「横領罪の時効は何年?」
「横領罪の刑事上の時効と民事上の時効ではどのような違いがあるの?」
「横領罪の時効待ちはリスクが高いって本当?」
横領罪には公訴時効がありますので、罪を犯してから一定期間が経過すると時効により処罰されなくなります。
具体的な時効期間は、成立する犯罪によって異なり、
単純横領罪なら5年
業務上横領罪なら7年
遺失物等横領罪なら3年
となっています。
また、横領罪を犯してしまった場合、民事上の賠償責任も発生しますが、民事上の時効(消滅時効)が成立すれば、賠償義務を免れることができます。
このように行為者にとって時効はメリットの大きい制度ですが、実際には時効まで逃げ切るのは困難ですので、時効待ちではなく早期に適切な対応をとることが求められます。
本記事では、
・横領罪における刑事と民事の2種類の時効 ・横領犯罪ごとの公訴時効期間 ・横領罪の時効待ちで生じ得る3つのリスク |
などについてわかりやすく解説します。
早期に被害者と示談を成立させることができれば、逮捕や起訴のリスクを軽減できますので、まずは刑事事件に詳しい弁護士に依頼して、被害者との示談を進めてもらうようにしましょう。
目次
横領罪には刑事と民事の2種類の時効がある

横領罪には、刑事と民事の2種類の時効が存在します。以下では、刑事上の時効である「公訴時効」と民事上の時効である「消滅時効」について説明します。
刑事上の時効|公訴時効
公訴時効とは、犯罪が終わったときから一定期間が経過すると公訴の提起(起訴)ができなくなる制度です。
公訴時効が成立すると、国家の犯罪者を処罰する権限が消滅しますので、罪を犯したとしても処罰されることはありません。このような公訴時効は、主に以下のような理由から設けられています。
・時間の経過により社会的影響が薄れる |
・証拠が散逸し、訴追が困難になる |
横領罪にも公訴時効がありますので、横領をしたときから一定期間が経過すれば刑罰を科される可能性が消滅します。
民事上の時効|消滅時効
消滅時効とは、権利者が一定期間権利を行使しない場合に、その権利が消滅する制度です。
横領罪は、他人のものを自分のものにする犯罪ですので、被害者には財産的な損害が発生します。そのため、被害者は、加害者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求権を有しており、加害者は、被害への賠償を行わなければなりません。
しかし、被害者から損害賠償請求がなく一定期間が経過すると、消滅時効が成立し、被害者が有する損害賠償請求権は消滅してしまいます。加害者は、時効による利益を享受する旨の意思表示(時効の援用)をすれば、被害者に対する賠償義務を免れることができます。
このように横領罪には、刑事上の時効と民事上の時効がありますので、時効を考える際には、それぞれ区別して考えていかなければなりません。
横領罪の公訴時効は何年?
犯罪の種類 | 公訴時効期間 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|---|
単純横領罪 | 5年 | 自分が占有する他人の物を不正に自分のものとする行為。 | ・友人から借りた本を古本屋で売却 ・レンタカーを返却せず乗り回す |
業務上横領罪 | 7年 | 業務上預かった他人の物を不正に自分のものとする行為。 | ・経理担当者が会社の金を私的流用 ・備品を売却し小遣いに ・経費水増し |
遺失物等横領罪 | 3年 | 遺失物や漂流物など、人の占有を離れた物を不正に自分のものとする行為。 | ・落とし物の財布を自分の物に ・放置自転車を拾って使用する |
横領罪の刑事上の時効である公訴時効の期間は何年なのでしょうか。以下では、横領行為により成立する3つの犯罪ごとに公訴時効期間を説明します。
単純横領罪の公訴時効は5年
単純横領罪の公訴時効は、5年です。
単純横領罪は、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪であり、以下のような行為が単純横領罪に該当します。
・友人から借りた本を勝手に古本屋で売却する |
・レンタカーを借りたものの契約期間を過ぎても返却せず、そのまま乗り回している |
業務上横領罪の公訴時効は7年
業務上横領罪の公訴時効は、7年です。
業務上横領罪とは、業務上、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪であり、以下のような行為が業務上横領罪に該当します。
・会社の経理担当者が会社のお金を私的に流用する |
・会社員が会社の備品を勝手に売却して、自分の小遣いにする |
・会社員が領収書の金額を改ざんし、経費の水増し請求をする |
遺失物等横領罪の公訴時効は3年
遺失物等横領罪の公訴時効は、3年です。
遺失物等横領罪とは、遺失物や漂流物など人の占有を離れた他人の物を横領した場合に成立する犯罪で、以下のような行為が遺失物等横領罪に該当します。
・落とし物の財布をひろって自分のものにする |
・他人が乗り捨てた自転車を拾って、自分のものにする |
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横領罪の消滅時効は3年または20年
横領された被害者は、加害者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求権を有しています。
不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知ったときから3年で時効になります。
また、巧妙な手口だと横領に気付かないまま時が過ぎてしまうこともありますが、横領行為から20年が経過した場合も時効になります。
横領罪の時効待ちはリスク大!生じうる3つのリスク

横領罪は、時効が成立すれば刑事上および民事上の責任を問われることはありません。しかい、実際には時効完成前に横領事件が発覚するケースが多いため、時効待ちには以下のようなリスクがあります。
時効前に発覚して逮捕・起訴されるリスク
横領事件は、最初は少額から会社のお金に手を付け始めて、徐々に金額が大きくなり、会社に発覚するケースが多いです。
このようなケースでは、横領行為が終わった時点からそれぞれ時効が進行しますので、過去の横領行為が時効になっていたとしても、横領が発覚した時点では、直近の横領行為は時効になっていないことがほとんどです。多額の横領事件が発覚すれば、会社としても被害届や告訴状の提出を行うことになりますので、それにより逮捕・起訴のリスクがあります。
実際の事例でも20年にわたり同窓会の会計担当者が預貯金を引き出し、約2590万円を横領したという事案について、時効になった被害を除いた293万円について業務上横領罪などの疑いで告訴状が提出されたという事案がありました。
(被害総額 2500万円超「生活費に使った」約20年にわたりルーテル大学同窓会で女性が横領か)
関連コラム:横領で逮捕されるケースとは?逮捕のリスクや逮捕回避の対処法を解説
懲戒解雇になるリスク
職場での横領が発覚すれば、懲戒解雇されるリスクがあります。
横領は重大な犯罪行為であり、会社に経済的損害を与え、企業秩序に重大な支障を及ぼす行為ですので、懲戒処分の中でももっとも重い懲戒解雇が選択されるケースが多いです。横領が事実であれば、懲戒解雇もやむを得ませんので、加害者としては受け入れざるを得ないでしょう。
懲戒解雇されたという事情は、今後の就職活動において不利な事情になりますので、新たな就職先がなかなか見つけられないなどのリスクが生じます。
逮捕の不安を抱えて生活を送らなければならないリスク
横領罪の時効は、成立する犯罪により変わってきますが、業務上横領罪だと7年という長い時効期間が定められています。
時効が成立すれば逮捕されることはありませんが、時効成立までの間は、いつ逮捕されるかわからないという不安を抱えながら生活していかなければなりません。7年という長期間もそのような不安を抱えながら生活するのは精神的に大きなストレスになりますので、そのような不安な生活から早く解放されたいと考えるなら、時効待ち以外の対処法を検討すべきでしょう。
横領罪は時効待ちではなくグラディアトル法律事務所に相談を

横領罪に該当する行為をしてしまった方は、不確実な時効を待つのではなく、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。
経験豊富な弁護士が示談交渉を担当
横領罪を犯してしまったときは、時効待ちではなくすぐに被害者と示談を行うことが重要です。
被害者が横領事件を発覚する前に示談することができれば、刑事事件化を避けることができますので、逮捕や起訴される心配はありません。横領事件が公になれば被害者にも悪影響が生じますので、示談に応じてくれる可能性も十分にあるでしょう。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件の示談交渉に関する豊富な経験と実績を有する弁護士が多数在籍していますので、横領事件の示談交渉も当事務所の弁護士にお任せください。経験豊富な弁護士が示談交渉を担当し、速やかに示談を成立させられるよう全力でサポートいたします。
最短即日対応可能
刑事事件はスピード勝負といわれるように、迅速な対応が重要になります。対応が遅れれば不利な処分が出てしまうリスクが高くなりますので、弁護士に依頼するなら迅速な対応が可能な弁護士を選ぶべきです。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件に関してスピード対応を心がけていますので、最短で即日対応が可能です。身柄拘束されている場合には、すぐに警察署に駆けつけて面会を実施しますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。
初回相談料無料・24時間365日相談受付
当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応しています。
まずは相談だけでも結構ですので、当事務所までご相談ください。
まとめ
横領罪には時効がありますので、時効期間が経過すれば刑事および民事上の責任を問われることはありません。しかし、実際には時効前に事件が発覚するケースが多いため、時効待ちではなく、すぐに被害者との示談を行うべきでしょう。
被害者との示談には、経験豊富な弁護士のサポートが不可欠ですので、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。