「お金に困って口座売買をしてしまったが、法的な問題はある?」
「口座売買をするとどのような罪に問われる?」
「口座売買を理由に逮捕を避けるにはどうしたらいい?」
近年、SNSなどで「あなたの口座を高額で買い取ります」、「口座売買で簡単にお小遣い稼ぎできます」などの投稿を見かけることがあります。お金に困っている状況だと、口座を売るだけで高額な報酬がもらえるため安易な気持ちで口座売買に応じてしまう方も少なくありません。
しかし、口座売買は、犯罪行為に加担する違法な行為になりますので、口座を売却した本人も刑事罰に問われる可能性があります。また、それ以外にも口座凍結や新規の口座開設ができなくなるなどのリスクがありますので、注意が必要です。
本記事では、
・口座売買により問われる可能性のある罪と刑罰
・口座売買をしてしまったときに生じるリスクや不利益
・口座売買で逮捕を避けるための対処法
などについてわかりやすく解説します。
口座売買は、逮捕される可能性のある犯罪ですので、口座売買をしてしまったときはすぐに弁護士に相談するようにしてください。
目次
逮捕される可能性がある口座売買とは?
口座売買とは、自分が持っている口座を第三者に売却する行為です。預金通帳、キャッシュカード、暗証番号などを買主に渡すことで、買主は他人名義の口座を自由に使えるようになります。
最近では、SNSなどで「あなたの口座を高額で買い取ります」、「口座売買で簡単にお小遣い稼ぎできます」「#闇バイト #裏バイト」などで口座売買の勧誘をする投稿を見かけることがあります。手軽に高額な報酬が得られることから、お金に困っている人や手軽にアルバイトをしたい学生などが安易な気持ちで口座売買をしてしまうケースも増えています。
しかし、口座売買により売却された口座は、振り込め詐欺などを行うトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)をはじめとした犯罪組織に利用され、犯罪収益の受け皿になっています。そのため、口座売買をする行為は「犯罪収益移転防止法」などにより取り締まりの対象となっていますので、口座売買をしてしまうと、逮捕され、刑事罰を科される可能性があります。
逮捕される可能性がある「口座売買」の具体例
以下に、SNSを通じた口座売買の危険性と事例をわかりやすくまとめました:
項目 | 具体例 | リスク |
---|---|---|
SNS投稿の口座売買勧誘 | 「不要な口座、3万円で買い取ります」 「#闇バイト」「#高収入」 | 振り込め詐欺などに利用され、売却した本人が共犯として逮捕される可能性が高い。 |
学生によるアルバイト感覚の売却 | 「簡単なお仕事です!口座を提供するだけで10万円」 「使っていない口座を高額で買取中!」 | 口座が犯罪に利用され、逮捕や前科がつくリスクがある。 |
知人・友人への口座譲渡 | 「お金を借りたいから口座を貸して」と頼まれて提供。 | 振り込め詐欺や不正送金に利用され、知らなかったとしても共犯とみなされる可能性がある。 |
ダイレクトメールや電話勧誘 | 「休眠口座を有効活用しませんか?」とDMや電話で勧誘。 | 勧誘に応じた場合、詐欺グループに利用され、最終的に警察に逮捕される危険がある。 |
闇金業者や犯罪組織への売却 | 借金返済に困り、闇金業者に口座を売却。 | 不正取引に利用され、最終的に共犯として処罰される可能性がある。 |
<注意点>
これらの具体例はいずれも、「お金に困った状況」や「簡単に稼げる」という心理につけ込まれた結果として発生しています。しかし、口座を売却した時点で法律違反となり、自分自身が犯罪者として扱われる可能性があることを理解する必要があります。
SNSを通じた口座売買
SNSで以下のような投稿を見て、自分の口座を売却してしまうケースが多発しています。
- 「不要な銀行口座、3万円で買い取ります」
- 「口座売買で即日現金化可能!」
- 「#闇バイト」「#高収入」
口座の持ち主が、通帳やキャッシュカード、暗証番号を渡してしまうことで、第三者が不正にその口座を利用します。
→ この行為により、振り込め詐欺などの犯罪に口座が使われると、売却した本人も共犯と見なされ逮捕される可能性があります。
学生がアルバイト感覚で口座を売却
大学生や専門学生が、以下のような誘い文句に乗って口座を売却するケースです。
「簡単なお仕事です!口座を提供するだけで10万円」 「使っていない口座を高額で買取中!」 |
これに応じて口座を渡してしまうと、その口座が犯罪に利用され、自分の名前が犯罪の足跡として記録される可能性があります。
→ この場合、口座を提供した学生自身が逮捕され、前科がつくこともあります。
知人や友人への口座譲渡
「少しお金を貸してほしいから口座を貸して」と知人や友人に頼まれ、口座を渡してしまうケースです。
実際にはその口座が振り込め詐欺や不正送金に利用されることがあります。 知らなかったでは済まされず、共犯とされる場合があります。 → 結果として、警察の捜査により逮捕されるリスクが発生します。 |
ダイレクトメールや電話での勧誘
「休眠口座を有効活用しませんか?」といった内容で、ダイレクトメールや電話を通じて勧誘を受けるケースです。
勧誘に応じ、口座を売却すると、その後詐欺グループに利用される可能性が高いです。 → 勧誘に応じた本人が最終的に逮捕される事例もあります。 |
闇金業者や犯罪組織への口座売却
急な借金返済に困った人が、闇金業者などに口座を売却するケースです。
闇金業者がその口座を不正取引のために使用します。 → 口座を売った本人が不正取引の共犯として逮捕される可能性があります。 |
口座売買により問われる可能性のある罪と刑罰
口座売買をした場合に問われる可能性のある罪としては、「犯罪収益移転防止法違反」と「詐欺罪」の2つが考えられます。以下では、それぞれの罪の内容と刑罰について説明します。
犯罪収益移転防止法違反
犯罪収益移転防止法とは、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)をはじめとした犯罪組織や反社会的勢力などに犯罪による収益の移転の防止を目的として制定された法律です。
振り込め詐欺などの特殊詐欺事案では、他人名義の口座を利用して犯罪収益の移転・管理などを行っていますので、口座売買が特殊詐欺の助長につながっているという側面があります。そこで、犯罪収益移転防止法により口座売買を禁止することで、犯罪組織による犯罪行為を抑止しようとしているのです。
犯罪収益移転防止法では、口座売買に関して、以下のような行為を処罰対象としています。
・相手が他人になりすまして銀行取引をすることを知りながら、預貯金通帳やキャッシュカードなどを提供する行為 |
・正当な理由がないのに、有償で預貯金通帳やキャッシュカードなどを提供する行為 |
・口座売買をするよう人を勧誘し、または広告その他これに類似する方法により人を誘引する行為 |
このような口座売買や口座売買の誘引をすると、犯罪収益移転防止法違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり)が科されます。また、口座売買を業として行っている場合には3年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)が科されます。
詐欺罪
口座売買をするために新規の口座開設を行った場合には、銀行に対する詐欺罪が成立する可能性があります。
銀行での口座開設時には、「給与の振込口座」、「生活費の決済口座」などの口座開設目的を伝えますが、口座売買に利用する目的を隠して嘘の目的を伝えて、預金通帳やキャッシュカードなどの交付を受けると詐欺罪に該当します。
他方、すでに開設済みの口座を口座売買に利用するのであれば、口座開設時に銀行員に嘘をついてはいないため、詐欺罪には問われません。
口座売買で詐欺罪が成立すると、10年以下の懲役が科されます。
口座売買でも逮捕の可能性あり!その理由とは?
口座売買は、犯罪収益移転防止法違反や詐欺罪に該当する犯罪行為ですので、売却した口座が犯罪組織により利用されていることが捜査機関に発覚すると、口座を売却した本人にも捜査が及びます。
口座売買をした本人は、犯罪組織の一員として犯罪に加担しているわけではありませんので、基本的には在宅事件として取り調べを受けるケースが多いです。しかし、以下のような事情がある場合には、口座売買でも逮捕されてしまう可能性がありますので注意が必要です。
・売却した口座が特殊詐欺に利用され、多数の被害者が発生し、被害額が高額 ・口座の購入者などと口裏合わせをする可能性が高い ・複数の口座売買に関与している ・口座売買の勧誘行為をしている ・前科、前歴がある ・警察からの出頭要請を拒否している ・口座売買を否認している |
口座売買で逮捕された実際の事例
以下では、口座売買で逮捕された実際の事例を紹介します。
SNS型投資詐欺に使われた口座情報提供の疑いで逮捕された事例
SNS型投資詐欺事件に関与した銀行口座の情報を提供したとして山口県警山口警察署は、千葉県に住む運送業の男(32歳)を逮捕しました。
容疑者は、自身の銀行口座が詐欺に使われることを認識しながら犯行グループに口座情報を提供し、犯行をほう助した疑いがもたれています。
警察の調べに対し容疑者は「口座情報を他人に提供したことに間違いないが、詐欺に使われるとは思わなかった」と容疑を一部否認しています。
(引用:KRY山口放送)
山口】SNS型投資詐欺に使われた口座情報提供の疑いで32歳の運送業の男を逮捕
ネットで知り合った人に口座を売った疑いで逮捕された事例
佐賀、滋賀、鹿児島の3県警の合同捜査本部は、犯罪収益移転防止法違反の疑いで、徳島県の工場作業員の男(23歳)を逮捕しました。
容疑者は、報酬を受け取る約束でSNS(交流サイト)のメッセージを通じて容疑者名義の口座の番号やパスワードなどの情報を提供した疑いがもたれており、「ネットで知り合った人に口座を売った」と供述しています。
佐賀県警によると、口座は犯罪収益の入金で使われており、別の不正アクセス事件の捜査で今回の容疑が浮上したとのことです。
(引用:南日本新聞)
他人のゲームアカウント使い架空取引…3県警合同サイバー捜査で浮上 預金口座提供容疑で工場作業員の男(23)を逮捕
口座売買をしてしまったときに生じるリスクや不利益
口座売買をしてしまうと以下のようなリスクや不利益が生じます。
逮捕や勾留による身柄拘束
口座売買は、在宅事件として捜査が進められるケースの多い犯罪ですが、事案によっては逮捕される可能性もあります。
口座売買で逮捕・勾留されると最長で23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることになります。身柄拘束中は、外部と自由に連絡をすることができず、不慣れな留置場での生活を強いられますので、本人に生じる肉体的・精神的な負担は非常に大きなものとなるでしょう。
預金口座が凍結され、新規の口座開設もできなくなる
口座売買で売却した口座が犯罪行為に使用された場合、金融機関によって口座が凍結されてしまいますので、当該口座を使うことができなくなります。犯罪に使用された口座が凍結されるのは当然ですが、それ以外の口座も凍結されてしまうリスクがありますので注意が必要です。
また、口座凍結をされたという情報は、信用情報機関を通じて各金融機関に共有されますので、今後別の金融機関でも新規の口座開設ができなくなってしまいます。
銀行口座は、給与や年金の受け取り、家賃や公共料金などの引き落としなどで必要になりますので、口座が持てなくなると今後の生活にも大きな影響を及ぼします。
職場を解雇または学校を退学になる可能性がある
口座売買で逮捕・勾留されると長期間の身柄拘束を受けることになり、無断欠勤を理由に職場を解雇されてしまう可能性があります。
また、口座売買という犯罪行為をしたことが職場や学校にばれてしまうと、解雇や退学などの不利益な処分が下される可能性もあります。
犯罪の共犯者として損害賠償請求をされる
口座売買により売却した口座が特殊詐欺などの犯罪行為に利用されていた場合、詐欺事件の共犯者として被害者から責任追及をされる可能性があります。
口座を売却しただけで積極的に犯罪には関与していないかもしれませんが、口座を売却したことで詐欺行為の実現を容易にしたという側面もありますので、まったく責任がないとは言い切れません。事案によっては、法的な賠償義務が生じるケースもありますので注意が必要です。
口座売買で逮捕された場合の流れ
口座売買で逮捕された場合、以下のような流れで進んでいきます。
逮捕・取り調べ
口座売買で逮捕されると、警察署内の留置施設で身柄拘束され、警察官による取り調べを受けます。取り調べで供述した内容は、供述調書にまとめられて後日の裁判の証拠になりますので、不利な調書がとられないようにしっかりと内容を確認することが大切です。
逮捕には、時間制限がありますので警察は、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。
検察官送致
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、被疑者の取り調べを行い、勾留請求をするかどうかを判断します。
被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があると判断した場合には、送致から24時間以内に裁判官に勾留請求をしなければなりません。
勾留・勾留延長
検察官からの勾留請求を受けた裁判官は、被疑者に対する勾留質問を行った上で、勾留を許可するかどうかの判断を行います。
勾留が許可されると、そこから原則として10日間の身柄拘束となります。また、その後勾留延長も認められるとさらに最長で10日間の身柄拘束となります。
そのため、逮捕のときから合計すると最長で23日間にも及ぶ身柄拘束を受ける可能性があります。
起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に、事件を起訴するか不起訴にするかの判断を行います。
不起訴処分になればその時点で釈放となり、前科が付くこともありませんが、起訴されるとほとんどの事件で有罪になり罰金または懲役の刑罰が下されます。
口座売買で逮捕を避けるための対処法
口座売買で逮捕されてしまうとさまざまなリスクが生じますので、まずは逮捕の回避に向けた対策が重要になります。口座売買で逮捕をさける方法には、以下のような方法が考えられます。
金融機関に連絡して口座を停止してもらう
口座売買をしてしまったときは、すぐに金融機関に連絡をして口座を停止してもらいましょう。
口座を売却した時点ですでに犯罪収益移転防止法違反となりますが、すぐに口座を停止できれば犯罪組織による新たな犯罪行為を食い止めることができます。被害の程度によって逮捕されるリスクは変わってきますので、被害を最小限に抑えることができれば、逮捕の必要性はないと判断されるでしょう。
警察に自首をする
口座売買が捜査機関に発覚する前であれば、自首も有効な手段となります。
自首をすることで逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがないことを示せるため、逮捕を回避できる可能性が高くなります。そもそも口座売買は、逮捕される可能性がそこまで高くはない犯罪ですので、自首をすることで逮捕を回避できる可能性を高めることが可能です。
また、自首をすることにより反省の態度を示せるため、最終的に不起訴処分になる可能性もあります。
弁護士に相談する
口座売買に関与してしまったときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
口座売買は、犯罪収益移転防止法違反や詐欺罪に問われる可能性のある犯罪行為ですので、口座売買が発覚すると警察による取り調べを受ける可能性があります。警察官からは、犯罪組織の一員であることを疑われて厳しい取り調べを受けることもあるため、不利な調書をとられないようにするには事前に弁護士に相談してアドバイスを受けることが必要です。
また、売却した口座を利用した犯罪行為により被害を受けた人がいる場合には、示談も検討すべきですが、多数の被害者がいる場合にはどの範囲にどの程度の被害弁償をするか判断が難しいこともあります。そのような場合でも経験豊富な弁護士であれば事案に応じた適切なアドバイスをすることが可能です。
逮捕や起訴を回避し、有利な処分を獲得するには、弁護士によるサポートが不可欠になりますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
口座売買で逮捕が不安な方はすぐにグラディアトル法律事務所に相談を
最近では、バイト感覚で口座売買に手を染めてしまう方も少なくありません。しかし、口座売買は、犯罪収益移転防止法違反や詐欺罪に該当する犯罪行為ですので、直接犯罪組織による犯罪行為に関与していなかったとしても、口座を売却したことだけで罪に問われてしまいます。そのため、口座売買で逮捕や起訴されるのが不安な方は、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談すべきです。
グラディアトル法律事務所では、刑事事件に関する豊富な経験と実績がありますので、口座売買の事案において有利な処分を獲得するための方法を熟知しています。事案に応じた効果的な弁護活動を行うことにより、逮捕や起訴を回避できる可能性を高めることが可能です。刑事事件は弁護士の能力によって結果が左右されることもありますので、刑事事件の弁護は、経験と実績豊富な当事務所の弁護士にお任せください。
当事務所では、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。また、初回法律相談を無料で対応していますので、まずは相談だけでも結構です。刑事事件は、スピード勝負と言われるように迅速な対応が重要になりますので、少しでも早く弁護活動に着手するためにもまずは当事務所までお問い合わせください。
まとめ
銀行口座を他人に売却すると犯罪収益移転防止法違反や詐欺罪に問われる可能性があります。特に、売却した口座が大規模な特殊詐欺事件に用いられている場合には口座を売却した本人も逮捕されてしまう可能性があります。
逮捕や起訴を回避するには被害が拡大する前に迅速に行動する必要がありますので、口座売買をしてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。