社長による横領も犯罪?使い込みにより問われうる罪と対処法を解説

社長による横領も犯罪?使い込みにより問われうる罪と対処法を解説
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弁護士 若林翔
2025年03月13日更新

「社長が会社のお金を使い込んだ場合も横領になる?」

「社長による横領で逮捕されるケースにはどのようなものがある?」

「社長が横領した場合に成立する可能性のある犯罪とは?」

社長というと会社のトップですので、会社のお金を自由に使うことができるようなイメージがあるかもしれません。しかし、法的には社長と会社は、「個人」と「法人」という別個の法人格を有していますので、社長であっても会社のお金を自由に使えるわけではありません。株主が社長一人であっても会社のお金を私的に流用すれば、業務上横領罪などの罪に問われるリスクがありますので注意が必要です。

本記事では、

・社長が会社のお金を使い込んだら横領になる?
・社長による横領で逮捕されるケース
・社長による会社財産の着服で成立する可能性のある犯罪

などについてわかりやすく解説します。

本記事で説明する横領で逮捕されるケースに該当するような行為をしてしまった方は、すぐに会社と示談をすることで逮捕や起訴を回避できる可能性があります。そのため、心当たりのある方は一刻も早く弁護士に相談するようにしましょう。

社長が会社のお金を使い込んだら横領になる?

「会社のトップである社長なら会社のお金を自由に使うことができる」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。そのような方は「社長=会社」という捉え方をしている可能性があります。

しかし、法的には、社長は「個人」で会社は「法人」という別人格になりますので、社長と会社はまったく同じ存在ではありません。社長が会社の株式を100%保有しているオーナー企業であっても、社長と会社が別人格であることには変わりありません。

そのため、社長が会社のお金に手を付けるということは、他人のお金に手を付けると同義ですので、後述するような業務上横領罪や特別背任罪などの刑事罰を科されるリスクがあります。

特に、家族経営の小規模の会社では、会社のお金は自分のものだと考えている経営者の方も多いですが、法人と個人のお金は別ですので、しっかりと区別して管理していくことが大切です。

関連コラム:横領罪とは?構成要件・法定刑・時効・逮捕の流れをわかりやすく解説

社長による横領で逮捕されるケース

社長による横領で逮捕される可能性のあるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。

会社資金の不正流用・横領行為まとめ

ケース内容発覚経路法的結果
会社資金の私的流用会社の資金を個人的な用途に使用(高級車・旅行・ギャンブル等)会計監査・内部告発業務上横領罪 で逮捕・起訴
架空取引の実施架空の取引先を作り、会社から資金を不正送金帳簿・取引記録の不一致発覚特別背任罪 で逮捕・起訴
給与・手当の不正操作従業員の給与を減額し、その差額を自分の口座に入金従業員の告発・給与明細のチェック業務上横領罪 の捜査進展
会社資産の不正売却会社の不動産や設備を無断売却し、売却益を私的流用資産管理の帳簿確認・売却先からの情報提供業務上横領罪 で刑事責任を追及
取引先からのリベート受領取引先から賄賂を受け取り、会社には報告しない取引先や内部関係者の通報特別背任罪 で逮捕
架空の従業員を作成実在しない従業員を登録し、給与を受け取る人事・給与管理の調査業務上横領罪 で刑事告訴
クレジットカードの不正使用会社のクレジットカードを私的な買い物に使用クレジットカード明細の確認業務上横領罪 で逮捕・起訴
会社収益の隠匿会社の収益の一部を個人口座に移し、私的に蓄財税務調査・内部告発脱税・特別背任罪 で刑事責任を追及
従業員・取引先支払いの流用支払うべき金額を一時的に保留し、私的に流用支払い遅延の訴え・内部調査業務上横領罪 で信用失墜・逮捕

会社資金の私的流用

内容:会社の口座から資金を引き出し、個人的な用途に使用する行為(例:高額な車、旅行、ギャンブルなど)

発覚経路:会計監査や従業員の内部告発

結果:不正行為が証明され、業務上横領罪として逮捕・起訴

架空取引の実施

内容:架空の取引先を作り、会社からその取引先に支払いを行ったと装い、実際には自分の管理する口座に送金する行為

発覚経路:帳簿や取引記録の不一致が見つかる

結果:資金流用の事実が明るみに出て、特別背任罪として逮捕・起訴

従業員の給与・手当の不正操作

内容:従業員に支払うべき給与やボーナスを減額し、その差額を自分の口座に入金する行為

発覚経路:従業員からの告発や給与明細のチェック

結果:従業員への損害が確認され、業務上横領罪として捜査が進展

会社の資産を売却して利益を得る

内容:会社所有の不動産や設備を無断で売却し、その売却益を個人的に使用する行為

発覚経路:資産管理の帳簿確認や売却先からの情報提供

結果:不正な売却行為として業務上横領罪が適用

会社の取引先からリベートを受け取る

内容:会社の取引先からリベート(賄賂)を受け取り、会社にはその利益を報告しない行為

発覚経路:取引先や内部関係者の通報

結果:特別背任罪として刑事責任を問われる

架空の従業員を作成

内容:実際には存在しない従業員を登録し、その従業員名義で給与を支払い、自分がその給与を受け取る行為

発覚経路:人事管理や給与管理の調査

結果:業務上横領として刑事告訴

会社のクレジットカードの不正利用

内容:会社名義のクレジットカードを私的な買い物に使用する行為

発覚経路:クレジットカードの明細確認

結果:会社資金の不正使用として、業務上横領罪で逮捕・起訴

会社の収益隠し

内容:会社の収益の一部を別口座に移し、個人的に蓄財する行為

発覚経路:税務調査や内部告発

結果:脱税や特別背任罪として刑事責任を追及される

従業員や取引先の支払いを流用

内容:会社が従業員や取引先に支払うべき金額を一時的に保留し、自分の利益のために使用する行為

発覚経路:支払い遅延の訴えや調査

結果:信用失墜とともに業務上横領罪で逮捕

社長による使い込み(横領)で逮捕された事例

以下では、社長による使い込み(横領)で逮捕された実際の事例を紹介します。

社長による使い込み(横領)で逮捕された事例

介護施設元社長が高齢姉妹から2000万円横領した事例

通所介護施設を利用する高齢姉妹と財産管理契約を結びながら、無断で口座から計約2000万円を引き出すなどしたとして、大阪府警は、施設運営会社元社長の男(38歳)を業務上横領などの容疑で逮捕しました。ほかにも、姉妹に自宅を売却させて代金約800万円を得ていたといい、府警は、全財産を奪ったとみて捜査を進めています。
(引用:読売新聞オンライン)
財産管理していた高齢姉妹から2000万円横領した疑い、介護施設元社長を逮捕…自宅を売却させ全財産奪ったか

会社の口座から1億円以上の現金を引き出して逮捕された事例

会社の口座から計1億円以上の現金を引き出して着服したとして、県警捜査2課と吉川署は、業務上横領の疑いで、工業用工具の輸入・販売会社「レボー・レーバー・ジャパン」元社長で自営業の男(53)を逮捕した。
逮捕容疑は、2017年2月7日から18年11月4日にかけて、社長として経理、出納などの業務全般を統括する自身の立場を悪用し、同社名義の会社資金計1億882万1千円を横領した疑い。
同課によると、19年11月19日に同社の弁護士から吉川署に「元代表取締役が同社口座から勝手に現金を引き出し、これを私的に費消した」と相談があり県警が認知。200回以上引き出された現金の使途先を捜査し、そのうち149回分の使途先を突き止めた。現金は全額、ギャンブルに使っていたという。
海外にある本社の役員が来日した際に、同社の帳簿を見て多額の出金が明るみになった。この役員が男を追及したところ、犯行を認めたという。その後、18年11月28日に男は社長を解任された。
男は「ギャンブルに使ったことは間違いない。勝ったお金を会社の運営資金にするためにやった」と供述しているという。
(引用:埼玉新聞)
会社の口座から1億円着服、ギャンブルに 容疑で工具会社の元社長逮捕 本社役員が帳簿見て発覚/埼玉県警

社長による会社財産の着服で成立する可能性のある犯罪

社長による会社財産の着服で成立する可能性のある犯罪

社長による会社財産の着服により成立する可能性のある犯罪としては、以下のようなものが考えられます。

犯罪名成立要件具体例法定刑
業務上横領罪業務上、自己が占有する他人の財産を横領– 会社の経費を私的に流用
– 会社のお金で高級車を購入
10年以下の懲役
特別背任罪取締役や監査役などが、会社の任務に違反して損害を与える– 返済困難な企業に対し、不正融資を行う
– 赤字なのに粉飾決算をし、株主に配当を実施
10年以下の懲役 または 1000万円以下の罰金(併科あり)
詐欺破産罪破産手続きをする際に、債権者を害する目的で財産を処分・隠匿– 破産前に会社の資産を個人名義に変更
– 倒産直前に資産を売却し、不当に利益を得る
10年以下の懲役 または 1000万円以下の罰金(併科あり)

このように、それぞれの犯罪は 経営者の立場や状況 によって適用される範囲が異なります。特に 特別背任罪と詐欺破産罪 は、会社の経営危機や不正な財務操作に関連するため、監査や経理の透明性確保 が求められます。

業務上横領罪

業務上横領罪とは、業務上、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、社長が会社の経費を私的に流用する、社長が会社のお金で個人の高級車を購入するなどの行為が業務上横領罪に該当します。

なお、業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められています。

特別背任罪

特別背任罪とは、取締役や監査役など会社で重要なポジションにある人が会社の任務に背く行為を行い、会社に損害を与えた場合に成立する犯罪です。

たとえば、回収困難であると知りながら会社資金を用いて融資をする行為(不正融資)や赤字なのに利益があるように装って株主への配当を実施する行為(粉飾決算)などの行為が特別背任罪に該当します。

なお、特別背任罪の法定刑は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(併科あり)と定められています。

関連コラム:特別背任罪に関する代表的な3つの事例とよくある質問を弁護士が解説

詐欺破産罪

詐欺破産罪とは、債権者を害する目的で、財産を不正に処分したり、隠蔽するなどの行為をした場合に成立する犯罪です。

詐欺破産罪は、会社が破産手続きをする場合に問題となる犯罪行為ですので、業務上横領罪や特別背任罪とは適用される場面が異なります。たとえば、会社の経営状態が悪化し、破産を検討している状況で、会社の財産を個人に移すなどして処分・隠匿した場合には、詐欺破産罪に問われる可能性があります。

なお、詐欺破産罪の法定刑は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(併科あり)と定められています。

社長による横領は民事上の責任も問題になる

社長による横領行為は、上記のような刑事罰の対象になりますが、それだけでなく、以下のような民事上の責任も問題になります。

役員等の会社に対する損害賠償責任

取締役などの役員は、その任務を怠り会社に対して損害を与えた場合には、その損害を賠償する責任があります(会社法423条)。

そのため、社長が会社のお金を横領して、会社に損害を与えた場合には、会社から損害賠償請求をされる可能性があります。ただし、役員等の会社に対する損害賠償責任は、総株主の同意があれば免除することができますので、社長が会社株式の100%を保有しているような場合には、唯一の株主である社長が自分の責任を免除して、損害賠償請求を免れることができます。

役員等の第三者に対する損害賠償責任

取締役などの役員は、その職務を行うについて悪意または重大な過失により第三者に損害を与えた場合には、その損害を賠償する責任があります(会社法429条)。

この賠償責任は、役員等の会社に対する損害賠償責任とは異なり、社長が100%の株式を保有する株主であったとしても、責任を免除することはできません。

社長が横領してしまったときは会社への被害弁償が最優先!

社長であっても会社のお金を私的に流用すれば業務上横領罪や特別背任罪などの罪に問われる可能性があります。このような行為をしてしまったときは、すぐに会社に対して被害弁償を行うことが重要です。

会社としても横領事件が公になり会社の信用問題になるのは避けたいと思いますので、真摯に謝罪をして、被害弁償をすれば刑事事件化を回避できる可能性があります。特に、社長という立場であれば、これまでの功績なども加味して示談に応じてくれる可能性が高いといえます。

業務上横領罪や特別背任罪は、被害金額が高額になれば初犯であっても実刑になるリスクの高い犯罪ですので、横領行為が発覚してしまったときは、会社への被害弁償を最優先に行うようにしてください。

社長による横領事件の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

会社のお金を横領してしまったという経営者の方は、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。

当事務所では、刑事事件に関する豊富な経験と解決実績がありますので、社長による横領事件についてもどうぞ安心してお任せください。迅速に会社との示談交渉を進め、逮捕や起訴などの不利益な処分を回避できるよう全力でサポートいたします。

また、当事務所では刑事事件に関してスピード対応を心がけていますので、最短で即日対応が可能です。身柄拘束されている場合には、すぐに警察署に駆けつけて面会を実施しますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。

さらに、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。初回法律相談を無料で対応していますので、横領事件に関する相談をご希望の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

まとめ

社長であれば会社のお金を自由に使えると誤解している方もいますが、会社の社長であっても会社のお金を私的に流用すれば、業務上横領罪や特別背任罪に問われるリスクがあります。

横領行為が発覚してすぐであれば、会社と示談をすることで刑事事件化を回避できる可能性がありますので、横領行為が発覚してしまったときは、一刻も早くグラディアトル法律事務所までご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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