背任罪の時効は5年|時効待ち以外にできる3つの対処法を解説

背任罪と類似する犯罪の公訴時効
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弁護士 若林翔
2025年01月22日更新

「背任罪は何年で時効になる?」

「背任罪の事項に関して押さえておくべきポイントとは?」

「時効待ち以外にできることを知りたい」

背任罪の時効は5年ですので、犯行から5年を経過すると背任罪として処罰される可能性は消滅します。ただし、具体的な行為が背任罪ではなく、業務上横領罪や特別背任罪に該当するような場合には、時効期間が7年になりますので、どのような犯罪に該当するかが重要になります。

もっとも、背任罪で時効成立まで逃げ切れるケースは少ないため、時効待ちではなく被害者との示談などの方法を検討することも大切です。その際には、弁護士のサポートが必要になりますので、背任罪を犯してしまったときはすぐに弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、

・背任罪やその他の類似する犯罪の公訴時効期間

・背任罪の公訴時効に関して押さえておくべき3つのポイント

・時効待ち以外にできる3つのこと

などについてわかりやすく解説します。

背任罪の時効に関する基本的な考え方から具体的な対処法まで解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

背任罪の公訴時効は5年

背任罪の公訴時効は5年です。

公訴時効とは、犯罪から一定期間が経過した場合、公訴の提起(起訴)ができなくなる制度です。すなわち、公訴時効が経過すれば過去に犯した犯罪で処罰されることがなくなります。

背任罪を犯したとしても、5年間逃げ切ることができれば、処罰される可能性がなくなりますので、何とか逃げ切りたいと考える方も多いでしょう。しかし、実際にはほとんどのケースが時効前に発覚していますので、後述するように時効待ち以外の対処法を検討することが重要です。

背任罪と類似する犯罪の公訴時効

背任罪と類似する犯罪の公訴時効

背任罪の構成要件は非常に複雑ですので、実際には他の犯罪に該当しているケースも少なくありません。そのため、背任罪と類似する犯罪の公訴時効期間も押さえておくことが大切です。

単純横領罪の公訴時効|5年

単純横領罪とは、自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、コンビニ店員がレジのお金を抜き取って自分のものにするような場合がこれにあたります。

単純横領罪の法定刑は、5年以下の懲役と定められていますので、公訴時効は、背任罪と同様に5年になります。

業務上横領罪の公訴時効|7年

業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。たとえば、会社の経理担当者が会社の経費を私的に流用するような場合がこれにあたります。

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められていますので、公訴時効は、背任罪よりも長く7年になります。

特別背任罪の公訴時効|7年

特別背任罪とは、取締役や監査役など株式会社の重要な地位に就いている人が自己や第三者の利益を図る目的で任務に背き、会社に損害を与えた場合に成立する犯罪です。たとえば、取締役による粉飾決算などがこれにあたります。

特別背任罪の法定刑は、10年以下の懲役または1000万円以下の懲役(併科あり)と定められていますので、公訴時効は、背任罪よりも長く7年になります。

背任罪の消滅時効は3年または20年

背任罪には、刑事上の時効である「公訴時効」だけでなく、民事上の時効である「消滅時効」も存在しています。

消滅時効とは、一定期間権利が行使されなかった場合にその権利を消滅させる制度です。背任罪では、被害者に損害を与えていますので、被害者は、加害者に対して損害賠償請求権を有しています。しかし、被害者が損害賠償請求権を行使することなく、一定期間が経過すると時効により権利が消滅しますので、加害者は、被害者に対して賠償をする必要がなくなります。

背任罪の消滅時効期間は、被害者が損害および加害者を知ったときから3年または犯罪行為をしたときから20年になります。

公訴時効とは異なり、「3年」の消滅時効は、被害者が被害に遭ったことと犯人を知らなければ時効期間が進行しません。

背任罪の公訴時効に関して押さえておくべき3つのポイント

背任罪の公訴時効に関して押さえておくべき3つのポイント

背任罪の公訴時効に関しては、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

公訴時効の起算点は犯罪行為が終わったときから

公訴時効は、犯罪行為が終わった時点から期間の進行がスタートします。このような時効期間のスタート地点を「起算点」といいます。

背任罪の場合、任務違背行為により被害者に損害が生じた時点が時効の起算点になりますが、背任罪は未遂も処罰対象となっていますので、背任未遂罪の場合は、任務違背行為があった時点が時効の起算点になります。

公訴時効は停止することがある

公訴時効は、一定事由が生じると期間の進行がストップすることがあります。このような事由を「公訴時効の停止事由」といいます。

公訴時効の停止事由には、以下のようなものがあります。

・事件が起訴された場合
・共犯者の事件が起訴された場合
・犯人が国外逃亡している場合
・犯人が逃げ隠れしていて起訴状を渡すことができない場合

背任罪を犯して、海外に逃げていたとしても、その期間は時効期間が進行しません。そのため、海外逃亡により背任罪の時効が過ぎるのを待つのは意味がありません。

時効待ちはリスクが高い

背任罪の公訴時効は5年ですので、「背任罪を犯してもすぐに時効になるのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、背任罪の具体例としては架空取引や不正融資などがありますが、いずれも社内において過去の取引を精査している中で発覚する可能性がありますので、時効まで逃げ切るのは困難なケースが多いです。時効完成前に犯罪が発覚してしまうと、

・逮捕や起訴されるリスク
・懲戒解雇になるリスク
・時効完成まで不安な日々を送らなければならない負担

などさまざまなリスクが生じますので、時効待ちは得策ではありません。

実際の事例でも、投資ファンドの元代表取締役が委託費名目で会社から不正な支出を行い、会社に損害を与えたという特別背任罪および背任罪の事件で、犯行から約6年5か月後に起訴されたというものもあります。

エネルギー投資を手がけるファンド運営会社を舞台にした不正支出事件で、東京地検特捜部は、「IDIインフラストラクチャーズ」の元代表取締役(61歳)を会社法違反(特別背任)と刑法の背任罪で東京地裁に起訴しました。起訴状などによると、元代表取締役はIDIIの代表取締役だった2018年6月、部下らと共謀し、知人が経営するエネルギー関連会社との間で業務委託契約を結んだと装い、委託費名目で2160万円を支出してIDIIに損害を与えたとされます。19年11月には、取締役を務めていた海外法人から知人の会社に委託費名目で約19万4000ドル(当時のレートで約2100万円)を支出し、同法人に損害を与えたとされています。
(引用:読売新聞オンライン)https://www.yomiuri.co.jp/national/20241118-OYT1T50136/

時効待ち以外にできる3つのこと

時効待ち以外にできる3つのこと

背任罪の時効待ちはリスクが高いため、時効待ち以外の以下のような対処法を検討しましょう。

被害者との示談交渉

背任罪のような被害者に損害を生じさせる犯罪では、被害者との示談が重要なポイントになります。

被害者との示談により被害者に生じた損害を回復することができれば、被害届や告訴状の提出に至る前に事件を解決できますので、逮捕や起訴のリスクは消滅します。また、被害届や告訴状の提出後であっても、示談により被害回復ができているということは被疑者にとって有利な事情となりますので、逮捕や起訴を回避できる可能性が高くなります。

そのため、背任罪を犯してしまったときは、時効待ちではなくすぐに被害者との示談交渉を開始しましょう。

警察への自首

背任事件が捜査機関に発覚する前であれば、警察への自首も有効な手段となります。

自首をすることによって逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを示せますので、逮捕を回避できる可能性が高くなります。また、自首は、任意的な刑の減軽事由になりますので、背任罪で起訴されたとしても、軽い量刑で済む可能性があります。

ただし、自首をすべきかどうか、自首のタイミングは慎重に判断しなければなりませんので、自分だけで行動するのではなく一度弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士への相談

背任罪を犯してしまったときは、そのまま放置するのではなくすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

弁護士に相談すれば時効待ち以外にできる具体的な対処法についてアドバイスしてもらえますので、逮捕や起訴を回避する可能性をより高めることができます。特に、被害者との示談交渉に関しては、弁護士のサポートがなければ示談をまとめることが難しいケースも多いため、スムーズな示談交渉を実現するためにも弁護士に依頼するべきです。

また、警察に自首する際も弁護士が同行して逮捕の理由や必要性がない旨を強く申し出ることができますので、逮捕を回避できる可能性が高くなります。

このようにさまざまなメリットがありますので、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

背任罪を犯したときは時効待ちではなくグラディアトル法律事務所に相談を

背任罪を犯したときは時効待ちではなくグラディアトル法律事務所に相談を

背任罪には、5年という時効がありますが、時効待ちは得策ではありません。多くのケースで時効前に犯行が発覚し、逮捕や起訴に至っていますので、時効待ちではなく早期に被害者と示談をまとめることが重要です。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件の弁護に関する豊富な実績と経験がありますので、背任罪の弁護については当事務所にお任せください。経験豊富な弁護士が被害者との示談交渉などを担当しますので、早期に示談を成立させることで逮捕や起訴を回避できる可能性を高めることが可能です。

当事務所では、24時間365日相談を受け付けており、土日祝日、深夜・早朝などいつでもお電話可能です。刑事事件はスピード勝負と言われるように、早期対応が重要になりますので、背任事件を起こしてしまったときはすぐに当事務所までお問い合わせください。

まとめ

背任罪には、刑事上の時効と民事上の時効の2種類があり、刑事上の公訴時効は5年と定められています。5年間逃げ切ることができれば時効により処罰されることはありませんが、時効前に事件が発覚するケースも多いため、時効待ち以外の対処法を検討することが大切です。

背任罪を犯してしまったときは、刑事事件に強い弁護士のサポートが必要になりますので、まずは経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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