暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件や刑罰の違いを弁護士が解説

暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件や刑罰の違いを弁護士が解説
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弁護士 若林翔
2024年04月20日更新

「友人を殴ってしまい、罪に問われるのではないかと心配している」

「自分のケースでは暴行罪と傷害罪のどちら該当するのか知りたい」

他人に対して暴行を加えた場合、今後自分はどうなってしまうのか、さまざまな不安を抱えることになります。

実際、他人に対して暴行を加えると、暴行罪や傷害罪の罪に問われる可能性がありますが、どちらも暴行に基づく犯罪であり、具体的に何が違うのか理解できていない人がほとんどです。しかし、暴行罪と傷害罪には、成立要件や刑罰の重さなどに大きな違いがあるため、それらを把握しておくことは、今後の対応を検討するうえで重要になってきます。

そこで本記事では、暴行罪と傷害罪の違いを6つの項目で比較しながら、わかりやすく解説します。暴行罪・傷害罪に該当する具体的な事例なども紹介するので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

 

暴行罪と傷害罪の違いを6つの項目で比較

暴行罪と傷害罪には、主に以下のような違いがあります。

暴行罪と傷害罪の違い

一つひとつの違いを詳しく解説していくので、自身の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。

 

成立要件:ケガがなければ暴行罪、ケガがあれば傷害罪

暴行罪と傷害罪はどちらも、「暴行を加えること」を成立要件としていますが、暴行によって相手がケガをしているかどうかが大きな違いです。

・暴行罪:暴行を加えたものの、相手がケガをしていない場合に成立

・傷害罪:暴行を加えた相手がケガをした場合に成立

なお、暴行とは「人の身体に対して不法に有形力を行使する」ことを指します。たとえば、殴る・蹴る・叩くといった行為が典型的なパターンです。また、音・光・熱・冷気などによって、間接的に相手を攻撃した場合も「暴行」に該当します。

なお、傷害罪は身体的なケガだけでなく、病気や精神疾患を患った場合も成立する点に注意してください。たとえば、暴行を受けたことが原因でPTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病を発症した場合などは、傷害罪が成立する可能性があります。

 

刑罰の重さ:暴行罪よりも傷害罪のほうが重い

刑罰に関しては、暴行罪よりも傷害罪のほうが明らかに重いです。傷害罪は暴行罪と異なり、他人にケガを負わせているので、その分罪が重くなるのは当然のことといえるでしょう。

暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。なお、拘留は1日以上30日未満の範囲で刑事施設に拘置すること、科料は1,000円以上1万円未満の金銭を納付しなければならない刑罰のことを指します。もっとも、実務上は懲役または罰金を科されるケースが一般的です。

(暴行)
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
引用元:刑法|e-Gov法令検索

傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。暴行罪と比べると刑罰が重く、重大な犯罪であることがわかります。

(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法|e-Gov法令検索

 

逮捕の可能性:暴行罪よりも傷害罪のほうが逮捕されやすい

逮捕の可能性は、暴行罪よりも傷害罪のほうが高いといえるでしょう。傷害罪は、ケガや病気などの苦痛を強いる重大な犯罪であり、被害者が被害届を提出するケースも多く見られます。そのため、捜査機関が捜査に乗り出し、逮捕に至りやすくなるのです。

また、傷害罪で起訴するためには、暴行と傷害との因果関係を裏づける証拠が必要になります。そのため、証拠隠滅の防止を目的として、早期に逮捕状が出される可能性があることも覚えておきましょう。

刑事上の時効:暴行罪は3年、傷害罪は10年

刑事上の時効期間は、暴行罪なら3年、傷害罪なら10年です。「暴行が終了したとき」を起算点とし、それぞれ時効が成立した時点で起訴されることはなくなります。

なお、刑事上の時効は「公訴時効」と呼ばれ、刑罰の重さなどによって、以下のとおり時効期間が区分されています。

公訴時効の時効期間

上記の表に基づくと、暴行罪は法定刑の上限が懲役2年なので時効期間は3年傷害罪は法定刑の上限が懲役15年なので時効期間は10年になるわけです。なお、加害者が国外に逃亡した場合や、起訴状の謄本が送達できなかった場合などは、時効の進行が停止することもあります。

 

民事上の時効:どちらも5年または20年

民事上の時効は、暴行罪・傷害罪ともに5年または20年です。時効が成立した時点で、被害者に対し損害賠償を支払う必要がなくなります。

具体的には、「被害者が加害者と損害を知ったとき」から5年で、損害賠償請求権が消滅します。もし、被害者が加害者の氏名や住所を知らないまま過ごしている場合には、暴行を受けたときから20年が経過するまで時効は成立しません。

なお、民事上の時効は、訴訟の提起などによって完成までの期間が猶予されたり、カウントが更新されたりします。そのため、時効期限が近づいている場合には、被害者からなんらかのアクションが起こされることも想定しておかなければなりません。

 

示談金の相場:暴行罪は10~30万円、傷害罪は10~100万円

示談金の相場は、暴行罪よりも傷害罪のほうが高額になる傾向があります。犯罪の悪質性などによっても示談金額は変動しますが、暴行罪なら10~30万円、傷害罪なら10~100万円をひとつの目安にしておくとよいでしょう。

傷害罪が成立した場合、傷害の程度によっては1億円以上の示談金が支払われるケースもあります。もちろん、暴行罪の場合でも状況次第では100万円を超えるようなケースがあることも理解しておきましょう。

とはいえ、知識や経験のないなかで、暴行罪・傷害罪における適正な示談金額を算出することは困難です。不起訴や刑の減軽を実現させるには、示談を早急に成立させることも大切ですが、不当に高い金額を支払う必要はありません。まずは弁護士に相談し、適正な示談額を算出してもらうようにしましょう。

 

暴行罪に該当する具体的な事例

暴行罪は、暴行を加えたものの、相手がケガをしなかった場合に成立する罪です。具体的には、以下のような行為に及んだ場合に暴行罪が成立します。

  • 衣服をつかんで引っ張る
  • 足元の数歩先に石を投げつける
  • 太鼓を連打して意識朦朧とさせる
  • 相手に向かって塩を振りかける
  • 狭い室内で刃物を振り回す
  • 相手の近くに椅子を投げる

もちろん、他人に対して危害を与えてしまいそうになった場合でも、意図的におこなわれたものでなければ暴行罪は成立しません。たとえば、歩行中にすれ違った人と肩がぶつかった場合や、転倒して他人を巻き込んでしまった場合などは暴行罪の範囲外です。

 

傷害罪に該当する具体的な事例

傷害罪は暴行を加え、相手がケガをしたり、病気や精神疾患を患ったりしたときに成立する罪です。たとえば、顔を殴り鼻血を出させたり、棒で殴打して腕や脚を骨折させたりするケースがわかりやすい事例といえるでしょう。

また、病気や精神疾患を患わせる具体的な事例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 騒音によって慢性的な頭痛や睡眠障害などに陥れる
  • 嫌がらせの電話によって精神を衰弱させる
  • 無断で睡眠薬を飲ませて急性薬物中毒の症状を生じさせる
  • 性病を隠して性交渉をおこない、感染させる

上記のほかにも、SNSでの悪質な書き込みによって相手が精神的ダメージを受けた場合や、いたずらで辛い物を食べさせてお腹を壊した場合なども、傷害罪が成立する可能性があります。

軽はずみに及んだ行為であっても、被害者の出方次第では重大な罪に問われてしまうことを理解しておきましょう。

 

暴行罪と傷害罪の違いに関するよくある質問

次に、暴行罪と傷害罪の違いに関するよくある質問に回答します。同様の疑問を抱えている方は参考にしてみてください。

暴行罪と傷害罪の違いに関するよくある質問

ケガをさせるつもりがなくても傷害罪は成立する?

暴行を加えたことによって相手がケガをした場合、たとえケガさせるつもりがなくても、傷害罪は成立します。

傷害罪の成立には、「暴行」についての故意が存在すれば足りるとされているためです。

ただし、意図的にケガをさせた場合と比較すれば、悪質性が低く、量刑も軽くなることが予想されます。

 

暴行罪・傷害罪の量刑はどのように決定される?

実際の裁判で言い渡される刑罰は、暴行の態様や事件前後の状況などによって大きく変わります。主に以下のようなポイントを総合的に考慮したうえで、量刑を決定するケースが一般的です。

暴行罪・傷害罪の量刑の決まり方

たとえば、同じ場所に居合わせた人物とたまたま口論になり、胸倉を掴んでしまった場合などは、刑罰も比較的軽くなるものと考えられます。一方で、恨みを抱いている複数の人物に対して、計画性をもって暴行を加えたような場合には、量刑が重くなりやすいといえるでしょう。

とはいえ、暴行を加えた事実は変えられないので、少しでも量刑を軽くしたいのであれば、示談を早急に成立させ、反省の意を示すことが大切です。

 

髪を切ったら傷害罪?暴行罪?

無断で他人の髪を切った場合には、原則として暴行罪が成立します。髪を切られたとしても、被害者がケガをしたり、病気を患ったりするわけではないと考えられるためです。

ただし、仮に髪の毛を根本から引き抜くような行為がおこなわれた場合には、傷害罪になる可能性が高いといえるでしょう。

暴力事件を起こしたときは示談を目指すべき!まずは弁護士に相談を

暴力事件を起こしたときは、示談の成立を目指しましょう。示談が成立すれば、不起訴になったり、量刑が軽くなったりする可能性が高くなります。

ただし、加害者本人から示談交渉を直接申し入れることはおすすめしません。多くの場合、被害者側から拒否されてしまううえ、たとえ話し合いに進んだとしても、互いが感情的になり、さらなるトラブルを招いてしまうおそれがあります。そのため、示談を目指す際は、まず弁護士に相談することが大切です。

弁護士に相談・依頼すれば、示談交渉をすべて任せられます。弁護士から交渉を持ち掛ければ、被害者側にも受け入れてもらいやすくなるでしょう。また、適切な示談金を算出し、妥協点を決めたうえで示談に臨めるので、不当な金額を払わされる心配もありません。

実際、グラディアトル法律事務所では、数多くの暴行事件を示談の成立によって解決しています。たとえば、飲食店で友人と口論になり、殴ってしまった30代男性の事例です。

依頼を受けた当事務所の弁護士はすぐさま被害者と連絡を取り、示談交渉を進めると同時に、身柄拘束をしないように求める意見書も提出しました。その結果、逮捕翌日に依頼者は釈放。さらに、示談が無事成立し、不起訴処分も勝ち取りました。

示談の有無は、起訴・不起訴の判断や量刑に大きく影響するため、できるだけ早く弁護士のサポートを得るようにしてください。

まとめ

暴行罪と傷害罪には、成立要件や刑罰の重さ、逮捕の可能性などにおいて、さまざまな違いがあります。それぞれのポイントをしっかりと押さえたうえで、自分自身のケースがどちらに該当するのか判断するようにしましょう。

ただし、いずれにせよ犯罪であることには変わりないので、逮捕されたり、起訴されたりする可能性は高いといえます。そのため、暴行事件を起こしたときは、できるだけ早く弁護士に相談してください。示談交渉や弁護活動を弁護士に相談・依頼すれば、スムーズに問題を解決できることもあります。

グラディアトル法律事務所では、数々の暴行事件を解決した実績があります。刑の軽減や不起訴の可能性を少しでも高めたいのであれば、まず弊所へご相談ください。LINEでの無料相談にも対応しているので、お気軽にどうぞ。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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