「暴行罪で逮捕されてしまったけど、懲役刑になるのだろうか」
「初犯と前科持ちで罪の重さは変わるのか」
「どういう場合に懲役刑になるのだろうか」
「懲役刑を避けるための方法はあるのだろうか」
暴行をしてしまい、懲役刑になるのではないかと不安な方もいらっしゃるでしょう。
結論から言えば、暴行罪で懲役刑になる可能性は低いです。
令和5年版犯罪白書によると、暴行罪で検挙された事例のうち、懲役刑になる可能性は11%です。
もっとも、暴行罪だけでは懲役刑になることは低いですが、可能性はゼロではありません。暴行罪に様々な要因が重なれば、懲役刑になる可能性もあります。
当記事では、
- ・暴行罪における懲役刑の上限
- ・暴行罪で懲役刑になる可能性
- ・暴行罪で懲役刑の可能性が高まる5つの要因
- ・暴行罪で懲役刑となった3つの判例
- ・暴行罪で懲役刑を避けるために行うべきこと
上記などについて、詳しく解説します。
目次
暴行罪の懲役の上限は2年
暴行罪は、殴る・蹴るといった暴力行為やその他物理要因(音・光・熱など)によって害した場合に成立する犯罪です。
具体的には、以下のような行為が暴行罪に該当します。
- ・相手を殴る・蹴る
- ・羽交い絞めにする
- ・髪の毛を引っ張る
- ・相手の胸倉を掴む
- ・物を投げつける
- ・強い光を当て相手の視界を奪う
- ・苦痛が伴うレベルの爆音を聴かせる
etc…
暴行罪が成立すると、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金、または拘留若しくは科料」に処されることになります。
ただし、暴力行為により怪我を伴った場合は「傷害罪」に発展します。そうなると、暴行罪においては懲役の上限が2年でしたが、傷害罪の場合は懲役の上限が15年と重い罪を科せられることになりますので注意しましょう。
暴行罪で懲役刑になる可能性は低い
令和5年版犯罪白書によると、令和4年、暴行罪で懲役刑になったのは11%です。
不起訴処分が約68%と多く、次いで罰金刑の22%です。
このように、暴行罪で懲役刑に可能性は低いです。特に、初犯だったり、加害者側の反省の色が見られる場合は、罰金刑または不起訴処分になることがほどんどです。
ただし、暴行罪において検挙率が高い点は無視できません。
令和5年版犯罪白書によると、認知件数が27,849人であるのに対し検挙された件数が23,313人(=検挙率83.7%)と極めて高いことが分かります。
そのため、懲役刑は避けられたとしても、罰金や科料、前科が付く可能性は十分に考えられるということです。
前科を回避するためにも、理想としては不起訴処分になることが望ましいですが、その可能性を高めるには、後述する弁護士への依頼がカギを握ることになります。
暴行罪で懲役刑の可能性が高まる5つの要件
暴行罪で懲役刑の可能性が高まる要件は、以下の通りです。
- 1.悪質性が極めて高い
- 2.被害者が複数人
- 3.被害者が処罰を強く望んでいる
- 4.前科持ち
- 5.反省の様子が見られない
悪質性が極めて高い
前述の通り、暴行罪に該当する暴力行為だった場合でも、懲役刑になるケースは非常に低いです。
ただし、下記に該当する悪質性が認められた場合は、その限りではありません。
- ・暴力行為が過去複数回に及ぶ
- ・計画的な犯行
- ・逃亡・証拠隠滅を図った
- ・無差別な暴力行為
「暴行罪程度なら懲役刑はないだろう」とタカをくくっていると、懲役刑に科せられる可能性は非常に高くなります。まずは反省の色を見せること、そして警察には協力的であること、こちらが大前提となることは覚えておきましょう。
被害者が複数人
被害者が単体の場合より、2人、3人と複数人になると懲役刑の可能性が高まります。
例えば、特定の誰かの胸倉を掴んでしまい、その仲介に入った人のことも強く押したとしましょう。客観的に見れば、「胸倉を掴んでしまった人」と「強く押してしまった人」の2人が被害者となるため、悪質性が高いと判断されれば、重い罰則に発展するケースもあるということです。
被害者が処罰を強く望んでいる
不起訴処分を勝ち取るためには、被害者との示談交渉を成立させる必要がありますが、被害者が示談交渉に応じなかった場合は刑事事件に発展することになります。多くの場合は略式裁判で罰金刑を科せられることになりますが、被害者側が処罰を強く望んだ場合は懲役刑になることも。
そのため、いかに示談交渉を円滑に進めるかが重要になりますが、被害者側の心情としては「加害者に会いたくない(連絡取りたくない)」というのが本音で、個人での示談交渉は難航するのが実情です。
その場合、後述する弁護士に依頼することが、不起訴処分を勝ち取る近道になります。
前科持ち
暴行罪において、初犯と前科持ちで量刑に差が出ることが多く、当然前科持ちの方が懲役刑になる可能性が高いです。また、前科から再犯までの期間が短い場合も、刑罰が重くなる要因の一つですので注意しましょう。
反省の様子が見られない
暴行罪において、反省の様子が見られない場合、刑罰が重くなり懲役刑になる可能性があります。具体的には、
- ・「暴行」行為を否定する(冤罪の場合を除く)
- ・被害者に謝罪をしない
- ・(前科持ちの場合)再犯までの期間が短い
- ・横柄な態度をとる
このような態度・行動は、自分の首を締めるだけで、何の得にもなりません。
また、自覚がなくても客観的に「反省していない」と判断される可能性もありますので、まずは謝罪の言葉を述べ、誠意を持った行動を心がけるようにしましょう。
暴行罪で懲役刑になった判例
それでは、暴行罪で懲役刑になった判例についてご紹介します。
【判例1】暴行罪で懲役8ヵ月
電車内において、隣に座った被害者に対し暴行を行った。
加害者は前科持ち(10犯)で、前刑から4ヵ月後の出来事だった。
求刑10ヵ月に対し、懲役8ヵ月の判決が下された。
【判例2】暴行罪で懲役10ヵ月
公園において、当時11歳の被害者に対し、背後からその上半身を抱き締めた上、上衣を胸元までまくり上げるなどの暴行を行った。
加害者は前科持ち(10犯)で、前刑から10ヵ月後の出来事だった。
求刑1年に対し、懲役10ヵ月の判決が下された。
【判例3】暴行罪で懲役7ヵ月
電車ホームにおいて、被害者に対し、「この傘で刺すぞ。俺は今までに4人殺しているんだ。お前ら2人くらい殺すのはわけないんだ。俺は昨日ムショから出てきたばかりだ。うちの組の事務所に来るか」などと語気鋭く言って脅迫するとともに、持っていた傘の先端で被害者の左腹部を2回突く暴行を行った。
加害者は前科持ち(2犯)で、前刑から3ヵ月後の出来事だった。
示談するも不成立で、求刑10ヵ月に対し、懲役7ヵ月の判決が下された。
暴行罪で懲役刑を避けるためには示談が重要
暴行罪で懲役刑になることは低いとはいえ、被害者との示談が不成立だったり、悪質な犯行と認められた場合、刑罰が重くなる可能性は十分にあります。
とはいえ、被害者側としては加害者と示談するのは精神的苦痛を伴うため、直接的な交渉は難航することが予想されます。
被害者との示談交渉で不起訴処分を勝ち取ることが理想
なぜ被害者との示談交渉が重要なのかというと、仮に刑事事件で起訴された場合、どのような刑罰(罰金・懲役・科料など)になるにせよ「前科」がついてしまうからです。
前科の情報が外部に漏れることはありませんが、家族や知人・友人経由で広がってしまい近隣住民にバレたり、それが会社にまで情報が出回れば、社内で白い目で見られてしまうことは避けられません。だからこそ、被害者との示談交渉は何としても成立させる必要があるのです。
円滑な示談交渉を進めるには弁護士に依頼するのがおすすめ
前述の通り、被害者側の精神状態を考慮すると、直接示談交渉するのは困難です。そのため、円滑な示談を進めるには弁護士に依頼することをおすすめします。
暴行罪における示談交渉を弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。
【メリット1】示談交渉を有利に進めることができる
事件(逮捕)後、時間が経てば経つほど刑事裁判が開かれるリスクが発生します。そのため、いかに迅速に示談へ持ち込めるかがカギになりますが、弁護士が間を挟むことによって、被害者側も安心した気持ちで示談に応じてくれやすくなります。また、警察や検察官への働きかけも行うため、被害届の取り下げや不起訴処分の可能性も高まります。
【メリット2】刑事裁判に発展しても有利な判決が期待できる
刑事裁判に発展した場合、個人で進めるとなると高額な罰金や懲役刑など、不利な判決で決着する可能性が高まります。暴行罪の実績豊富な弁護士に一任することで、有罪だとしても少額の罰金刑に収まったり、懲役刑でも執行猶予が付いたりと、有利な判決が期待できるでしょう。
暴行罪で懲役刑を避けるならグラディアトル法律事務所へ
暴行罪における懲役刑の上限とその可能性について解説しました。
暴行罪で懲役刑になる可能性は低いものの、悪質性や犯罪歴が重なると懲役刑に発展することも十分に考えられます。そのため、懲役刑や高額な罰金刑などの重い刑罰を回避するには被害者側との示談交渉を円滑に進める必要がありますが、個人で解決を図るのは非常に困難です。
示談交渉や万一の刑事裁判において、弁護士に相談・依頼することが早期解決に繋がります。
暴行トラブルでお困りの際は、実績豊富なグラディアトル法律事務所までご相談ください。