公共の場で下半身などを露出すると、3つの法律に違反する可能性があります。
ただし、「人前で服を脱ぐ=露出」と画一的に判断されるわけではありません。
「露出」に当たるかは、公然性・わいせつ性・社会通念など、様々な要素が考慮されて判断されるのです。
例えば、深夜の公園、駐車場、路上など、不特定多数の人が利用する場所で露出すると、周囲に全く人がいなかったとしても犯罪となる可能性があります。
「露出」は決して軽い犯罪ではありません。
検察庁のデータによれば、警察に通報された露出(公然わいせつ罪)事件の約70%が検挙されており、27%が逮捕に至っています。
公共の場で露出してしまったら、速やかに弁護士に相談し、逮捕を避けるための行動を起こすことが必要です。
本記事では、次の点を取り上げました。
◉この記事を読んで分かること ・露出が法律違反となるケースの具体例 ・法律違反とならないケースの具体例 ・露出が問題となる3つの法律 ・露出で逮捕、起訴される可能性 ・弁護士ができること |
露出による逮捕・起訴が不安な方は、是非ご一読ください。
目次
「露出」が法律違反になるケース
露出が法律違反となるのは、主に以下のようなケースが挙げられます。
・公共の場所(公園・路上など)で性器を露出する行為 ・他人に性器を見せつける行為 ・車内や屋外、公園などで行う性的行為(屋外での性行為・自慰行為など) ・不特定多数の人が見える場所で下着姿になる行為(外での着替えなど) ・インターネット上で性器を露出して配信する行為(ライブチャットなど) ・ハプニングバーなどで行うわいせつな行為 ・不特定多数の人で行う性的な行為(いわゆる乱交パーティなど) |
これらの行為は、公然わいせつ罪(刑法第174条)、各都道府県の迷惑防止条例、または軽犯罪法に違反する可能性があります。
ただし、露出が法律違反となるかどうかは、一律に判断されるわけではありません。
「不特定多数の人が見れるか(公然性)」「性的道義観念に反するものか(わいせつ性)」など、様々な要素が考慮されます。
つまり、露出の違法性は、状況に応じて個別具体的に判断されるのです。
「露出」が法律違反にならないケース
一方で、すべての露出行為が法律違反となるわけではありません。
社会通念上認められている場所やシチュエーションでの露出は、違法とはみなされないからです。
例えば、以下のようなケースでは、法律違反とならない可能性が高いです。
・プライベートな空間(自宅など)での露出行為 ・芸術作品としての表現行為 ・医療上の必要な行為 ・混浴の温泉で裸になる行為 ・ビーチやプールなどで水着になる行為 |
また、最近では過激なファッションによる露出行為が問題となるケースも増えています。
・ハロウィンのコスプレ ・見せブラ ・下着が透けている洋服など |
これらのケースも、ファッションの一環として行われていれば、法律違反となる可能性は低いでしょう。
ただし、過度に過激であったり、性器を見せつけるなどして他人に不快感を与えた場合は、法律違反となる可能性もあります。
社会通念から大きく逸脱しないよう、十分な注意が必要です。
「露出」が問題となる3つの法律
露出行為が法律違反となる場合、問題となる法律は主に以下の3つです。
公然わいせつ罪(刑法)|これが多い
露出を規制する最も基本的な法律が、刑法で定められた「公然わいせつ罪」です。
不特定多数の人が見ている、または見る可能性がある場所で、性器を露出したり、性行為をしたりすると、この罪に問われる可能性があります。
(公然わいせつ)刑法 第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 |
ここでいう「公然」とは、「不特定または多数の人が認識することのできる状態」を言います。
(最判昭32年1月24日)。
公園や路上はもちろん、インターネットでの配信行為なども「公然性」が認められます。
また、現実に多数の人に目撃されている必要はありません。例えば、誰もいない深夜の公園で露出した場合も、公然性は否定されません。
また「わいせつな行為」とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とされています(最判昭32年3月13日)
つまり、「人前で服を脱いだら露出になる」といった画一的な判断がされているわけではなく、あくまでも「常識に照らして、一般人がどう感じるか」で判断されているのです。
迷惑防止条例違反
各都道府県には、住民の平穏な生活を守るために、迷惑行為を禁止する条例(迷惑防止条例)が設けられています。
公共の場所での露出行為は、この迷惑防止条例でも「卑わいな言動」に当たるとして禁止されています。
【(例)東京迷惑防止条例】
◉第五条(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止) 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。 三 前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。 ◉第八条(罰則) 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 二 第五条第一項又は第二項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。) |
明確な基準はありませんが、公然わいせつ罪ほど重大ではない露出に適用されるケースが一般的です。
軽犯罪法違反
軽犯罪法は、犯罪のうち比較的軽微なものを取り締まるための法律です。
「公然わいせつ罪」や「迷惑防止条例違反」とまでは言えない、比較的軽い露出行為でも成立する犯罪です。
軽犯罪法 第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。 二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者 |
違反した場合は、「拘留(30日未満の収監)」または「科料(1000円以上1万円未満の金銭の支払い)」に処せられます。
露出で逮捕される可能性は低い?
ここまで露出行為が法律違反となる可能性があることを説明しました。
それでは、実際に逮捕されるリスクはどの程度あるのでしょうか。
「公然わいせつ罪」を例に、検挙率・身柄率・起訴率のデータを見ていきましょう。
・検挙率(警察が事件を認識し、被疑者を特定した割合) ・身柄率(逮捕されて、身柄拘束が実施された割合) ・起訴率(起訴されて、刑事裁判にかけられた割合) |
公然わいせつ罪の検挙率は66%〜76%
検察庁のデータによると、公然わいせつ罪の検挙率は「66%〜76%」の間で推移しています。
つまり、露出事件(公然わいせつ事件)として認知された件数のうち、約3分の2が検挙されているのです。
認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 | |
令和元年 | 2,569 | 1,770 | 68.9% |
令和2年 | 2,463 | 1,784 | 72.4% |
令和3年 | 2,431 | 1,846 | 75.9% |
令和4年 | 2,387 | 1,587 | 66.5% |
(出典:令和5年犯罪白書|資料1-3 刑法犯 検挙率(罪名別))
露出事件は公共の場で行われることが多く、目撃者も多いです。
公然わいせつ事件が発生して、警察に通報や相談があった場合、比較的高い確率で検挙に至ると考えられるでしょう。
公然わいせつ罪の身柄率(逮捕率)は約28%
一方で、公然わいせつ罪の身柄率、つまり逮捕率は28%にとどまっています。
つまり、検挙された事件の3分の2程度は逮捕に至らず、在宅のまま捜査が進められているのです。
総数 | 警察から身柄送致(逮捕) | 身柄率(逮捕率) | |
・公然わいせつ罪(わいせつ文書等頒布を含む) | 1980 | 547 | 27.6% |
(出典:令和5年犯罪白書|罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員)
ただし、逮捕に至らない場合でも、在宅のまま捜査を受け、起訴される可能性はあります。
公然わいせつ罪の起訴率は約56%
検察庁のデータでは、公然わいせつ罪の起訴率は約56%とされています。
これは、検挙された事件の半数以上が、実際に起訴されて、刑事裁判に至ることを意味しています。
起訴総数 | 不起訴総数 | 起訴率 | |
公然わいせつ罪 | 789 | 611 | 56.3% |
(出典:令和5年犯罪白書 第4節 被疑事件の処理)
日本の刑事裁判では、起訴後の有罪率が99%とも言われています。
つまり、露出が発覚すると、約7割が検挙され、そのうち6割が起訴されて有罪になってしまうのです。
これらの数字からも分かるとおり、露出は決して軽い犯罪ではありません。
露出が法律違反となり逮捕された事例
実際に、露出行為で逮捕されたケースを見ていきましょう。
露出で逮捕されるパターンは、「現行犯逮捕」と「後日逮捕」の2つに分けられます。
現行犯で逮捕されたケース
1つ目は、露出行為の最中に警察に発見され、現行犯逮捕されるケースです。
例えば、公園で全裸になっていたところを通行人に通報され、駆けつけた警察官に現行犯逮捕されたという事例があります。
深夜の路上で、「モザイクをかけてSNSに載せるために下半身の写真を撮っていた」として下半身を露出し、現行犯逮捕されたケース。 警察が1人で下半身を出して何かをしている男を見つけ、職務質問から逮捕に至った。 (出典:神戸新聞) |
誰もいない深夜の公園であったとしても、警察や通行人に目撃された結果、現行犯で逮捕される場合があるのです。
後日逮捕されたケース
2つ目は、露出行為の後、被害者や目撃者からの通報で特定され、後日逮捕されるケースです。
例えば、公共の場で下半身を露出したところ、現場を女性に目撃されており、1ヶ月程度経ってから後日逮捕されたという事例があります。
自宅アパートの共同廊下で、下半身を露出して歩いたとして、後日逮捕されたケース。 全裸に靴を履いた状態で自宅アパート内の共同廊下で数分間うろつき、部屋に戻ったところ、その様子を女性が目撃しており、画像を撮影していた。 後日、警察署に提出し、事態が発覚。公然わいせつの疑いで逮捕。 (出典:ライブドアニュース) |
後日逮捕の場合、証拠集めに時間がかかるため、逮捕までに一定の期間を要することがあります。
目撃されたことに気づいていなくとも、実は目撃者がいたり、防犯カメラに写っていたりして後日逮捕にいたるケースがあるのです。
露出で逮捕された後の流れ
露出行為で逮捕されてしまった場合、どのような流れになるのでしょうか。
「略式命令請求(略式起訴)」されるケースと、「公判請求(正式起訴)」されるケースに分けて説明します。
略式起訴されるケース
略式起訴とは、公開の法廷での裁判を経ずに、書面審理のみで刑を決定する手続きです。
露出事件では、「被害者がいない」「初犯である」「反省の態度が見られる」など、被告人にとって有利な事情があれば、略式起訴として処理されることが多いです。
略式命令が下された場合、必ず「罰金または科料」の刑罰が科せられます。懲役刑となるリスクはありませんが、無罪となることもありません。
また、前科も付いてしまうため、将来的な影響には注意が必要です。
公判請求(正式起訴)されるケース
一方、常習性がある場合や、露出の内容が悪質な場合、略式起訴に対して異議を申し立てた場合は、正式起訴されることになります。
公判請求された場合は、公開の法廷で事実関係が争われ、有罪か無罪かが判断されます。
略式起訴と比べると、被告人の負担は大きく、逮捕後の拘束期間も長期化するケースが通常です。
露出事件で弁護士ができること
「路上で露出したところを目撃された」
「他人に性器を見せつけてしまった」
このような露出事件を起こしてしまったなら、速やかに弁護士に相談しましょう。
露出事件で弁護士ができることは、次の3つです。
露出が法律違反となるリスクを相談できる
弁護士であれば、露出が法律違反となるリスクを判断することができます。
・あなたが行った露出行為は、どの法律に違反するのか ・逮捕・起訴されるリスクはどの程度あるのか ・露出してしまった不安を解消するには、どう行動するべきなのか |
専門家の視点から、様々なアドバイスを受けられます。
例えば、性器を露出して歩き回ったようなケースでは、犯罪の成立自体を争うことは難しいでしょう。目撃されている可能性が高いのであれば、自首・出頭を検討するべきかもしれません。
一方で、下着や水着を着ていたり、「公然」と言えるかが微妙なケースでは、犯罪の成立自体を否定できる場合もあります。
いずれにせよ、露出の内容によって対応は大きく変わってきます。
露出を弁護士に相談することで、その後の流れを見据えた最適な判断ができるでしょう。
自首や出頭するべきかアドバイスし、当日も同行してサポートする
露出を目撃されたことが明らかな場合は、警察から連絡が来る前に自首・出頭することも、1つの方法です。
・路上や公園で、性器を露出しているところを見られた ・人前で性器を見せつけて、そのまま逃げてしまった |
上記のようなケースでも、自首が認められれば、逮捕の可能性は低下し、刑の減軽も期待できるでしょう。
ただし、本当に自首・出頭するべきかは、慎重な判断が必要です。
露出した場所や時間帯によっては、公然わいせつ罪が成立しても、目撃者がいる可能性が非常に低いケースもあるからです。
目撃者がいないのであれば、あえて自首・出頭するメリットは小さいかもしれません。
自首・出頭する場合も、事前に弁護士に相談し、当日、警察まで同行してもらった方が良いでしょう。
落ち着いて対応できるのはもちろん、「そのまま帰宅できるのか」「警察の取調べにどう回答するべきなのか」など様々な点からアドバイスを受けられます。
逮捕を防ぎ、早期釈放・不起訴に向けて闘ってくれる
露出事件で逮捕された場合、最長で23日間の身柄拘束が続く可能性があります。
弁護士に依頼すれば、逮捕を阻止し、万が一逮捕されても1日でも早く釈放されるよう、あらゆる方面からサポートしてもらえます。
・被害者がいるなら、警察を介して連絡先を入手し、示談交渉を進める ・接見に行って、供述する内容についてアドバイスする ・再発のおそれがないことを伝えて、不起訴を獲得する など |
露出事件において、弁護士はあなたの強力な味方です。
露出直後の相談から、逮捕後の早期釈放まで、あなたの不安に寄り添って、事件の解決に向けて尽力してくれるでしょう。
露出による逮捕・起訴が不安なら、グラディアトル法律事務所へご相談ください
露出による逮捕・起訴が不安なら、私たちグラディアトル法律事務所までご相談ください。
私たちは刑事事件に強く、難しい性犯罪の事件も数多く取り扱い、解決に導いてきた法律事務所です。
露出事件は、いつ警察から連絡が来るかわからず、突然の逮捕リスクもある犯罪です。
・自分の露出行為が、法律違反に該当するかどうか知りたい ・露出で逮捕されるリスクを知りたい ・自首や出頭を考えているが、その判断に迷っている ・露出癖を改善し、逮捕の不安から解放されたい |
こういったご相談だけでも構いません。まずはお話をお聞かせください。
弊所では、初回の相談は無料でお受けしております。
露出事件の専門的な知識と豊富な経験を持つ弁護士が、あなたの状況に応じた最適な方針をアドバイスさせていただきます。
実際にお話を聞かせていただいた上で、「弁護士に依頼した方が良いか」「信頼できる弁護士なのか」ご判断いただければ幸いです。
まとめ
最後に、今回の記事のポイントをまとめます。
・露出が法律違反となるケース
・誰もいない公園や路上で、性器を露出する行為 ・他人に性器を見せつける行為 ・ネットで性器を露出して配信する行為(ライブチャットなど) ・ハプニングバーなど、多数の人がいる場所でのわいせつ行為 |
・露出が法律違反となりづらいケース
・プライベートな空間(自宅など)での露出行為 ・芸術としての表現や、医療上の正当な行為 ・ビーチ、プールで水着になる行為 ・ファッションによる露出(コスプレなど) (※あまりにも過激な露出を除く) |
・露出で問題となる法律
・公然わいせつ罪(刑法) ・迷惑防止条例違反 ・軽犯罪法違反 |
・露出は決して軽い犯罪ではない
・検挙率は66%〜76%(10人中7人程度) ・逮捕率は28%(10人中3人程度) ・起訴率は56%(2人に1人程度) |
・露出事件で弁護士ができることは3つ
・露出が法律違反となるリスクを相談する ・自首や出頭するべきかアドバイスし、当日も同行してサポートする ・逮捕を防ぎ、不起訴を獲得するために戦う |
以上です。
露出は決して軽い犯罪ではありません、
他の犯罪と同様に逮捕されますし、最悪の場合「懲役刑」となってしまうリスクもあります。
露出事件を起こしてしまった場合は、すぐに弁護士へ相談しましょう。
本記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。