業務上横領の量刑はどのくらい?執行猶予や刑期に影響する要因も解説

業務上横領の量刑はどのくらい?執行猶予や刑期に影響する要因も解説
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弁護士 若林翔
2025年03月04日更新

「会社のお金をギャンブルに使ってしまった…どんな刑罰を受けるのだろう」

「できるだけ量刑を軽くしたいけど、何をしたらいいのかわからない…」

業務上横領罪の刑罰は重く、起訴されて有罪になると必ず懲役刑に科されてしまいます

しかし、量刑はさまざまな要素を考慮したうえで決定されるので、短い刑期が言い渡される場合もあれば、執行猶予が付く場合もあります。

そのため、自分自身のケースでは、一体どの程度の量刑判断になるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、業務上横領の量刑に影響する要素や実際の量刑相場について詳しく解説します。

量刑を少しでも軽くするためのポイントなどにも触れているので、今後の処遇に不安を抱えている方は参考にしてみてください。

業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」

業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」とされています。

業務上横領罪に罰金刑がなく、懲役のみの重い刑罰が規定されている理由は、被害が大きくなりやすい犯罪であるためです。

組織で扱う財産は個人の財産よりも金額が膨らみやすく、着服や使い込みによる甚大な被害が予想されます。

また、他人の財産を管理する立場にある者が横領することは、信頼を裏切る重大な犯罪とみなされるので、加害者が負うべき責任も大きくなっているのです。

ただし、実際の量刑は事案によって異なり、犯行の態様や被害回復の有無などが考慮されます。

状況によっては執行猶予がつく可能性もあるため、早期に弁護士に相談・依頼し、サポートを得ることが重要です。

関連コラム:【業務上横領罪の有名な裁判例】無罪・執行猶予・実刑・共犯など紹介

業務上横領の量刑は被害金額によって大きく変動する

ここでは、被害金額ごとの量刑相場を解説します。

もちろん、量刑判断には被害金額以外にもさまざまな要因が絡むため、あくまでも目安のひとつにとどめておくようにしてください。

被害金額100万円以下|執行猶予がつきやすい

業務上横領の被害金額が100万円以下の場合は、執行猶予がつきやすい傾向にあります。

業務上横領の量刑は被害金額によって大きく変動する

会社の規模にもよりますが、数十万円程度であれば業務で扱うお金としてそれほど大きいとはいえません。

そのため、被害金額が比較的小さいことを理由に刑罰が軽くなり、執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなります

ただし、前科があったり、被害弁償がおこなわれていなかったりする場合は、実刑になることも考えられるでしょう。

あくまでも量刑は個々の事案に応じて、総合的に判断されることを理解しておく必要があります。

被害金額100万円超~|実刑判決の可能性が高くなる

被害金額が100万円を超える業務上横領は、実刑判決の可能性が高くなります。

被害金額が大きいほど、被害者や社会への影響も甚大になると考えられ、より厳しい処罰が下される傾向にあるためです。

大まかな目安としては、被害金額が100万円~1,000万円なら懲役2~3年、1,000万円を超えると懲役3年以上の実刑になる可能性も出てきます。

最近では、4億2,000万円の横領で懲役6年の実刑判決が下された事例もあるほどです。

【事案】

被告(45)は、太陽光発電事業のために別の会社から預かっていた4億2000万円を、自分の会社の口座に不正に送金させたとして業務上横領の罪に問われました。裁判長は「使いみちを太陽光発電の開発に限定する合意があったのに、無関係の債務の弁済のために送金した。横領に当たることは明らかだ」と指摘し、無罪主張を退けました。そのうえで「信頼を裏切る悪質な犯行だ。動機も身勝手で被害金も多額だ」として懲役6年の実刑判決を言い渡しました。

(引用:NEWS WEB)

業務横領罪の量刑は、被害弁償の状況や示談の有無などを総合的に考慮したうえで決定されるものです。

しかし、その中でも、被害金額の大きさは重要な判断材料のひとつになることを覚えておきましょう。

業務上横領の量刑に影響を与える被害金額以外の要素

ここでは、被害金額以外で、業務上横領の量刑に影響を与える要素を5つ紹介します。

業務上横領の量刑に影響を与える被害金額以外の要素

自身の状況を振り返りながら、読み進めてみてください。

被害弁償の有無

業務上横領の量刑に大きな影響を与える要素のひとつは、被害弁償の有無です。

横領した財産の弁償が完了している場合、被害者の損害が実質的に回復しているため、量刑の判断時にも有利な事情として扱われます

また、速やかに被害弁償をおこなうことで、反省や更生の意欲が高く評価されやすくなるのも事実です。

たとえば、被害金額が100万円を超えるような横領事件でも、被害弁償が完了していれば、執行猶予付き判決になる可能性が高くなります。

理想は被害金の全額弁償ですが、それが難しい場合でも、可能な限りお金をかき集めて分割での返済計画を示すなど、被害弁償を進める意思を見せることが大切です。

犯行の悪質性

犯行の悪質性も、業務上横領の量刑に直接的な影響を与える要素のひとつです。

悪質性が高ければ高いほど、処罰の必要性が大きいと判断されます

たとえば、帳簿を改ざんするような計画的で巧妙な手口を用いた場合や、横領が何度も繰り返されていた場合などは、重い刑罰を受ける可能性が高いです。

一方で、一時的な出来心が招いた犯行だった場合や、やむを得ない金銭的事情が背景にあった場合などは、それらの事情が考慮されて量刑が軽くなることもあるでしょう。

とはいえ、業務上横領自体がそもそも会社の信頼を裏切る悪質性の高い犯罪なので、基本的には厳しい刑罰が下されることに変わりありません。

反省の有無

業務上横領の量刑に大きな影響を与える要素として挙げられるのは、反省の有無です。

真摯な反省の態度がみられ、更生の意思が明確に示されている場合は、裁判官も寛大な判決を下す傾向があります。

たとえば、加害者が被害弁償に真摯に取り組んでいたり、自ら再犯防止策を検討したりしているケースなどでは、執行猶予付き判決が出る可能性も十分あるでしょう。

一方、反省の態度が見られず、犯行を正当化しようとする場合は、被害金額は同じでも実刑判決になりやすいといえます。

もちろん、表面的な反省だけで量刑が軽くなるほど甘くはありません。

少しでも量刑の判断に良い影響を与えたいのであれば、謝罪文や反省文を提出するなど、具体的な行動で反省の態度を示すことが重要です。

加害者の社会的地位

加害者の社会的地位が、業務上横領の量刑に大きな影響を与えることもあります。

社会的地位が高い人物は模範的な立場にあることが多く、業務上横領という裏切りがもたらす結果は重大なものになるため、刑罰が重くなりやすいのです。

また、加害者が法律に関わる士業や公務員などの職業に就いている場合も、職業倫理を守ることが強く求められることから、倫理に反する横領行為は厳しく処罰されます。

関連コラム:社長による横領も犯罪?使い込みにより問われうる罪と対処法を解説

前科前歴の有無

前科前歴の有無も、業務上横領の量刑に大きな影響を与える要素のひとつです。

前科がある場合は、再犯の可能性が高く、社会的な更生も難しいと判断されてしまいます

特に同種の前科がある場合は、反省の意思がないものとして、厳しい処罰が求められる傾向があります。

一方、初犯で前科前歴もなければ、執行猶予付き判決となる可能性は比較的高いといえるでしょう。

業務上横領の刑期はどのくらい?判例からみる量刑相場

ここでは、業務上横領の刑期について解説します。

実際の判例をもとに、量刑相場を詳しくみていきましょう。

業務上横領の刑期はどのくらい?判例からみる量刑相場

自治会の貯金などから約750万円を横領した事例|懲役2年4ヵ月

自治会の会計担当者がその立場を利用し、管理していた貯金や集金したお金から約750万円を横領した事例です。

【事案】

①Aは法人格のある自治会の会計担当者として、貯金管理などの業務に従事していた

②Aは自治会の貯金および集金した自治会費などを複数回にわたって着服した

③被害金は計754万円にのぼり、ギャンブルや遊興費などの私的な用途で使用していた

(奈良地判令和6年5月29日判決)

本事案において、Aが430万円の被害弁償をおこなったこと、ギャンブル依存症の治療を始めたこと、職を失い社会制裁を受けたことは考慮すべき事情として扱われました。

しかし、会計担当者の立場を悪用し、私欲のために着服を何度も繰り返していたため、動機や経緯に酌むべき余地はないとされ、懲役2年4ヵ月の実刑判決となりました。

公務員が事務所の経費に充てる800万円を横領した事例|懲役3年・執行猶予4年

地方公務員が事務所の経費に充てる800万円を自己名義の預金口座に預け入れ、私的利用していた事例です。

【事案】

①県職員のAが派遣された東京事務所では、不正にプールされた現金800万円があった

②Aはプール金の処理についてほかの職員と相談する中で、自身が預かることとし、自己名義の貸金庫に預け入れた

③Aは部署が異動したあとに現金を自己名義の預金口座へ移動させ、私的に利用していた

④最終的にプール金の調査が進み、Aは800万円に定期預金利息相当額を付して県に返還した

(静岡地判平成16年11月24日判決)

本事案において、犯行は巧妙かつ悪質で、横領額も800万円と多額であることが指摘されました。

また、公金の着服は社会的な影響が大きいうえ、A自身が終始言い逃れをしているなど反省の態度がみられない点も量刑の判断に悪影響を及ぼしたようです。

一方で、すでに被害回復がおこなわれており、今後Aが受ける社会的制裁を踏まえると、酌むべき情状も認められるとして、懲役3年・執行猶予4年の判決が言い渡されました。

郵便局員が切手を売却して約1億7,600万円を横領した事例|懲役3年

会計を担当していた郵便局員が局内で保管していた切手を換金し、約1億7,600万円を横領した事例です。

【事案】

①Aは郵便局の会計担当課長として、会計事務の総括・現金出納・資産管理などの業務に従事していた

②郵便料金として収められた切手を大量に持ち出し、約1年10ヵ月、合計164回にわたって換金していた

③着服額は約1億7,600万円にのぼり、交際相手との関係を維持するための出費など個人的な使途に用いていた

(東京地判令和3年5月10日判決)

事件発覚後、Aは約1億7,000万円分を弁償しており、妻が監督を制約しているなど考慮されるべき事情は複数ありました。

しかし、被害額が大きく、常習性の高い悪質な犯行であったため、懲役2年4ヵ月の実刑判決となってしまったのです。

業務上横領の量刑を軽くするためにできること

次に、業務上横領の量刑を軽くするためにできることを3つ紹介します。

業務上横領の量刑を軽くするためにできること

今後の対応次第で量刑が大きく変わることを念頭に、迅速な行動を心がけましょう。

被害者との示談を成立させる

業務上横領の量刑を少しでも軽くしたいのであれば、被害者との示談を優先的に進めましょう。

示談の成立は、被害者から許しを得て、和解していることを証明するものです。

示談が成立していることを理由に、裁判官が減刑や執行猶予付き判決を下すケースは実際に数多く見受けられます。

業務上横領では、会社側が世間体を気にして穏便な解決を望むことも多いため、積極的に示談交渉を進めるようにしましょう。

しかし、当事者間での直接交渉は余計なトラブルを引き起こす原因になりかねないので、示談を進める際は弁護士に依頼することをおすすめします。

関連コラム:業務上横領罪は相対的親告罪!刑が免除されるケースと示談すべき理由

事件化していない場合は自首を検討する

横領が事件化していない場合は、自首を検討することも大切です。

自首して反省の態度を示せば、量刑上有利に扱われる可能性があります。

また、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことをアピールできるので、逮捕を回避し、在宅事件として扱ってもらいやすくなる点も大きなメリットです。

ただし、本来事件化しなかったかもしれない問題を自ら明るみに出すことになるため、自首は加害者にとってリスクの高い選択ともいえます。

そのため、自首するべきかどうかを含めて、まずは弁護士に相談し、アドバイスをもらっておくようにしましょう。

刑事事件が得意な弁護士に相談する

業務上横領の罪を犯した場合は、刑事事件が得意な弁護士に相談することも重要です。

経験豊富な弁護士であれば、自身が置かれている状況に合わせて最善の対処法を速やかに実行してくれます。

具体的には、以下のようなサポートが期待できます。

  • ・被害者との示談交渉
  • ・被害弁償の手配
  • ・自首の同行
  • ・取り調べに対するアドバイス
  • ・逮捕直後の接見
  • ・逮捕回避・早期釈放に向けた弁護活動
  • ・警察や検察に対する働きかけ
  • ・加害者に有利な事情や証拠の収集
  • ・再犯防止策の検討
  • ・裁判の対応

ただし、いくら優秀な弁護士であっても、介入するタイミングが遅ければ対応できる範囲限られてしまいます。

そのため、円滑な問題解決を目指すのであれば、できるだけ早く弁護士に相談・依頼するようにしてください。

業務上横領の量刑に関してよくある質問

最後に、業務上横領の量刑に関してよくある質問を紹介します。

業務上横領の量刑に関してよくある質問

業務上横領の初犯であれば実刑は回避できる?

初犯だからといって、必ずしも実刑を避けられるわけではありません

確かに、初犯であることが有利な事情として扱われ、執行猶予がつきやすくなるのは事実です。

しかし、実際の量刑は複数の要素を総合的に考慮して決定されます。

被害金が大きい場合や常習的に横領していた場合など、ほかに不利な要素があれば初犯でも実刑となる可能性は十分あるのです。

業務上横領を手助けした場合の量刑は?

業務上横領を手助けし、横領幇助に該当した場合の刑罰は「5年以下の懲役」です。

自身が主体となって犯罪を犯したわけではないので、業務上横領罪の刑罰「10年以下の懲役」が2分の1に減刑されることが法律で定められています。

なお、横領幇助にあたる行為としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ・金庫の鍵を複製して渡した
  • ・犯行時にセキュリティーを解除した
  • ・偽伝票の作成や架空取引の捏造などに加担した

社内での立場や犯行時の状況次第では、見逃しただけで横領幇助として処罰されることもあります。

業務上横領が問題になった場合はグラディアトル法律事務所に相談を!

本記事のポイントは以下のとおりです。

  • ・業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」
  • ・ひとつの目安として、被害額が100万円以下なら執行猶予がつきやすい
  • ・被害弁償の有無や犯行の悪質性、加害者の社会的地位などによっても業務上横領の量刑に影響する
  • ・業務上横領の量刑を軽くするには弁護士に相談し、示談の成立を目指すことが重要

業務上横領罪は、懲役刑のみが規定されている重大な犯罪です。

実刑ともなれば仕事を続けることも、良好な家庭環境を築くことも難しくなり、その後の人生は大きく狂わされてしまいます。

そのため、業務上横領の罪を犯した場合は、できるだけ早く弁護士に相談・依頼し、不起訴処分や減刑・執行猶予の獲得に向けた対策を講じることが重要です。

グラディアトル法律事務所では、これまで数々の業務上横領事件に携わってきた実績があります

豊富な実践経験を有する弁護士が24時間365日体制で対応しているので、困ったときはいつでもご相談ください。

初回相談は無料、LINEでの相談も受け付けているので、お気軽にどうぞ。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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