不同意わいせつは未遂でも処罰対象!未遂の具体例や対処法を解説

不同意わいせつは未遂でも処罰対象!未遂の具体例や対処法を解説
弁護士 若林翔
2024年11月27日更新

「不同意わいせつは未遂でも処罰される?」

「不同意わいせつの未遂とはどのような状態を指すの?」

「不同意わいせつの未遂を犯してしまったときはどうすればいい?」

不同意わいせつ罪は、未遂の処罰規定がありますので、わいせつ行為に至らなかったとしても不同意わいせつ未遂として処罰される可能性があります

未遂というと軽微な犯罪というイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、不同意わいせつ罪の既遂と未遂の法定刑は同じですので、未遂であってとしても、逮捕・起訴される可能性は十分になります。

そのため、未遂だからといって安心せずに、すぐに被害者との示談交渉などに着手する必要があります。

本記事では、

・不同意わいせつはどこからが未遂?

・不同意わいせつ未遂と不同意性交等未遂の区別

・不同意わいせつ未遂を犯した場合の対処法

などについてわかりやすく解説します。

被害者対応には、刑事事件に強い弁護士のサポートが欠かせませんので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

不同意わいせつ罪は未遂も処罰対象

刑法には、不同意わいせつ罪の未遂を処罰する旨の規定が設けられていますので、不同意わいせつ罪は未遂も処罰対象となります(刑法180条)

「未遂に終わったから処罰されないだろう」と考える方もいるかもしれませんが、そのような認識は誤っています。不同意わいせつ罪は、未遂であっても処罰される可能性がありますので、そのまま放置していると逮捕・起訴され、前科が付いてしまうリスクがあります。

そのため、わいせつ行為に至らなかったとしてもすぐに被害者対応をしていくことが大切です。

不同意わいせつはどこからが未遂?

そもそも不同意わいせつ罪はどこからが未遂になるのでしょうか。以下では、不同意わいせつ罪の未遂に関する基本事項をみていきましょう。

不同意わいせつの未遂とは?

未遂とは、犯罪の実行に着手したもののこれを成し遂げられなかった場合をいいます。

不同意わいせつ罪の実行の着手とは、同意しない意思の形成・表明・全うを困難な状態とする原因行為を開始したことをいい、具体的には、以下の8つの行為類型が挙げられます。

①暴行または脅迫
②心身の障害
③アルコールまたは薬物の影響
④睡眠その他の意識不明瞭
⑤同意しない意思を形成、表明または全うするいとまの不存在
⑥予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕
⑦虐待に起因する心理的反応
⑧経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮

このような類型に該当する行為に着手した時点で、不同意わいせつ罪の実行の着手があったと評価されますので、実際にわいせつな行為をしていなかったとしても不同意わいせつの未遂が成立します。

 

不同意わいせつ未遂の具体例

不同意わいせつ未遂罪が成立する可能性のある行為としては、以下のようなものが挙げられます。

・深夜路上で、女性の胸を触ろうと思い背後から女性に抱きつこうとしたところ、途中で気付かれてしまい逃げられてしまったケース

・マッチングアプリで知り合った女性とわいせつな行為をしようと思い、度数の強い酒を飲ませて泥酔させたものの、途中で意識が覚醒してわいせつな行為を遂げられなかったケース

・眠っている女性の衣服を脱がそうとボタンに手をかけたものの、途中で女性が目を覚ましてしまい目的を達成できなかったケース

また、不同意わいせつ未遂罪で起訴され有罪となった実際の裁判例には、以下のようなものがあります(盛岡地裁令和6年5月13日判決)。

【事案の概要】

被告人は、正当な理由がないのに、消防学校E号室A方に、無施錠の南側腰高窓から侵入し、その頃、同所において、就寝中の同人(当時19歳)にわいせつな行為をしようと考え、同人が眠っていることにより同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じて、同人が着用しているズボンの紐を引っ張るなどしたが、同人が目を覚まして同所から逃げ出したため、その目的を遂げなかった。

【裁判結果】

懲役2年執行猶予4年

不同意わいせつ未遂と不同意性交等未遂の区別

以下に、「不同意わいせつ未遂」と「不同意性交等未遂」の区別について簡潔にまとめます。

項目内容判定基準
不同意わいせつ未遂わいせつな行為を行う意図で、被害者の同意しない意思の形成・表明・全うを困難な状態とする原因行為を開始した場合加害者が「わいせつ行為」を目的としていたかどうか
加害者の供述や行動、状況から判断
不同意性交等未遂性交等を行う意図で、被害者の同意しない意思の形成・表明・全うを困難な状態とする原因行為を開始した場合加害者が「性交等」を目的としていたかどうか
加害者の供述、犯行経緯、言動などから推定
共通点どちらの罪も、行為が未遂に終わった段階で成立行為そのものではなく意図が区別のポイント
【具体例】
不同意わいせつ未遂: 泥酔した被害者に対して、服の上から体を触ろうとしたが、途中で行為をやめた場合。
不同意性交等未遂: 泥酔した被害者をラブホテルに連れ込もうとしたが、途中で行為に至らなかった場合(意図が性交等と推認されるため)。

この区別は、加害者の意図や行動、状況を総合的に考慮して判断されます。

不同意わいせつ未遂と不同意性交等未遂は、わいせつな行為および性交等に至っていない段階で成立しますので、どちらの犯罪が成立するのかが問題になるケースがあります。

どちらの罪も客観的な状況は共通ですので、基本的には加害者の意図により区別をします。

すなわち、わいせつな行為を行う意図で同意しない意思の形成・表明・全うを困難な状態とする原因行為を開始した場合が不同意わいせつ未遂、性交等を行う意図で同意しない意思の形成・表明・全うを困難な状態とする原因行為を開始した場合が不同意性交等未遂になります。

加害者の意図は、加害者の供述内容だけでなく、犯行に至った経緯、具体的な状況、加害者の言動などから判断することになります。

たとえば、泥酔した女性をラブホテルまで連れて行ったものの、途中で酔いがさめたためそれ以上の行為に至らなかったケースでは、性交等をする意図が推認されますので、不同意性交等未遂罪が成立することになります。

不同意わいせつ未遂罪の刑罰

不同意わいせつ未遂罪の刑罰

不同意わいせつ未遂罪が成立するとどのような刑罰が科されるのでしょうか。

法定刑は既遂と同じ

不同意わいせつ未遂罪の法定刑は、不同意わいせつ既遂罪と同じく6月以上10年以下の拘禁刑です。未遂だからといって軽い法定刑が定められているわけではない点に注意が必要です。

なお、拘禁刑とは、従来の懲役刑と禁錮刑を統合する形で創設された新しい刑罰で、2025年6月から施行予定です。拘禁刑では、懲役刑で義務付けられていた刑務作業が義務ではなくなり、受刑者の改善更生のための柔軟な処遇が可能になりました。

未遂による刑の減軽の可能性あり

不同意わいせつ罪の未遂と既遂の法定刑は同じですが、未遂の場合、刑の減軽を受けられる可能性があります。

刑の減軽が認められると拘禁刑の長期および短期が2分の1に減らされますので、「3月以上5年以下の拘禁刑」が不同意わいせつ未遂罪の処断刑となります。

未遂には、「中止未遂」と「障害未遂」の2種類があり、それぞれの区別は以下のとおりです。未遂という場合は、障害未遂を指すことが多いです。

種類内容効果
中止未遂犯罪の実行に着手したものの、自己の意思により犯罪を中止した場合刑の必要的減免
障害未遂犯罪の実行に着手したものの、自己の意思ではなく失敗に終わった場合刑の任意的減軽

中止未遂であれば必ず刑の減軽または免除が受けられるのに対して、障害未遂だと刑の減軽をするかどうかは裁判官の裁量に委ねられています。

不同意わいせつ未遂を犯した場合の対処法

不同意わいせつ未遂を犯した場合の対処法

不同意わいせつ未遂を犯してしまった場合には、以下のような対処法を検討する必要があります。

被害者との示談

不同意わいせつ未遂であっても被害者との示談は、逮捕や起訴を回避するための重要な要素となります。

捜査機関に犯行が発覚する前に被害者と示談ができれば、逮捕を回避することができます。また、すでに逮捕されてしまったとしても、早期に被害者との示談を成立させることができれば、早期の身柄解放の実現が可能です。さらに、被害者との示談は、検察官が事件を起訴するか不起訴にするかの重要な判断要素となりますので、示談が成立していれば不起訴処分獲得の可能性が飛躍的に高まります。

このように有利な処分を獲得するには、被害者との示談が重要になりますので、すぐに被害者対応を行うようにしましょう。

 

自首

自首とは、犯人および犯罪事実が発覚する前に、捜査機関に自らの意思で犯罪事実を申告することをいいます。自首をすることで逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示すことができますので、警察による逮捕を回避できる可能性が高くなります。

ただし、自首をしたからといって必ず逮捕を回避できるわけではなく、自首をしたことで犯罪事実が捜査機関に発覚し、逮捕されてしまうケースもありますので注意が必要です。

弁護士に相談

不同意わいせつ未遂を犯してしまったときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

被害者と示談をする場合でも加害者自身では被害者から拒絶されてしまうケースが多く、弁護士のサポートが不可欠です。弁護士であれば、連絡先がわからない場合でも捜査機関を通じて被害者の連絡先を入手することができ、被害者としても弁護士が窓口になった方が安心して話ができるはずです。

また、自首をすべきかどうかについても慎重な判断が必要になりますが、弁護士に相談すれば自首をすべきか、自首のタイミングなどのアドバイスを受けられますので、自首によるリスクを最小限に抑えることができます。実際に自首をする際にも弁護士が同行してくれますので、安心して対応することが可能です。

 

不同意わいせつ未遂の相談はグラディアトル法律事務所へ

不同意わいせつ未遂の相談はグラディアトル法律事務所へ

不同意わいせつ罪は、未遂であっても処罰されます。近年では、SNSやマッチングアプリなどを通じて異性と出会う機会が増えてきましたが、それに伴い性犯罪に関するトラブルが増加しています。

また、刑法改正により強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪から不同意わいせつ罪へと統合され、暴行・脅迫によらないわいせつ行為についても処罰対象になりました。これにより、相手から明確な同意を得ずにキスやボディタッチなどをすると不同意わいせつ罪で処罰されるリスクが高くなっています。

このような不同意わいせつ罪や同罪の未遂の疑いをかけられてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

グラディアトル法律事務所では、不同意わいせつ事件をはじめとしたさまざまな性犯罪に関する弁護に注力しています。事件後すぐにご依頼いただければ、早期に被害者との示談交渉に着手し、逮捕や起訴を回避できるよう全力でサポートいたします。ご家族が不同意わいせつ未遂罪で逮捕されてしまった、不同意わいせつ未遂罪で逮捕されるか不安だという方はまずは、当事務所の初回無料相談をご利用ください。

当事務所では、24時間365日相談を受け付けておりますので、土日・祝日、早朝・深夜いつでもお電話可能です。初回相談料も無料で対応していますのでお気軽にお問い合わせください。

まとめ

実際にわいせつ行為をしていなかったとしても、原因行為に着手していた場合は、不同意わいせつ未遂罪として処罰される可能性があります。未遂であっても逮捕・起訴される可能性は十分にありますので、そのような不利益を回避するには、早期に弁護士に相談することが大切です。

不同意わいせつ罪や同罪の未遂に該当する行為をしてしまった方は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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