「どのような場合にわいせつ物頒布罪が成立する?」
「わいせつ物頒布罪の検挙率、逮捕率、起訴率はどのくらい?」
「わいせつ物頒布罪で逮捕されたらどうすればいい?」
わいせつ物頒布罪とは、わいせつな画像や動画を不特定または多数の人に交付した場合に成立する犯罪です。
電気通信の送信による頒布もわいせつ電磁的記録送信頒布罪として処罰対象になっていますので、わいせつな画像や動画をメール、チャット、SNSなどを通じて不特定多数の人に送信したときも罪に問われることになります。
わいせつ物頒布罪の逮捕率は、約33%ですので逮捕される可能性はそこまで高くはありません。しかし、大量にわいせつな画像や動画を送付している悪質な事案にだと逮捕される可能性も十分にありますので注意が必要です。
本記事では、
・わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)とは
・わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の検挙率、逮捕率、起訴率
・わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)で逮捕されたときの対処法
などについてわかりやすく解説します。
罪を犯してしまったとしても早期に弁護士に相談をすることで、逮捕や起訴を回避できる可能性がありますので、刑事事件に強い弁護士に相談するとよいでしょう。
目次
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)とは
わいせつ物頒布罪とは、わいせつな画像や動画を不特定または多数の人に交付した場合に成立する犯罪です。刑法175条では「わいせつ物頒布等罪」が規定されていますが、これはわいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)とわいせつ物陳列罪(わいせつ電磁的記録媒体陳列罪)の両者を処罰する規定になります。
インターネットが普及し、スマートフォンやタブレットなどを利用して、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる現代では、わいせつ頒布罪は非常に身近な犯罪になってきています。誰でも犯罪の当事者になるリスクがありますので、自分の身を守るためにも、わいせつ物頒布罪の成立要件や逮捕されたときの対処法などをしっかりと押さえておきましょう。
関連記事:わいせつ物陳列罪とは?逮捕率や起訴率、逮捕されたときの対処法
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)はどのような場合に成立する?
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)はどのような場合に成立するのでしょうか。以下では、わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の成立要件を説明します。
そもそも「わいせつ物(わいせつな電磁的記録)」とは何?
わいせつ物とは、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物をいいます。
・図画……絵画、写真、画像データなど ・電磁的記録に係る記録媒体……パソコンのハードディスク、インターネット上のサーバー、DVDディスクなどに記録されたデータや情報 |
また、判例(最判昭和26年5月10日)では、わいせつ物を「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、人の性的な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義しています。わいせつ性の有無は、社会通念に従って判断することになるため、明確な判断基準があるわけではありません。しかし、無修正のアダルトビデオのような性器や性行為が記録されたものについては、わいせつ物と判断される可能性が高いでしょう。
なお、実際の画像や動画などが「わいせつ物」にあたるのかどうか不安なときは、一度弁護士に相談して判断してもらうとよいでしょう。
どのような行為が「頒布(電気通信による頒布)」にあたる?
頒布とは、有償・無償を問わず不特定または多数の人に交付することをいいます。また、刑法175条1項後段では、電気通信による頒布も処罰対象としていますので、現実にわいせつ物を交付する行為だけでなく、メール、チャット、SNSなどを利用してわいせつなデータを送信する行為もわいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)として処罰されます。
頒布(電気通信による頒布)に該当し得る行為としては、以下のようなものが挙げられます。
・わいせつな動画を収録したDVDを販売する ・X(旧Twitter)のDM機能を利用して不特定多数の人にわいせつ画像を送信する |
なお、結果としてわいせつ物を交付したのが一人だけであったとしても、不特定多数の人に交付する意思で頒布行為をしたのであれば、わいせつ物頒布罪の処罰対象となります。
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の法定刑
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の法定刑は、以下のように定められています。
・2年以下の懲役
・250万円以下の罰金
・科料
なお、懲役と罰金は併科される可能性もあります。
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)で逮捕・起訴される?逮捕率と起訴率
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の検挙率|97.1%
法務省が公表している令和5年版犯罪白書によると、わいせつ物頒布罪を含む「わいせつ物頒布等罪」の検挙数は、以下のようになっています。
認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 |
---|---|---|
874件 | 849件 | 97.14% |
このようにわいせつ物頒布罪は、捜査機関に犯罪として認知されると約97%もの事件が検挙されていますので、事件が発覚すれば、ほぼすべてが検挙されることになるでしょう。
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の逮捕率|約33%
法務省が公表している検察統計によると、わいせつ物頒布罪を含む「わいせつ物頒布等罪」で検挙された事件は1980件あり、そのうち逮捕された事件は654件でした。逮捕率でいうと、約33%になります。
わいせつ物頒布罪の検挙率は、非常に高いといえますが、検挙されたとしても、在宅事件として捜査が行われるものが多いため、逮捕率はそこまで高くはありません。もっとも、わいせつ動画を販売して、多額の利益を上げているなどの悪質な事案については逮捕のリスクが高くなりますので注意が必要です。
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の起訴率|約69%
法務省が公表している検察統計によると、わいせつ物頒布罪を含む「わいせつ物頒布等罪」の起訴・不起訴の件数は、以下のとおりです。
・起訴……233件(公判請求:31件、略式命令請求:202件)
・不起訴……106件
このことからわいせつ物頒布罪の起訴率は、約69%になります。
日本の刑事司法では、検察官により起訴された事件の99%以上が有罪になっていますので、起訴されてしまうとほぼ確実に有罪となります。そのため、前科を回避するには、不起訴処分を目指すことが重要です。
わいせつ物頒布罪の不起訴率は約3割ですので、適切な弁護活動を行うことにより不起訴処分の獲得を目指すことも決して不可能ではありません。
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)で逮捕されたときの対処法
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)で逮捕されてしまったらどうすればよいのでしょうか。以下では、同罪で逮捕されたときの対処法を説明します。
被害者との示談
刑事事件では、一般的に被害者と示談をすることで逮捕の回避や早期釈放を実現できる可能性があります。
しかし、わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)は、性秩序・健全な性風俗を保護法益としていますので、特定の個人の法益を侵害する犯罪ではありません。
そのため、わいせつ物頒布罪を犯しても、特定の被害者を観念することができず、基本的には被害者と示談をすることはできません。
そのため、わいせつ物頒布罪で逮捕されてしまったときは、主に以下のような対処法を検討することになります。
贖罪寄付
贖罪寄付とは、罪を犯した人が反省の気持ちを示すために、弁護士会や被害者支援団体などに対して寄付をすることをいいます。
わいせつ物頒布罪は、特定の被害者を観念できず示談ができませんが、贖罪寄付をすることで有利な情状として考慮してもらうことができます。特に、わいせつな動画などを販売して利益を上げているような人は、贖罪寄付により利益を吐き出すことが有利な処分を獲得するためにも重要な要素となります。
再犯防止に向けた対策
わいせつ物頒布罪で不起訴処分を目指すなら、再発防止に向けた対策も重要です。
再発防止に向けた具体的な対策としては、以下のようなものが考えられます。
・犯罪に利用した設備や機材の処分 ・アカウントの抹消 ・同居の家族による監督 |
事案に応じてとるべき対策は異なりますので、適切な対策を講じるためにも、刑事事件に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
海外サイトで無修正AVをアップロードすることもわいせつ電磁的記録送信頒布罪にあたる?
無修正AVをインターネット上にアップロードするとわいせつ電磁的記録送信頒布罪に該当しますが、アップロードしたのが海外のサーバーであったとしても、同罪で処罰される可能性があります。
なぜなら、犯罪行為の一部でも日本国内で行われていれば、日本法が適用されますので、日本国内で海外のサーバーにアップロードすること、日本国内の顧客が海外のサーバーからダウンロードできる状態にすることも、わいせつ物頒布罪における「頒布」に該当するからです。
実際にも、海外サイト「FC2」で無修正の動画を販売したとして、海上自衛官や産業技術総合研究所の主任研究員などが逮捕された事例もあります。
このように海外サイトであっても無修正AVをアップロードすることは、犯罪にあたりますので十分に注意が必要です。
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わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください
わいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)を犯してしまった方は、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。
刑事事件に関する豊富な実績と経験
わいせつ物頒布罪は、一般的な犯罪とは異なり特定の被害者を観念することができません。そのため、逮捕や起訴を回避するには被害者との示談以外の方法を検討しなければなりません。
グラディアトル事務所では、わいせつ物頒布罪の弁護に関する豊富な経験と実績がありますので、被害者との示談以外のさまざまな対策を熟知しています。具体的な状況に応じて適切な対策をアドバイスすることができますので、少しでも有利な処分を獲得したいという場合には、当事務所までご相談ください。
早朝・夜間や土日祝日でも相談受付
当事務所では、24時間365日相談を受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく、お気軽にご連絡ください。
また、初回法律相談を無料で対応しています。まずは相談だけでも結構ですので不同意わいせつ事件を起こしてしまったときはすぐに当事務所までご連絡ください。刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要です。少しでも早く弁護活動に着手するためにも早期の相談をおすすめします。
まとめ
インターネットの普及により、誰でも簡単にわいせつな画像や動画をネット上にアップロードできるようになりました。しかし、このような行為はわいせつ物頒布罪(わいせつ電磁的記録送信頒布罪)に該当しますので、絶対にしてはいけません。
わいせつ動画の販売により多額の利益を上げているような事案だと、逮捕・起訴される可能性が高いため、早期に弁護士に相談して、適切な弁護活動を行う必要があります。わいせつ物頒布罪を犯してしまったという方は、一刻も早くグラディアトル法律事務所までご相談ください。