「どのような場合に詐欺未遂罪が成立するの?」
「詐欺未遂罪の刑罰や量刑はどうなっている?」
「詐欺未遂罪で逮捕や起訴を回避するためにできることとは?」
詐欺未遂罪とは、被害者からお金をだまし取ろうとしたものの、何らかの事情でお金を得ることができなかった場合に成立する犯罪です。
被害者には財産的被害が生じていませんが、詐欺未遂罪も犯罪ですので、厳しく処罰される可能性があります。
もっとも、詐欺未遂罪は、詐欺既遂罪とは異なり、未遂による刑の減軽の可能性がありますので、適切な弁護活動により逮捕や起訴を回避できる可能性も十分にあります。そのため、詐欺未遂事件を起こしてしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
本記事では、
・詐欺未遂罪とは?
・詐欺未遂罪が成立する具体的なケース
・詐欺未遂罪で逮捕や起訴を回避するための対処法
などについてわかりやすく解説します。
詐欺事件では被害者との示談交渉が重要になりますが、加害者自身では示談交渉を行うのは困難ですので、まずは刑事事件に強い弁護士に相談して、示談交渉を進めてもらうようにしてください。
目次
詐欺未遂罪とは?
詐欺未遂罪とはどのような犯罪なのでしょうか。以下では、詐欺未遂罪の成立要件などの基本事項を説明します。
項目 | 詳細説明 | 補足 |
---|---|---|
詐欺未遂罪の基本概要 | 被害者からお金を騙し取ろうとしたが、何らかの理由で成功しなかった場合に成立する犯罪。 | 未遂でも刑法250条に基づき処罰対象となる。 |
未遂と既遂の法定刑の違い | 詐欺未遂罪の法定刑は詐欺既遂罪と同じであり、未遂であっても軽く扱われない。 | 詐欺未遂であっても逮捕・起訴される可能性がある。 |
成立要件1:人を騙す行為 | 被害者を財物や財産上の利益を交付させる危険性のある行為を行うこと。 | 誰が見ても嘘だと分かる場合は詐欺未遂罪の「人を騙す行為」には該当しない。 |
成立要件2:財産的損害が発生しない | 被害者に財産的損害が実際には生じなかった場合に詐欺未遂罪が成立。 | 損害が発生した場合は詐欺既遂罪となるため、損害の有無が両罪の区別のポイントとなる。 |
未遂の具体例 | ・被害者が嘘を見抜き未遂に終わった場合 ・第三者が介入し詐欺行為を阻止した場合 | 損害が発生しない限り詐欺未遂罪が適用される。 |
詐欺罪は未遂でも処罰される
詐欺未遂罪は、被害者からお金をだまし取ろうとしたものの、何らかの事情でお金を得ることができなかった場合に成立する犯罪です。
刑法では、原則として犯罪が既遂になった場合が処罰対象となりますが、未遂の処罰規定がある犯罪については、未遂であっても処罰対象になります。詐欺罪は、刑法250条で未遂罪の処罰規定が存在しますので、未遂であっても処罰されます。
未遂というと軽い犯罪だと考えがちですが、法定刑は詐欺既遂罪と変わりません。未遂であっても逮捕・起訴される可能性は十分にありますので、軽くとらえてはいけません。
詐欺未遂罪の成立要件
詐欺未遂罪が成立するには、以下のような要件を満たす必要があります。
【人を騙す行為】
詐欺未遂罪は、詐欺既遂罪と同様に「人を騙す行為」が必要です。
人を騙す行為とは、被害者を騙して財物や財産上の利益を交付させる危険性のある行為をいい、誰が見ても嘘だと見抜けるような行為は、詐欺未遂罪の実行行為である「人を騙す行為」にはあたりません。
このような人を騙す行為に着手した時点で詐欺未遂罪は成立します。
【財産上の損害が発生しなかった】
詐欺未遂罪は、被害者に財産的損害が生じなかったことも要件となります。
財産的損害が生じた場合には、詐欺既遂罪となりますので、財産上の損害の有無は、詐欺未遂罪と詐欺既遂罪を区別する重要な要素となります。
なお、財産上の損害が発生しなかった理由については特に問われません。そのため、被害者が犯人の嘘を見抜いた、家族が詐欺に気付いて止めてくれたなどさまざまな理由が考えられますが、いずれにしても財産的な損害が生じていなければ詐欺未遂罪となります。
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詐欺既遂罪と詐欺未遂罪との違い
詐欺既遂罪と詐欺未遂罪の違いは、被害者に財産的な損害が発生したかという点です。
人を騙す行為により騙された被害者が犯人にお金を渡したようなケースが詐欺既遂罪、人を騙す行為があったものの被害者が詐欺に気付いてお金を渡すに至らなかったようなケースが詐欺未遂罪になります。
詐欺未遂罪では、被害者に財産的損害が生じていませんので、詐欺既遂罪に比べて処分が軽くなる可能性があります。
詐欺未遂罪が成立する具体的なケース
詐欺未遂罪はどのような場合に成立するのでしょうか。以下では、詐欺未遂罪が成立する具体的なケースを説明します。
オレオレ詐欺で被害者が途中で詐欺に気付いたケース
犯人が被害者の息子になりすまして被害者に電話をかけ「仕事の関係で至急現金が必要になった」、「今から職場の後輩に取りに行かせるから準備しておいてほしい」などと告げる「オレオレ詐欺」の事案があります。
このような事案で被害者が騙されて犯人に現金を交付すると詐欺既遂罪となりますが、途中で被害者が騙されていることに気付いて警察に通報し、現金を渡す前に逮捕されれば、詐欺未遂罪となります。
【受け子として詐欺未遂の罪 マレーシア国籍の被告の初公判】 特殊詐欺グループの受け子として、宮崎市の80代の女性から現金をだまし取ろうとした罪に問われているマレーシア国籍の被告の初公判が開かれ、被告は起訴された内容をおおむね認めました。検察は、「被告はSNSで勧誘されて来日した」と指摘しました。マレーシア国籍の被告人(27)は、去年10月、宮崎市の80代の女性が狙われた特殊詐欺事件で、被害者の自宅近くを訪れ、受け子として現金をだまし取ろうとしたとして詐欺未遂の罪に問われています。(引用:NHK) 受け子として詐欺未遂の罪 マレーシア国籍の被告の初公判 |
宝くじの当選金に関する違約金を払わせようとしたが失敗したケース
犯人が被害者に対して「宝くじの当選金が受け取れる」と嘘をつき、その際に違約金を支払う必要があると誤信させて、現金を配送させる事案があります。
被害者が騙されていることに気付かずに現金を犯人に送ってしまうと詐欺既遂罪になりますが、途中で騙されたことに気付いて実害が発生しなかった場合には、詐欺未遂罪になります。
保険金詐欺で保険金が支払われる前に事件が発覚したケース
自動車が盗難されたとの虚偽の申請をして保険会社から保険金をだまし取ろうとする事案があります。
虚偽の申請であることに気付かずに保険会社が保険金の支払いに応じてしまうと詐欺既遂罪になりますが、盗難状況の調査中に不審に思った保険調査員が警察に通報して、保険金の支払い前に詐欺であることが発覚すれば詐欺未遂罪になります。
【ドラレコ信号機の色改ざん 保険金詐欺未遂容疑で男逮捕―大阪府警】 ドライブレコーダーに映る信号機の色を改ざんし、保険金をだまし取ろうとしたとして、大阪府警交通捜査課は、詐欺未遂容疑で、会社役員の容疑者(24)を逮捕しました。容疑者は、「映像改ざんは間違いないが、保険金を詐取しようとしたつもりはない」と容疑を否認しているという。逮捕容疑は、大阪市住之江区南港東の交差点で追突事故を起こした際のドラレコ映像を改ざんし、保険会社から保険金を詐取しようとした疑い。(引用:時事通信) ドラレコ信号機の色改ざん 保険金詐欺未遂容疑で男逮捕―大阪府警 |
詐欺未遂罪の刑罰と量刑
詐欺未遂罪を犯すとどのような刑罰が科されるのでしょうか。以下では、詐欺未遂罪の法定刑と量刑について説明します。
法定刑は詐欺既遂罪と同じ|10年以下の懲役
詐欺未遂罪の法定刑は、10年以下の懲役と規定されています。これは詐欺既遂罪の法定刑と同じですので、詐欺未遂罪と詐欺既遂罪とでは、法定刑には違いがありません。
このように法定刑としては懲役刑しか存在しませんので、詐欺未遂罪で起訴され有罪になると懲役刑は免れません。執行猶予が付かなければ刑務所に収監されるリスクもある犯罪です。
鷺の量刑に関して詳しく買いた記事もありますので、併せてご覧ください。
詐欺罪の量刑相場は懲役1~3年!量刑判断では被害金額が重要な要素
量刑は未遂による刑の減軽の可能性がある
詐欺未遂罪の法定刑は、詐欺既遂罪と変わりませんが、未遂罪には、刑法43条による未遂減免が適用される可能性があります。
未遂減免が適用され刑が減軽されると、罰則の上限と下限がそれぞれ2分の1になりますので、詐欺未遂罪であれば6月以上5年以下の懲役という処断刑になります。
なお、未遂には、「中止未遂」と「障害未遂」の2種類があります。
中止未遂とは、自分の意思で犯罪を思いとどまり結果が発生しなかった場合で、必ず刑の減免を受けることができます。
他方、障害未遂とは、中止未遂以外の未遂であり、外的な要因により犯行を遂げられなかった場合で、刑の減軽は裁判官の裁量に委ねられています。
詐欺未遂罪で逮捕・起訴を回避するための対処法
詐欺未遂罪で逮捕や起訴を回避するための対処法としては、以下のようなものが挙げられます。
被疑者との示談をする
詐欺未遂罪では、被害者に財産的な損害が生じていませんが、被害者との示談は重要な意味を持ちます。詐欺被害に遭った被害者は精神的苦痛を被りますし、警察による事情聴取などで時間的な拘束も受けるため、慰謝料という形で示談をすることが可能です。
被害者との示談が成立すれば、逃亡・証拠隠滅のおそれがないとして逮捕を回避できる可能性があり、検察官が処分を決定する際に被疑者に有利な事情として考慮してもらえますので不起訴処分になる可能性も高くなります。
そのため、財産的な損害が生じていなかったとしてもしっかりと被害者と向き合って示談をしていくことが大切です。
詐欺の示談金に関して詳しい記事がありますので、ご覧ください。
詐欺事件の示談金相場はいくら?払えないときの対処法も解説
警察に自首をする
捜査機関に詐欺事件が発覚する前であれば、自首も有効な手段となります。
自首をすることで逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せますので、それにより逮捕を回避できる可能性があります。また、自首により反省の態度を示すことができるため、起訴・不起訴の判断の際に有利な事情として考慮してもらうことも可能です。
弁護士に相談をする
詐欺未遂罪を犯してしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。
詐欺事件の被害者は、加害者を警戒していますので、加害者本人が交渉をするのは困難です。しかし、弁護士であればそのような心配はありませんので、被害者も安心して示談交渉に応じてくれるでしょう。
また、警察に自首する際にも弁護士が同行し、サポートすることで逮捕回避の確率を高めることができます。
このように有利な処分を獲得するには専門家である弁護士のサポートが不可欠となりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
詐欺未遂罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せください
詐欺未遂罪は、被害者に財産的な損害が生じていませんが、詐欺既遂罪と法定刑が変わらないなど厳しい処罰を受ける可能性のある犯罪です。特に、振り込め詐欺などの組織的な犯罪に関与したケースでは、未遂であっても実刑判決になるリスクがあります。
そのため、詐欺未遂罪を犯してしまったときは、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。グラディアトル法律事務所では、詐欺事件の弁護に関する豊富な経験と実績がありますので、事案に応じた最善の弁護活動を行うことができます。被害者との示談交渉も得意としていますので、被害者との示談交渉をお考えの方は、当事務所の弁護士にお任せください。
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まとめ
詐欺未遂罪は、相手を騙して財物を交付させようとしたものの、その目的を達することができなかった場合に成立する犯罪です。未遂であるものの法定刑は懲役刑のみで罰金刑はありませんので、悪質なケースだと有罪になれば実刑判決が下される可能性もあります。
詐欺未遂罪で逮捕や起訴を回避するには、刑事事件に強い弁護士のサポートが不可欠となりますので、まずは経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所にご相談ください。