給付金詐欺は逮捕される?実際の逮捕事例や逮捕を防ぐ方法を解説!

給付金詐欺は逮捕される?
弁護士 若林翔
2025年01月06日更新

「ウソの申請をして、給付金を受け取った」

「書類をでっち上げて申請してしまった」

給付金を不正に受給してしまい、「詐欺で逮捕されるのでは?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか?

・新型コロナ関連の給付金 
 (持続化給付金、月次支援金など)
・IT導入補助金
・社会保険(雇用保険、傷病手当金など)
・生活保護費 など

国からお金が支給される制度はいくつも用意されています。しかし、これらを不正に受給してしまうと、詐欺罪に問われて逮捕・起訴される可能性があるのです。

給付金詐欺による逮捕を防ぐには、すぐに弁護士に相談して、自主返還などの対応をすることが欠かせません。

本記事では、次の点を取り上げました。

・給付金詐欺で逮捕される可能性
・実際に逮捕されたケース
・いつまで逮捕される可能性があるのか
・逮捕を防ぐためにできること 等

「給付金の不正受給で逮捕されるのでは?」と不安な方は、是非ご一読ください。

給付金詐欺で逮捕される可能性は?

給付金詐欺で逮捕される可能性は、決して低くありません。給付金詐欺による検挙件数は、他の詐欺事案と比べても遜色のない数字となっています。

給付金詐欺の検挙件数は3000件以上も!

毎年、かなりの数の給付金詐欺が、警察によって検挙されています。

例えば、持続化給付金による検挙件数は過去2500件を超えています。さらに新型コロナ関連の給付金を合計すると、その数は3000件以上にものぼります。実際には、他にも様々な給付金制度があるので、「給付金詐欺」による検挙件数を合計するとかなりの数になるでしょう。

令和4年版 犯罪白書|法務省)

ちなみに、令和5年の特殊詐欺(オレオレ詐欺など)の検挙人員は2455人です。給付金詐欺の検挙件数は、他の詐欺事案と比べても、決して少なくないのです。不正受給のリスクを甘く見ることはできません。

令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)|警察庁)

持続化給付金等の調査は今も続いている

新型コロナ関連で、給付金を受け取った方も多いでしょう。

実は、持続化給付金や月次支援金など、新型コロナ関連の給付金をめぐる不正受給の調査は、現在も続いています。経済産業省や国税庁、地方自治体、警察が連携して、確定申告などの記録をもとに、不正の有無を厳しく調査しているのです。

例えば、中小企業庁の給付金等不正対応等事業を行っている「株式会社コンベンションリンケージ」によれば、2023年4月〜2024年3月の間だけでも、1万3千件以上もの捜査事項照会が実施されています。

【捜査事項照会件数(新型コロナ関連給付金)】

令和5年度給付金等不正対応等事業に係わる業務実施・調査報告|株式会社コンベンションリンケージ)

(引用:令和5年度給付金等不正対応等事業に係わる業務実施・調査報告|株式会社コンベンションリンケージ

不正が発覚すると、受給者には返還命令が下されるだけでなく、詐欺罪で刑事告発されて、逮捕にいたるケースもあります。さらに、氏名や所在地がホームページ上で公表されるなど、社会的制裁も加えられます。

今後も調査の範囲は広がると考えられるため、安心できる状況ではありません。給付金詐欺は、一時的には大きな利益を得られるでしょう。しかし、その代償は非常に大きいです。

詐欺によって逮捕される給付金の具体例

給付金詐欺は、様々な種類の給付金や補助金で成立します。

逮捕される給付金詐欺の具体例

新型コロナ関連の給付金(持続化給付金など)

給付金詐欺として最も代表的なのが、新型コロナ関連の給付金です。

虚偽の売上減少をでっち上げたり、確定申告書を偽造したり、架空の事業を立ち上げたりといった手口が頻発しており、国も厳しく対応しています。

経済産業省のホームページには、不正受給として認定された人の数や受給額、氏名や所在地が公表されています。持続化給付金だけでも、2024年12月2日時点で2350者の不正受給が発覚しており、不正受給額は23億9312万7924円にものぼります。

支給から数年が経って逮捕されるケースも、珍しくはありません。

◉「2024年11月14日」

国の新型コロナウイルス対策の持続化給付金を不正受給したとして、広島県警呉署は13日、呉市の会社員の男(26)を詐欺の疑いで逮捕した。逮捕容疑は、何者かと共謀。2020年7月17日、個人事業者を装って受給資格があるように偽り、中小企業庁のサイトから申請。同28日に給付金100万円をだまし取った疑い。
(出典:中国新聞

雇用保険、傷病手当金など

雇用保険や傷病手当金も、給付金詐欺の対象となります。

就職や就労したにも関わらず雇用保険をもらい続けたり、副業などで収入があることを申告しなかったり、病気を装って傷病手当金を受け取ったりといったケースです。

こうした不正受給は、たとえ金額が小さくても、立派な詐欺行為です。発覚すれば、逮捕される可能性が十分にあります。

生活保護費

生活保護費の不正受給も詐欺に該当します。

就労収入を過少申告したり、申告せずに生活保護費を不正に受給したりするケースが典型例でしょう。

生活保護の不正受給は、給付金詐欺の中でも特に逮捕されやすいケースです。金額の大きさに関わらず、様々なケースで実際に逮捕者が出ています。

【生活保護の不正受給で逮捕されたケース】

内容不正受給の金額
毎月20万円収入ありながら、生活保護費96万円を不正受給疑い アルバイトの男を逮捕(出典:京都新聞約96万円
生活保護約1か月で31万円をだまし取った60歳男―名前も出身地もデタラメ「金がない…住むところがない」と主張し申請 詐欺で逮捕(出典:北海道ニュースUHB約31万円
生活保護を不正受給…収入を隠していた女逮捕「足りない」 気付いた市職員が警察に連絡(出典:埼玉新聞約363万円

IT導入補助金など

IT導入補助金の不正受給も増加傾向にあります。

売上や従業員名を偽って補助金を申請したり、購入していないITツールを導入したように装ったりするのが典型的な手口です。事務局の立入調査や、第三者からの通報で発覚するケースも珍しくはありません。

【IT導入補助金で逮捕されたケース】

中小企業のデジタル化の補助金を詐取したとしてウェブ制作会社代表の男らが大阪府警に逮捕された事件で、男らが実際は1件1万円程度のホームページ(HP)導入費用を100万円超と偽り、補助金を申請していたことが捜査関係者への取材で分かった。補助金を所管する経済産業省は虚偽申請を見抜けていなかった。
大阪地検は22日、ウェブ制作会社「●●」(大阪市)の代表の●●被告(●)と社員の●●被告(●)=いずれも詐欺罪で起訴=を詐欺罪で追起訴した。
(引用:朝日新聞

給付金詐欺はいつまで逮捕の可能性がある?|公訴時効は7年

では、給付金を受け取った後、詐欺で逮捕される可能性はいつまであるのでしょうか?

この点、給付金詐欺の公訴時効は7年です。つまり、給付金を受け取ってから7年間は、警察に逮捕される可能性があるのです。

特に、新型コロナ関連給付金の場合、被害額が高額だったり、社会からの注目を集めやすかったりするケースが多いです。そのため、申請から数年が経過していても、ちょっとしたきっかけで本格的に捜査が開始される可能性があります。

また、7年というのは、あくまでも刑事上の時効(公訴時効)期間です。受け取った給付金を返還する義務や、損害賠償請求をされる可能性まで消えるわけではありません。民事上は、3年〜20年という異なった消滅時効期間が設けられています。

【給付金の消滅時効(民事)】

・損害及び加害者を知った時から3年

・不法行為時(給付金詐欺)から20年

給付金詐欺の場合、損害及び加害者が分かった状態で、国や自治体が請求しないケースは考えにくいでしょう。

そうすると、例えば「2024年1月」に給付金詐欺を行ったとすれば、「2044年の1月」まで給付金や多額の延滞金、損害賠償を請求をされる可能性が残り続けます。

日付内容効果
2024年1月1日詐欺によって給付金を受け取る給付金詐欺が成立
(7年後)
2030年12月31日
公訴時効が完成検察官に起訴されなくなる
※給付金の返還請求や、多額の損害賠償請求をされるリスクは残り続ける
(20年後)
2044年1月1日
消滅時効(民事)が完成給付金の返還請求や、損害賠償請求をされるリスクがなくなる

給付金詐欺のリスクが完全に消えるには、長い年月が必要です。

「バレない」と思って隠し続けるのではなく、弁護士などの専門家に相談して、正しいアドバイスを受けましょう。

給付金詐欺で逮捕されるとどうなる?4つのリスク

給付金詐欺で逮捕されると、様々なリスクが伴います。

給付金詐欺で逮捕されるとどうなる?

長期間にわたって拘束される

給付金詐欺で逮捕されると、最大23日間にわたって身柄拘束が行われます。

この間、警察や検察官による取り調べが実施され、外部との接触も厳しく制限されるため、学校や仕事に行くことはできません。拘束期間が長引くほど、日常生活への影響も甚大なものとなるでしょう。

さらに、給付金詐欺で起訴されると、裁判が終わるまで身柄を拘束される可能性もあります。肉体的、精神的にも大きな負担が生じてしまいます。

10年以下の懲役になって、前科が付く

給付金詐欺の法定刑は10年以下の懲役刑のみであり、罰金はありません。

有罪判決を受けると、執行猶予がつかない限り、刑務所に収監されることになります。詐欺の内容が悪質だったり、詐欺で受け取った金額が大きかったりする程、実刑判決を受ける可能性が高くなります。

執行猶予が付けば、刑務所に行くことは回避できますが、前科が付くことは避けられません。就職や社会生活にも深刻な影響が及んでしまうでしょう。公務員や司法書士、行政書士、税理士などの立場で給付金詐欺を行っていれば、前科によって、資格が制限されるリスクもあります。

氏名、所在地が公表される

氏名や年齢、職業、所在地などの個人情報が公表されるリスクもあります。

報道機関によって公表されるケースもあれば、国のホームページなどに掲載されるケースもあるでしょう。いずれにせよ、社会的信用が著しく低下してしまいます。

場合によっては、家族や親族にまで影響が及ぶリスクも想定されるでしょう。

ただし、正しい対応をすれば、ネット上の情報を削除できる場合もあります。国や自治体のHPの情報は、不正受給金を返還すれば削除される場合が多く、報道機関のニュース記事なども、弁護士から削除要請が可能です。

多額の延滞金・課徴金が発生する

給付金詐欺が発覚すると、不正に受け取った金額だけでなく、多額の延滞金や違約金を請求される可能性があります。例えば、持続化給付金のケースでは、不正受給額に加えて、20%の加算金と年率3%の延滞金が加算されます。

【不正受給による延滞金の例】

新型コロナ関連給付金(持続化給付金など)不正受給金額+20%の加算金+年率3%の延滞金
生活保護費不正受給金額+最大40%の課徴金(生活保護法第78条)
雇用保険、傷病手当金など不正受給金額+最高2倍の金額+延滞金

不正受給金の返還が遅くなるほど、延滞金などの負担も増加していくでしょう。

さらに、事件によっては民事裁判が行われ、より大きな金額が請求される場合も可能性も考えられます。

給付金詐欺の逮捕を防ぐために弁護士ができること

給付金詐欺をしてしまったら、できる限り早く弁護士に相談してください。

給付金詐欺の逮捕を防ぐために弁護士ができること

自主返還などの相談

給付金詐欺の逮捕を防ぐには、自主返還することが不可欠です。

誤って支給したことを申告し、給付金の全額を返還することで、刑事処分を免れられる可能性があるからです。

特に、コロナ関連の給付金は、不正受給の調査が開始される前であれば、加算金・延滞金も課されないとされています。生活保護費などでも、自ら申し出て返還すれば、刑事事件にまでは至らないケースが通常です。

とはいえ、すぐに返還できなかったり、複雑な事情を抱えているという方も多いでしょう。

「すでに給付金を使っており、返還に当てるお金がない」

「窓口でどう伝えればいいか分からない」

「偽造書類を作成して申請した」

「他の犯罪にも該当するおそれがある」 など

こういった場合は、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士なら、あなたの味方として、どういった対処をするのが最善なのか的確にアドバイスしてくれるでしょう。守秘義務があるので、相談によって不正受給が発覚する心配もありません。

自首・出頭のサポート、アドバイス

給付金詐欺の内容や状況によっては、自首・出頭した方が良いケースもあります。

警察が特定する前に自首・出頭すれば、刑は最大半分程度にまで軽くなります。証拠隠滅や逃亡のおそれがないと判断されれば、そのまま自宅に帰れるケースも珍しくはありません。さらに、不安を抱え続けるのではなく、自白することで心がすっきりしたり、不安から解消されるというメリットもあります。

ただし、給付金詐欺の場合は、自首・出頭する前に、お金を返還したり、国の機関や自治体に申し出て、打開策を探ったほうが良いケースも多いです。そのため、自首・出頭を検討する場合は、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士によっては、自首・出頭の当日も警察まで同行し、近くで待機してくれる場合もあります。後悔のない選択をするためにも、事前に弁護士に相談しましょう。

逮捕を避けるための弁護活動

弁護士はあなたの一番の味方として、最後まで戦い抜いてくれます。早期に相談することで、逮捕・起訴を阻止できる可能性は格段に高くなるでしょう。

・給付金詐欺の加害者が、まず何をすべきなのか

・どうすれば逮捕・起訴を阻止できるのか

・すぐに釈放してもらうには何が必要なのか

刑事事件に強い弁護士なら、こうしたポイントを熟知しています。逮捕後も、すぐに留置所に接見に行って、身柄拘束がどの程度になるのか、警察の取調べにどう対応するべきかをアドバイスしてくれるでしょう。

給付金詐欺が、その後の人生に与える影響を少しでも抑えるため、最善を尽くして戦ってくれます。

給付金詐欺の逮捕が不安な方は、グラディアトル法律事務所へご相談ください

給付金詐欺をしてしまった方は、私たちグラディアトル法律事務所へご相談ください。

弊所は、刑事事件を数多く取り扱っており、圧倒的なノウハウと実績を有している法律事務所です。

・給付金詐欺で警察から連絡が来た
・今までの「不正受給がバレたらどうしよう?」と不安で仕方がない
・自主返還したいけど、給付金を使ってしまった
・家族が給付金詐欺で逮捕されたと連絡がきた など

上記のような方は、一人で悩まず、是非お話をお聞かせください。弊所では、刑事事件の豊富な経験を持つ弁護士が、24時間365日・全国相談受付可能な体制でご相談を承っています。

「どうすればいいか、弁護士からアドバイスをもらいたい」

「給付金詐欺をして後悔している。まずは話だけでも聞いて欲しい」

こういったご相談だけでも構いません。ご相談者様に寄り添い、少しでも不安が解消されるよう、全力でサポートさせていただきます。

まとめ

最後に、今回の記事のポイントをまとめます。

◉給付金詐欺の検挙件数は、他の詐欺事案と比べても少なくない

◉持続化給付金や新型コロナ関連給付金が代表例

◉検挙されるリスクが高く、現在も調査が続いている

◉新型コロナ関連以外でも、様々な給付金で逮捕リスクがある

・生活保護費
・雇用保険や傷病手当金
・IT導入補助金 など

◉不正受給後、7年間は逮捕のリスクがある

◉給付金詐欺をしてしまったら、速やかに弁護士への相談が必要

◉給付金詐欺で弁護士ができること

・自主返還のサポート
・自首・出頭するべきかのアドバイスと当日のサポート
・逮捕、起訴を防ぐための弁護活動

以上です。

給付金詐欺をしてしまった方は、この記事を読み終わったら、すぐに弁護士に相談して、逮捕を防ぐための行動を起こしましょう。

一刻も早く事件が解決して、あなたの不安が解消されることを願っています。この記事が役に立った、参考になったと感じましたら、是非グラディアトル法律事務所にもご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

弁護プラン一覧

よく読まれるキーワード