シンナーの吸引・吸引目的での所持は犯罪|逮捕されたときの対処法

シンナーの吸引・吸引目的での所持は犯罪|逮捕されたときの対処法
弁護士 若林翔
2025年04月17日更新

「シンナーを吸引するとどのような罪に問われる?」

「シンナーで逮捕された実際の事例が知りたい」

「家族や恋人がシンナーで逮捕されたらどのような行動をとるべき?」

シンナーとは、塗料などを薄めるために利用される有機溶剤ですが、シンナーなどの有機溶剤を乱用すると中枢神経が抑制されるため、ぼんやりとし酒に酔ったような感じになります。シンナーの乱用を続けると幻覚・妄想などの精神障害があらわれるほか、心臓・肝臓・腎臓・呼吸器系、生殖器官などに障害を引き起こすこともあります。

このように人体に有害な作用を及ぼすシンナーについては、「毒物及び劇物取締法」という法律で規制されており、シンナーの吸入や吸入目的での所持は、毒物及び劇物取締法違反として逮捕される可能性があります。

本記事では、

・シンナーで逮捕されたときに問われ得る罪
・シンナーで逮捕された実際の事例
・家族がシンナーで逮捕されたときにとるべき4つの行動

などについてわかりやすく解説します。

シンナーで逮捕された本人は自由に外部と連絡をとることができませんので、家族や友人、恋人などが薬物犯罪に強い弁護士にできるだけ早く相談・依頼して、サポートしてもらうようにしてください。

目次

シンナーで逮捕されるとどのような罪に問われる?

シンナーは、塗料などを薄めるために利用される有機溶剤ですので、適切に使用すれば罪に問われることはありません。しかし、シンナーの乱用は心身に有害な作用を及ぼすことから、「毒物及び劇物取締法」により、以下のような行為が禁止されています。

行為法定刑
シンナーの吸入、吸入目的での所持1年以下の懲役または50万円以下の罰金(併科あり)
吸入目的を知りながらシンナーを販売・授与2年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり)
シンナーの無登録販売等3年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科あり)

シンナーの吸入、吸入目的での所持|1年以下の懲役または50万円以下の罰金(併科あり)

シンナーを吸入したり、吸入目的でシンナーを所持すると毒物及び劇物取締法違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(併科あり)。

シンナーは、覚醒剤や大麻のように所持自体が禁止されているものではなく、「吸入目的」での所持が禁止されている点に注意が必要です。

吸入目的を知りながらシンナーを販売・授与|2年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり)

相手がシンナーを吸入する目的を有していることを知りながらシンナーを販売・授与すると、毒物及び劇物取締法違反となり、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(併科あり)。

無登録販売等|3年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科あり)

シンナーなどの毒物・劇物を販売、授与するためには、事前に店舗ごとに都道府県知事の登録を受けなければなりません。このような登録を受けることなくシンナーを販売すると、無登録販売に該当しますので、毒物及び劇物取締法違反となり、3年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます(併科あり)。

シンナーで逮捕された事例

シンナーで逮捕された事例

以下では、シンナーで逮捕された実際の事例を紹介します。

シンナーを吸引目的で所持した疑いで無職の62歳男性を逮捕

吸引目的でシンナーを所持していたとして、静岡県警は、毒物及び劇物取締法違反(吸引目的所持)の疑いで、浜松市東区の無職の男(62歳)を現行犯逮捕した。

逮捕容疑は、浜松市南区内でトルエンを含むシンナーようの液体を吸引する目的で所持した疑い。

(引用:日刊スポーツ)
シンナーを吸引目的で所持か 62歳無職男を現行犯逮捕 浜松市の深夜、海辺近くで

シンナーを吸引および吸引目的で所持した疑いで38歳女性を逮捕

兵庫県警尼崎東署は、シンナーを吸引するなどしたとして、毒劇物法違反の疑いで、尼崎市の無職の女(38歳)を逮捕した。

同署によると、「夫婦げんか」の110番を受けて署員が女の自宅に駆け付けたところ、夫が「妻がシンナーを吸っていた」と説明。夫から液体の入った缶とペットボトルの提出を受けて鑑定したところ、シンナーと確認された。

逮捕容疑、自宅でシンナーを吸引したほか、吸引目的でシンナー約192ミリリットルを所持した疑い。女は調べに「内容は間違いないが、詳しい日付までは覚えていない」と供述しているという。

(引用:神戸新聞)
「妻がシンナー吸っていた」夫が証言、夫婦げんかで駆けつけた警察官に 38歳女を容疑で逮捕 尼崎東署

親族からの通報により吸入目的所持が発覚し逮捕

浜松市西区の自宅でシンナーのような液体を所持していた疑いで、配達員の男と、共に所持していた疑いで自称・代行運転手の女が現行犯逮捕されました。

毒物および劇物取締法違反の疑いで現行犯逮捕されたのは、浜松市西区の配達員の男(48歳)と、磐田市の自称・代行運転手の女(51歳)です。

警察によりますと、2人は知人同士で、男の自宅でシンナーのような液体を使用する目的で所持していた疑いです。

男と同居する親族が帰宅した際、「家に帰ったらシンナーの臭いがするので来てください」と110番通報したことで事件が発覚しました。

(引用:SBS)
「家に帰ったらシンナーの臭いがする」110番通報で発覚 吸入目的所持の疑いで2人を現行犯逮捕=静岡・浜松市西区

毒物及び劇物取締法違反による逮捕率・勾留率

毒物及び劇物取締法違反による逮捕率・勾留率

シンナーに関する犯罪で逮捕および勾留される確率はどの程度なのでしょうか。以下では、統計資料に基づいて、毒物及び劇物取締法違反による逮捕率と勾留率について説明します。

逮捕率は約31%

2023年検察統計によると毒物及び劇物取締法で検挙された事件は167件で、そのうち逮捕された事件は51件でした。そのため、毒物及び劇物取締法違反による逮捕率は、約31%ということになります。

刑法犯全体の逮捕率は約39%ですので、毒物及び劇物取締法違反による逮捕率は、刑法犯全体の逮捕率に比べて若干低い水準になっています。

勾留率は約96%

逮捕後、引き続き身柄拘束の必要性が認められる場合には、勾留されることになります。

2023年検察統計(※23-00-41参照)によると毒物及び劇物取締法違反で逮捕された51件のうち、検察官により勾留請求された事件は49件あり、勾留が許可されたのは47件でした。

すなわち、毒物及び劇物取締法違反による勾留率(勾留請求に占める勾留許可の割合)は、約96%ということになります。

このことから、シンナーに関する犯罪で逮捕されると、ほとんどのケースで勾留されてしまうということがわかります。

シンナーで逮捕された場合の流れ

シンナーで逮捕された場合の流れ

シンナーの吸引または吸引目的の所持で逮捕されてしまった場合、以下のような流れで刑事事件の手続きが進んでいきます。

警察での取り調べ

シンナーに関する犯罪で逮捕されると、警察署に連行されて、警察官による取り調べを受けます。取り調べでは、主にシンナーの入手経緯、使用歴、使用頻度などが聞かれ、被疑者の供述内容は、供述調書にまとめられて後日の裁判の証拠となります。

なお、逮捕には時間制限がありますので、警察は、被疑者を逮捕したときから48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。

検察官への送致

検察官は、被疑者に対する取り調べを行い、引き続き身柄拘束をすべきかどうかを検討します。検察官は、被疑者の身柄拘束が必要であると判断したときは、送致から24時間以内に裁判官に勾留請求を行わなければなりません。

なお、2023年検察統計によると毒物及び劇物取締法違反による勾留請求率は、約96%ですので、逮捕された事件のほとんどが勾留請求されています。

勾留・勾留延長

裁判官は、被疑者に対する勾留質問を行った上で、勾留を許可するか却下するかの判断を行います。

勾留が許可されると原則として10日間の身柄拘束になり、勾留請求も許可されるとさらに最長で10日間の身柄拘束が行われます。

逮捕から合計すると最長で23日間にも及ぶ身柄拘束となる可能性があります。

起訴または不起訴の決定

検察官は、勾留期間が満了するまでの間に起訴または不起訴の決定を行います。

起訴された事件の99%以上が有罪になりますので、起訴されてしまったときは執行猶予付き判決を獲得することが重要なポイントになります。

家族がシンナーで逮捕されたときにとるべき4つの行動

家族がシンナーで逮捕されたときにとるべき4つの行動

家族、友人、恋人がシンナーで逮捕された場合、すぐに以下のような行動をとるようにしましょう。

薬物犯罪に詳しい弁護士に相談・依頼する

家族、友人、恋人がシンナーで逮捕されてしまったときは、すぐに薬物犯罪に詳しい弁護士に相談して、逮捕された本人の弁護を依頼するようにしましょう。

シンナーのような薬物犯罪で有利な処分を獲得するためには、薬物犯罪に詳しい弁護士によるサポートが不可欠となります。逮捕された本人は、知り合いの弁護士がいない限りは、自分で自由に弁護士を選んで依頼することができないため、薬物犯罪に詳しい弁護士に依頼するには、家族などの協力が必要になります。

刑事事件はスピード勝負と言われるように、迅速な対応が今後の処分内容を左右する可能性がありますので、逮捕後は一刻も早く弁護士に相談・依頼するようにしてください。

警察署での面会や差し入れをする

逮捕後勾留前は、家族や友人、恋人であっても本人と面会することはできません。

しかし、逮捕から勾留に切り替われば、接見禁止が付いていない限り、家族、友人、恋人による面会が可能になります。

逮捕された本人は、不慣れな環境で不安な日々を送っていますので、少しでも安心させてあげるためにも、勾留後速やかに面会をしてあげるとよいでしょう。なお、面会時には、現金や衣類、書籍などの差し入れもできますので、事前に警察署に差し入れ可能なものを確認した上で、差し入れしてあげましょう。

保釈請求の際の身元引受人になる

毒物及び劇物取締法違反により起訴された後も被告人勾留に切り替わり、身柄拘束が継続します。

しかし、起訴後であれば保釈請求により身柄解放を実現することが可能です。保釈請求をする際には、身元引受人が必要になりますので、弁護士から身元引受人を頼まれたときは、快く応じてあげてください。また、保釈が許可されても保釈金を納付しなければ、釈放は認められませんので、可能であれば保釈金の準備をしてあげるとスムーズに保釈を進めることができます。

なお、保釈金は、本人が逃亡することなく裁判所に出廷して判決を迎えれば、全額戻ってきますのでご安心ください。

薬物依存を脱するためのサポートをする

シンナーを吸い込むことで強い快感を感じ、日常生活が楽しく感じますが、吸い続けるうちに幻覚や幻聴などの症状があらわれ、回復不能な脳障害や筋肉・骨の衰退を引き起こします。このような副作用から逃れるためにさらにシンナーを吸うという悪循環に陥る方もいるようです。

シンナーのような薬物依存の状態にある人は、自分の意思だけでは薬物との関係を断ち切ることができませんので、身近な家族、友人、恋人などが本人をサポートしてあげることが大切です。

シンナーで逮捕されたときの弁護活動

シンナーで逮捕されたときの弁護活動

シンナー犯罪の弁護の依頼を受けた弁護士は、以下のような弁護活動を行うことで逮捕された本人のサポートを行うことができます。

早期に面会をして取り調べに対するアドバイスをする

シンナー犯罪で逮捕されると警察による厳しい取り調べが行われますので、十分な知識がない方だとシンナーの使用歴や使用頻度など事実とは異なる供述をしてしまう可能性があります。

このような不利な供述をすると後日の裁判で不利な判決が出るリスクがありますので、それを防ぐには早期に弁護士と面会することが重要です。弁護士であれば逮捕中であっても被疑者本人と面会できますので、取り調べに対するアドバイスや今後の流れ、処分の見通しなどを伝えることができます。

起訴後は保釈請求による身柄解放を目指す

シンナー犯罪で起訴された後は、保釈請求による身柄解放を実現することが可能です。

刑事事件に強い弁護士であれば、早期の保釈に向けて逮捕・勾留中から準備を行ってくれますので、迅速な身柄解放を実現できる可能性が高くなります。

執行猶予や減刑の獲得に向けたサポートをする

シンナー犯罪で起訴されると99%以上の事件が有罪になりますので、執行猶予付き判決を獲得できるかどうかが重要なポイントになります。

薬物犯罪に詳しい弁護士であれば、執行猶予や減刑を獲得するポイントを熟知していますので、効果的な弁護活動により有利な判決を獲得できる可能性を高めることができます。少しでも有利な処分を希望するなら、早期に薬物犯罪に詳しい弁護士に依頼するようにしましょう。

関連コラム:麻薬事件を弁護士に依頼する4つのメリットと弁護士選びのポイント

シンナーで逮捕されたときはグラディアトル法律事務所に相談を

シンナーで逮捕されたときはグラディアトル法律事務所に相談を

シンナーで家族や恋人が逮捕されてしまった場合、弁護士への依頼を検討する方が多いと思いますが、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。シンナーのような薬物犯罪の弁護を頼むなら、薬物犯罪に詳しい弁護士に依頼するのが重要です。

グラディアトル法律事務所では、さまざまな薬物犯罪を取り扱った経験がありますので、シンナー犯罪についても豊富な経験と実績があります。早期釈放や執行猶予、減刑を獲得するポイントを熟知していますので、家族や恋人がシンナー犯罪で逮捕されてしまったときは、当事務所の弁護士にお任せください。

また、当事務所では刑事事件に関してスピード対応を心がけていますので、最短で即日対応が可能です。身柄拘束されている場合には、すぐに警察署に駆けつけて面会を実施しますので、一刻も早く当事務所までご相談ください。

さらに、相談は24時間365日受け付けておりますので、早朝・夜間や土日祝日であっても関係なく対応可能です。初回法律相談を無料で対応していますので、シンナー犯罪に関する相談をご希望の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

まとめ

大切な家族や恋人がシンナー犯罪で逮捕されたとの連絡がくると、突然のことでどのように対応すればよいのかわからなくなるかたも多いです。このような状況で家族や恋人ができることは、すぐに弁護士に相談することです。薬物犯罪に詳しい弁護士であれば、今後の手続きの流れや見通しなどをわかりやすく説明してくれますので、家族や恋人がやるべきことが明確になるはずです。

家族や恋人がシンナー犯罪で逮捕されてしまったときは、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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