「公園で下半身を露出したが、誰かに目撃されていたらどうしよう」
「通報された場合、逮捕されるのだろうか」
軽い気持ちで露出行為をしてしまったものの、逮捕されるのではないかと不安になっている方もいるかもしれません。
路上や公園などで下半身を露出するなどの行為は、公然わいせつ罪に該当しますので、逮捕される可能性も十分にあります。公然わいせつ罪で逮捕されてしまうと、性犯罪という性質上、社会的信用は大きく失墜してしまいます。そのため、公然わいせつ罪に該当する行為をしてしまった場合には、逮捕や起訴を回避するために適切な対策を講じることが重要になります。
本記事では、
- 公然わいせつ罪で逮捕される可能性のある6つの行為
- 公然わいせつ罪で逮捕されることで生じる3つのリスク
- 公然わいせつ罪での逮捕や起訴を回避するための4つのポイント
などについてわかりやすく解説していきます。
公然わいせつ罪の疑いのある行為をしてお悩みの方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
目次
公然わいせつ罪とは
公然わいせつ罪は、公然とわいせつな行為をした場合に成立する刑法上の犯罪です(刑法174条)。このような公然わいせつ罪が成立するためには、「公然性」と「わいせつな行為」という要件を満たす必要があります。
公然性
公然性とは、不特定または多数の人が認識できる状態をいいます。公然性は、実際に不特定または多数の人がわいせつな行為を認識したことまでは必要なく、認識できる状況があれば足ります。
たとえば、公園、路上、駅、商業施設内、電車内などでのわいせつ行為が典型的なケースになります。ほかにも、インターネット上の配信は、不特定または多数の人が認識できますので、公然性の要件を満たします。
わいせつな行為
わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させる行為で、かつ、一般人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいいます。これだけではよくわからないという方も多いともいますが、簡単にいえば、わいせつな行為かどうかは、社会常識に従って客観的に判断するということです。
たとえば、性器を露出する行為や性行為などは常識的に考えて、わいせつな行為と判断される可能性が高いでしょう。
公然わいせつ罪で逮捕される可能性のある6つの行為
どのような行為をすると公然わいせつ罪で逮捕されるのでしょうか。以下では、公然わいせつ罪で逮捕される可能性のある代表的な6つの行為を紹介します。
公園や路上で下半身を露出する行為
公然わいせつ罪でよくあるケースが、公園や路上で下半身を露出したり、全裸になるといった行為です。このような行為を目撃した人からの通報で駆け付けた警察官により現行犯逮捕されるケースが多いでしょう。また、その場から逃走して現行犯逮捕に至らなかったとしても、防犯カメラなどの映像から特定されて、逮捕される可能性もあります。
車内での性行為
性行為や性交類似行為(口淫、手淫など)は、それを行う場所によっては、公然わいせつ罪で逮捕される可能性もあります。
たとえば、車内、公園、漫画喫茶などでの性行為は、不特定または多数の人が認識できる状況での性行為といえますので、公然わいせつ罪に該当します。性行為を目撃した人や店員などから通報があれば、駆け付けた警察官により現行犯逮捕されるでしょう。
ハプニングバーでの性行為
ハプニングバーとは、さまざまな性的嗜好を持つ男女が集まり、初対面の客同士で突発的行為を楽しむ場所をいいます。
ハプニングバーは、突発的な性行為を楽しむ場所だから公然わいせつ罪には該当しないという認識の方も少なくありません。しかし、ハプニングバーも不特定または多数の人がわいせつ行為を認識できる場所ですので、そのような場所で、以下のような行為をすれば、公然わいせつ罪が成立します。
- 性行為
- 性交類似行為
- 全裸になる
- 下半身を露出する
なお、ハプニングバーでの公然わいせつ罪の詳しい内容は、以下の記事をご参照ください。
ピンサロでの性的なサービス
ピンサロとは、口淫や手淫などの性的サービスを提供する風俗店です。ピンサロは、個室ではなく、壁のないボックス席で区切られていることが多いため、周囲から見える状態で性的サービスを受けることになります。
そのため、ピンサロでの性滝サービスは、公然とわいせつな行為をしているといえますので、公然わいせつ罪が成立します。
なお、ピンサロでの公然わいせつ罪の詳しい内容は、以下の記事をご参照ください。
ストリップショーで陰部を見せる行為
ストリップショーで、出演者が陰部などを露出すれば、公然わいせつ罪に該当します。
ストリップショーを観覧していただけの客であれば、公然わいせつ罪で逮捕されることはありません。しかし、観覧中に下半身を露出してしまうと、客であっても逮捕される可能性がありますので注意が必要です。
ライブチャットで裸になる行為
インターネット上でのライブチャットで裸になったり、性器を露出する行為も公然わいせつ罪に該当します。なぜなら、インターネット上のライブチャットも不特定または多数の人が見ることができるものだからです。実際にライブチャットを見ていた人がいなかったとしても、配信した時点で公然わいせつ罪が成立します。
近年、このようなインターネットを利用した公然わいせつ罪が増えてきていますので、安易にわいせつな動画を配信しないように注意が必要です。
公然わいせつ罪で逮捕されることで生じる3つのリスク
公然わいせつ罪で逮捕されるとどのようなリスクが生じるのでしょうか。公然わいせつ罪での逮捕で生じる代表的なリスクとしては、以下の3つが挙げられます。
家族に知られるリスク
公然わいせつ罪で逮捕されてしまうと、家族にそのことが知られてしまいます。公然わいせつ罪は、性犯罪の一種ですのでそのような性癖があることが家族に知られてしまうと、家庭内で非常に肩身の狭い思いをすることになるでしょう。
最悪のケースでは、家族からの信頼を失ってしまい、離婚に至ることもあります。
職場に知られるリスク
逮捕や勾留により長期間の身柄拘束を受けることになると、その間は、会社を欠勤しなければなりません。逮捕されたことが捜査機関から職場に知らされることはありませんが、長期間欠勤をしていると会社の上司や同僚も不審に思うはずです。そうなると家族などに事情を尋ねられ、公然わいせつ罪で逮捕されたことが知られてしまうでしょう。
社員が性犯罪により逮捕されたという事実は、会社の社会的信用性を著しく害することになりますので、懲戒解雇の対象になる可能性もあります。
実名報道されるリスク
公然わいせつ罪で逮捕されると、報道機関の判断によっては実名報道されてしまうリスクがあります。
実名報道されると、性犯罪者であるというレッテルを貼られてしまい、社会的信用が大幅に失墜することになります。そうなると本人だけでなくその家族にも不利益が及び、正常な社会生活を送ることが困難になってしまいます。
また、実名報道された情報は、インターネット上にいつまでも残ってしまいますので、その不利益は非常に大きいといえます。
公然わいせつ罪の刑罰と量刑相場
公然わいせつ罪が成立するとどのような刑罰が科されるのでしょうか。以下では、公然わいせつ罪の刑罰と量刑相場について説明します。
公然わいせつ罪の法定刑
公然わいせつ罪に該当する行為をすると、以下のいずれかの刑罰が科される可能性があります。
- 6か月以下の懲役
- 30万円以下の懲役
- 拘留
- 科料
拘留とは、1日以上30日未満の期間、刑事施設で身柄拘束される刑罰です。また、科料とは、1000円以上1万円未満の金銭納付を命じられる刑罰です。
有罪となった場合は罰金刑が一般的
公然わいせつ罪で有罪になると、上記の法定刑の中からいずれかの刑罰が選択されることになりますが、一般的には罰金刑が選択されるケースが多いです。罰金刑が科される場合の相場としては、10~20万円程度になります。
ただし、これはあくまでも一般的なケースを想定した場合の話です。実際には、前科の有無、余罪の有無、行為の悪質性などを考慮して量刑が判断されますので、相場よりも高額な罰金が科されたり、懲役刑が選択されるケースもあります。
公然わいせつ罪で逮捕された場合の流れ
公然わいせつ罪で逮捕された後は、どのような流れで手続きが進んでいくのでしょうか。以下では、公然わいせつ罪で逮捕された場合の一般的な流れについて説明します。
警察での取り調べ
公然わいせつ罪で逮捕されると、警察署の留置施設で身柄が拘束されます。
逮捕による身柄拘束には、時間制限が設けられています。そのため、警察は、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を解放するか、検察に送致するかの判断を行わなければなりません。
なお、逮捕による身柄拘束中は、被疑者の家族や友人による面会は一切認められず、面会できるのは弁護士に限られます。身柄拘束中は、警察官による取り調べが行われ、事件の経緯や動機などを聞き取った内容が供述証書という書面にまとめられます。供述調書は、その後の処分に影響する可能性がありますので、早めに弁護士と面会して、取り調べに関するアドバイスを受けるべきでしょう。
検察での取り調べ
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、必要な取り調べを行い、24時間以内に被疑者を釈放するか、引き続き身柄拘束するかの判断を行わなければなりません。逮捕に引き続いて身柄拘束をすることを「勾留」といいます。
公然わいせつ罪により現行犯逮捕された場合、目撃者がいるなど証拠が明白であるケースが多いです。そのため、被疑者本人が犯行を認めて、反省しているようなケースでは、勾留請求されずに釈放され、在宅事件として捜査が進められることもあります。
勾留
検察官が被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があると考えた場合には、裁判所に勾留請求を行います。
裁判所が勾留を認めた場合、被疑者は、10日間の身柄拘束を受けることになります。勾留には、延長制度がありますので、勾留延長が認められれば、さらに10日間の身柄拘束が続きます。そのため、逮捕から数えると最長で23日間もの身柄拘束を受ける可能性があります。
起訴または不起訴
検察官は、勾留期間が満了するまでに、起訴または不起訴の決定を行います。検察官により起訴されると、刑事裁判が開かれ、そこで事件の審理が行われます。日本の刑事司法では、検察官により起訴されてしまうと、99%以上の割合で有罪となります。そのため、前科を回避するためには、不起訴処分の獲得に向けた弁護活動が重要になります。
他方、不起訴になれば、被疑者の身柄は解放され、前科が付くこともありません。
刑事裁判
検察官により起訴されると、公開の法廷で刑事裁判(公判手続)が行われます。
もっとも、公然わいせつ罪の量刑は、罰金刑が一般的ですので、公判手続ではなく略式手続が選択されるケースが多いです。略式手続とは、100万円以下の罰金または科料となる事件について、公開の法廷での裁判によらず書面審理のみで罰金・科料を言い渡す特別な裁判です。略式手続は、事件を迅速に終結させることができるというメリットがありますが、有罪・無罪を争うことはできません。そのため、略式手続に同意するかどうかは、慎重に判断するようにしましょう。
なお、「令和5年版犯罪白書」によると、令和4年に公然わいせつ罪で起訴された総数は、789件で、そのうち略式命令請求となった事件は616件でした。(P40参照)
公然わいせつ罪で略式命令となった事件は、全体の約8割になりますので、ほとんどの事件が略式命令で処理されていることがわかります。
公然わいせつ罪での逮捕や起訴を回避するための4つのポイント
公然わいせつ罪で逮捕・起訴されてしまうと、性犯罪者というレッテルを貼られてしまい、社会生活上さまざまな不利益が生じるおそれがあります。そのため、公然わいせつ罪に該当する行為をしてしまった場合には、逮捕や起訴の回避に向けた活動が重要になります。
以下では、公然わいせつ罪での逮捕や起訴を回避するための4つのポイントを説明します。
捜査機関への自首
公然わいせつ罪に該当する行為をしてしまったとしても、捜査機関に自首することで、逮捕されるリスクを下げることができます。
自首とは、犯罪事実が発覚する前に、捜査機関に対し、自ら犯罪事実の申告を行うことをいいます。警察が被疑者を逮捕するためには、「逃亡のおそれ」または「証拠隠滅のおそれ」が必要です。自首するような人が逃亡や証拠隠滅をするとは考えにくいため、自首することで逮捕の要件がないことを示すことができます。
また、自首は、法律上、刑の減軽事由とされています。そのため、仮に起訴されてしまったとしても、裁判官の判断により刑が減軽される可能性があります。
目撃者への被害弁償
公然わいせつ罪は、健全な性風俗という社会的法益が保護法益になりますので、厳密にいえば被害者は存在しない犯罪です。
しかし、露出行為を目撃した人は、見たくもないものを見せられたことで精神的被害を被っています。そのような目撃者がいる場合には、実質的には被害者と同様に扱われますので、目撃者への被害弁償を行うことで、逮捕・起訴を回避できる可能性が高くなります。
たとえば、路上で女性に下半身を見せつけた場合、以下のような流れで目撃者への被害弁償を行います。
- 目撃者が警察に通報
- 警察から任意出頭を求められ、事情聴取を受ける
- 弁護士に依頼する
- 弁護士が捜査機関から目撃者の連絡先を入手する
- 目撃者に連絡をして被害弁償を行う
なお、不特定または多数の人の前で露出行為を行った場合だと、目撃者を特定できず、被害弁償ができないケースもあります。このようなケースでは、贖罪寄付を行うことで反省の意思を示すことができ、不起訴になる可能性を高めることができます。
専門の医療機関への通院
公然わいせつ罪のような性犯罪を繰り返している人は、性依存症である可能性があります。性依存症は、治療の必要な病気ですので、再犯防止のために早期に専門の医療機関に通院する必要があります。
専門の医療機関への通院は、再犯防止に向けた意欲や再犯防止の可能性があることを捜査機関に示すことができますので、逮捕・起訴の可能性を低くすることができます。
弁護士に相談
公然わいせつ罪に該当する行為をしてしまった場合には、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
自首すべきかどうかアドバイスしてもらえる
公園や路上で下半身を露出すれば、目撃者の有無にかかわらず公然わいせつ罪が成立します。しかし、目撃者がいないような状況だと事件として立件される可能性が低く、自首をすることで逆効果になる可能性もあります。
弁護士でれば、具体的な犯行状況を聞き取ったうえで、自首をすべき事案であるかどうかを適切に判断することができます。また、自首すべき事案であった場合には、弁護士が本人の自首に同行してくれますので、不安な気持ちも多少は和らぐでしょう。
目撃者への被害弁償の対応を任せることができる
加害者本人が目撃者と被害弁償の交渉をすることも不可能ではありません。しかし、公然わいせつ罪という犯罪の性質上、性犯罪の加害者と被害者が直接接触するのは好ましくなく、被害者から接触を拒まれる可能性もあります。
このような場合には、弁護士に依頼して被害弁償の手続きを進めてもらうとよいでしょう。被害者としても弁護士が窓口になった方が安心して対応できますので、被害者が被害弁償に応じてくれる可能性が高くなります。
まとめ
公然わいせつ罪に該当する行為をしてしまうと、逮捕されてしまう可能性があります。公然わいせつ罪は、性犯罪の一種ですので、逮捕されたことが家族や職場にバレてしまうと、さまざまな不利益が生じてしまいます。
このような不利益を回避するためには、早期に弁護士に相談して、具体的な対策を検討することが重要になります。早期に適切な対策を講じることで、逮捕や起訴を回避できる可能性もあるでしょう。
公然わいせつ罪に該当する行為をしてしまい、逮捕されるのではないかと不安になっている方は、すぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。