お酒を飲みすぎてつい気が大きくなり、他人を殴ってしまった…。冷静さを取り戻した後に被害者に謝ったものの、被害者の被害感情が強くて被害届を取り下げてくれそうにない…。
こんな場合、震えて処罰を待つしかないのでしょうか。
今回は、弊所で受任した刑事事件の中から、暴行罪で逮捕され、被害届の取下げや示談に応じてもらえなかったものの不起訴処分となった事例についてご紹介させていただき、併せて解決までのポイントなどを解説しようと思います。
目次
暴行罪で逮捕されてしまった
ご依頼者は大阪府在住の40代の会社員の男性で、今回酒に酔って理性を失うまでは犯罪とは無縁な生活を送っていました。
ある夜、ご依頼者は酒に酔って記憶もあいまいになった状態で電車を利用しようとしたところ、駅の構内において、勤務中の駅員とトラブルになってしまいました。そして、激高したご依頼者はその駅員の腕をつかみ、足を蹴るという暴行を加えてしまいました。これにより駅員が怪我をすることはありませんでしたが、ご依頼者は警察に暴行罪で逮捕されてしまいました。
ご依頼者は翌日に釈放されましたが、なお起訴される可能性があると警察に伝えられていました。そこで、今回の事件の解決を求め、刑事事件を多数取り扱っている弊所にご相談いただきました。
弁護士による示談交渉・被害弁償
ご依頼者からの依頼を受け、弁護士はすぐに鉄道会社に連絡をとり、「被害弁償をし、被害者と鉄道会社に謝罪をするので、被害届を取り下げてほしい」というご依頼者の意思を伝えました。
しかし、鉄道会社への被害弁償の申し出は受け入れられたものの、被害者には金銭による解決は受け付けられないと示談を拒否されました。
また、被害者としてはご依頼者の謝罪を受けいれる気はなく、被害届は取り下げないという意思は固いとの回答を受けました。さらに、鉄道会社からも、駅員に対する暴行事件の危険性を社会に知らせるため、刑事処罰を求めないとの意思表示をすることはできない、宥恕文言(許しますという示談書の文言)はつけられないとの意向を示されてしまいました。
これらの被害者側の対応から、被害届の取下げや示談による事件の解決はほぼ望めなくなってしまったところ、一旦は警察や検察の出方をみるという対応をせざるを得なくなりました。
この期間、弁護士は、今後想定される手続きの流れや警察や検察から連絡があった場合にとるべき対応など、ご依頼者の質問に対し丁寧にお答えし、ご依頼者の不安を軽減するように努めました。
その後、ご依頼者のもとに担当検事から連絡がありました。
そこで、弁護士はご依頼者がこれまで誠意を尽くして謝罪をしてきたこと、示談の申し入れをして被害弁償をしていること、ご依頼者の人柄や事件後の行動などを記載した意見書を作成し、ご依頼者の反省文を添えて担当検事へと送りました。
不起訴処分の結果と解決のポイント
その結果、ご依頼者は晴れて不起訴処分となりました。
本件は、被害者が謝罪を受け入れてくれず、被害届の取下げをしてくれないという事例でした。
被害届が提出されたからといって必ずしも起訴されるというものでもありませんし、被害届が取り下げられたからといって必ず不起訴となるものでもありません。
しかし、暴行のような被害者のある犯罪については、警察や検察は被害者の意向を尊重しつつ、その判断をします。
もちろん、交渉により被害届の取下げがなされることがベストですが、被害者の態度によってはそれが期待できないような場合もあります。
そのような場合には、基本的に検察官の判断を待つしかありませんが、被疑者がどれだけ反省しており、被害者への弁償等に取り組んだかなどを示すことができれば、不起訴になる可能性を広げることができます。
その際、もちろん被疑者本人が反省の意を示すことは重要です。
しかし、検察官はあくまで法律的な観点から起訴・不起訴の判断をするところ、客観的な事実や法律的な見解を含んだ意見書を弁護士が提出することが重要となります。
また本件では、事件の日から不起訴の判断がなされるまで2ヶ月以上が費やされました。このように、警察や検察の事件処理に時間がかかると、その間、起訴されてしまうかもしれないという不安な日々を過ごすことになります。
本件のように、刑事事件に詳しい弁護士が、捜査機関の動きやご依頼者がとるべき対応について、具体的な状況に応じてアドバイスすることができれば、その不安をいくらか和らげることができると考えられます。
弊所弁護士は刑事事件の豊富な経験を活用しながら、ご依頼者の不安を解消し、ご依頼者の望みを実現するため、その具体的な状況に応じて最善の弁護活動を行っていきます。
刑事事件を起こしてしまい、警察や検察の捜査に対してどのような対応をしてよいのかわからず困っているという方は、ぜひ一度、弊所にご連絡ください。