【DV検挙数8,000件超!】逮捕されるケース・前科回避の方法を解説

DV検挙数8,000件超!】逮捕されるケース・前科回避の方法を解説
弁護士 若林翔
2024年07月17日更新

「DVで訴えられたら逮捕されてしまうのだろうか」

「逮捕まで(逮捕後)の流れは?」

「前科を回避する方法はあるのだろうか」

 

DVについて、たまに「DVは家庭の事情だから警察は動かない」「逮捕まではされない」という情報を見かけますが、それは誤りです。

令和5年犯罪白書によると、DVで検挙(逮捕)された件数は8,535件で、その多くが暴行罪や傷害罪が成立しています。

逮捕されて犯罪成立となれば、前科が付くことになり、社会的信用の低下は免れません。

DVの加害者となってしまった場合、逮捕回避に向けた行動ができるかどうかが明暗を分けます。では、どのような行動を取るべきなのか。

当記事をまとめますと、

  • ・DVで逮捕されるケースは2つ
  • ・令和4年におけるDVの検挙件数は8,535件
  • ・DV逮捕の約89%が暴行罪・傷害罪が成立している
  • ・暴行罪・傷害罪以外にもDVで逮捕され得る犯罪あり
  • ・前科を回避するには被害者との示談交渉が明暗を分ける

といったことが分かります。

詳しくは、以下で深掘りしていきます。

DVで逮捕されるケースとは?

DVで逮捕されるケースは、以下の通りです。

DVで逮捕されるケースとは?

被害届・告訴状を提出している

被害者が被害届を提出している場合は、警察が動いて逮捕される可能性が高まります。

告訴状も提出している場合は、さらに逮捕される可能性が高まります。

被害届“のみ”の提出だった場合は、捜査への強制力はありませんので、動くかどうかは捜査機関の判断次第という側面もあるからです。

告訴状の場合には、犯罪捜査規範において、

第六十三条  司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。

2  司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。

要約すると、「告訴状が提出された場合は、受理され、捜査が開始される」ということです。

受理されれば、捜査機関は証拠集めや逮捕に向けた行動に移行しますので、逮捕の可能性はより一層高くなります。

他方、そのような側面から、捜査機関も告訴状の受理には慎重な姿勢を見せますが、逆に言えば、告訴状が受理されるということは、受理するだけの証拠が揃っているとも言い換えることができますので、逮捕だけでなく起訴される(=前科が付く)リスクも高いと言えるでしょう。

110番通報

110番通報の結果、警察官が現場に駆け付け、逮捕されるケースがあります。また、110番通報は被害者本人に限った話ではなく、第三者からの通報という可能性もあります。

例えば、

  • ・ある住宅から言い争いをしている声が聞こえてきたので、近隣住民が通報した
  • ・窓からDV行為と思われる陰が見えたので、通報した
  • ・日に日に怪我が増える被害者のことが心配になり、通報した

このように、警察が現場に駆け付け、現行犯逮捕されるケースだけでなく、加害者や第三者への事情聴取後に逮捕されるケースもありますので、注意が必要です。

DVの逮捕の実態

それでは、DVにおける逮捕の実態を見ていきましょう。

DVの逮捕の実態

DVの検挙(逮捕)状況

令和5年犯罪白書によると、DVの検挙(逮捕)件数は年々上がり続け、平成22年と比較すると、およそ3.6倍となる8,535件が報告されています。

その背景には、配偶者暴力防止法(=DV法)ではなく、より罪の重くなる暴行罪や傷害罪といった他法令で裁かれているというのが、要因の一つにあります。

DV検挙(逮捕)件数の89%が暴行罪・傷害罪

また、DVの検挙件数を紐解いていくと、傷害罪が2,519件、暴行罪が5,096件となっており、全体の89%を占めていることが分かります。

これらの情報から分かることは、DVで逮捕・起訴された場合、多くの場合で傷害罪・暴行罪が成立し、前科が付いてしまうということです。

DVと傷害罪・暴行罪の成立、判例、不起訴処分の詳細は以下の記事をご参照ください。

DVは傷害罪・暴行罪が成立する?判例・不起訴処分の流れについても解説

 

DVで逮捕された場合に成立する犯罪

DVで逮捕された場合に成立する犯罪は、以下の通りです。

DVで逮捕された場合に成立する犯罪

暴行罪

暴行罪は、殴る・蹴るといった身体的な暴力行為だけでなく、精神的に相手を追い詰める行為でも成立する犯罪です。

具体的には、

~身体的暴力行為~
  • ・殴る、蹴る
  • ・胸倉を掴む、押し倒す
  • ・木刀やナイフなどの凶器を振り回す
  • ・水やお茶をかける
  • ・驚かせる目的で相手の近くに物を投げる
  • ・髪の毛を切る
~精神的暴力行為~
  • ・相手の近くで怒鳴る
  • ・嫌がらせ目的で何回も電話をかける
  • ・病気を移す
  • ・睡眠を妨害する

といった行為が挙げられます。

刑罰は、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料(刑法208条)」が科されます。

傷害罪

傷害罪は、暴行罪の要件に「傷害の結果」が構成された犯罪です。

簡単に言うと、暴力行為を行って相手に怪我を負わせた場合は傷害罪が成立するということです。

具体的には、

  • ・相手のお腹を蹴って、打撲や内出血を負わせた
  • ・胸倉を掴んで押し倒し、昏倒させた
  • ・ナイフを振り回し、刺し傷・切り傷を負わせた
  • ・髪の毛を切って、相手はPTSDに陥った
  • ・風邪を引いているのを知りつつ相手の近くで咳を繰り返し、病気を移した
  • ・嫌がらせの電話をかけ続け、相手は睡眠障害に陥った
  • ・ストーカー行為を行い、相手はうつ病を患った

といった行為が挙げられます。

刑罰は、「15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法204条)」が科されます。

Q、暴力行為で相手を死なせてしまった場合は何罪?

暴力行為の結果、傷害を通り越して「死亡」させてしまった場合は、傷害致死罪が成立します。傷害致死罪は、「3年以上(20年以下)の有期懲役(刑法205条)」に処されますので、傷害罪と比較して重い罪となる点は覚えておきましょう。

脅迫罪

脅迫罪は、相手または親族の生命、身体、自由、名誉、財産などに対し害を与えることを告知し、脅迫する行為で成立する犯罪です。

具体的には、

  • ・お前を殺す(生命)
  • ・離婚だって言うなら、お前の家族がどうなっても知らないからな(身体)
  • ・家から一歩も出るな。さもないと痛い目を見るぞ(自由)
  • ・お前が不倫していたことを会社にバラす(名誉)
  • ・自宅に火をつけてやる(財産)

といった言葉を放つ行為が挙げられます。

刑罰は、「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金(刑法222条)」が科されます。

強要罪

強要罪は、脅迫罪の要件に、「人に義務のないことを行わせる」、「権利の行使を妨害する」が構成された犯罪です。

具体的には、

  • ・「殴られたくなければ、土下座して謝れ」と言って、相手を土下座させた(義務のない行為)
  • ・「離婚するならお前の裸の写真をネットにUPしてやる」と言って、離婚を言わせないようにした(権利の行使を妨害)

といった行為が挙げられます。

刑罰は、「3年以下の懲役(刑法223条)」が科されます。

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪は、相手の同意なしにわいせつな行為を行った場合に成立する犯罪です。

具体的には、

  • ・相手の同意なしに、裸の写真を撮った
  • ・パートナーが嫌がっているにも関わらず、わいせつな行為に及んだ
  • ・子供に対し、わいせつな行為を行った

といった行為が挙げられます。

刑罰は、「6ヶ月以上10年以下の拘禁(刑法176条)」が科されます。

※拘禁とは、新たに施行された自由刑の一つで、懲役刑と拘禁刑を1つにまとめた刑罰になっています。

殺人罪

殺人罪は、殺意を持って死亡させた場合に成立する犯罪です。

構成要件としては傷害致死罪と似ていますが、殺人罪との違いは「殺意の有無」が大きく関係してきます。

この2つの成立要件をまとめると、

  • ・傷害行為の結果、相手が死亡した→傷害致死罪が成立
  • ・殺意を持って傷害行為に及び、相手を死亡させた→殺人罪が成立

となります。

具体的には、

  • ・「お前を殺してやる」と言って、殺害した
  • ・ナイフなどの凶器で何度もメッタ刺しにして、殺害した
  • ・長期的に殺害計画を企て、その計画を実行し、殺害した

といった行為が挙げられます。

刑罰は、「死刑または無期もしくは5年以上の懲役(刑法199条)」が科されます。

 

DVで逮捕された場合の流れ

DVで逮捕された場合は、以下の流れで進んでいきます。

DVで逮捕された場合の流れ

警察官による取り調べ(最大48時間)

逮捕された後は、留置場にて警察官の取り調べを受けます。(加害者は起訴されるまでの間は“被疑者”という呼ばれ方をします。)

ここでは、警察官による尋問や自分の主張や弁解を供述する場所になりますが、最大で48時間拘束されることになり、外部との連絡が一切絶たれます。

また、取り調べでのやり取りは供述調書として記録され、重要な証拠として扱われますので、万が一不利な供述をしてしまうと、後述する送致や起訴の可能性が高まります。

※黙秘権を行使した場合も、そのまま送致されることになります。

送致|検察官による取り調べ(最大24時間)

警察官による取り調べの結果、「送致の必要あり」と判断されれば、検察官に引き継がれます。ここでは検察官による取り調べを受けることになり、最大24時間の拘束、外部との連絡も一切禁止です。

※前述での48時間と合わせて、最大で72時間外部との連絡の一切が禁止となります。

24時間以内に裁判官に勾留請求を行うかどうかの判断をして、

  • ・勾留請求が認められる→勾留決定
  • ・勾留請求が却下されるorそもそも請求をかけない→釈放され在宅事件に切り替わる

このように進行していきます。

Q、送致?送検?書類送検?どれが正しいの?

よく報道関連のニュースを見ていると、送致ではなく「送検」や「書類送検」という言葉が聞こえてきますが、これらは全て送致を意味しています。

正式には送致ですが、

  • ・送検→主に報道用語として利用される
  • ・書類送検→主に大衆用語として利用される

このような違いがあるので、覚えておきましょう。

勾留(最大20日間)

裁判官が「勾留の必要性あり」の決定を下せば、最大20日間の勾留となります。

引き続き、検察官による捜査や取り調べが行われ、起訴するか、不起訴にするかを決定します。

仮に起訴となれば、勾留期間に続き、刑事裁判が開かれる1~2ヵ月後まで拘束されますので、社会的信用の低下は否めません。また、起訴された場合の有罪率は99.9%ですので、前科が付いてしまうことも覚悟する必要があるでしょう。

そのため、勾留まで進んでしまった場合は、いかに不起訴処分を獲得するかが重要になってきます。

刑事裁判

刑事裁判では、裁判官による有罪の・無罪の判決が言い渡されます。

ただ、前述の通り、起訴された場合は99.9%で有罪判決を受けることになりますので、懲役刑や罰金刑など、何らかの処罰が科され、前科が付くことになります。

他方、裁判所で開かれる「正式裁判」の他に、「略式裁判」という簡略化された裁判があります。略式裁判の場合は、裁判所ではなく書面のみで審理、判決が下されるので、裁判を受けた実感が湧かないかもしれませんが、正式裁判と同様、刑罰・前科が付く点は注意しましょう。

Q,略式裁判の条件とは?

略式裁判を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • ・簡易裁判所の管轄であること
  • ・100万円以下の罰金または科料に相当する事件であること
  • ・被疑者が略式裁判について了承していること

これにより、簡易裁判所にて略式命令が下され、被告人(=加害者)は罰金または科料を納付することで裁判終了となります。

DVで逮捕|不起訴処分を獲得するには示談が重要

DVで逮捕|不起訴処分を獲得するには示談が重要

このように、DVで逮捕されれば、前科が付くことになり、社会的信用の低下は否めません。

では、逮捕された場合はどうすべきか、それは「被害者との示談を成立させること」です。

被害者と示談が成立すれば、逮捕前なら逮捕回避、逮捕後であっても、早期釈放や不起訴処分を獲得することが可能です。

ですが、現実はそう甘くはありません。

被害者からすれば、加害者からの示談の申し出は恐怖でしかなく、逆に悪化させる要因にもなってしまいます。特に身近な人からのDV行為が原因なのですから、根は深く、解決も容易ではありません。

また、時間が長引けば長引くほど、勾留期間が延びたり、起訴されたりするリスクも高くなります。

そのため、速やかにかつ円満に示談交渉を進めるにあたって、『弁護士のサポートを受けること』が重要になってきます。

以下の記事も併せてご覧ください

暴行罪の不起訴率は約7割!不起訴を獲得するための方法や事例を解説

【傷害罪は68%が不起訴】その理由は?不起訴率を高める方法も解説

自力交渉が困難|DVで逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット

示談交渉を弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。

DVの被害者が弁護士に依頼するメリット

被害者が示談に応じやすくなる

被害者からしてみれば、加害者のことを「許せない」「罪を償ってほしい」と思っているため、当人同士の示談では望む結果が得られないことが多いです。それだけでなく、さらに関係性が悪化し、相場より高い慰謝料を請求されたり、起訴のリスクが上がってしまうことにも。

その点、弁護士が間に入ることで、被害者は安心して交渉に応じてくれるようになり、示談成立の可能性が高くなります。また、被害者側から法外な慰謝料を請求された場合でも、法律の観点から、適正な価格を模索することもできます。

示談交渉においては、迅速かつ冷静な交渉力が求められますので、経験豊富な弁護士ほど適任者はいないでしょう。

適切なアドバイスを受けることができる

逮捕された場合、最大72時間は外部との連絡手段が絶たれますので、警察官や検察官の取り調べには一人で臨む必要があります。その際に不利な供述をしてしまえば、それが供述調書として被害者側に有利な証拠物として残りますので、勾留や起訴のリスクが高くなります。

その点、弁護士は、唯一接見が許されておりますので、精神的緩和に繋がるだけでなく、取り調べを有利に進めるためのアドバイスを行うこともできます。

他方、身柄拘束されている状況下では、外部と連絡を取りようがありませんので、被害者との示談を進めることすらできません。その点においても、弁護士の行動力・交渉力が役に立ちますので、自力解決が困難と感じたら、速やかに弁護士に依頼しましょう。

DVで逮捕された場合の弁護はグラディアトル法律事務所へ

DVで逮捕された場合の流れと解決策について解説しました。

記事の内容を、以下にまとめます。

・DVで逮捕されるケース:

 ①被害届・告訴状の提出

 ②110番通報による警察の介入

・DVの逮捕実態:

DVの検挙件数は増加し、89%が暴行罪や傷害罪で処理されている。

・DVで逮捕された場合の成立犯罪:

暴行罪、傷害罪、傷害致死罪、脅迫罪、強要罪、不同意わいせつ罪、殺人罪などが該当。

・DV逮捕後の流れ:

警察による取り調べ、検察官への送致、最大20日間の勾留、刑事裁判で有罪・無罪が判決される。

・DV逮捕後は示談が重要。速やかに成立させることで逮捕回避や早期釈放、不起訴処分を獲得することが可能。

・弁護士に示談交渉を依頼するメリット:

①被害者が応じやすくなる

②適切な法的アドバイスを受けられる

もしDV行為で逮捕されてしまったら、速やかに早期釈放や不起訴処分に向けた行動を起こすことが重要です。とはいえ、一人で進めていくのは困難で、状況を悪化させるリスクも高まります。

「どうしたらいいか分からない」「逮捕されてしまったので身動きが取れない」

そんな時は、ぜひ弁護士を頼ってください。

 

グラディアトル法律事務所は、初回相談無料(LINE相談可)、24時間365日相談受付、全国47都道府県対応できますので、お気軽にご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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