背任罪は親告罪?告訴が必要なケースや示談の重要性について解説

背任罪は親告罪?告訴が必要なケースや示談の重要性について解説
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弁護士 若林翔
2025年01月27日更新

「背任罪は告訴が必要な親告罪?」

「背任罪で告訴が必要になるケースとは?」

「背任罪で告訴されたらどうなる?」

親告罪とは、被害者などによる告訴がなければ検察官が起訴することができない犯罪です。

背任罪は、「相対的親告罪」に該当しますので、犯人と被害者との間に一定の身分関係がある場合に限って、告訴が必要な親告罪にあたります。

ご自身のケースが相対的親告罪に該当するかどうかによって、その後の対応が変わってきますので、まずは背任罪と親告罪との関係を正確に理解することが大切です。また、親告罪であるかどうかにかかわらず被害者との示談は重要になりますので、背任罪を犯してしまったときはすぐに示談交渉に着手するようにしてください。

本記事では、

・背任罪で告訴が必要なケースとは?
・親告罪である背任罪の被害者から告訴状が受理された後の流れ
・背任罪における示談の重要性

などについてわかりやすく解説します。

背任罪と親告罪に関する基本や具体的な対処法まで解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

背任罪は親告罪?そもそも親告罪とは?

背任罪は親告罪に該当するのでしょうか。以下では、親告罪の概要と種類について説明します。

背任罪は親告罪?そもそも親告罪とは?

親告罪とは

親告罪とは、被害者などによる告訴がなければ検察官が起訴することができない犯罪です。

告訴とは、告訴権者が捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の訴追および処罰を求める意思表示をいいます。告訴をすることができる告訴権者は、以下のような人です。

・犯罪の被害者
・被害者の法定代理人(親権者、未成年後見人、成年後見人など)
・(被害者が死亡している場合)被害者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹

仮に、告訴がないまま検察官が被疑者を起訴したとしても、不適法な公訴として裁判所により公訴棄却されてしまいます。

親告罪の種類|絶対的親告罪・相対的親告罪

親告罪には、「絶対的親告罪」と「相対的親告罪」の2種類があります。

それぞれに該当する犯罪をまとめると、以下のようになります。

絶対的親告罪相対的親告罪
・名誉毀損罪・侮辱罪・未成年者略取罪
・未成年者誘拐罪・信書開封罪・秘密漏示罪
・私用文書等毀棄罪・器物損壊罪・信書隠匿罪
・過失傷害罪
・窃盗罪・不動産侵奪罪・恐喝罪・背任罪・横領罪
・業務上横領罪・遺失物等横領罪・詐欺罪
・準詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪

【絶対的親告罪】

絶対的親告罪とは、犯人と被害者との関係を問わず、検察官が起訴するにあたって告訴権者による告訴が必要になる犯罪です。

絶対的親告罪に該当する犯罪には、以下のようなものがあります。

・名誉毀損罪
・侮辱罪
・未成年者略取罪
・未成年者誘拐罪
・信書開封罪
・秘密漏示罪
・私用文書等毀棄罪
・器物損壊罪
・信書隠匿罪
・過失傷害罪

【相対的親告罪】

相対的親告罪とは、犯人と被害者との間に一定の身分関係がある場合に限って、告訴が必要になる犯罪をいいます。

相対的親告罪に該当する犯罪には、以下のようなものがあります。

・窃盗罪
・不動産侵奪罪
・恐喝罪
・背任罪
・横領罪
・業務上横領罪
・遺失物等横領罪
・詐欺罪
・準詐欺罪
・電子計算機使用詐欺罪

背任罪は、相対的親告罪に該当する犯罪に含まれますので、犯人と被害者との関係性によって告訴が必要であるかどうかの結論が変わってきます。

背任罪は相対的親告罪にあたる!告訴が必要なケースとは?

背任罪は、相対的親告罪に該当しますが、どのような場合に告訴が必要になるのでしょうか。以下では、相対的親告罪である背任罪において告訴が必要なケースを説明します。

背任罪は相対的親告罪にあたる!告訴が必要なケースとは?

被害者と行為者が配偶者、直系血族または同居の親族関係にある|刑が免除

被害者と行為者が配偶者、直系血族または同居の親族関係にある場合には、刑が免除されます。一定の身分関係があることだけが条件ですので、告訴の有無にかかわらず刑が免除されます。

このようなケースでは、裁判になっても刑事罰を科すことができませんので、検察官は事件を起訴することはなく、警察も捜査の対象にはしません。

なお、同居の親族とは、一緒に生活している親族のことをいい、一時的に寝泊まりしている場合は該当しません。

被害者と行為者が上記以外の親族関係|告訴が必要

被害者と行為者が上記以外の親族関係にある場合、告訴権者による告訴がなければ検察官は起訴することができません。

親族とは、民法725条により、以下のような範囲の者を指します。

・六親等内の血族
・配偶者
・三親等内の姻族

このうち、配偶者・直系血族・同居の親族は刑の免除の対象となりますので、「上記以外の親族関係」とは、行為者からみて以下のような関係性のある人でかつ同居をしていない人をいいます。

・兄弟姉妹
・叔父叔母、甥姪
・従兄弟姉妹
・配偶者の父母

被害者と行為者に親族関係がない|告訴は不要

被害者と行為者との間に親族関係がない場合には、親告罪にはなりませんので、告訴がなくても検察官は起訴することができます。

親告罪である背任罪の被害者から告訴状が受理された後の流れ

親告罪である背任罪の被害者から告訴状が受理された後の流れは、以下のとおりです。

親告罪である背任罪の被害者から告訴状が受理された後の流れ

告訴状の受理

親告罪に該当する背任罪ついては、被害者などの告訴権者による告訴がなければ、警察は捜査を開始することはありません。そのため、被害者が犯人の処罰を希望する場合、告訴状を作成して、警察に提出しなければなりません。

告訴権者による適法な告訴がなされた場合には、警察は告訴状を受理します。ただし、告訴を受理すると捜査が義務付けられるため、さまざまな理由を付けて告訴を受理しないケースも少なくありません。

捜査の開始

告訴が受理されると、警察による捜査が開始されます。

告訴を受けた警察官は、関係書類や証拠物を検察官に送付しなければならないとされていますので、単なる被害届の提出とは異なり、積極的な捜査が行われる可能性が高いです。

被疑者の逮捕・勾留

捜査の過程において、被疑者が逃亡または証拠隠滅をするおそれがあると判断されると、逮捕される可能性があります。背任罪は、現行犯逮捕になるケースはほとんどなく、ほぼすべてのケースが逮捕状による後日逮捕(通常逮捕)となります。

告訴状が受理されると、ある日突然警察官が自宅にやってきて逮捕されてしまう可能性がありますので注意が必要です。

なお、逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間にも及びます。

事件の起訴または不起訴

検察官は、捜査結果を踏まえて事件を起訴するか不起訴にするかの判断をします。

不起訴になれば釈放され罪に問われることはありませんが、起訴されると公開の法廷で審理が行われ、最終的に判決が下されます。

なお、背任罪の法定刑には罰金刑の定めがありますので、事案によっては、略式命令請求により罰金刑が言い渡されるケースもあります。

親告罪である背任罪には告訴期限がある|犯人を知った日から6か月以内

親告罪である背任罪には告訴期限がある|犯人を知った日から6か月以内

親告罪である背任罪には告訴期限がありますので、告訴権者が一定期間内に告訴をしなければそれ以降は告訴をすることができなくなります。

告訴期限は、犯人を知った日から6か月以内と定められています。そのため、親告罪に該当する背任罪は、被害者などが被害および犯人に気づいた時点から6か月を経過すれば、処罰される可能性が消滅することになります。

なお、「犯人を知った」とは、犯人の住所や氏名などの詳しい情報まで把握している必要はなく、犯人が誰なのかを特定できる程度の情報を得ていれば足りるとされています。

下記に時効についても詳しい記事を掲載していますので、ご覧ください。

背任罪の時効は5年|時効待ち以外にできる3つの対処法を解説

親告罪の背任罪では被害者との示談が重要

親告罪の背任罪では被害者との示談が重要

以下では、親告罪に該当する背任罪で被害者との示談が重要になる理由を説明します。

告訴がなければ不起訴処分で終わる

親告罪に該当する背任罪は、被害者などによる告訴がなければ検察官は起訴することができません。そのため、告訴前に被害者と示談ができれば捜査機関に事件が知られることもありませんし、告訴後であっても示談成立により告訴を取り下げてもらえれば、起訴される心配はありません。

背任罪が親告罪に該当する場合、犯人と被害者とは親族関係にありますので、真摯に反省し、被害弁償さえできれば、告訴を取り下げてもらえる可能性が高いでしょう。

そのため、背任罪を犯してしまったときは、すぐに被害者との間で示談交渉を始めるようにしてください。

非親告罪の場合でも不起訴処分になる可能性が高い

背任罪が非親告罪に該当する場合、被害者の告訴がなくても検察官は起訴することができます。

しかし、被害者との間で示談が成立しており、被害者の処罰感情が失われた状態では、検察官も積極的に事件を起訴しようとは考えません。また、示談が成立している事案では逃亡や証拠隠滅のおそれもないことから、警察により逮捕される可能性も低いでしょう。

そのため、非申告罪の場合であっても被害者との示談は重要な意味を持ちますので、親告罪の場合と同様にすぐに示談交渉に着手することが大切です。

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まとめ

背任罪は、犯人と被害者との間に一定の身分関係がある場合にのみ親告罪となる「相対的親告罪」に該当します。被害者との間に親族関係がある場合には、告訴を取り下げてもらうことで起訴を回避できますのですぐに被害者との示談交渉を行うようにしてください。

被害者との示談交渉にあたっては、弁護士のサポートが不可欠となりますので、まずは経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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