架空の被害事実を申告し,Aにおいても,犯行を目撃した正義感の強い若者であるかのように演じることによって,虚偽告訴の犯行に及び,被害者に濡れ衣を着せて府条例違反の罪で逮捕させるに至ったものであって,計画的かつ巧妙で悪質な犯行である。 〜省略〜 被害者は,全く身に覚えのないのに,電車内における痴漢という極めて不名誉な罪を突然着せられ,被告人とAの巧妙な立ち回りから,必死に弁解するも聞き入れられずに,そのまま府条例違反の犯人として逮捕され,丸1日近く警察署留置施設に収容されるに至ったもので,本件が平穏な社会生活を送っていた被害者に大きな打撃と屈辱を与え,その家族にも多大の衝撃と心労をもたらしたことは明らかである。 |
この事件では、被害者の女性が極めて悪質であったため、虚偽告訴罪が成立しました。
痴漢の犯人にされてしまった男性の名誉も、ある程度は回復されたことでしょう。
このように、明らかに被害者に悪意があったようなケースでは、相手を訴え返すことで、あなたの名誉を回復させることができます。
痴漢冤罪が許せない場合は、泣き寝入りせずに弁護士に相談しましょう。
名誉毀損・虚偽告訴で訴える場合の弁護士の選び方
痴漢冤罪で、相手に明らかな悪意があるようなケースでは、名誉毀損・虚偽告訴などで相手を訴えることができます。
しかし、相手に故意・過失があったことを証明することは簡単ではありません。
訴えを成功させるには、痴漢冤罪事件に強い弁護士を選ぶことが必要です。
具体的には、次の3点を意識して弁護士を選ぶとよいでしょう。
痴漢冤罪事件に取り組んだ経験が豊富
最も大切なポイントは、痴漢冤罪事件に取り組んだ経験の豊富さです。
この記事でもお伝えしたとおり、痴漢冤罪で相手に故意・過失があったと認めてもらうことはかなり難しいです。
痴漢事件の特性を十分に理解したうえで対応しないと、あなたが望む結果を得ることはできません。
経験豊富な弁護士であれば、次のようなメリットが期待できます。
・痴漢冤罪特有の問題点を熟知している ・痴漢冤罪で、効果的な立証方法を知っている ・裁判所の心証を有利にする術を心得ている |
上記のようなノウハウを持つ弁護士を選ぶことで、勝訴の可能性を高めることができます。
弁護士を選ぶ際は、痴漢冤罪案件の経験の有無を必ず確認しておきましょう。
スピーディに対応してくれる
痴漢冤罪で失った名誉は、一刻も早く晴らしたいものです。
弁護士選びでは、迅速な対応が期待できるかどうかもチェックしましょう。
スピーディな対応が期待できる弁護士には、次のような特徴があります。
・初回相談から迅速に動いてくれる ・24時間365日、相談の受付を行っている ・場所や時間を選ばずに対応してくれる 等 |
痴漢冤罪から時間が経つほど、相手を訴え返すことは難しくなります。
できるだけ迅速に対応できる弁護士を選ぶことが大切です。
最後まで諦めずに闘ってくれる
弁護士選びでは、粘り強く事件に取り組む姿勢も重視したいポイントです。
・どんなに難しい事件でも決して投げ出さない ・あらゆる可能性を追求して、最善の結果を目指す ・依頼者の立場に立ち、深く共感してくれる |
依頼者に寄り添い、熱意をもって事件に取り組んでくれる弁護士でなければ、痴漢冤罪で相手を訴え返すことはできません。
過去の実績に加え、このような弁護士としての姿勢や人となりもしっかりと見極めることが必要です。
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【Q&A】痴漢冤罪による名誉毀損・虚偽告訴のよくある質問
痴漢冤罪を名誉毀損・虚偽告訴で訴えることはできる?
痴漢冤罪は名誉毀損・虚偽告訴で訴えることができます。
ただし、痴漢冤罪が、被害者の故意や過失であることが必要です。
ケースによって異なりますので、まずは一度ご相談ください。
名誉毀損・虚偽告訴で訴える以外に方法はある?
民事裁判で、被害者の女性に慰謝料・損害賠償を請求できる可能性があります。
刑事告訴が無理でも、民事裁判で請求が認められる場合もある?
はい。刑事と民事は異なるため、刑事告訴が無理でも、民事上の請求(慰謝料・損害賠償)が認められる可能性はあります。
痴漢冤罪で警察を訴えることはできる?
違法捜査があった場合は、国家賠償法に基づく損害賠償を請求できます。
ただし、請求が認められるケースは少ないです。
また「嫌疑なし」で不起訴となったり、刑事裁判で無罪判決が出たりすると、補償金を受け取れる場合もあります。
報道されたネット記事やSNSの投稿は削除してもらえる?
冤罪、すなわち事実ではない記事・投稿となるので、名誉毀損やプライバシー侵害等を理由に削除請求が可能です。
※ネット記事やSNSを削除する方法は、次の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
最後に、今回の記事のポイントを整理します。
【痴漢冤罪で相手を訴え返す方法は3つ】
① 名誉毀損罪で訴える ② 虚偽告訴罪で訴える ③ 民事上の慰謝料や損害賠償を請求する |
・痴漢冤罪で、被害者に責任があったことを証明するのは難しい
・痴漢冤罪で訴え返すなら、痴漢事件に強い弁護士への相談が必要
【痴漢冤罪で訴え返す場合の弁護士の選び方】
・痴漢冤罪の解決実績があるか ・スピーディに対応してくれるか ・最後まで諦めずに戦ってくれるか |
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