「背任罪はどのような犯罪なのかわかりづらい」
「背任罪が成立する具体的な事例を知りたい」
「背任罪で有罪になった裁判例にはどのようなものがある?」
背任罪とは、他人から職務を任された人が任務に背いて他人に損害を与える犯罪です。このような背任罪の定義を聞いても、どのような犯罪なのか具体的にイメージできない方も多いと思います。
背任罪は、成立要件がとてもわかりづらい犯罪ですので、背任罪を具体的にイメージするには、背任罪の逮捕事例や裁判例をみてみるのがおすすめです。実際の事例をみれば、どのような犯罪なのか具体的にイメージすることができるでしょう。
本記事では、
・背任罪の具体的な逮捕事例 ・背任罪に関する裁判例 ・背任罪の事例に関するよくある質問 |
などについてわかりやすく解説します。
万が一、背任罪に該当するような行為をしてしまったときは、逮捕・起訴されるリスクがありますので、すぐに弁護士に相談するようにしてください。
目次
事例からみる背任罪の逮捕率と起訴率

2023年検察統計によると、背任罪で検挙された件数は151件で、そのうち逮捕された事件は25件でした。そのため、背任罪の逮捕率は、約17%ということになります。刑法犯全体の逮捕率が約39%ですので、背任罪の逮捕率は、刑法犯全体に比べて低い水準になっています。
また、同じく2023年検察統計によると、背任罪で起訴・不起訴になった事件の内訳は以下のとおりです。
起訴 | 不起訴 | |
公判請求 | 略式命令請求 | |
47件 | 4件 | 99件 |
これによると背任罪の起訴率は約34%になります。刑法犯全体の起訴率が約37%ですので、背任罪の起訴率は、刑法犯全体とほぼ同水準といえるでしょう。
このような統計からは、背任罪は、逮捕される可能性はそこまで高くはないものの、犯罪として検挙されれば、一般的な犯罪と同様に起訴される可能性が高い犯罪だといえます。
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背任罪とは?構成要件や他の犯罪との違い、弁護士に依頼するメリット
背任罪の具体的な逮捕事例
以下では、背任罪で逮捕された具体的な事例を紹介します。

大手通販会社「夢グループ」の元部長が背任の疑いで逮捕された事例
大手通販会社「夢グループ」の収益を自身の口座に振り込ませ、会社に損害を与えたとして、警視庁捜査2課は、背任容疑で同社元企画宣伝部長(49歳)とイベント会社代表(57歳)を逮捕しました。
同課によると、夢グループは、顧客に配布するカタログのチラシ代を収益の一つとしており、両容疑者は代理店から振り込まれる広告費用を不正に得ていたといいます。
逮捕容疑は、広告代理店から夢グループに支払われる代金の一部を沖山容疑者の会社口座に振り込ませ、夢グループに約3700万円の損害を与えた疑いです。
(引用:時事通信)
「夢グループ」元部長ら逮捕 3700万円背任容疑―警視庁
日大の元理事らが大学の資金を不正送金した背任の疑いで逮捕された事例
日本大学板橋病院の建て替え工事をめぐる背任事件で、同病院に医療機器と電子カルテ関連機器を納入する取引でも、日大に計約2億円高い契約を結ばせて損害を与えたとして、東京地検特捜部は、日大元理事(64歳)と医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」の前理事長(61歳)を背任容疑で再逮捕しました。
特捜部の発表などによると、板橋病院には今春以降、海外メーカーのMRI、CT、血管撮影装置が7台、導入され、計約14億6300万円のリース契約でした。容疑者は日大子会社「日本大学事業部」の取締役として契約業務を担当し、この取引の中に、介在させる必要のない籔本容疑者側の会社を入れ、日大に約1億3100万円の不要な債務を負担させて損害を与えた疑いがあります。
また、電子カルテ関連機器の板橋病院への納入でも、同様の手法で約6700万円の不要な債務を負担させ、合わせて日大に計約1億9800万円の損害を加えた疑いがあります。
(引用:朝日新聞デジタル)
背任罪に問われた日大元理事ら保釈 逮捕から44日目
自動車大手「ホンダ」の法人クレジットカードを私的利用した背任の疑いで逮捕された事例
自動車大手「ホンダ」が法人契約していたクレジットカードを私的に使い、同社に計約2300万円の損害を与えたとして、警視庁は、同社元社員(33歳)を背任容疑で逮捕しました。
捜査2課によると、容疑者は2019年4月~22年12月ごろ、ホンダから社員個人に貸与されたクレジットカードを約2千回使用。計約2300万円分を私的に利用するなどし、同社に損害を与えた疑いがあります。
容疑者は間接材購買課に所属し、課員に貸与されたクレカを管理する役割も担っていました。捜査2課は、小島容疑者が他の課員たちのカードも使い、逮捕容疑も含め18年8月~23年3月に約5千回、計約7千万円の損害を与えたとみています。
(引用:朝日新聞デジタル)
ホンダ元社員を背任容疑で逮捕 法人クレカの私的利用で2300万円
背任罪に関する裁判例
以下では、背任罪で有罪になった実際の裁判例を紹介します。

東京地裁令和4年10月6日判決|懲役2年6か月、執行猶予4年
被告人は、学校法人A大学が医療機器等の発注先の選定、仕様および価格の適正等を確保するための助言等のコンサルティング業務を行うに際し、A大学に不必要な債務を負担させることを避けるなどして誠実に職務を遂行すべき任務があるにもかかわらず、本来調達経路として介在させる必要がない会社を介在させ、不必要な納入費用として合計約1億9800万円余りにも上る損害を与えたという事案について、懲役2年6月・執行猶予4年の有罪判決が言い渡されました。
この事案では、被害額が合計約1億9800万円と高額で、被告人自身で具体的なスキームを立案実行し、重要な役割を果たしているものの、コンサルティング契約に基づき経営改善に向けて一定の成果を上げていること、前科前歴がないこと、監督者がいることなどの理由から執行猶予付きの判決となりました。
大阪地裁令和3年8月4日判決|懲役3年
被告人は、A社の開発推進担当課長として、A社が発注するプログラム作成等の業務の発注先業者の選定や業務委託の代金額交渉などを統括し、A社に無用な支出等により損失が生じないよう誠実に職務を遂行すべき任務があるにもかかわらず、自己の利益を図る目的で、発注先業者に正規に支払うべき代金に自己の利益分を加算させた契約を締結し、A社に合計約2億1500万円余りにも上る損害を与えたという事案について、懲役3年の実刑判決が言い渡されました。
この事案では、被害金額が合計約2億1500万円余りと極めて高額で、契約金額の相当部分が不正な上乗せ金額が占めるなど背任の中でも悪質性の高い部類にあたると評価され、前科前歴がなく、一部被害弁償もなされているものの実刑判決となりました。
名古屋地裁平成30年9月26日判決|懲役1年6月・執行猶予3年
被告人は、A社の代表取締役として業務全般を統括する地位にあり、C社の営業部部長として発注業務を統括する地位にあるBと共謀して、C社に対して架空の業務を発注し、C社に対し、合計450万円を上回る損害を与えたという事案について、懲役1年6月・執行猶予3年の有罪判決が言い渡されました。
もっとも、被告人には前科がないことや同種事案に比べて被害額が少ないことなどを理由として、執行猶予付きの判決となっています。
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背任罪に関する著名判例3選と有罪・無罪になった判例を弁護士が解説
背任罪の事例に関するよくある質問
以下では、背任罪の事例に関するよくある質問を紹介します。

背任罪と横領罪との違いとは?
背任罪と横領罪は、いずれも信任関係に反して他人に損害を与えるという点で共通しますが、主に以下のような違いがあります。
項目 | 背任罪 | 横領罪 |
---|---|---|
犯罪の主体 | 他人のための事務処理者 | 他人の物の占有者 |
財産上の損害 | 被害者の財産状況の悪化 | 個々の財産の損失 |
目的 | 図利加害目的 | 不法領得の意思 |
行為 | 任務違背行為(本人の信任や委託の趣旨に反する行為) | 横領行為(所有者にしかできない処分をすること) |
法定刑 | 5年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 5年以下の懲役 |
なお、背任罪と横領罪の違いについての詳細は、以下のコラムをご参照ください。
関連記事:
横領罪と背任罪の5つの違いとは?逮捕率・起訴率・刑罰の比較も!
背任罪は未遂でも処罰される?
背任罪の未遂とは任務違背行為に着手したものの、本人に財産上の損害が生じなかった場合をいいます。
背任罪には未遂の処罰規定が設けられていますので、背任罪の未遂であっても処罰対象になります。
なお、背任未遂罪の法定刑は、背任既遂罪と同様に5年以下の懲役または50万円以下の罰金となっていますが、未遂による刑の減免を受けられる可能性があります。
関連記事:
背任罪は未遂も処罰対象!未遂・既遂の区別や刑罰などを弁護士が解説
背任罪は親告罪?
背任罪は、犯人と被害者との間に一定の身分関係がある場合に限り、告訴が必要になる「相対的親告罪」に該当します。
具体的には、被害者と行為者が配偶者、直系血族または同居の親族以外の親族関係がある場合に告訴が必要になります。
なお、被害者と行為者が配偶者、直系血族または同居の親族関係にある場合は、刑が免除されますので、犯罪として処罰されることはありません。
関連記事:
背任罪は親告罪?告訴が必要なケースや示談の重要性について解説
背任罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください

背任罪の弁護は、以下のような理由からグラディアトル法律事務所にお任せください。
刑事弁護に関する豊富な実績と経験
弁護士の能力を判断する上で目安になるものの一つが経験や実績です。弁護士の能力は実務経験を積むことにより磨かれてきますので、背任罪の弁護を依頼するなら実績や経験が豊富な弁護士に依頼するべきです。
グラディアトル法律事務所では、これまで多数の刑事事件を手がけてきており、豊富な解決実績があります。背任罪の弁護についても多数の実績がありますので、背任罪の弁護を希望される方は、経験と実績豊富な当事務所にお任せください。
迅速に弁護活動を開始|即日対応可能
刑事事件はスピード勝負といわれます。その理由は、逮捕されてしまうと起訴されるまで、わずか23日間の猶予しかなく、不起訴処分を獲得するならこの間に被害者との示談などの弁護活動を行わなければなりません。
対応が遅れれば逮捕・起訴されてしまうリスクが高くなりますので、弁護士に依頼するなら迅速な対応が可能な弁護士を選ぶべきです。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件に関してスピード対応を心がけていますので、最短で即日対応が可能です。身柄拘束されている場合には、すぐに警察署に駆けつけて面会を実施しますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。
24時間365日相談受付、初回相談料無料
当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応しています。
まずは相談だけでも結構ですので、当事務所までご相談ください。
まとめ
背任罪の逮捕事例や裁判例などをみることで、背任罪の具体的なイメージはつかめたでしょうか。背任罪は、被害額によっては初犯であっても実刑になる可能性のある犯罪ですので、早期に弁護士に依頼して、被害者との示談を進めていかなければなりません。対応が遅れてしまうと、逮捕・起訴されるリスクが高くなりますので、一刻も早くグラディアトル法律事務所までご相談ください。