診断書が傷害罪に与える決定的な3つの影響と着目すべきポイント

傷害罪で診断書が出るとどうなる?
弁護士 若林翔
2024年07月01日更新

・「傷害罪は診断書がないと成立しないって本当?」

・「そもそも、診断書って何?提出されたらどうなるの?」

・「加害者がするべきことは?」

こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

傷害事件では、診断書の内容が、事件の流れを大きく左右します。

事件が「暴行罪」になるか「傷害罪」になるかには、診断書が大きく変わってくる上刑罰の重さも診断書の内容が影響します。

本記事では、

・傷害罪の診断書の概要

・診断書が傷害罪に与える3つの影響

・加害者が注意するべきポイント

について解説します。

傷害罪の診断書について悩んでいる方は、是非ご一読ください。

傷害罪の診断書とは?

傷害罪の「診断書」とは、被害者の傷害(ケガや病気)の程度を証明するために、医師が作成する文書のことをいいます。

傷害事件では、「診断書」の有無が、「暴行罪になるか傷害罪になるか」に大きな影響を与えます。

診断書によって傷害罪か暴行罪かが決まる

例えば、外観から怪我をしていることが推定されても、診断書を入手していない場合は、「暴行罪」として扱われる可能性が高くなるでしょう。

被害者がいくら怪我をしたと主張しても、診断書がなければ、それを立証することができないからです。

一方で、もしも相手が怪我をしていなかったとしても、診断書があると、傷害罪として扱われる可能性が高まります。

傷害事件では、「診断書」が事件の進行に決定的な影響を与えるため、少しでも不審な点があれば、弁護士へ相談することが必要です。

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傷害罪の診断書の記載内容

傷害罪の診断書には、通常、次のような内容が記載されています。

・傷害の名称(傷病名)

・傷害の部位や程度

・初診日

・治療の内容

・治療に要する期間

・後遺障害の有無とその見込み

診断書の内容は、患者(被害者)からの要望に沿って記載されている訳ではなく、あくまでも医学的根拠に基づいて、医師の判断で記載されているものです。

そのため、傷害の程度を客観的に示す証拠としての信頼性が高く、刑事裁判でも有力な証拠として扱われます。

「診断書」が傷害罪に与える決定的な3つの影響

診断書が傷害罪に与える影響は、大きく次の3つに分けられます。

診断書が傷害罪に与える3つの影響

罪名(暴行罪か傷害罪か)

暴行事件が、「傷害罪」になるか「暴行罪」になるかは、診断書が取得されているかによって大きく変わってきます。

例えば、相手が怪我をしたと主張していても、診断書を取得していない場合、暴行罪として扱われる可能性が高くなるでしょう。

逆に、暴行罪として捜査が開始されていても、途中で診断書が提出されたことで、傷害罪に切り替えて捜査が行われるケースもあります。

傷害罪では診断書によって、暴行罪と区別される

刑の重さ(罰金額や懲役の長さ)

診断書の記載内容は、刑の重さにも影響します。

・懲役刑になるか罰金になるか

・懲役の期間はどの程度か

・罰金の金額はいくらか

・執行猶予がつくのか

など、量刑判断における様々な要素が、被害者の傷害の程度に左右されるからです。

例えば、「全治1週間」なのか「全治1ヶ月」なのかによっても、刑の重さは大きく変わってきます。

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「傷害罪の懲役刑になる確率は?量刑相場や判断要素も含めて弁護士が解説」

「傷害罪での罰金刑の相場とは?罰金刑が科されるケースや手続きを解説」

慰謝料や治療費の金額

被害者に支払う慰謝料や治療費の金額も、診断書を考慮して金額が決定されます。

怪我の程度が大きければ大きいほど、治療期間が長ければ長いほど、慰謝料や治療費の金額は高くなります。

また、診断書によって、被害者に後遺障害が残ると判断された場合には、莫大な金額の慰謝料が発生するケースもゼロではありません。

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傷害罪の診断書で注意するべきポイント

傷害事件で診断書が提出された場合、加害者側は、診断書の内容を十分にチェックすることが必要です。

特に注意したいポイントが「暴行行為とケガの因果関係」です。

傷害罪の診断書では因果関係に注意

診断書に記載された傷害が、本当に暴行が原因で生じたものなのかどうかは必ず確認しましょう。

例えば、以下のようなケースでは、診断書の信憑性に疑問が生じます。

・事件から不自然に日にちが空いているケース

・事件とは別の原因によるケガであることが疑われるケース

・取得した経緯が不自然なケース

・事件の態様と、診断書の内容が合致していないケース など

軽微な暴行なのに、重大な傷害の診断書が出ていれば、不自然だと考えられるでしょう。

また、事件が発生した日から、不自然な程に日にちが経過して取得されているようなケースでも、別の原因によってケガをした可能性が出てきます。

もしも被害者に、

・被害感情が過剰に大きい

・高額な慰謝料を請求しようとしている

などの特殊事情がある場合、不正な診断書を入手してくるケースもゼロではありません。

万が一、診断書が誤っていると、事件の態様以上に重い刑罰が科せられてしまいます。

診断書に記載された内容と、事件の因果関係が認められない場合、刑事裁判でしっかりと主張することが必要です。

傷害罪の成否を左右する重要な証拠である以上、診断書の内容はしっかりとチェックしておきたいところです。

疑問点があれば、必ず弁護士に相談して、適切に対応しましょう。

傷害罪の診断書について知りたい8のQ&A

傷害罪の診断書に関するよくある質問

Q.診断書が無いと傷害罪にはならない?

診断書がなくても、被害者の傷害の程度が立証できれば、傷害罪が成立する可能性はあります。ただし、実際には診断書がないと立証が難しいため、暴行罪にとどまることが多いでしょう。

Q.診断書があると、必ず傷害罪になる?

診断書があっても、必ずしも傷害罪になるわけではありません。

例えば、本文(3章)のとおり、診断書の内容と傷害事件に因果関係がないと主張して認められた場合、傷害罪が成立しないケースもあります。

Q.暴行罪で逮捕された後で、診断書が出るとどうなる?

暴行罪で逮捕された後に診断書が提出された場合、罪名が傷害罪に切り替わって、捜査が進められる可能性があります。

Q.診断書があると必ず逮捕される?

診断書があっても、必ずしも逮捕されるわけではありません。

警察は、事件の状況を総合的に考慮して、逮捕の理由や必要性を判断します。

状況によっては、逮捕されない場合もあるでしょう。

Q.傷害罪の診断書に提出期限はある?

傷害罪の診断書に、提出期限は定められていません。

暴行事件から一定の日にちが経っていても、診断書が提出される可能性があります。

ただし「傷害罪」自体の時効期間は「10年」と決められています。そのため実質的には「10年」が提出期限の目安だと考えることもできるでしょう。

※関連コラム「傷害罪の時効は何年?民事および刑事の時効をわかりやすく解説」

Q.嘘の診断書が作成される場合はある?

診断書が偽造されるケースもゼロではありません。

ただし、診断書の偽造は立派な犯罪行為です。

診断書の偽造が発覚すると「有印私文書偽造罪および偽造私文書等行使罪」などの罪に問われる可能性があります。

Q.嘘の診断書が提出されるとどうなる?

万が一、誤った診断書が提出されると、冤罪に問われる可能性が出てきます。

不審な点を感じたら、作成者(医師)に確認したり、弁護士に相談したりして、内容を精査することが必要です。

Q.傷害事件で診断書が出されたら誰に相談する?

傷害事件で診断書が提出されたら、弁護士に相談しましょう。

特に、

・被害者の傷害の程度が大きい

・被害感情が強い

・事件についての示談が成立していない

などのケースでは、診断書が提出されることで、傷害罪として逮捕・起訴される可能性が一気に高まります。

日常生活への影響を最小限に抑えるためにも、速やかに弁護士に相談することをオススメします。

傷害罪で悩んだら、刑事事件に強いグラディアトル法律事務所へ

最後に、今回の記事の要点を整理します。

・診断書は、医師が作成する文書

・怪我の程度や治療期間が記載されている

・診断書によって、「暴行罪」か「傷害罪」になるかが決まる

・刑罰の重さも診断書の内容に左右される

・診断書の内容と、事件に因果関係があるのかは確認が必要

暴行・傷害事件では、診断書の内容が、捜査や裁判の流れを大きく左右します。

自分では、暴行事件だと思っていても、診断書が提出されてしまうと、傷害罪として捜査が進められる可能性が高くなるでしょう。

暴行・傷害事件で診断書が提出されたら、速やかに弁護士に相談しましょう。

専門家の視点から、診断書の内容を確認し、速やかに弁護活動を開始することで、依頼者を守ることができます。

グラディアトル法律事務所では、これまでにも数多くの傷害事件の相談を受けて、警察や検察と交渉を行ったり、被害者との示談を成立させる等の弁護活動を行ってきました。

勇気をもってご相談いただいたことで、事態が好転したご相談者様は数え切れません。

暴行・傷害事件で悩んだら、刑事事件に強いグラディアトル法律事務所へご相談ください。

グラディアトル法律事務所では、24時間365日、全国対応可能な体制を整備しています。

LINEでの無料法律相談も受け付けているので、是非お気軽にご連絡ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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