「児童買春・淫行は、いつ時効になる?」
「児童買春・淫行の民事上の時効と刑事上の時効との違いは?」
「児童買春・淫行で時効待ちをするかどうか迷っている」
児童買春・淫行には、公訴時効がありますので、一定期間が経過すると犯罪として処罰されることはなくなります。児童買春・淫行は、具体的な行為態様によって成立する犯罪が異なり、公訴時効期間も成立する犯罪ごと変わってきます。
まずは、ご自身がした行為についてどのような犯罪が成立するかを把握した上で、時効期間をみていくとよいでしょう。
本記事では、
・児童買春、淫行の刑事上の時効と民事上の時効
・【犯罪別】児童買春や淫行の公訴時効期間
・児童買春、淫行の時効待ちではなく弁護士に相談すべき理由
などについてわかりやすく解説します。
児童買春や淫行は、時効により処罰されなくなるといっても、時効待ちにはリスクもありますので、早めに弁護士に相談して今後の対処法についてアドバイスしてもらうとよいでしょう。
目次
児童買春や淫行の刑事上の時効とは?
児童買春、淫行の刑事上の時効を「公訴時効」といいます。以下では、公訴時効の概要について説明します。
公訴時効とは
公訴時効とは、犯行後一定期間が経過することにより、検察官が公訴提起(起訴)することができなくなる制度です。公訴時効が成立すると、たとえ罪を犯していたとしても刑事裁判が開かれることはありませんので、刑罰を科される可能性も消滅します。
具体的な時効期間は、後述しますが、児童買春・淫行にも公訴時効が適用されますので、一定期間が経過することで、児童買春・淫行による処罰されることもなくなります。
公訴時効の起算点
公訴時効の起算点とは、公訴時効がいつからスタートするのかという考え方をいいます。時効期間は一定ですので、公訴時効の起算点がいつになるかによって、時効が完成する日も変わってきます。そのため、公訴時効期間がいつからスタートするかを知っておくことが大切です。
公訴時効の起算点は、「犯罪行為が終わったとき」と定められていますので、児童買春・淫行に関しては、被害児童との性交等が終わった時点が時効の起算点となります。
公訴時効の停止事由とは
公訴時効は、一定事由が生じると期間の進行がストップすることがあります。このような事由を「公訴時効の停止事由」といいます。
公訴時効の停止事由には、以下のようなものがあります。
・事件が起訴された場合 ・共犯者の事件が起訴された場合 ・犯人が国外逃亡している場合 ・犯人が逃げ隠れしていて起訴状を渡すことができない場合 |
児童買春・淫行の罪を犯して、海外に逃げていたとしても、その期間は時効期間が進行しませんので、海外逃亡により時効が過ぎるのを待つのは意味がありません。
【犯罪別】児童買春や淫行の公訴時効期間
児童買春や淫行は、成立する犯罪によって公訴時効期間が異なっています。以下では、児童買春や淫行で成立し得る犯罪別の公訴時効期間を紹介します。
罪名 | 公訴時効期間 |
---|---|
児童買春・児童ポルノ禁止法違反 | 5年 |
不同意性交等罪 | 15年+α |
不同意わいせつ罪 | 12+α |
青少年健全育成条例 | 3年 |
児童福祉法違反 | 7年 |
児童買春・児童ポルノ禁止法違反|5年
18歳未満の児童に対して、金銭などの対価を渡して性交等をすると児童買春・児童ポルノ禁止法違反となります。これがいわゆる「児童買春」と呼ばれる犯罪であり、同罪が成立すると5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます。
このような児童買春・児童ポルノ禁止法違反の時効は、5年となります。
詳しくは下記の記事をご覧ください
児童ポルノ法とは?禁止行為や罰則、検挙数・逮捕率などの実態を解説
不同意性交等罪|15年+α
児童買春、淫行により性交等をした児童が13歳未満であった場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長であった場合は、不同意性交等罪が成立します(刑法177条)。
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑と定められていますので、公訴時効は15年となります。
ただし、被害者が18歳未満の場合、被害者が18歳に達する日までの期間が公訴時効期間に加算されますので、児童買春・淫行の事案では15年+αが公訴時効となります。
不同意わいせつ罪|12年+α
児童買春、淫行によりわいせつな行為をした児童が13歳未満であった場合または13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長であった場合は、不同意わいせつ罪が成立します(刑法177条)。
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑と定められていますので、公訴時効は12年となります。
ただし、不同意性交等罪と同様に被害者が18歳未満の場合、被害者が18歳に達する日までの期間が公訴時効期間に加算されますので、児童買春・淫行の事案では12年+αが公訴時効となります。
青少年健全育成条例(淫行条例)違反|3年
各都道府県では、青少年の保護と健全な育成を目的として、青少年健全育成条例(淫行条例)を制定しています。青少年健全育成条例では、未成年者との性交または性交類似行為が禁止されており、違反した場合には刑事罰が科されます。
たとえば、東京都では、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」を制定し、違反者に対して2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科しています。
このような青少年健全育成条例(淫行条例)違反の公訴時効は、3年となります。
詳しくは下記のコラムもご覧ください。
淫行とはどのような犯罪?成立し得る5つの犯罪とその刑罰を解説
児童福祉法違反|7年
児童福祉法では、児童(18歳未満の未成年者)に淫行をさせる行為を禁止しています。児童と支配関係にある大人(教師など)が児童に対して、性交または性交類似行為をすると児童福祉法違反となります。
児童福祉法違反の法定刑は、10年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)と定められていますので、公訴時効は7年となります。
児童買春・淫行には民事上の時効もある!
児童買春・淫行には、「消滅時効」と呼ばれる民事上の時効も存在します。以下では、民事上の時効である消滅時効制度の概要を説明します。
消滅時効とは
消滅時効とは、権利者による権利行使が一定期間ない場合に、その権利を失わせることができる制度です。
児童買春・淫行は、未成年者の性的自由が害されていますので、民法上の不法行為が成立します。それにより加害者には被害者に対する賠償責任が発生しますので、被害者から請求があれば慰謝料などの支払いに応じなければなりません。
もっとも、消滅時効が成立すれば被害者の損害賠償請求権も消滅しますので、加害者は、時効の援用をすることによって、賠償金の支払いを免れることができます。
消滅時効期間は3年または20年
児童買春・淫行により不法行為が成立した場合の消滅時効期間は、3年となります。
また、不法行為には除斥期間がありますので、児童買春・淫行から20年が経過したときも損害賠償請求権は消滅します。
消滅時効の起算点
消滅時効の起算点は、被害者が損害および加害者を知ったときになります。
児童買春・淫行の事案では、一度限りの関係であることも多く、相手の顔を知っていても、名前や住所までは把握していないケースがほとんどです。時効の起算点である加害者を知ったときとは、賠償請求が可能な程度に加害者を知ったときを意味しますので、被害者が加害者の住所や氏名を知った時点が起算点となります。
消滅時効の完成猶予・更新事由
児童買春・淫行の消滅時効は、一定事由に該当すると消滅時効期間の進行がストップ(時効の完成猶予)またはリセット(時効の更新)されることがあります。このような時効の完成を阻止する事由としては、以下のものが挙げられます。
【時効の完成猶予事由】
・裁判上の請求(事由終了まで完成猶予) ・強制執行(事由終了まで完成猶予) ・仮差押え(事由終了から6か月間の完成猶予) ・協議を行う旨の合意(催告後6か月間の完成猶予) ・催告 |
【時効の更新】
・裁判上の請求(権利の確定により更新) ・強制執行(事由終了により更新) ・承認 |
児童買春・淫行で時効待ちではなく弁護士に相談すべき理由
以下のような理由から、児童買春・淫行をしてしまった方は、児童待ちではなく弁護士に相談することをおすすめします。
時効完成前に検挙されるケースが多い
児童買春・児童ポルノ禁止法違反の公訴時効は、5年ですが、児童買春・淫行が他の犯罪に触れる場合、時効期間は最長で15年+αにもなります。
児童買春・淫行事件は、事件後すぐではなく一定期間経過後に発覚するケースも多いため、時効完成直前になって検挙されてしまう可能性も十分にあります。
実際の事案でも、以下のようなものがありました。
元教え子の少女に乱暴したとして、東京都内の小学校教諭の被告(46)(児童買春・児童ポルノ禁止法違反で起訴)を 強姦 (現・強制性交)容疑で再逮捕した。
警視庁は今年2月、別の教え子が着替える画像をスマートフォンに所持したとして被告を逮捕。自宅から押収したパソコンに、少女が乱暴される動画などが残されており、強姦罪の公訴時効(10年)が約1か月後に迫る中、逮捕に踏み切った。
10年前に元教え子の少女に乱暴し「2人の秘密」と口止め…公訴時効直前、小学校教諭を再逮捕(読売新聞オンライン)
このように、時効直前で検挙された事案もありますので、時効待ちはベストな選択肢とはいえません。
下記のコラムにも逮捕率に関して記載をしていますので、併せてご覧ください。
児童買春の逮捕率は約21%!逮捕の可能性が高いケースや回避する方法
被害者の親との示談ができる
児童買春・淫行をしてしまったとしても、早期に被害者の親との間で示談をまとめることができれば、事件化する前に解決することができます。
しかし、被害者の親は、加害者に対して強い処罰感情を有していますので、加害者本人が示談交渉をしようとしても拒否されてしまうケースがほとんどです。このような場合には、弁護士に依頼することで、スムーズに示談交渉を進めることが可能です。
時効待ちでは、長期間不安な状態で生活しなければならず、結局、時効の完成直前に逮捕されてしまうことも多いため、時効待ちではなく被害者との示談を行うべきでしょう。
下記のコラムも詳しく書いていますので、ご一読ください。
児童買春で示談をする4つのメリットと弁護士に依頼すべき3つの理由
自首に同行してもらえる
警察に自首することで逮捕や起訴のリスクを軽減することができます。
自首とは、捜査機関に事件および犯人が発覚する前に、自ら犯罪事実の申告をすることをいいます。自首の法的効果は、刑の任意的な減軽ですが、自ら犯罪事実の申告をすることで、逃亡・証拠隠滅のおそれがないことや反省の気持ちを示すことができます。
弁護士に依頼すれば、警察への自首に同行してくれて、逮捕をしないよう強く要請してくれますので、逮捕のリスクをより軽減することができるでしょう。
児童買春や淫行をしたときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を
児童買春や淫行は、未成年者に対する性犯罪であるため、逮捕・起訴されてしまうと世間から厳しい目で見られることになります。周囲の人に児童買春や淫行がバレると、これまでのような生活は困難になり、職場を解雇されたり、家族からも見放されてしまいます。
このようなリスクを回避するには時効待ちではなく、早期に被害者との示談交渉に取り掛かることが大切です。
グラディアトル法律事務所では、児童買春・淫行事案を多数取り扱ってきた豊富な経験と実績がありますので、示談交渉が難航するようなケースでも安心してお任せください。経験豊富な弁護士が被害者綿の処罰感情にも配慮しながら、粘り強く示談交渉を進めて示談の成立を目指します。
児童買春や淫行をしてしまったときは、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。
まとめ
児童買春・淫行には、刑事上の時効および民事上の時効がありますので、一定期間が経過すると刑事責任や民事責任を追及されることがなくなります。
しかし、時効完成前に児童買春・淫行で検挙されるケースも少なくないため、時効待ちという方針は決してベストな選択とはいえません。逮捕・起訴のリスクを少しでも軽減したいなら、時効待ちではなく被害者との示談を行うのがおすすめです。
児童買春や淫行をしてしまった方は、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。