「18歳未満だと知らなくて性行為をしてしまったが犯罪になるの?」
「18歳未満の未成年者と性行為をするとどのような罪に問われる?」
「どのようなケースなら18歳未満と知らなかったという主張が通る?」
18歳未満の未成年者と性交や性交類似行為をすると以下のような罪に問われる可能性があります。
・青少年健全育成条例(淫行条例)違反
・児童福祉法違反
・児童買春・児童ポルノ禁止法違反
・不同意性交等罪
これらの犯罪のほとんどが相手が18歳未満であることを認識していた場合に成立する犯罪になりますので、相手が年齢を偽るなどして18歳未満だと知らなかった場合には、罪に問われない可能性もあります。
ただし、「18歳未満だと知らなかった」という言い訳は、簡単には通りませんので、それを裏付ける証拠が必要になります。自分の身を守るためには、相手の年齢はしっかりと確認した上で、交際をするようにしましょう。
本記事では、
【「18歳未満だと知らなった」という言い訳が通らない3つのケース】
・相手から「私は高校生です」と言われていた
・相手が学校の制服を着用していた
・SNSで知り合った相手のプロフィールに未成年者であることがわかる投稿があった
【18歳未満の未成年者と性行為をした場合に成立する犯罪】
・青少年健全育成条例(淫行条例)違反
・児童福祉法違反
・児童買春・児童ポルノ禁止法違反
・不同意性交等罪
【「18歳未満だと知らなかった」と主張して不起訴になる可能性のある4つのケース】
・18歳未満利用不可のマッチングアプリで知り合った
・SNSやアプリのプロフィール欄に18歳以上の年齢が記載されている
・18歳以上であることがわかる身分証明書(偽造)を提示された
・年齢を確認したら18歳以上であると言われた
などについてわかりやすく解説します。
性交等をした相手が18歳だったことを知ったときは、すぐに弁護士に相談をして、今後の対応についてアドバイスしてもらうようにしてください。
目次
18歳未満だと知らなかったとしても犯罪になる?
性交または性交類似行為をした相手が18歳未満の未成年者だと知らなかったとしても、犯罪は成立するのでしょうか。
相手が18歳未満だと“知らなければ”犯罪は原則成立しない
性交等をした相手が18歳未満だと知らなかった場合、原則として犯罪は成立しません。
刑法38条1項では、「罪を犯す意思がない行為は罰しない」と定められており、相手が18歳未満だと知らなければ「罪を犯す意思」がないからです。
たとえば、相手が18歳未満の相手と性行為に及んだとしても、相手が年齢を偽っていたり、偽造の身分証明書を提示するなどして、18歳未満であることを認識できなければ罪にはなりません。このような理由で不起訴になった事案も多数存在します。
つまり、相手が18歳未満であると知らなった場合、犯罪は成立しないということです。
過失犯の処罰規定がある場合には18歳未満だと知らなくても犯罪成立
過失犯の処罰規定がある場合には、18歳未満だと知らなくても犯罪が成立する可能性がありますので注意が必要です。
たとえば、大阪府青少年健全育成条例では、「青少年の年齢を知らないことを理由として、(略)処罰を免れることができない。」と定められています。必要な注意を怠らなければ18歳未満だと気付けたような事案では、過失があったとして、淫行条例違反に問われる可能性もあります。
淫行条例の規定内容は、都道府県によって異なりますので、お住いの都道府県の条例をしっかりと確認するようにしましょう。
【参考:大阪府青少年健全育成条例】
(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号。以下「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)第二条第二項に該当するものを除く。)。
二 青少年に対し、威迫し、欺き、若しくは困惑させることその他の当該青少年の未成熟に乗じた不当な手段を用い、又は当該青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として性行為又はわいせつな行為を行うこと。
三 青少年に売春若しくは刑罰法令に触れる行為を行わせる目的又は青少年にこれらの行為を行わせるおそれのある者に引き渡す目的で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
第五十九条 第二十六条第一項若しくは第二項第一号、第二十七条(第三号を除く。)、第三十九条、第四十二条第二号若しくは第三号又は第四十三条第一号、第三号若しくは第四号の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第五十二条、第五十四条、第五十五条又は第五十六条第一号の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
「18歳未満だと知らなかった」という言い訳が通らない3つのケース
相手が18歳未満だと知らなければ原則として犯罪は成立しませんが、「18歳未満だと知らなかった」と言えば罪に問われないわけではありません。以下のようなケースでは、警察に「18歳未満だと知らなかった」と言い訳しても通らないでしょう。
相手から「私は高校生です」と言われていた
性交等をする前に相手から「私は高校生です」と言われていた場合には、「18歳未満だと知らなかった」という言い訳は通りません。
なぜなら、一般的な高校生の年齢は、15~18歳ですので、相手から高校生であると伝えられていた場合、18歳未満である可能性を認識していたといるからです。このようなケースでは、未必の故意が認められるため、罪に問われる可能性が高いでしょう。
2-2 相手が学校の制服を着用していた
最近は、大人っぽい見た目をした未成年者も増えてきていますので、外見だけでは18歳未満であるかどうかの判断が難しいといえます。
しかし、待ち合わせ場所にあらわれた相手が学校の制服を着用していた場合、「高校生かもしれない」という認識を抱くはずです。特に、その制服が近隣の高校の制服であった場合には、高校生である疑いがさらに強まりますので、18歳未満である可能性を認識できたといえるでしょう。
そのため、相手の服装によっては「18歳未満だと知らなかった」という言い訳は通りません。
SNSで知り合った相手のプロフィールに未成年者であることがわかる投稿があった
近年は、未成年者と知り合う方法としてSNSやマッチングアプリなどが頻繁に利用されています。SNSでのメッセージのやり取りで知り合い、性交等に及んだ場合、メッセージのやり取りをしていたSNSやアプリのプロフィールも重要な証拠となります。
プロフィール画面に年齢が記載されていれば、18歳未満だと知らなかったとの言い訳は通りません。また、年齢が記載されていなくても、学校名が記載されていたり、学校生活での写真や動画などが投稿されている場合は、相手が18歳未満の学生である可能性を認識できたといえますので、「18歳未満だとしらなかった」という言い訳は通りません。
18歳未満の未成年者と性行為をした場合に成立する犯罪
以下に、各違反の内容と罰則についてわかりやすくまとめたテーブルを作成しました。
項目 | 内容 | 罰則 |
---|---|---|
青少年健全育成条例(淫行条例)違反 | 青少年とみだらな性交等を禁止(都道府県により規定が異なる)。東京都では相手が18歳未満と知っていることが必要。 | 2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
児童福祉法違反 | 支配関係のある大人が児童(18歳未満)に対して性交や類似行為を行うと成立。 | 10年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその併科 |
児童買春・児童ポルノ禁止法違反 | 18歳未満に金品を渡して性交等を行う場合に成立(18歳未満と知っていることが必要)。 | 5年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
不同意性交等罪 | 同意のない性交等、または年齢制限を超えた場合(13歳未満または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長)に成立。 | 5年以上の有期拘禁刑 |
このテーブルは、各法律違反の内容と罰則について簡潔に整理したものです。
18歳未満の未成年者と性行為をした場合に成立し得る犯罪には、以下のようなものがあります。
青少年健全育成条例(淫行条例)違反
青少年健全育成条例とは、青少年の保護と健全な育成を目的として、各都道府県が制定している条例です。青少年健全育成条例のことを「淫行条例」と呼ぶこともあります。
青少年健全育成条例の内容は、都道府県によって異なりますが、たとえば、東京都では「東京都青少年の健全な育成に関する条例」において、以下のような規定があります。
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
同条例に違反した場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
東京都の場合は、故意犯として規定されていますので、相手が18歳未満の青少年であることの認識がなければ罪に問われることはありません。しかし、過失犯としての処罰規定を設けている都道府県もありますので、そのような場合は、相手が18歳未満だと知らなかったとしても罪に問われる可能性があります。
下記の関連記事も詳しく説明していますので、ご覧ください。
淫行条例とは?成立要件や処罰の対象外となる4つのケースを解説
児童福祉法違反
児童福祉法では、児童に淫行をさせる行為を禁止しています。児童とは、18歳未満の未成年者を指し、児童と支配関係にある大人(教師など)が児童に対して性交や性交類似行為をすると児童福祉法違反となります。児童福祉法の規定は、故意犯として規定されていますので、相手が18歳未満の児童であることを知らなければ児童福祉法違反とはなりません。
なお、児童福祉法違反が成立した場合、10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
児童買春・児童ポルノ禁止法違反
児童買春・児童ポルノ禁止法では、「児童買春」が禁止されています。
児童買春とは、18歳未満の男女に対して、金品を供与または供与する約束をして性交等をすることをいいます。児童買春・児童ポルノ禁止法では故意犯として規定されていますので、相手が18歳未満であることを認識していなければ罪に問われることはありません。
児童買春・児童ポルノ禁止法違反となる児童買春をした場合、5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
下記の関連記事も併せてご覧ください。
児童ポルノ法とは?禁止行為や罰則、検挙数・逮捕率などの実態を解説
不同意性交等罪
不同意性交等罪とは、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせ、またはそのような状態に乗じて性交等を行う犯罪です(刑法177条)。
不同意性交等罪は、年齢が構成要件にはなっていませんので、相手の同意なく性交等をした場合には、18歳未満だと知らなくても不同意性交等罪に問われます。また、相手の同意があったとしても、被害者の年齢が13歳未満の場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長であることを知っていた場合には、不同意性交等罪に問われます。
なお、不同意性交等罪が成立した場合、5年以上の有期拘禁刑に処せられます。
「18歳未満だと知らなかった」と主張して不起訴になる可能性のある4つのケース
18歳未満だと知らなければ過失犯を除き、基本的には罪に問われることはありません。しかし、そのような言い訳は簡単には通りません。「18歳未満だと知らなかった」と主張して不起訴になる可能性があるのは、以下のようなケースになります。
18歳未満利用不可のマッチングアプリで知り合った
マッチングアプリには、利用規約において18歳未満の利用ができないことが定められているものや、登録時に身分証明書などによる年齢確認が求められるものもあります。
このようなマッチングアプリを利用して知り合った相手と性交等をした場合、相手が18歳未満だと知らなかったとしてもやむを得ないといえますので、不起訴になる可能性があります。
SNSやアプリのプロフィール欄に18歳以上の年齢が記載されている
SNSやマッチングアプリのプロフィール欄に18歳以上の年齢が記載されている場合も相手が18歳以上と信じる理由の一つとなります。
しかし、SNSやアプリのプロフィール欄は、虚偽の情報であっても掲載することができますので、それだけでは「18歳未満だと知らなかった」というには不十分かもしれません。
18歳以上であることがわかる身分証明書(偽造)を提示された
相手に年齢を確認したときに、18歳以上であることがわかる身分証明書を提示された場合には、「18歳未満だと知らなかった」といえますので不起訴になる可能性があります。
ただし、身分証明書が一見して偽造であることがわかるような粗末なものであった場合には、偽造の身分証明書であると疑うべきですので、「18歳未満だと知らなかった」という言い訳は通らないでしょう。
年齢を確認したら18歳以上であると言われた
相手に年齢確認をしたところ、18歳以上の年齢を告げられた場合、相手が18歳以上であると信じる理由の一つとなります。
しかし、口頭で確認しただけでは証拠が残りませんので、後から「相手に確認して18歳以上と言われた」と主張しても、捜査機関には信じてもらえない可能性があります。そのため、年齢確認をするのであれば、SNSやアプリなどのメッセージのやり取りの履歴が残る方法で確認した方がよいでしょう。
18歳未満だと知らずに性行為をしてしまったときはすぐに弁護士に相談を
相手が18歳未満だと知らずに性行為をしてしまったときは、すぐに弁護士に相談をすることをおすすめします。
犯罪の成否についてアドバイスできる
相手が18歳未満だと知らなければ故意がないため基本的には犯罪は成立しません。しかし、都道府県によっては淫行条例で過失犯の処罰規定を設けているところもありますので、まずは弁護士に相談して犯罪の成否についてアドバイスしてもらうとよいでしょう。
また、18歳未満だと知らなかったとしても、その当時の状況からそのような言い訳が通らない可能性もありますので、自己判断ではなく専門家のアドバイスを求めるようにしてください。
故意がないことを示す証拠収集をサポートできる
相手が18歳未満だと知らなかったことを理由に犯罪の成立を否定するなら、それを裏付ける証拠が必要になります。
故意がないことを示す証拠としては、主に以下のようなものが考えられます。
・マッチングアプリの利用規約 ・SNSやマッチングアプリのプロフィール欄の記載内容 ・SNSやマッチングアプリのメッセージの履歴 ・相手から提示された身分証明書を撮影した写真 ・出会ったときの相手の見た目がわかる写真 |
どのような証拠が必要になるかは、具体的な事案によって異なりますので、適切な証拠を集めるためにも弁護士に証拠収集のサポートをしてもらうとよいでしょう。
警察での取り調べを受ける際のアドバイスができる
18歳未満だと知らなかったと主張する場合、否認事件になりますので警察官による厳しい取り調べを受ける可能性があります。不慣れな方では警察による追及に耐えきれなくなり、「18歳未満だったかもしれない」などと本来の認識とは異なる供述をしてしまうリスクがあります。
弁護士に相談をすれば、取り調べに対するアドバイスをすることができますので、初めての取り調べでもしっかりと対応することができるでしょう。
援助交際は犯罪!弁護士による5つのサポートと弁護士選びのポイント
18歳未満との性犯罪は経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください
青少年や児童を対象とする性犯罪の多くが故意犯として規定されていますので、相手が18歳未満だと知らなければ罪に問われることはありません。しかし、18歳未満であることの認識は、本人の主観ではなく当時の客観的状況によって判断しますので、「18歳未満だと知らなかった」と言い訳をしただけでは犯罪の成立を否定することができません。
18歳未満だと知らなかったことを理由に犯罪の成立を否定するなら、性犯罪に詳しい弁護士のサポートが不可欠となりますので、まずはグラディアトル法律事務所にご相談ください。
当事務所では、性犯罪に関する豊富な経験と実績がありますので、18歳未満の認識を欠く事案であれば、犯罪の成立を否定して不起訴処分獲得のサポートをすることができます。必要な証拠や捜査機関との対応についても豊富なノウハウがありますので、どうぞ安心してお任せください。
まとめ
犯罪の構成要件として18歳未満の児童や青少年が対象となっている犯罪については、相手が18歳未満だと知らなかった場合には、原則として罪に問われることはありません。
ただし、「18歳未満だと知らなかった」と言えば許してもらえるわけではありませんので、犯罪の成立を否定するなら専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
18歳未満の未成年者と性交等をしてしまったときは、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。