電子計算機使用詐欺罪とは?成立要件や具体的なケース、対処法を解説

電子計算機使用詐欺罪とは?成立要件や具体的なケース、対処法を解説
弁護士 若林翔
2025年01月15日更新

「電子計算機使用詐欺罪とはどのような犯罪なの?」

「電子計算機使用詐欺罪はどのような場合に成立するの?」

「電子計算機使用詐欺罪で逮捕された事例にはどのようなものがある?」

電子計算機使用詐欺罪とは、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報または不正な指令を与えて財産上の利益を得る犯罪です。

一般的な詐欺罪は、人を欺いて財産を騙し取る犯罪ですが、電子計算機使用詐欺罪は、コンピューターを欺いて財産を騙し取る犯罪という違いがあります。

電子計算機使用詐欺罪という言葉は、あまり聞きなれないかもしれませんが、他人のクレジットカードをネットショッピングに利用するような場合に成立する犯罪ですので実は身近な犯罪といえます。そのため、犯罪の当事者にならないようにするためにも電子計算機使用詐欺罪の成立要件や具体的に成立する可能性のあるケースなどをしっかりと押さえておくことが大切です。

本記事では、

・電子計算機使用詐欺罪の成立要件

・電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性のある4つのケース

・電子計算機使用詐欺罪の逮捕事例

などについてわかりやすく解説します。

電子計算機使用詐欺罪の罰則は、一般的な詐欺罪と同様に10年以下の懲役と定められており、重い犯罪になりますので、電子計算機使用詐欺罪を犯してしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

電子計算機使用詐欺罪とは?

電子計算機使用詐欺罪は、「電子計算機」を使った詐欺行為に対して適用される犯罪です。

電子計算機とは具体的にどんなもの?

電子計算機とは、他人が事務処理などの目的で使用するコンピューターを指します。具体的には以下が含まれます。

・PC(パソコン)
・スマートフォン
・銀行のATM

要するに、情報を処理するために使われる電子機器全般を指します。

他人が使うこれらの電子計算機を悪用して、不正な利益を得たり、他人に損害を与えた場合に成立します。
簡単に言えば、他人のコンピューターやスマホ、ATMを「悪用して詐欺を働くこと」がこの罪に該当します。

電子計算機使用詐欺罪の成立要件

電子計算機使用詐欺罪は、以下の要件を満たす場合に成立します。

以下に、電子計算機使用詐欺罪をスタイリッシュにまとめました:

項目説明
対象他人が使用する「電子計算機」
例:PC、スマートフォン、ATMなど
主要行為不実の電磁的記録の作出
虚偽の電磁的記録の供与
不実の記録作出ウソの情報や不正な指令を入力して利益を得る
:入金されていないのに「入金済み」とシステムに登録
虚偽の記録供与不正なデータを用いて利益を得る
:購入していない乗車券を自動改札機で使用
要点「コンピューターを騙す」ことで利益を得る犯罪
目的財産的利益の不正取得
成立条件ウソや不正な情報の利用による利益の発生
法的名目電子計算機使用詐欺罪
  • 洗練された手法が用いられることが多い犯罪。
  • 公共の電子計算機に虚偽の情報を記録し、不正な利益を得た瞬間に罪が成立します。

電子計算機の存在

この犯罪の対象は「電子計算機」であり、他人が事務処理のために使用するコンピューターつまり、PCやスマートフォン、銀行のATMなどを指します。

不実の電磁的記録の作出または虚偽の電磁的記録の供与

この罪は、次の2つの行為のどちらかが含まれる場合に成立します。

不実の電磁的記録の作出

コンピューターにウソの情報や不正な指令を入力して利益を得る行為です。
例:銀行員がシステムを操作して、実際には入金されていないのに「入金済み」と登録する。

虚偽の電磁的記録の供与

ウソの情報が記録されたデータをコンピューターに使って利益を得る行為です。
例:キセル乗車で、実際には購入していない乗車券を自動改札機に読み込ませる。

簡単に言うと「コンピューターにウソを入力する」「ウソのデータをコンピューターで使う」
このどちらかをして利益を得ると、電子計算機使用詐欺罪に該当します。

 財産上不法な利益を得たこと

最終的に、以下の条件を満たすことが必要です。

不正な利益を得たこと:財産や財物だけでなく、金銭的価値のある利益を不正に得ること。

具体例:他人名義のクレジットカードを使い、ネットショッピングをして支払いを免れる行為。

電子計算機使用詐欺罪が成立するには、

  1. 他人が使用する電子計算機を対象にし、
  2. 虚偽の情報や不実な記録を作成・利用し、
  3. 不正な財産上の利益を得た場合に適用されます。

電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性のある4つのケース

電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性のある代表的なケースとしては、以下の3つが挙げられます。

電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性のある4つのケース

銀行員による着服

銀行員が銀行の預金システムを不正に操作して、自分の預金口座に振り込みがあったとする虚偽の情報を作出した場合には、電子計算機使用詐欺罪が成立します。

キセル乗車

キセル乗車とは、2枚以上の乗車券や定期券を連続しない区間で使用して、その区間の運賃の支払いを免れる不正乗車をいいます。

有人改札でキセル乗車を行うと、駅員を騙して不正に運賃の支払いを免れていますので「詐欺罪」が成立しますが、自動改札機でキセル乗車を行うと、駅員ではなくコンピューターに虚偽の電磁的記録を与えて不正に運賃の支払いを免れているため「電子計算機使用詐欺罪」が成立します。

還付金詐欺

特殊詐欺の手口のひとつである還付金詐欺も電子計算機使用詐欺罪に問われる可能性のあるケースです。

還付金詐欺では、還付金が振り込まれると誤信した被害者にATMを操作させて、被害者の真意に反する虚偽の情報を与え、被害者の口座から指定口座に振り込みをさせて、不実の電磁的記録を作出していますので、電子計算機使用詐欺罪が成立します。

他人名義のクレジットカードを使用してネットショッピング

ネットショッピングは、クレジットカード番号とセキュリティコードを知っていれば、他人名義のクレジットカードでも買い物ができてしまいますので、不正に入手したクレジットカードを利用して高額なネットショッピングを繰り返すというケースも少なくありません。

このようなケースも電子計算機使用詐欺罪に問われる可能性があります。

電子計算機使用詐欺罪の刑罰

電子計算機使用詐欺罪の刑罰

電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められています。これは、一般的な詐欺罪の法定刑と同じです。

電子計算機使用詐欺罪の法定刑には、罰金刑が存在しませんので、起訴されて有罪になれば、懲役刑が言い渡されることになります。執行猶予が付かなければ、そのまま刑務所に収監される可能性もありますので、重い犯罪といえるでしょう。

電子計算機使用詐欺罪の逮捕事例

電子計算機使用詐欺罪の逮捕事例

電子計算機使用詐欺罪で逮捕された事例には、以下のようなものがあります。

山口県阿武町の4630万円の誤送金事件

電子計算機使用詐欺罪の逮捕事例として世間の注目を集めた事件としては、山口県阿武町の4630万円の誤送金事件があります。

この事件は、山口県阿武町が新型コロナウイルス臨時特別給付金として、非課税世帯463世帯に振り込むはずの4630万円を誤って1人の住民に振り込んでしまったという事件です。町は誤振込をした男性に事情を説明して、返金を求めましたが、男性が返金を拒否しました。男性は、誤送金のあった4630万円を別の口座に振り替えたという電子計算機使用詐欺罪の容疑で逮捕されました。

セガからゲーム内通貨を騙し取った事件

ゲーム大手セガからオンラインゲームで使用できる「ゲーム内通貨」を騙し取ったとして、電子計算機使用詐欺罪の容疑で中国籍の男(32歳)が逮捕されました。

被疑者は、ゲームのアカウントやアイテムを売買する「リアルマネートレード(RMT)」の仲介サイトで、正規の20分の1の価格でゲーム内通貨が入手できると訴えて顧客を勧誘し、少なくとも約3500万円を集めたとみられます。
(引用:時事通信)

セガからゲーム内通貨詐取 容疑で中国人の男逮捕―RMTで募集、被害3500万円か・警視庁

LINEPayでポイント3500万円分騙し取った事件

スマートフォン用の決済サービス「LINEPay」で架空取引を繰り返し、約3500万円分のポイントを騙し取ったとして、警視庁は男女6人を電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕しました。

被疑者らは、「LINEPay」に登録したクレジットカードを利用し、被疑者が経営する会社から商品を購入したとする虚偽の情報を、LINEPay運営会社が管理するサーバーに送信し、約3500万円分のポイントをだまし取ったとみられます。

(引用・朝日新聞デジタル)

LINEPayでポイント3500万円分詐取容疑 男女6人を再逮捕

電子計算機使用詐欺罪を犯してしまったときの対処法

電子計算機使用詐欺罪を犯してしまったときは、以下のような逮捕症を検討しましょう。

電子計算機使用詐欺罪を犯してしまったときの対処法

警察への自首

電子計算機使用詐欺事件が警察に発覚する前であれば、自首を検討しましょう。

自首とは、捜査機関に犯人や事件が発覚する前に、自ら犯罪事実の申告をすることをいいます。自首が認められると、刑の任意的な減軽という法的効果が生じますので、起訴されてしまったとしても、量刑が軽くなる可能性があります。

また、自首をすることによって、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せますので、逮捕を回避するといった事実上の効果も期待できます。

被害者との示談

電子計算機使用詐欺罪により被害を受けた人がいる場合には、被害者との示談を成立させることが重要です。

被害者との示談により被害が回復できれば処罰の必要性が低減しますので、逮捕や起訴を回避できる可能性が高くなります。また、仮に起訴されてしまったとしても被害者との示談は有利な情状として考慮されますので、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高くなります。

このように刑事事件において有利な処分を希望するのであれば、被害者との示談が重要な要素になりますので、事件を起こしてしまったときはすぐに被害者との示談に着手するようにしましょう。

示談に関しての記事もありますので、併せてご覧ください。

詐欺事件の示談金相場はいくら?払えないときの対処法も解説

弁護士に相談

電子計算機使用詐欺罪を犯してしまったときは、すぐに弁護士に相談してください。

電子計算機使用詐欺罪の事案は、特殊詐欺や高額な着服事案も多く、初犯であっても実刑判決になる可能性の高い犯罪です。早期に適切な対応をしなければ逮捕・起訴されてしまうリスクも高いといえます。

弁護士に相談をすれば、逮捕や起訴を回避するための適切な対処法をアドバイスしてもらうことができます。また、加害者本人では難しい示談交渉も弁護士に依頼すればスムーズに対応してもらえますので、早期の示談成立により逮捕や起訴を回避できる可能性が高くなります。

少しでも有利な処分を希望するなら、一刻も早く刑事事件に強い弁護士に相談するようにしましょう。

電子計算機使用詐欺罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

電子計算機使用詐欺罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

電子計算機使用詐欺罪は、一般的な詐欺罪と同様に10年以下の懲役が法定刑として定められている重い犯罪です。事件の内容や被害額によっては厳しい刑罰が科される可能性もありますので、早期に弁護士に依頼してサポートしてもらうことが重要です。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件に関する豊富な経験と実績がありますので、電子計算機使用詐欺罪の事案についても、具体的な状況に応じた適切な弁護活動を行うことができます。刑事事件は弁護士の能力によって結果が大きく左右されることもありますので、まずは経験豊富な弁護士が多数在籍する当事務所までご相談ください。

当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。

まとめ

電子計算機使用詐欺罪は、人ではなくコンピューターを対象とした詐欺罪になります。法的知識がなければ犯罪の成否について正確に判断することはできませんので、電子計算機使用詐欺罪の疑いをかけられてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性があるケースであれば、弁護士が早期に示談交渉に着手して有利な処分を獲得できるよう全力でサポートいたします。

電子計算機使用詐欺罪を犯してしまった方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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