痴漢事件は親告罪?非親告罪であっても示談が重要になる理由を解説

痴漢事件は親告罪?非親告罪であっても示談が重要になる理由を解説
弁護士 若林翔
2024年09月10日更新

「痴漢事件は親告罪なの?」

「被害者の告訴が取り下げられれば痴漢で処罰されることはない?」

「痴漢事件で被害者との示談はどのような意味があるの?」

親告罪とは、被害者からの告訴がなければ起訴することができない犯罪をいいます。

痴漢をすると迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪が成立しますが、いずれも非親告罪とされていますので、被害者の告訴がなくても起訴することができます。

そうすると「被害者と示談をしても意味ないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、被害者との示談は、検察官が起訴・不起訴の判断をする際の重要な要素となります。被害者と示談が成立していれば、不起訴になる可能性が高いため、非親告罪である痴漢であっても被害者との示談は重要となります。

親告罪と非親告罪の違い

項目親告罪非親告罪
定義被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪被害者の告訴がなくても起訴できる犯罪
痴漢事件の適用該当しない(痴漢事件は非親告罪に該当)該当(痴漢事件は非親告罪のため、被害者の告訴がなくても起訴可能)
検察の起訴判断被害者の告訴が不可欠検察が独自に判断し、被害者の告訴がなくても起訴することができる
被害者との示談の重要性告訴取り下げができれば不起訴になる示談が成立していれば、不起訴になる可能性が高まる

本記事では、

・痴漢は親告罪にあたるかどうか

・痴漢事件における示談の重要性

・痴漢事件の被害者との示談を弁護士に依頼すべき3つの理由

などについてわかりやすく解説します。

痴漢被害者との示談にあたっては、弁護士のサポートが不可欠となりますので、痴漢をしてしまったときは一刻も早く弁護士に相談するようにしましょう。

そもそも親告罪とは?

そもそも親告罪とはどのようなものなのでしょうか。以下では、親告罪の概要について説明します。

そもそも親告罪とは?

親告罪とは

親告罪とは、被害者からの告訴がなければ起訴することができない犯罪をいいます。告訴とは、加害者に対して刑事処罰を求める意思表示ですので、親告罪とされている犯罪は、加害者を処罰するかどうかが被害者の意思に委ねられている犯罪といえます。

親告罪という制度が設けられたのは、主に以下のような理由があるからです。

・比較的軽微な犯罪は、被害者が望まない場合にまであえて刑罰を科す必要がない

・被害者の名誉やプライバシーを保護する必要がある

・親族間の犯罪については親族での解決に委ねるのが望ましい

これに対して、被害者からの告訴がなくても起訴できる犯罪のことを「非親告罪」といいます。

特定の犯罪が親告罪と非親告罪のどちらにあたるのかは、法律により明確に定められています。ほとんどの犯罪は非親告罪であり、親告罪になる犯罪は例外的なものといえます。

告訴と被害届の違い

告訴とは、犯罪の被害者などが捜査機関に対して犯罪事実を申告し、加害者への処罰を求める意思表示をいいます。捜査機関が告訴状を受理すると捜査義務が生じます。

被害届とは、犯罪事実を捜査機関に申告することをいいます。犯罪事実の申告という点では告訴と被害届は共通しますが、被害届には、加害者への処罰を求める意思表示が含まれていません。そのため、親告罪については被害届の提出だけでは足りず、告訴権者による告訴がなければ起訴することができません

痴漢は親告罪にあたる?痴漢で成立し得る犯罪ごとに解説

痴漢は親告罪にあたる?痴漢で成立し得る犯罪ごとに解説

痴漢は親告罪にあたるのでしょうか。以下では、痴漢で成立し得る犯罪ごとに親告罪か非親告罪かを説明します。

迷惑防止条例違反|非親告罪

痴漢をしたときに成立し得る犯罪として、迷惑防止条例違反があります。迷惑防止条例とは、都道府県ごとに定められている条例で、痴漢行為などの取締りを行っています。

具体的な内容は都道府県ごとに異なりますが、禁止される行為はおおむね共通しており、たとえば東京都の迷惑防止条例は、以下のような内容になっています。

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)

第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に

人の身体に触れること。

このような迷惑防止条例違反の痴漢は、非親告罪とされていますので、被害者の告訴がなくても起訴することが可能です。

なお、迷惑防止条例違反に該当する痴漢行為の詳細については、こちらの記事をご参照ください。

痴漢は迷惑防止条例違反?不同意わいせつ罪との違いや示談を解説

不同意わいせつ罪|非親告罪

不同意わいせつ罪とは、被害者が同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(刑法176条)。

以前は、強制わいせつ罪という名称でしたが、2023年7月13日施行の改正刑法により強制わいせつ罪に代わり不同意わいせつ罪が新設されました。そのため、同日以降に行われた痴漢行為については、不同意わいせつ罪が適用されます。

不同意わいせつ罪は、非親告罪とされていますので、被害者の告訴がなくても起訴することが可能です。

なお、不同意わいせつ罪に該当する痴漢行為の詳細については、こちらの記事をご参照ください。

※「痴漢 不同意わいせつ罪」リンク

強制わいせつ罪|非親告罪

強制わいせつ罪とは、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(旧刑法176条)。痴漢をする際に被害者に暴力を振るったり、被害者を脅したりした場合には、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。

ただし、刑法改正により2023年7月13日以降は強制わいせつ罪ではなく不同意わいせつ罪が適用されますので、強制わいせつ罪が適用される痴漢は、2023年7月12日以前に行われた痴漢行為になります。

強制わいせつ罪は、親告罪とされていましたが、改正刑法施行により、強制わいせつ罪が適用される痴漢行為についても、非親告罪として扱われることになりました。

非親告罪であっても痴漢をしたときは示談が重要

非親告罪であっても痴漢をしたときは示談が重要

現行法を前提とすると痴漢は、非親告罪になりますので、被害者の告訴がなくても起訴することができます。しかし、非親告罪であっても以下のような理由から被害者との示談が重要になります。

被害者との示談により逮捕・起訴のリスクを軽減できる

刑法改正により痴漢が非親告罪となったため、被害者との間で示談を成立させる必要性や重要性が低下したと考える方もいるかもしれません。しかし、法務省は、刑法改正にあたって以下のような通達を出しています。

性犯罪については、もとより、被害者のプライバシー等の保護が特に重要であり、事件の処分等に当たっても被害者の心情に配慮することが必要であることは、強姦罪等を非親告罪化した後も変わるものではない。

したがって、本法施行後においても、引き続き、事件の処分に当たって被害者の意思を丁寧に確認するなど被害者の心情に適切に配慮する必要があることに留意されたい。

法務省刑制第121号 (例規)平成29年6月26日より引用

このような通達を前提とすると痴漢が非親告罪になった後も、被害者の意思を無視して事件が起訴されるとは考えにくいため、被害者との示談が重要になります。早期に示談を成立させることができれば、逮捕を回避できたり、逮捕されたときでも早期釈放が実現でき、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。

起訴されたとしても量刑判断の重要な要素となる

痴漢で起訴されたとしても、被害者との示談が成立していれば、量刑判断の重要な要素となります。

実刑判決が相当な事案でも示談成立により執行猶予の可能性が高くなりますので、起訴されたからといって示談交渉を中止するのではなく、示談交渉を継続していくことが大切です。

こちらの記事も併せてご覧ください。

痴漢示談金(慰謝料)相場は30〜150万円!減額する方法解説

痴漢事件の被害者との示談を弁護士に依頼すべき3つの理由

痴漢事件の被害者との示談を弁護士に依頼すべき3つの理由

以下のような理由から痴漢事件の被害者との示談は、弁護士に依頼して行うのがおすすめです。

被害者が示談交渉に応じやすくなる

痴漢は、性犯罪としての性質上、加害者が直接被害者と交渉しようとしても拒否されてしまうケースがほとんどです。交渉に応じてくれたとしても、交渉に不慣れな加害者だと被害者の感情を逆撫でするなどして示談を拒否されてしまう可能性も否定できません。

弁護士であれば被害者との示談交渉に慣れていますので、被害者の感情を踏まえて適切に示談交渉を進めることができます。被害者としても直接加害者と話をするより、弁護士が窓口になってくれた方が安心して交渉に臨むことができるといえます。

このように弁護士が示談交渉を行うことで、示談が成立する可能性が高くなりますので、示談交渉は弁護士に任せた方がよいでしょう。

なお、痴漢事件を弁護士に依頼するメリットについては、こちらの記事をご参照ください。

痴漢事件は迷わず弁護士を呼べ!理由と早期に不起訴獲得した事例

連絡先がわからない被害者との示談交渉も可能

痴漢事件は、面識のない者同士の間で行われますので、示談をしたくても被害者の連絡先がわからないというケースがほとんどです。

しかし、弁護士であれば捜査機関を通じて被害者と連絡をとることができますので、被害者の連絡先がわからないというケースでも示談交渉を行うことが可能です。連絡先がわからないからといって何もしないと逮捕・起訴される可能性が高くなりますので、早めに弁護士に依頼するようにしましょう。

相場を踏まえた適正な示談金により解決できる

被害者との示談にあたっては、当然ですが示談金の支払いが必要になります。示談金の金額は、具体的な事案によって異なりますが、痴漢で成立する犯罪に応じて、以下のような相場があります。

・迷惑防止条例違反……30~50万円

・不同意わいせつ罪……50~150万円

示談金の相場は、上記のように幅のある金額になっていますので、具体的な事案に応じて適正な示談金を判断していかなければなりません。それには知識や経験が不可欠となりますので、専門家である弁護士でなければ正確な判断は難しいといえます。

弁護士に示談交渉を依頼すれば、相場を踏まえて適正な示談金により解決することが可能になります。

なお、痴漢事件の示談金に関する詳細については、以下の記事をご参照ください。

痴漢示談金(慰謝料)相場は30〜150万円!減額する方法解説

痴漢事件の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

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痴漢をしてしまったという方は、痴漢事件の弁護に強いグラディアトル法律事務所にお任せください。

刑事事件はスピードが命!24時間365日受付

刑事事件の対応はスピードが命といわれています。特に、痴漢で逮捕された身柄事件の場合には、逮捕から起訴されるまでの期間が非常に短いため、有利な処分を獲得するには、早めに弁護活動に着手する必要があります。

グラディアトル法律事務所では、24時間365日相談を受け付けていますので、痴漢をしてしまったという場合は時間を問わずすぐに当事務所までお問い合わせください。当事務所では土日祝日も営業していますので、日にちを問わず弁護士との面談が可能です。

ご依頼後は接見や示談交渉に迅速に対応

正式にご依頼いただければ、スケジュール次第ではございますが最短で即日、弁護活動を開始することができます。逮捕されている場合にはすぐに警察署に接見に駆けつけて、ご本人から具体的な事情を聴きとり、取り調べに対するアドバイスを行います。

また、被害者との示談交渉もすぐに開始し、不起訴処分の獲得に向けて迅速に対応することができます。

経験豊富な弁護士が有利な処分獲得に向けてサポート

グラディアトル法律事務所では、痴漢事件の弁護に関する豊富な経験と実績があります。事務所全体でその経験や実績を共有していますので、ご依頼者さまの状況に応じた最適な弁護活動を提供することが可能です。

痴漢事件で有利な処分を獲得するためには、痴漢事件の弁護に強い弁護士に依頼することが重要になりますので、まずは当事務所までお問い合わせください。

まとめ

痴漢は、非親告罪とされていますので、被害者の告訴がなかったとしても起訴される可能性があります。しかし、被害者との間で示談が成立していれば、被害者の心情に配慮して不起訴処分になる可能性が高いため、非親告罪であっても示談の重要性は変わりません。

被害者との示談にあたっては、痴漢事件に関する知識や経験が不可欠となりますので、実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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