着服と横領の違いとは?着服で問われる罪ととるべき対処法を解説

着服と横領の違いとは?着服で問われる罪ととるべき対処法を解説
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弁護士 若林翔
2025年02月28日更新

「横領と着服はどのような違いがある」

「着服した場合に問われる可能性のある罪とは?」

「着服してしまったときはどのように対処すればいい?」

横領と着服は、似たような言葉ですので、両者の違いをはっきりと理解している方は少ないと思います。

着服とは他人の金品を自分の物にしてしまう行動全般を指す言葉であり、一般用語として利用されています。

これに対して、横領とは、不法領得の意志を実現する一切の行為と定義されており、主に法律用語として利用されています。

横領や着服をしてしまった場合、単純横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪といった犯罪が成立する可能性があります。直ちに適切な対応をとらなければ、逮捕・起訴されてしまうリスクもありますので注意が必要です。

本記事では、

・横領と着服の違い

・着服した場合に成立する可能性のある3つの犯罪

・着服や横領をしてしまったときの対処法

などについてわかりやすく解説します。

着服と横領を区別するよりも、着服や横領をしてしまったときにどのように対処すればよいかを理解することが大切です。何らかの罪を犯してしまったときは、自分一人で対応するのは困難ですので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

横領と着服の違いとは?

横領と着服の違い

用語としての違い

横領は法律用語であり、刑法などの法令で正式に定められている言葉です。これに対して着服は一般用語として用いられる言葉で、日常的な会話やビジネスシーンなどでも広く使われています。したがって、法律上の文書や裁判などでは「横領」という言葉が使われる一方、普段の会話などでは「着服」という言葉が多く使われる傾向があります。

法的扱いの違い

横領については、「横領罪」という刑法上の罪名が存在します。自己の占有する他人の物を不法に自分のものにしてしまった場合、刑法によって処罰の対象となります。一方、着服という罪名は法律上存在しません。実際に着服行為があった場合でも、横領罪など他の既存の罪名で立件されることになります。つまり、着服行為の内容が横領罪にあたると認定されれば、法的に処罰されることになるわけです。

行為上の共通点

横領と着服はいずれも「他人の物を不法に自分のものにする」行為です。そのため、どちらの言葉であっても、行為の本質は変わりません。要するに、他人のお金や物品を勝手に私物化する行為は、法律用語か一般用語かにかかわらず、厳しく罰せられる可能性があるという点では共通しています。

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横領罪とは?構成要件・法定刑・時効・逮捕の流れをわかりやすく解説

着服した場合に成立する可能性のある3つの犯罪

着服した場合に成立する可能性のある3つの犯罪

他人の物を着服して自分のものにしてしまった場合に成立する可能性のある犯罪としては、以下の3つが挙げられます。

罪名行為法定刑
単純横領罪自分が占有する他人の物を横領する5年以下の懲役
業務上横領罪業務上、自分が占有する他人の物を横領する10年以下の懲役
遺失物等横領罪遺失物や漂流物など人の占有を離れた他人の物を横領する1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料

単純横領罪

単純横領罪は、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。

たとえば、以下のような行為が単純横領罪に該当します。

・友人から借りた本を勝手に古本屋で売却する
・レンタカーを借りたものの契約期間を過ぎても返却せず、そのまま乗り回している

なお、単純横領罪の法定刑は、5年以下の懲役と定められています。

業務上横領罪

業務上横領罪とは、業務上、自分が占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。

業務上とは、「人が社会生活上の地位に基づいて反復継続してする行為」を指し、代表的なものとしては、会社の業務になりますが、サークル活動やボランティア活動も「業務」に含まれます。

たとえば、以下のような行為が業務上横領罪に該当します。

・会社の経理担当者が会社のお金を私的に流用する
・会社員が会社の備品を勝手に売却して、自分の小遣いにする
・会社員が領収書の金額を改ざんし、経費の水増し請求をする

なお、業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められています。業務として他人の物を管理する人の方が責任が重いため、単純横領罪よりも法定刑が重くなっています。

遺失物等横領罪

遺失物等横領罪とは、遺失物や漂流物など人の占有を離れた他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。遺失物等横領罪のことを「占有離脱物横領罪」と呼ぶこともあります。

たとえば、以下のような行為が遺失物等横領罪に該当します。

・落とし物の財布をひろって自分のものにする

・他人が乗り捨てた自転車を拾って、自分のものにする

遺失物等横領罪と単純横領罪・業務上横領罪は、物の占有が本人からの委託に基づくかどうかによって区別されます。物の所有者からの委託関係がない場合には、遺失物等横領罪となります。

なお、遺失物等横領罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料と定められています。

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占有離脱物横領罪とは?成立要件・法定刑・時効や逮捕の可能性を解説

着服により逮捕された横領事件の事例

着服により逮捕された横領事件の事例

以下では、着服により逮捕された横領事件の実際の事例を紹介します。

24時間テレビの寄付金を着服して逮捕された事例

山陰地方を放送エリアとする日本海テレビの経営戦略局の元局長が、チャリティー番組の「24時間テレビ」の寄付金と、会社の資金あわせて600万円あまりを着服したとして、警察は元局長を業務上横領の疑いで書類送検しました。

書類送検されたのは、鳥取市に本社がある日本海テレビで経営戦略局の54歳の元局長です。

警察によりますと元局長は、チャリティー番組の「24時間テレビ」の寄付金およそ137万円と、会社の資金およそ470万円のあわせて600万円あまりを着服したとして業務上横領の疑いがもたれています。

警察の調べに対して元局長は「横領したことに間違いはない」と話し、容疑を認めているということです。

警察によりますと元局長は、経理部長や総務局の局長などを歴任していて、会社の資金を管理する立場にあったということです。

このうち「24時間テレビ」の寄付金については社内で保管されていた現金の一部を勝手に持ち出し、自分の銀行口座に入金するなどしていたということです。

(引用:NHK)
24時間テレビ寄付着服 業務上横領容疑元テレビ局長書類送検

消防団の口座から約94万円を着服して逮捕されて事例

南魚沼警察署は、住居不定無職の男性(30歳)を業務上横領の疑いで逮捕しました。

逮捕された男性は、南魚沼市の消防団の会計係として、同消防団名義の通帳、キャッシュカードなどの保管業務をしていました。

そして、2023年4月ころから2024年5月ころまでの間、立場を利用し、金融機関において、同消防団のキャッシュカードを使用して自身の管理する口座に現金合計約94万円を横領した疑いがもたれています。

南魚沼署によると、逮捕された男性は「間違いありません」と供述しており、容疑を認めているということです。

(引用:にいがた経済新聞)
【余罪が判明】消防団の口座から合計約94万円を着服、住居不定無職の男性(30歳)を再逮捕

訪問介護事業所で利用者の預金口座から50万円を着服して逮捕された事例

弘前市の訪問介護事業所で、管理者を務めていた55歳の男が、利用者の預金口座から50万円を横領した疑いで逮捕されました。

業務上横領の疑いで逮捕されたのは、弘前市大富町の団体職員の男性(55)です。

警察によりますと、容疑者は2021年4月、管理者を務めていた弘前市の訪問介護事業所で、利用者の当時86歳の女性の預金口座から2回にわたって合わせて50万円を払い出し、着服した疑いが持たれています。

鈴木容疑者は、被害に遭った女性から普通預金口座の管理や現金の保管といった業務を委託されていました。

女性は2022年2月に亡くなっていて、2024年7月、鈴木容疑者の訪問介護事業所を運営する会社から警察に告発があり、事件が発覚しました。

鈴木容疑者は容疑を認めていて、着服した金に関して「生活費やパチスロに使った」と供述しているということです。

(引用:ABA青森朝日放送)
利用者の預金口座から50万円横領の疑い 弘前市の訪問介護事業所の元管理者を逮捕

着服・横領してしまったときの対処法

着服・横領してしまったときの対処法

着服・横領をしてしまった場合、そのままでは逮捕・起訴されて、刑事罰が下される可能性があります。逮捕や起訴を回避し、少しでも有利な処分を獲得するためにも、以下のような対処法を検討しましょう。

被害者との示談

着服・横領してしまったときに最優先で対応しなければならないのが、被害者との示談です。

横領罪の事案では、加害者に対する刑事処罰よりもお金の返済を希望する被害者が多いため、被害者との間で示談が成立すれば、逮捕や起訴を回避できる可能性があります。被害者としても、捜査機関に被害届や告訴状を提出して、問題が公になるよりも、示談により穏便に解決したいという意向がありますので、真摯に謝罪をして示談の申し入れをすれば、応じてもらえる可能性も十分にあります。

万が一、刑事事件化した場合でも、被害者との間で示談が成立していれば、加害者にとって有利な事情として考慮してもらうことができますので、逮捕や起訴を回避できる可能性が高くなります。

このように着服・横領の事案では、被害者との示談が特に重要になりますので、すぐに示談交渉に着手するようにしてください。

警察への自首

着服・横領により逮捕されるのを回避するには、警察に自首することも有効な手段となります。

自首とは、捜査機関に事件や犯人が発覚する前に、自主的に犯罪事実の申告をすることをいい、法律上、刑の任意的減軽事由として定められています。自首をすることで、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せるため、それにより逮捕を回避できる可能性があります。

ただし、自首の法的効果として逮捕の回避が定められているわけではありませんので、自首をすれば必ず逮捕されないというわけではありません。

弁護士への相談

着服・横領してしまったときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

着服・横領事件では、被害者との示談が重要になりますが、加害者本人から示談交渉を申し入れても、素直に受け入れてもらえない可能性があります。このような場合には弁護士が間に入ることにより、スムーズに示談交渉を進めることができますので、示談成立の可能性を高めるためにも弁護士に依頼すべきでしょう。

また、警察に自首する場合も弁護士に依頼すれば、自首に同行してもらえますので、不安なく自首の手続きを進めることができます。弁護士から警察に対して、逮捕をしないよう強く要請することで逮捕を回避できる可能性を高めることもできます。

このように弁護士に相談することでさまざまなメリットが得られますので、着服・横領をしてしまったときはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

着服・横領に関するQ&A

着服・横領に関するQ&A

以下では、着服・横領に関するよくある質問とその回答を紹介します。

着服したお金を全額返せば罪に問われない?

着服したお金を全額返したとしても、罪が消えてなくなるわけではありませんので、罪に問われるリスクはあります。

しかし、被害届や告訴状の提出前に示談を成立させることができれば、刑事事件化されることはありませんので、罪に問われるリスクはほとんどありません。また、被害届や告訴状の提出後であっても、示談が成立していれば有利な情状として考慮してもらえますので、逮捕や起訴を回避できる可能性があります。

少額の着服でも罪に問われる?

着服した金額にかかわらず、横領罪や業務上横領罪が成立しますので、少額の着服であっても罪に問われる可能性があります。

ただし、少額の着服事案であれば、被害者との示談が成立すれば、不起訴処分になる可能性が高いといえます。そのため、少しでも有利な処分にしたいというときは、すぐに被害者との示談交渉に着手することが大切です。

着服・横領に関するお悩みはグラディアトル法律事務所に相談を

着服・横領に関するお悩みはグラディアトル法律事務所に相談を

着服・横領に関するお悩みは、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

当事務所では、着服・横領事案の弁護に関する豊富な経験や実績がありますので、リスクを最小限に抑えるための弁護活動のポイントを熟知しています。着服・横領が発覚する前であれば、早期に被害者との示談をまとめることで、刑事事件化を回避することが可能です。また、経験豊富な弁護士が被害者に対し、横領事件の露見による企業イメージの低下のリスクなどを丁寧に説明することで、事件を公にすることなく解決することも可能です。

加害者自身で対応するよりも専門家である弁護士に依頼した方が、示談成立の可能性は高くなりますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。

当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。

刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。

まとめ

着服と横領は、法律用語かどうかという点で区別されますが、基本的な意味は同じです。他人の物を自分のものにしてしまう行為は、刑法上の横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪が成立する可能性がありますので、着服や横領に該当する行為をしてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

着服・横領に関する弁護をご希望の方は、実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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