「会社の経費を不正に使用するとどのような罪に問われる?」
「経費の不正使用が横領にあたり得るケースとは?」
「経費を横領してしまった場合、どのような対処法がある?」
経理担当者や営業職などは、経費に関して一定の裁量が与えられていますので、経費を多めに請求する、経費を私的に流用するなどの経費の不正使用をしてしまうケースがあります。このようなケースは、業務上横領罪などの罪に問われる可能性がありますので、少額であっても絶対にしてはいけません。万が一、経費の不正使用をしてしまったときは、すぐに会社に謝罪して、不正使用した経費を返還するようにしましょう。
本記事では、
・経費の不正使用が横領にあたり得る6つのケース ・経費の横領により成立する可能性のある犯罪 ・経費を横領してしまった場合にとるべき対処法 |
などについてわかりやすく解説します。
経費の横領による刑事責任を免れるには、刑事事件に詳しい弁護士のサポートが必要になりますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
目次
経費の不正使用が横領にあたり得る6つのケース

経費の不正使用が横領にあたり得るケースとしては、以下の6つのケースが考えられます。
経費の不正使用が横領にあたり得る6つのケース
ケース | 内容 | 具体例 | 発覚経路 | 適用される犯罪 |
---|---|---|---|---|
1. 架空の領収書を利用した経費精算 | 虚偽の領収書を作成し、経費として申請 | – 白紙領収書に虚偽の金額を記入 – 実際とは異なる日付・宛名を記載 | 会計監査・内部告発 | 業務上横領罪 |
2. 通勤手当の不正請求 | 実際の通勤費用よりも多く請求 | – 徒歩通勤なのに交通費を申請 – 実際と異なる遠方住所を申請 | 人事管理システムのチェック・内部告発 | 詐欺罪 |
3. 接待交際費の不正請求 | 業務に関係ない飲食費を経費として申請 | – 家族との食事を接待と偽る – キャバクラ代金を交際費とする | 領収書の精査・経理部のチェック | 業務上横領罪・詐欺罪 |
4. 経費による私的な物品の購入 | 個人的な買い物を業務用と偽り経費申請 | – 家族のプレゼントを顧客向けと申請 – 私物を会社備品として購入 | 購入履歴の調査・監査 | 業務上横領罪 |
5. カラ出張 | 実際には出張していないのに出張費を請求 | – 実際に移動せずに宿泊費・交通費を請求 – クレジットカード決済後、返金を受ける | 出張記録の確認・監査 | 詐欺罪・業務上横領罪 |
6. ポイントの私的利用 | 会社の費用で獲得したポイントを私用に利用 | – 会社の経費精算で得たポイントを個人で使う | 社内規則の確認・監査 | 業務上横領罪(社内規定により判断) |
架空の領収書を利用した経費精算
経費精算の場面では、架空の領収書を利用して経費の不正使用が行われることがあります。
領収書の金額・宛名・日付・但し書きなどを書き換えたり、白紙の領収書に虚偽の情報を記入するなどして、経費として支出したように装って、経費精算が行われます。
通勤手当の不正請求
通勤手当の申請の際に、実際にかかった費用よりも多くの交通費を請求するのは、経費の不正使用にあたります。
・実際には自転車や徒歩で通勤しているのに、公共交通機関を使用していると申請する ・実際の住所とは異なる住所を申請し、本来よりも多くの通勤手当を請求する ・実際に利用していない経路を申請する |
通勤手当の不正請求は、1回あたりの金額は少額ですので、「会社にはばれないだろう」「ばれても問題ないだろう」など安易な気持ちで行ってしまう人も多いですが、違法な行為ですので注意が必要です。
接待交際費の不正請求
営業職の社員は、取引先との接待を行う機会も多いため、接待交際費を経費として申請するケースも多いです。業務に関連する接待であれば、経費として精算することも可能ですが、私的な飲食に関する費用を接待交際費として申請するのは不正請求になります。
・家族や友人との食事を取引先との接待として申請する ・業務とは関係なくキャバクラに行った費用を、接待交際費として申請する ・飲食店から白紙の領収書をもらい、金額を水増しして請求する |
接待での飲食代金は、注文内容や金額の詳細を把握しにくいため、請求額が実際の支出より増えるケースも少なくありません。
経費による私的な物品の購入
業務に関連する経費であると虚偽の申請をして、実際には私的な物品の購入費用を経費で精算しようとすることがあります。私的な物品の購入を経費で精算するのは当然認められませんので、これも経費の不正使用にあたります。
・家族へのプレゼントを顧客へのプレゼントと偽って経費申請をする ・会社の備品購入と偽って、私的な日用品を購入する |
カラ出張
カラ出張とは、実際には出張をしていないにもかかわらず、主張したと見せかけて出張費(交通費、宿泊費など)を請求する手口です。悪質なケースでは、自分のクレジットカードで決済をして、その領収書を会社に提出した後、クレジットカード決済を取り消して返金を受けるという手口もあります。
ポイントの私的利用
クレジットカードのキャッシュレス決済をするとポイントが貯まりますが、ポイントの私的利用も横領にあたる可能性があります。
従業員が経費を立て替えて支払った場合、従業員個人にポイントが付与されますが、経費精算により最終的に費用を負担するのは会社ですので、ポイントも会社の財産にあたる可能性があります。たとえば、会社の就業規則において、「経費を立替えたことにより付与されたポイントは会社の財産に帰属する」などと記載されていた場合には、ポイントの私的利用は横領となる可能性があります。
経費の横領により成立する可能性のある犯罪

経費の横領により成立する可能性のある犯罪としては、以下のような犯罪があります。
業務上横領罪
業務上横領罪とは、業務上、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。
業務上横領罪は、自分が管理している会社のお金を着服することで成立する犯罪になりますので、経理担当者が会社の経費を私的に流用する、会社のクレジットカードを使用して私的な物品を購入するなどの行為が業務上横領罪に該当します。
なお、業務上横領罪が成立すると10年以下の懲役に処せられます。
詐欺罪
詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させた場合に成立する犯罪です。
経費精算の場面では、虚偽の申請により会社から不正に金銭を受け取る行為が詐欺罪に該当します。具体的には、以下のような行為が対象となります。
・架空の領収書を利用した経費精算 ・通勤手当の不正請求 ・接待交際費の不正請求 ・経費による私的な物品の購入 ・カラ出張 |
なお、詐欺罪が成立すると10年以下の懲役に処せられます。
私文書偽造罪
私文書偽造罪とは、他人の印章や署名を用いて、権利義務・事実証明に関する文書などを偽造した場合に成立する犯罪です。
たとえば、経費精算の場面で、領収書の金額や日付などを改ざんする行為が私文書偽造罪に該当します。私文書偽造罪は、行使の目的で私文書の偽造をした時点で成立しますので、偽造した領収証を経費申請に使っていない段階でも罪に問われるリスクがあります。
なお、私文書偽造罪が成立すると、3月以上5年以下の懲役に処せられます。
経費横領の金額によって逮捕・起訴のリスクが変わる
経費の横領により成立する「業務上横領罪」や「詐欺罪」は、会社に生じた被害金額によって罪の重さが変わってきます。数万円程度の僅少な被害額であった場合には、業務上横領罪や詐欺罪が成立したとしても、逮捕や起訴されるリスクは低く、示談さえ成立すれば不起訴処分になる可能性も十分にあります。
他方、被害金額が数百万円や1000万円を超えるような多額の被害が生じているような事案では、逃亡や証拠隠滅のおそれがありますので、逮捕される可能性が高いです。また、このような多額の被害が生じているような事案では、起訴されて実刑になるリスクも高いといえるでしょう。
このように経費横領の事案では、被害額によって逮捕・起訴のリスクが変わりますので、被害額に応じた対応を考えていかなければなりません。
経費を横領したことで生じる刑事責任以外のリスク

経費を横領してしまうと、刑事責任以外にも以下のようなリスクが生じます。
横領した経費の返還を求められる
経費の横領は違法な行為ですので、違法に手に入れた経費については会社に対して返還しなければなりません。会社からの返還請求を無視していると、訴訟を提起され、最終的に預貯金などの財産を差し押さえられてしまい、そこから強制的に横領した経費分の回収が行われます。
横領行為が事実であるなら、早期に会社との示談交渉を行い、返還すべき金額や返還方法について協議を進めていくようにしてください。
会社を懲戒解雇される
経費の横領は、企業秩序に違反する行為にあたりますので、会社から懲戒処分を受けることになります。懲戒処分には、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがありますが、重大な企業秩序違反である横領があった場合は、もっとも重い懲戒解雇が選択される可能性が高いでしょう。
会社を懲戒解雇となれば、転職において不利になるだけでなく、解雇予告手当の支払い対象外になったり、雇用保険の給付日数が制限されることがあります。また、退職金が減額されたり、不支給になることもありますので、その後の生活に重大な影響を与えることになるでしょう。
経費を横領してしまった場合にとるべき対処法

経費を横領してしまった場合は、以下のような対応をとるようにしましょう。
会社に報告して真摯に謝罪する
経費の横領が事実であるなら、すぐに会社に報告して真摯に謝罪することが大切です。
会社の調査の結果、横領が発覚するのと自己申告により横領が判明するのとでは、同じ横領行為でも印象が大きく変わってきます。横領行為を認めて真摯に謝罪をすれば、会社も刑事責任の追及ではなく、横領した経費の弁償で許してくれる可能性もあります。
自分から横領行為を申告するのは躊躇してしまうかもしれませんが、今後の対応を有利に進めるためにも勇気を出して行動するようにしましょう。
不正使用した経費の返還を行う
不正に使用した経費については、全額を返還するのが基本となります。会社としても刑事告訴により事件が公になるよりかは、被害の弁償をしてもらった方がメリットが大きいため、不正使用した経費の返還を受けられれば、刑事告訴を取りやめてくれる可能性もあります。
経費の不正使用をしていた期間が長いと、返還すべき金額も高額になるため一括での返済が難しいケースもあります。そのような場合は、会社との交渉により分割弁済にしてもらうようお願いしてみるとよいでしょう。
自主退職を申し出る
経費の不正利用が明らかになれば、懲戒解雇などの厳しい処分は避けられません。被害弁償や謝罪により許してもらうことができても、そのまま会社に残るのは現実的ではありませんので、自主退職を検討するようにしましょう。
懲戒解雇ではなく自主退職になれば、その後の就職への影響も少なく、退職金も満額支払ってもらえる可能性があります。
経費を横領した場合に弁護士に相談すべき3つの理由

以下のような理由から経費を横領したときはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。
今後の具体的な対処法をアドバイスできる
経費を横領してしまった場合、初期対応を誤ると刑事事件に発展するリスクが高くなりますので、適切な対応が求められます。
弁護士に相談をすれば、経費を横領してしまった場合の対処法をアドバイスしてもらえますので、弁護士にアドバイスに従って対応することで、重大なトラブルに発展することなく問題を解決できる可能性があります。どのように対応すればよいかわからず不安に感じている方は、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
会社との示談交渉により事件化を防ぐことができる
経費の横領は、業務上横領罪や詐欺罪に該当する犯罪行為になりますので、会社にばれてしまうと刑事事件に発展する可能性があります。
しかし、会社としても事件が公になることで会社の信用問題になるのは避けたいと考えますので、できる限り穏便に解決したいと考えるのが通常です。経費の横領により生じた損害が賠償されれば、刑事告訴を見送ってくれる可能性もありますので、早期に示談交渉に着手することが重要です。
弁護士に依頼すれば、会社との示談交渉を任せることができますので、迅速に示談交渉を進め、適切な条件で示談をまとめてくれるでしょう。
刑事事件以外の対応を任せることができる
経費の横領をすると、刑事事件だけではなく損害賠償請求や懲戒解雇などの民事上の責任も発生しますので、そちらの対応も必要になってきます。
弁護士に依頼すれば刑事事件以外にも民事上の問題に関しても対応してくれますので、ご自身の負担を大幅に軽減することが可能です。民事上の損害賠償請求を解決することで、刑事事件の解決にもつながりますので、まとめて対応してもらうべきでしょう。
経費の横領をしてしまったときはグラディアトル法律事務所に相談を

経費の横領をしてしまったときは、すぐにグラディアトル法律事務所にご相談ください。
経費の横領は、業務上横領罪や詐欺罪に該当する犯罪行為になりますので、そのままでは逮捕・起訴されるリスクがあります。このようなリスクを回避するには、早期に被害者である会社と示談をすることが重要です。
当事務所では、刑事事件の弁護に関する豊富な経験と実績がありますので、被害者との示談交渉についても得意としています。示談交渉のポイントやノウハウを熟知した経験豊富な弁護士が対応しますので、迅速かつ適切な条件で示談をまとめることが可能です。
また、刑事事件だけではなく損害賠償請求や懲戒解雇といった民事上の問題についても対応可能ですので、経費の横領から生じるさまざまな問題についてはすべて当事務所にお任せください。
なお、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。初回法律相談を無料で対応していますので、横領事件に関する相談をご希望の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
まとめ
経費の横領は、少額であっても業務上横領罪や詐欺罪が成立します。金額が高額になれば、逮捕・起訴されて実刑判決になる可能性も高くなりますので、手遅れになる前に横領行為をやめて弁護士に相談することをおすすめします。
経費の横領をしてしまったという方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。