「横領で逮捕されるのはどのようなケース?」
「横領で逮捕されるとどのようなリスクがあるの?」
「横領をした場合に逮捕を回避する方法とは?」
横領事件は、重大な犯罪ですので横領行為が発覚し、被害者が被害届や告訴状を提出すれば、警察により逮捕される可能性も十分にあります。また、被害金額によっては、逮捕・起訴されれば、初犯でも実刑になる可能性もあります。そのため、横領行為をしてしまったときは、迅速に被害者との示談交渉を進めることが重要です。
示談を成立させることができれば逮捕のリスクを最小限に抑えることができますので、逮捕を回避したのであればすぐに示談交渉に着手するようにしてください。
本記事では、
・横領事件で逮捕される3つの犯罪類型
・横領事件で逮捕される可能性の高い5つのケース
・横領事件で逮捕されたときに生じるリスク
などについてわかりやすく解説します。
逮捕されると懲戒解雇、実名報道、長期間の身柄拘束などさまざまなリスクが生じてしまいます。そのようなリスクを避けるためにも早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
目次
横領事件で逮捕される3つの犯罪類型
犯罪類型 | 概要 | 具体例 | 法定刑 |
---|---|---|---|
単純横領罪 | 自分が占有する他人の物を不正に自分のものとする行為。 | ・友人から預かった物を勝手に売却 ・レンタカーを返却せず乗り回す | 5年以下の懲役 |
業務上横領罪 | 業務上預かった他人の物を不正に自分のものとする行為。 | ・経理担当者が会社の経費を私的流用 ・領収書を改ざんし経費の水増し請求 | 10年以下の懲役(最も重い) |
遺失物等横領罪 | 遺失物や漂流物など、人の占有を離れた物を不正に自分のものとする行為。 | ・道に落ちていた財布から現金を抜き取る ・放置自転車を拾って自分の物にする | 1年以下の懲役 または10万円以下の罰金・科料 |
横領行為により成立する可能性のある犯罪には、以下のような3つの類型が存在します。以下では、横領事件で逮捕される可能性のある3つの犯罪類型について説明します。
友人から預かった物を勝手に売却|単純横領罪
単純横領罪は、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、友人から預かったものを勝手に売却する、契約期間がすぎてもレンタカーを返却せずに乗り回すなどの行為が単純横領罪にあたります。
なお、単純横領罪の法定刑は、5年以下の懲役と定められています。
経理担当者が会社の経費を私的に流用|業務上横領罪
業務上横領罪とは、業務上、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、経理担当者が会社の経費を私的に流用する、会社員が領収書を改ざんして経費の水増し請求をするなど行為が業務上横領罪に該当します。
なお、業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められており、3つの横領犯罪の中でもっとも重い刑罰になっています。
業務上横領について、判例も記載していますので、こちらの記事も参考にしてください。
関連コラム:【業務上横領罪の有名な裁判例】無罪・執行猶予・実刑・共犯など紹介
道に落ちていた財布から現金を抜き取る|遺失物等横領罪
遺失物等横領罪とは、遺失物や漂流物など人の占有を離れた他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、道に落ちていた財布から現金を抜き取る、他人が乗り捨てた自転車を拾って自分のものにするなどの行為が遺失物等横領罪に該当します。
なお、遺失物横領罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料と定められています。
関連コラム:
占有離脱物横領罪とは?成立要件・法定刑・時効や逮捕の可能性を解説
横領事件の逮捕率は約16%

2023年検察統計によると、横領事件として検挙された7792件のうち、逮捕されたのは1236件でしたので、逮捕率は約16%ということになります。刑法犯全体の逮捕率が約39%ですので、それと比較すると、横領事件の逮捕率は低いと感じるかもしれません。
しかし、この数字から「横領事件で逮捕される可能性が低い」と考えるのは禁物です。
2023年検察統計によると検察で受理した3種類の横領事件の件数および割合は以下のようになっています。
件数 | 割合 | |
---|---|---|
単純横領罪 | 616件 | 7.9% |
業務上横領罪 | 1189件 | 15.1% |
遺失物等横領罪 | 6035件 | 77.0% |
この統計結果からは横領事件としては、遺失物等横領罪の割合が圧倒的に多いことがわかります。遺失物横領罪は、横領事件のなかでも比較的軽微な犯罪に分類されますので、犯罪が発覚しても逮捕されずに、在宅事件や微罪処分として処理されるケースが圧倒的に多いです。つまり、横領事件の逮捕率が低いのは、遺失物等横領罪が占める割合が圧倒的に多いのがその理由になります。
これに対して、単純横領罪や業務上横領罪は、非常に重い犯罪ですので、犯罪が捜査機関に発覚すれば逮捕される可能性が高いといえます。そのため、横領事件を起こしてしまったときは、どの類型の横領事件なのかによって逮捕の可能性が大きく変わるという点に注意が必要です。
横領事件で逮捕される可能性の高い5つのケース

横領事件で逮捕される可能性の高いケースとしては、以下の5つが挙げられます。
捜査機関に被害申告がされているケース
逮捕には、現行犯逮捕、緊急逮捕、後日逮捕(通常逮捕)の3種類がありますが、横領事件での逮捕は、後日逮捕が圧倒的に多いです。
後日逮捕は、被害者からの被害届や告訴状を提出により捜査機関が犯罪事実を認知し、捜査を開始した上で逮捕に至るケースです。そのため、横領行為が被害者にバレてしまい、被害届や告訴状の提出により被害申告がなされてしまった場合は、逮捕の可能性があると考えた方がよいでしょう。
他方、まだ警察に被害届や告訴状を提出していない段階であれば、迅速に示談を成立させることで逮捕を回避できる可能性があります。
被害金額が高額なケース
横領事件は、被害者に財産上の損害を与える犯罪ですので、被害金額が高額になるほど社会的影響が大きくなり、捜査機関の捜査が厳しくなる傾向にあります。
例えば被害金額が100万円・500万円・1,000万円以上にのぼるような事案では、金額の大きさから「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断される可能性が高く、逮捕リスクが上昇すると考えられます。
特に会社の経理担当者や取締役などが多額の金銭を横領した「業務上横領」では、法定刑が一般的な横領より重く定められているため、被害金額が高額であればあるほど逮捕のリスクはさらに高まります。
・法定刑の重さ 一般の横領罪に比べて、業務上横領罪は法定刑が重く設定されています。会社から数百万円、あるいは1,000万円以上の多額を横領した場合、捜査機関も重大事件として捜査を進めるため、逮捕のリスクは非常に高くなります。 |
・逃亡リスク・証拠隠滅リスク 金額が高額になるほど、横領者が重い刑罰から逃れようとして逃亡や証拠隠滅を図るリスクが高まると考えられます。そのため、捜査機関は逮捕の必要性をより強く認める可能性があります。 |
・示談の重要性 もし高額の横領をしてしまった場合でも、被害者との示談を早期に成立させることで逮捕を回避できるケースがあります。特に被害届や告訴状がまだ提出されていない段階であれば、被害者と交渉して示談金を支払い、許しを得ることができれば、逮捕リスクを下げられる可能性があります。 |
いずれにしても、高額の横領は刑事事件化のリスクが高く、逮捕につながりやすい性質を持ちます。早めに弁護士に相談するなど、迅速な対応が求められます。
常習的・長期的な犯行であるケース
常習的な犯行や長期的な犯行であるケースは、横領事件の中でも悪質な類型といえますので、重い刑罰が予想されます。また、常習的・長期的な犯行になると被害総額も非常に高額になりますので、逮捕される可能性が高いといえるでしょう。
共犯者がいるケース
横領事件に共犯者がいるようなケースでは、共犯者同士で口裏を合わせて証拠隠滅を図るリスクが高くなります。逮捕の目的には、被疑者の逃亡を防ぐという目的だけでなく、証拠隠滅を防ぐという目的もあります。
そのため、単独犯であるケースと比較すると共犯者がいるケースの方が逮捕されるケースが高くなります。
示談が成立していないケース
被害者と示談が成立していないケースでは、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが依然として残ったままですので、警察により逮捕される可能性があります。被害者が被害届や告訴状を提出した後であっても、示談が成立することで、逮捕を回避できる可能性がありますので、横領事件を起こしてしまったときは、早めに示談交渉に着手することが重要です。
横領事件で逮捕されたときに生じるリスク

横領事件で逮捕された場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
職場を懲戒解雇される
会社のお金を私的に流用するなどの横領事件では、会社に対する重大な非違行為となりますので、横領事件が発覚すると会社から懲戒処分を下される可能性があります。
懲戒処分には、戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇などの種類がありますのが、業務上横領罪に該当するような事案になると、もっとも重い懲戒解雇となる可能性が高いでしょう。
逮捕・勾留により長期間の身柄拘束を受ける
懲戒解雇となれば、退職金が減額不支給になり、再就職が難しくなるなどのリスクもありますので、横領事件後の生活に重大な支障が生じるおそれがあります。
横領事件により逮捕・勾留されると身柄拘束を受けますので、その間は自由に行動・生活することができなくなります。
具体的な身柄拘束期間は、事案によって異なりますが、逮捕された場合は最長72時間、勾留された場合は延長も含めると最長20日間もの身柄拘束期間になります。身柄拘束が長くなればなるほど、身体的・精神的なストレスも大きくなっていくでしょう。
実名報道により自分だけでなく家族にも悪影響が生じる
横領事件の中でも業務上横領罪は、社会的関心の高い事件になりますので、業務上横領罪で逮捕された場合は、新聞やニュースなどで実名報道される可能性もあります。
特に、ネットニュースなどで実名報道がなされると、その内容が半永久的に残ってしまいますので、今後の人生において重大な支障が生じるおそれがあります。
また、実名報道されれば自分だけでなく、家族にも迷惑をかける可能性がある点にも注意が必要です。場合によっては、引っ越しや転職・転校を余儀なくされるケースもあるでしょう。
民事責任を問われる
横領事件により被害者に財産的損害を与えた場合には、被害者に対する民事上の賠償責任が発生します。
刑事事件により刑罰が科されたとしてもそれで終わりではなく、加害者は、被害者に対する賠償金の支払いを行っていかなければなりません。被害者への返済を怠ると、預貯金、給料、不動産などの財産が差し押さえられてしまうリスクもありますので注意が必要です。
横領事件で逮捕された場合の流れ

横領事件で逮捕された場合、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
逮捕・取り調べ
横領事件が発覚し、被害者から被害届や告訴状が提出されると、警察では横領事件の捜査を開始します。捜査の結果、横領が明らかとなり、被疑者に逃亡または証拠隠滅のおそれがあるときは、逮捕となります。
逮捕された被疑者は、警察署内の留置施設で身柄拘束され、警察官による取り調べを受けます。逮捕中は、弁護士以外の人との面会はできませんので、たとえ家族であっても面会することはできません。
なお、逮捕には時間制限がありますので、警察は逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。
検察官送致
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、被疑者に対する取り調べを行います。検察官は、捜査資料や取り調べの結果を踏まえて、引き続き身柄拘束の必要があると判断したときは、送致から24時間以内に裁判官に勾留請求を行わなければなりません。
勾留・勾留延長決定
裁判官は、被疑者に対する勾留質問を実施して検察官からの勾留請求を許可するかどうかの判断を行います。勾留請求が許可されれば、その時点から原則として10日間の身柄拘束となります。また、その後勾留延長請求も許可されれば、さらに最長10日間の身柄拘束となります。
起訴または不起訴処分
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に、横領事件を起訴するか不起訴にするかの判断をしなければなりません。
起訴されれば、正式に刑事裁判が行われることになりますが、不起訴になればその時点で釈放され前科が付くこともありません。
横領事件で逮捕されないためにできること

横領事件で逮捕されるリスクを最小限に抑えるためには、以下のような方法を検討する必要があります。
被害者との示談
横領事件は、被害者に対して財産的損害を与える犯罪ですので、逮捕・起訴を回避するには、被害者との示談がもっとも重要な要素となります。
横領行為が発覚したとしても被害者が被害届や告訴状を提出する前に示談することができれば、刑事事件化を回避できるため逮捕される心配はありません。また、被害届や告訴状を提出さてしまったとしても、早期に示談を成立させることができれば、逮捕・起訴されるリスクを軽減することができます。
警察への自首
横領事件で逮捕を回避するには警察への自首も有効な手段です。
自首とは、捜査機関に犯人および犯罪が発覚する前に自首的に犯罪事実の申告をすることをいいます。自首をすることにより逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せるため、それにより逮捕を回避できる可能性を高めることができます。
ただし、自首の法的効果として逮捕の回避が認められているわけではありませんので、自首をしたとしても逮捕される可能性がある点には注意が必要です。
弁護士に相談
横領事件を起こしてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
刑事事件に詳しい弁護士であれば、横領事件で逮捕を回避するためのノウハウを熟知していますので、すぐに被害者との示談交渉を行い、逮捕を回避できるようサポートしてもらうことができます。
被害者との示談交渉は、加害者自身で対応してもうまくいかないことが多いため、スムーズに示談をまとめるためにも専門家である弁護士に対応してもらうのが安心です。
また、警察に自首する際にも弁護士が同行してくれますので、逮捕を回避できる可能性をより高める効果が期待できます。
横領事件で逮捕を回避するならグラディアトル法律事務所に相談を

横領事件で逮捕を回避するには、刑事事件の経験と実績が豊富な弁護士に依頼するのが重要なポイントになります。
グラディアトル法律事務所は、これまで多数の刑事事件を解決に導いてきた経験と実績がありますので、横領事件の弁護についてもどうぞ安心してお任せください。被害者との示談交渉も得意としていますので、適切な条件で迅速に示談をまとめられるよう全力でサポートいたします。
また、当事務所では刑事事件に関してスピード対応を心がけていますので、最短で即日対応が可能です。身柄拘束されている場合には、すぐに警察署に駆けつけて面会を実施しますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。
さらに、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。初回法律相談を無料で対応していますので、横領事件に関する相談をご希望の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
まとめ
横領事件のうち単純横領罪や業務上横領罪は、重大な犯罪ですので、捜査機関に横領事件が発覚すれば、逮捕される可能性も十分にあります。
逮捕を回避するには、被害者との示談が最優先となりますので、横領が発覚したときはすぐに弁護士に依頼することが重要です。横領事件で逮捕を回避したいとお考えの方は、経験と実績豊富なグラディアトル事務所までお気軽にご相談ください。