「傷害罪はどのような場合に成立するの?」
「自分のケースで傷害罪が成立するのだろうか?」
「傷害罪が成立するケースにはどのようなものがあるの?」
傷害罪は、他人に怪我をさせてしまった場合に成立する刑法上の犯罪です。法律上定められた成立要件を満たした場合に傷害罪が成立しますので、ご自身のケースで傷害罪が成立するかどうかを判断するには、傷害罪の成立要件をしっかりと理解しておく必要があります。
本記事では、
- 傷害罪の成立要件
- 傷害罪が成立する代表的な5つのケース
- 傷害罪に関連する犯罪との成立要件の違い
などについてわかりやすく解説します。
傷害事件を起こしてしまったという場合には、被害者との早期の示談が重要となりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
目次
傷害罪の成立要件
傷害罪が成立するためには、以下の4つの成立要件を満たす必要があります。
暴行など傷害を引き起こす具体的な行為
加害者により傷害結果を引き起こす危険性のある具体的な行為があったことが必要です。
典型的なケースとしては、拳を使って殴る、ナイフを使って切りつけるなどの行為が挙げられますが、以下のような暴行によらない行為も傷害罪の行為に含まれます。
- 騒音を流す
- 執拗な嫌がらせの電話をする
- 性病であることを隠して性器を押し当てる
怪我などの傷害結果の発生
被害者に傷害結果が発生することで傷害罪が成立します。「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えることと定義されています。
典型的なケースは、切創、打撲、骨折などの外傷が生じたケースになりますが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や睡眠障害などの精神的な障害を与えることも傷害罪の結果に含まれます。
なお、相手の毛髪を切ることは、生理的な機能が害されているとはいえませんので、傷害罪ではなく、暴行罪が成立するにとどまります。
因果関係|傷害行為から結果が生じるのが相当だと認められること
傷害行為から傷害結果が生じるのが社会通念上相当と認められることを、「因果関係」があるといいます。簡単にいえば、その行為からその結果が生じるのが当然といえる場合に因果関係が認められます。
たとえば、人を殴って怪我が生じた場合には当然因果関係が認められますが、人を追いかけまわしてその人が転倒して怪我をしたという場合でも因果関係が認められます。なぜなら、追いかけまわさなければ転倒することもなかったと評価できるからです。
故意|傷害結果の発生を認識していたこと
傷害結果の発生を認識していたことを、「故意」といいます。
傷害罪の故意は、相手に怪我をさせようと思って行為に及んだ場合に認められますが、「殴ってやろう」という認識で怪我をさせるつもりがなかったとしても、傷害罪の故意が認められます。つまり、暴行の故意だけでも傷害罪の故意が認められることになります。
傷害罪が成立する代表的な5つのケース
傷害罪はどのような場合に成立するのでしょうか。以下では、傷害罪が成立する代表的な5つのケースを紹介します。
相手を殴って怪我をさせた
相手に殴る、蹴るなどの暴行を加えて、怪我をさせるケースが傷害罪が成立する典型的なケースの1つです。
素手での暴行であれば、犯行態様は悪質ではないと評価され、傷害罪の量刑判断において有利な事情として考慮されます。しかし、執拗に暴行を加えて、長期入院を伴う怪我を負わせてしまった場合には量刑判断で不利な事情として考慮されてしまいます。
ナイフで相手の腕を切りつけた
ナイフなどの凶器を利用して相手に怪我をさせるケースも傷害罪が成立する典型的なケースの1つになります。
ナイフなどの凶器を利用することは、被害者に重大な傷害結果が生じるおそれのある行為になりますので、素手での暴行の事案に比べて重く処罰される傾向にあります。
騒音により睡眠障害に陥れた
連日大音量でラジオなどを鳴らして、隣人を睡眠障害に陥れたケースでも傷害罪が成立します。
通常、「音」では他人に外傷を負わせることはできませんが、精神的なストレスにより睡眠障害などを発症することがあります。これは、相手の生理的機能を害する行為といえますので、傷害罪が成立することになります。
嫌がらせ電話により精神衰弱症を発症させた
執拗な嫌がらせ電話を受けると、精神的ストレスが蓄積し、うつ病などの精神衰弱症を発症することがあります。このようなケースでも傷害罪が成立します。
なぜなら、傷害罪は、直接的な身体の損傷だけでなく、精神疾患に対しても適用されるからです。
性行為により性病を感染させた
性病に感染していることを隠して性行為に及び、その結果相手に対して性病を感染させたという場合も傷害罪が成立します。
なぜなら、病気を感染させる行為も、人の生理的機能を害するという傷害罪の成立要件に該当するからです。非暴力的な行為であっても、傷害罪が成立するケースがありますので注意が必要です。
傷害罪に関連する犯罪との成立要件の違い
傷害罪に関連する犯罪との成立要件の違いも押さえておきましょう。
暴行罪
暴行罪とは、他人に暴行を加えたものの傷害に至らなかったときに成立する犯罪です。
暴行罪における暴行とは、人に対する不法な有形力の行為をいい、殴る・蹴るなどの行為が典型的なケースです。
傷害罪と暴行罪は、傷害結果が生じたか否かで区別されます。相手に対して殴る蹴るの暴行を加えたものの、被害者が怪我をしていなければ暴行罪、打撲や骨折などの怪我を負った場合には傷害罪となります。
なお、傷害罪と暴行罪の違いについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
傷害致死罪
傷害致死罪とは、他人に傷害を加え、その結果として死亡させてしまった場合に成立する犯罪です。
傷害罪と傷害致死罪は、被害者に死亡という結果が生じたか否かで区別されます。傷害致死罪は、人を死亡させるという重大な結果を招いていますので、3年以上の有期懲役刑という重い法定刑が定められています。
殺人未遂罪
殺人未遂罪とは、殺意をもって殺害行為に及んだものの被害者が死亡しなかった場合に成立する犯罪です。
傷害罪と殺人未遂罪は、殺意の有無によって区別されます。たとえば、ナイフを利用して相手を切りつけて怪我をさせたという場合、切りつけた部位が腕などであれば殺意が認められず傷害罪となりますが、首などを切りつけたり、心臓付近をめがけてナイフを刺した場合には殺意が認められ殺人罪が成立する可能性があります。
過失傷害罪
過失傷害罪とは、過失により人を傷害した場合に成立する犯罪です。
傷害罪と過失傷害罪とは、傷害の故意があるか否かで区別されます。傷害結果が発生することを認識していた場合には傷害罪が成立し、不注意により相手に怪我をさせてしまった場合には過失傷害罪が成立します。
なお、過失傷害罪は、親告罪とされていますので、被害者による告訴がなければ処罰されることはありません。
傷害罪で逮捕・起訴を回避するには被害者との示談が重要
傷害事件を起こしてしまった場合には、警察により逮捕されたり、検察官により起訴され前科が付いてしまう可能性があります。このような事態を回避するためには、早期に被害者と示談を成立させることが重要です。
被害者と示談を成立させることができれば、有利な事情として考慮されますので、身柄拘束中であれば早期の釈放、検察官による起訴または不起訴の判断前であれば、不起訴処分による前科の回避が可能となります。
しかし、傷害事件の被害者は、加害者により怪我を負わされたことで加害者に対して恐怖心や嫌悪感を抱いています。そのため、加害者が直接被害者に接触しようとしても、拒否されてしまうケースが多いといえます。
このような被害者と示談を成立させるためには、弁護士への依頼が不可欠です。
弁護士に依頼をすれば、弁護士が交渉の窓口となって示談交渉を行うことができますので、加害者からの接触を拒否していた被害者も安心して示談交渉に応じてくれるでしょう。また、弁護士であれば傷害罪の示談金相場を理解していますので、適正な示談金を提示することによりスムーズに示談をまとめることが可能です。
被害者との示談交渉は、当事者で対応してもうまくいかないことが多いため、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
傷害罪の示談金相場等については、以下の記事もご参照ください。
傷害罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください
傷害事件を起こしてしまった場合には、すぐにグラディアトル法律事務所にご相談ください。
逮捕や起訴の回避に向けて迅速に弁護活動に着手できる
刑事事件はスピード勝負といわれるくらい、事件発生から迅速な対応が必要となります。対応が遅れてしまうと、逮捕・勾留による長期の身柄拘束を受けたり、起訴されて前科が付いてしまうリスクが高くなります。
グラディアトル法律事務所では、24時間365日全国対応をしていますので、依頼があれば即日または翌日、弁護活動に着手することができます。また、当事務所には複数の弁護士が在籍していますので、別の案件対応で忙しくて対応が遅れるという心配もありません。
傷害事件への迅速な対応を希望される方は、当事務所までお早めにご連絡ください。
経験豊富な弁護士が被害者との示談交渉を担当
被害者との示談交渉は、被害者の感情に配慮して慎重に行う必要があり、それには経験が必要不可欠となります。
グラディアトル法律事務所では、傷害事件の示談交渉に関する豊富な経験と実績がありますので、どうぞ安心して示談交渉をお任せください。迅速かつ粘り強い交渉により、被害者との示談をまとめられるよう尽力します。
まとめ
傷害罪の成立要件である傷害結果には、典型的な外傷を負わせるケースだけでなく、精神的ストレスによりうつ病を発症させるようなケースも含まれます。騒音や嫌がらせ行為などにより精神疾患を発症させた場合でも傷害罪として処罰される可能性がありますので、心当たりのある方は早めに弁護士に相談することをおすすめします。
傷害罪の弁護は、経験豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。