「児童ポルノ法違反となる行為をした場合の時効はどのくらい?」
「児童ポルノ法違反の刑事上の時効と民事上の時効の違いとは?」
「児童ポルノ法違反の公訴時効が成立するケースなのか知りたい」
児童ポルノ禁止法では、児童ポルノに関するさまざまな行為を規制しており、行為ごとに公訴時効が定められています。児童ポルノ禁止法違反となる行為をしたとしても、公訴時効が成立すれば、児童ポルノ禁止法違反で処罰されることはなくなりますので、時効期間がどのくらいなのかは、重要な関心事といえるでしょう。
時効には、刑事上の時効である「公訴時効」と民事上の時効である「消滅時効」の2種類がありますので、それぞれの制度の概要と時効期間をしっかりと押さえておきましょう。
本記事では、
・児童ポルノの刑事上の時効|公訴時効
・児童ポルノの民事上の時効|消滅時効
・【ケース別】児童ポルノの公訴時効の完成の有無
などについてわかりやすく解説します。
長期間時効が完成するかどうかわからない状態で生活するのが不安な方は、時効待ち以外にもできることがありますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう
この記事のまとめ
項目 | 公訴時効(刑事) | 消滅時効(民事) |
---|---|---|
定義 | 刑事事件において、犯罪行為から一定期間が経過すると、 検察が犯人を起訴できなくなる制度。 | 民事事件において、一定期間内に権利行使が行われないと、 権利(損害賠償請求権など)が消滅する制度。 |
目的 | 犯罪の社会的影響力が弱まることや証拠の散逸を考慮し、 一定期間後に処罰を免除する。 | 長期間の不行使により、権利の行使を制限することで法的安定性を保つ。 |
適用対象 | 犯罪に対する処罰 (例:児童ポルノの所持、提供、製造など) | 損害賠償請求や民事上の権利行使 (例:被害者が加害者に対する慰謝料請求) |
時効の 期間 | ・ 児童ポルノの単純所持:3年 ・ 児童ポルノの提供(特定少数):3年 ・ 児童ポルノの提供(不特定多数):5年 ・ 児童ポルノの陳列:5年 | ・ 損害賠償請求権:加害者を知った時から3年 ・ 除斥期間(不法行為から):20年 |
起算点 | 犯罪行為が終了した時点からカウント。所持罪の場合、所持が継続している限り時効は進行しない。 | 被害者が損害および加害者を知った時点からカウント。ただし、加害者が特定できない場合は時効が進行しない。 |
停止・ 猶予事由 | ・ 共犯者の起訴 ・ 加害者が国外逃亡または逃走中 ・ 公訴提起中 | ・ 裁判上の請求(権利確定まで猶予) ・ 強制執行(期間中は進行しない) ・ 加害者の承認でリセット |
時効完成の影響 | 時効が成立すると、検察は起訴できなくなり、処罰を受けることはない。 | 時効が成立すると、損害賠償請求などの権利を行使できなくなる。 |
目次
児童ポルノの時効には民事と刑事の2種類がある
時効とは、一定期間の経過により法的な責任追及や権利行使ができなくなる制度です。児童ポルノの時効には、刑事上の時効である「公訴時効」と民事上の時効である「消滅時効」の2種類がありますので、両者を区別して理解することが重要です。
以下では、児童ポルノの刑事上の時効と民事上の時効を詳しく説明しますので、どのような違いがあるのかみていきましょう。
児童ポルノの刑事上の時効|公訴時効(3年または5年)
児童ポルノの刑事上の時効を「公訴時効」といいます。以下では、児童ポルノの公訴時効について説明します。
公訴時効とは
公訴時効とは、犯罪が終了した時点から一定期間経過により、犯人を処罰できなくなる制度をいいます。
事件を起訴するかどうかの判断は、検察官に委ねられていますが、公訴時効が成立した事件については、検察官が起訴(公訴提起)できなくなりますので、公訴時効が完成すればたとえば罪を犯していたとしても処罰されることはありません。
このような公訴時効は、長期間経過により事件の社会的影響力が弱まること、証拠の散逸により公正な裁判が困難になることを理由に設けられた制度になります。
児童ポルノの公訴時効は3年または5年
公訴時効期間は、法定刑を基準に定められています。児童ポルノ法では、さまざまな行為が規制されており、行為ごとに法定刑が異なっていますので、それ応じて公訴時効期間も変わってきます。
児童ポルノ法違反により成立する罪ごとの公訴時効期間は、以下のようになっています。
罪名 | 内容 | 法定刑 | 公訴時効期間 |
---|---|---|---|
単純所持罪 | 児童ポルノを所持する | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 3年 |
保管罪 | 児童ポルノを保管する | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 3年 |
提供罪 | 特定の人に児童ポルノを提供する | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 3年 |
不特定多数に児童ポルノを提供する | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 (併科あり) | 5年 | |
陳列罪 | 児童ポルノを不特定・多数が認識できる状態にする | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 3年 |
製造罪 | 不特定多数への提供目的なく製造する | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 3年 |
不特定多数への提供目的で製造する | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり) | 5年 |
児童ポルノを不特定多数に提供するまたは提供目的で製造する行為は、児童に対する権利侵害の程度が大きいため、法定刑が重くなっており、それに応じて公訴時効期間も長くなっています。
児童ポルノ法とは?禁止行為や罰則、検挙数・逮捕率などの実態を解説
児童ポルノの公訴時効の起算点
公訴時効のカウントがいつスタートするのかを「起算点」といいますが、公訴時効の起算点は、犯罪行為が終わったときからと定められています。
児童ポルノ法違反では、行為ごとに起算点が異なるため、各行為の起算点をまとめると以下のようになります。
罪名 | 起算点 |
---|---|
所持罪 | 所持が終わった時点 例)児童ポルノを処分したとき |
保管罪 | 保管が終わった時点 例)クラウド上から児童をポルノを削除したとき |
提供罪 | 提供する状態が終わった時点 例)違法サイトを閉鎖したとき |
陳列罪 | 陳列が終わった時点 例)ネット上の掲示板から児童ポルノのリンクURLを削除したとき |
製造罪 | 児童ポルノの製造が終わった時点 例)児童ポルノの撮影が終了したとき |
児童ポルノ所持罪などは、所持している状態が続いている限りは、犯罪行為が終わったといえませんので、所持している限り何年経っても時効は成立しませんので注意が必要です。
児童ポルノの公訴時効の停止事由とは
児童ポルノの公訴時効は、一定の事由が生じるとその間は公訴時効期間の進行がストップするため、公訴時効が完成することはありません。このような公訴時効の停止事由には、以下のようなものがあります。
・事件が起訴された場合 ・共犯者の事件が起訴された場合 ・犯人が国外逃亡している場合 ・犯人が逃げ隠れしていて起訴状を渡すことができない場合 |
児童ポルノ禁止法違反事件では、あまりないかもしれませんが、処罰を免れるために海外に逃亡していたとしても、その期間は時効が進行しませんので、日本に戻ってきたタイミングで逮捕される可能性もあります。
児童ポルノの民事上の時効|消滅時効(3年または20年)
児童ポルノの民事上の時効を「消滅時効」といいます。以下では、児童ポルノの消滅時効について説明します。
消滅時効とは
消滅時効とは、一定期間権利者による権利行使がない場合に、権利者が有する権利を消滅させることができる制度です。
児童ポルノ禁止法に違反する行為をした場合、被害者を受けた児童の権利を侵害することになりますので、民法上の不法行為が成立します。これにより、被害児童は、加害者に対して、慰謝料などの損害賠償請求をすることができます。
しかし、消滅時効期間が経過すれば慰謝料請求権も消滅してしまいますので、児童ポルノの加害者は、時効を援用することで民事上の責任追及を免れることが可能になります。
児童ポルノの消滅時効は3年または20年
児童ポルノ禁止法違反による民法上の不法行為が成立した場合の時効期間は、3年となります。
また、不法行為には、除斥期間という時効に似た制度がありますので、児童ポルノ禁止法に違反する行為をしてから20年が経過したときも被害者の損害賠償請求権は失われます。
児童ポルノの消滅時効の起算点
消滅時効の起算点は、被害者が損害および加害者を知ったときです。
たとえば、SNSなどで知り合った未成年者の児童からわいせつな自撮り画像や動画を送ってもらったような場合であれば、被害者がSNSなどのアカウントから加害者を特定した時点から消滅時効がスタートします。
他方、被害者と加害者に面識がなく、加害者を特定する手掛かりもないような事案だと、被害者が加害者を特定できるまで時効期間はスタートしないことになります。
児童ポルノの消滅時効の完成猶予・更新事由
痴漢の消滅時効は、一定の事由がある場合には、消滅時効期間の進行がストップ(時効の完成猶予)またはリセット(時効の更新)することがあります。このような時効の完成を阻止する事由としては、以下のものが挙げられます。
【時効の完成猶予事由】 ・裁判上の請求(事由終了まで完成猶予) ・強制執行(事由終了まで完成猶予) ・仮差押え(事由終了から6か月間の完成猶予) ・協議を行う旨の合意(催告後6か月間の完成猶予) ・催告 |
【時効の更新】 ・裁判上の請求(権利の確定により更新) ・強制執行(事由終了により更新) ・承認 |
【ケース別】児童ポルノの公訴時効が成立するかをチェック
児童ポルノの時効の基本を押さえたところで、以下では、具体的なケース別に児童ポルノの時効が成立するかどうかをチェックしていきましょう。
児童ポルノを所持し続けて3年が経過した
公訴時効は、犯罪行為が終わった時点からスタートします。児童ポルノを所持している場合、児童ポルノの単純所持罪が成立しますが、児童ポルノを所持し続ける限り、いつまで経っても犯罪行為が終わったことにはなりません。
そのため、所持したまま3年が経過したとしても、時効は成立しません。
児童ポルノをネット上に公開して5年が経過した
児童ポルノをネット上に公開すると、児童ポルノの頒布罪が成立します。単純所持罪と同様に児童ポルノの公開を終了しない限り、犯罪行為が終わったとは評価できませんので、5年が経過したとしても時効は成立しません。
児童ポルノだと知らずに所持し続けていた
児童ポルノ禁止法違反となるには、本人が児童ポルノであることを認識している必要があります。本人が児童ポルノと認識せずに所持していた場合には、単純所持罪は成立しませんので、そもそも時効の問題になる前に、犯罪自体が成立しません。
ただし、途中で児童ポルノであることに気付いた場合には、その時点で単純所持罪が成立しますので、通常の単純所持罪の時効と同様の処理となります。
児童ポルノ禁止法に違反したときは時効を待たずすぐにグラディアトル法律事務所に相談を
児童ポルノ禁止法に違反する行為をしたとしても、3年または5年が経過すれば時効により処罰されることはありません。しかし、公訴時効完成前に児童ポルノ禁止法違反が発覚すれば、逮捕・起訴されるリスクがあります。3年または5年という期間を逮捕・起訴されるかもしれないという不安を抱えながら生活するのは精神的にも非常にきつい状態といえますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
グラディアトル法律事務所では、児童ポルノ犯罪に関する豊富な経験と実績がありますので、具体的な状況に応じて適切な解決方法を提案することができます。時効待ち以外にも自首や示談により逮捕や起訴を回避できる可能性がありますので、まずは当事務所までご相談ください。
児童ポルノの事件を弁護士に相談する4つのメリットと5つのサポート
まとめ
児童ポルノ禁止法に違反する行為をしたとしても、3年または5年の期間が経過すれば公訴時効が成立し、罪に問われることはありません。しかし、時効待ちには、逮捕・起訴されるリスクがありますので、決して最善の手段とはいえません。
どのような対応が最適であるかは具体的な状況によって異なりますので、まずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。