「痴漢をすると迷惑防止条例違反になる?」
「迷惑防止条例違反になる痴漢行為にはどのようなものがあるの?」
「迷惑防止条例違反により逮捕・起訴を回避するにはどうしたらよい?」
痴漢をすると迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪で処罰される可能性があります。
迷惑防止条例違反と不同意わいせつ罪のどちらが適用されるかは、痴漢行為の態様などによって異なりますが、一般的には比較的軽微な痴漢行為が迷惑防止条例違反として扱われています。
迷惑防止条例違反の痴漢であっても逮捕・起訴される可能性は十分にありますので、被害者との示談交渉などの対応を進めていくことが大切です。
本記事では、
・迷惑防止条例違反となる痴漢行為の例
・迷惑防止条例違反となる痴漢をしたときの刑罰
・迷惑防止条例違反による逮捕、起訴を回避する方法
などについてわかりやすく解説します。
痴漢で不起訴処分を獲得するには、早期に示談をまとめることが重要になりますので、一刻も早く弁護士に相談するようにしましょう。
目次
迷惑防止条例違反の痴漢でも逮捕の可能性あり!
迷惑防止条例違反の痴漢でも逮捕される可能性があります。以下では、迷惑防止条例違反の痴漢で逮捕される2つのパターンについて説明します。
現行犯逮捕となるケース
現行犯逮捕とは、現に罪を行い、または現に罪を行い終わった人を逮捕状なしで逮捕することをいいます。犯人を逮捕するには、裁判所が発付する逮捕状が必要になりますが、現行犯人であれば誤認逮捕のリスクは低いため、例外的に無令状での逮捕が認められています。
たとえば、電車内で痴漢をして、被害者や周囲の人に取り押さえられて駅員室に連れていかれ、駆けつけた警察官により逮捕されるようなケースがこれにあたります。
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後日逮捕となるケース
後日逮捕とは、犯行後に捜査機関の捜査によって犯人を特定し、裁判所の発付する逮捕状に基づいて逮捕することをいいます。逮捕の通常の形であることがから「通常逮捕」とも呼ばれています。
たとえば、電車内で痴漢をしてその場から逃げきれたとしても、防犯カメラの映像や交通系ICカードの履歴などから犯人が特定されると、後日、警察官が自宅を訪ねてきて逮捕されることがあります。
迷惑防止条例違反となる痴漢行為
痴漢行為により成立する犯罪としては、迷惑防止条例違反のほかにも不同意わいせつ罪があります。両者を明確に区別することは難しいですが、一般的には比較的軽微な痴漢行為が迷惑防止条例違反として扱われています。
具体的には、以下のような痴漢行為が迷惑防止条例違反となる可能性が高いです。
・電車内で被害者の衣服の上から臀部を撫でる行為
・満員電車で自分の身体や股間を被害者に押し付ける行為
・路上ですれ違いざまに被害者の身体を触る行為
・公共の場所で承諾なくハグをする行為
迷惑防止条例違反(痴漢)の刑罰
迷惑防止条例は、都道府県ごとに定められている条例ですので具体的な規定内容や刑罰も都道府県ごとに異なります。
東京都の迷惑防止条例を例に挙げると、痴漢に関しては以下のように規制されています。
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に
人の身体に触れること。
このような迷惑防止条例違反に該当する痴漢行為をした場合には、以下のような刑罰が科されます。
・常習性のない痴漢行為……6月以下の懲役または50万円以下の罰金
・常習性のある痴漢行為……1年以下の懲役または100万円以下の罰金
東京都の迷惑防止条例では、痴漢行為を常習性の有無で区別しており、常習性のある痴漢については、通常の痴漢に比べて刑罰が加重されています。他の都道府県でもこのような区別をしているところが多いでしょう。
迷惑防止条例違反による逮捕・起訴を回避するには被害者との示談が重要
迷惑防止条例違反による逮捕・起訴を回避するには被害者との示談が重要になりますので、痴漢をしてしまったときはすぐに示談に向けて動き出してください。
被害者との示談の重要性
痴漢は、迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪に該当する犯罪行為ですので、痴漢が発覚すれば逮捕・起訴されるリスクがあります。
痴漢で逮捕・勾留されてしまうと最大で23日間にも及ぶ身柄拘束となりますので、仕事や私生活への影響も甚大です。また、痴漢で起訴されてしまうと99%の割合で有罪となりますので、性犯罪者というレッテルを貼られその後の生活にも多大な影響が生じてしまいます。
このようなリスクを回避するには、早期に被害者との示談を成立させることが重要です。被害者との示談が成立していれば逮捕や起訴を回避できる可能性が高くなり、すでに身柄拘束されている場合でも早期釈放が期待できます。
痴漢の被害者との示談は弁護士に任せるべき
痴漢は、性犯罪という性質上、被害者の処罰感情が強く、加害者からの接触を強く拒まれてしまうケースが多いです。また、電車内での痴漢を想定してもらえればわかるとおり、お互いに面識がないケースがほとんどですので、示談交渉をしたくても相手の連絡先がわからないというケースも少なくありません。
このように痴漢事件では加害者自身での示談交渉は、非常に困難といえますので、専門家である弁護士に示談交渉を任せるのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば弁護士が窓口となって示談交渉を進めることができますので、被害者としても加害者と直接話をしなくてよいため示談に応じてくれる可能性が高くなります。また、被害者の連絡先がわからないケースであっても弁護士であれば捜査機関を通じて被害者と連絡をとり、示談交渉を進めることが可能です。
迷惑防止条例違反となった痴漢の裁判例
以下では、迷惑防止条例違反となった痴漢の裁判例を紹介します。
迷惑防止条例違反の痴漢で無罪となった裁判例|名古屋地裁平成30年2月16日判決
裁判所は、被告人が電車内において被害者に対し、着衣の上から臀部を手で触る、スカートを手でたくし上げるといった痴漢行為をしたとして迷惑防止条例違反で起訴された事案について、無罪判決を言い渡しました。
【判断のポイント】
・被害者は、被告人と面識がなく罪に陥れる動機はないため、故意に虚偽の供述をするとは考え難いものの、電車内の状況からは、たまたま当たったかばんなどを痴漢被害と勘違いしてしまう可能性が否定できない
・逮捕者(目撃者)の証言をもとにした犯行再現でも、被害者が供述するようなスカートのたくし上げが再現できておらず、被害者の供述の信用性を支えるものとはいえない
迷惑防止条例違反の痴漢で有罪となった裁判例|仙台高裁平成30年10月23日判決|懲役1年8月
裁判所は、被告人が路上で通行中の被害者らに対し、臀部を衣服の上から触るという痴漢行為をしたとして迷惑防止条例違反で起訴された事案について、懲役1年8月の有罪判決を言い渡しました。
【量刑の理由】
本件は、路上での女性に対するわいせつ行為に関して、以下の累犯前科がありました。
・平成22年2月に強制わいせつ、暴行罪により懲役3年
・平成25年9月に強制わいせつ罪により懲役3年
その他にも平成21年にも本件と同種の迷惑防止条例違反で罰金刑に処せられた前科を有していました。
本件は、最終刑の執行終了後わずか9か月余りで、人通りの多い日中の路上で、女性2名に対し立て続けに臀部を触ったという常習痴漢の事案で、被告人のこの種事犯に対する抵抗感の希薄さや常習性は顕著であり、その刑事責任は軽視できず、真摯な反省の態度も見出し難いことから、懲役1年8月の実刑判決となりました。
痴漢の判例、裁判の流れ等については、以下の記事もご参照ください。
痴漢事件の有罪・無罪判例6選!痴漢冤罪事件のポイントを徹底解説
痴漢をしたら裁判になる?痴漢裁判の流れと裁判を回避する方法を解説
迷惑防止条例違反のほかに痴漢で成立する可能性のある犯罪
迷惑防止条例違反のほかに痴漢で成立する可能性のある犯罪としては、以下のものが挙げられます。
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪とは、被害者が同意しない意思を形成・表明・全うできない状態でわいせつな行為を行った場合に成立する犯罪です(刑法176条)。
迷惑防止条例違反の痴漢は、「人を著しく羞恥」させるような痴漢行為が問題となっており、「わいせつ」とまでは評価できない行為も含まれています。そのため、痴漢行為の中でも比較的軽微なものが迷惑防止条例違反となり、悪質な態様での痴漢が不同意わいせつ罪として処罰される傾向にあります。
なお、不同意わいせつ罪に該当する痴漢行為をすると6月以上10年以下の拘禁刑に処せられます。法定刑に罰金はありませんので、迷惑防止条例違反の痴漢よりも重い罪であることがわかります。
不同意わいせつ致傷罪
不同意わいせつ致傷罪とは、不同意わいせつ罪にあたる行為をする過程で、被害者に怪我をさせてしまった場合に成立する犯罪です(刑法181条)。
電車内での痴漢では被害者に怪我をさせるまでのケースはほとんどありませんが、路上痴漢については不同意わいせつ致傷罪が成立する可能性があります。たとえば、人気のない路地に被害者を連れ込んで無理やり押し倒すなどの痴漢をする際に被害者が怪我をするような場合です。
このような不同意わいせつ致傷罪が成立すると無期または3年以上の懲役に処せられます。
なお、痴漢により成立する犯罪の詳細については、こちらの記事をご参照ください。
痴漢をしてしまったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を
痴漢をしてしまったときは迅速な対応が必要になりますので、痴漢事件の弁護に強いグラディアトル法律事務所までご相談ください。
経験豊富な弁護士が被害者との示談交渉をサポート
痴漢事件で逮捕や起訴を回避するには、被害者との示談が重要になります。痴漢は、性犯罪という性質上、被害者の処罰感情も強いため、経験豊富な弁護士でなければ示談をまとめることが難しいケースもあります。
グラディアトル法律事務所では痴漢事件に関する豊富な実績と経験がありますので、痴漢事件の示談交渉のノウハウを熟知しています。被害者の感情を逆撫ですることなく、被害者の感情にも配慮した上で、示談交渉を進めることができますので、安心してお任せください。
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当事務所では、刑事事件に関する相談については、初回相談料無料で対応しています。また、相談の受付は24時間365日行っています。
刑事事件はスピード勝負と言われるとおり、迅速な対応が必要になりますので、痴漢をしてしまったという場合は、時間を問わずまずは当事務所にご相談ください。
まとめ
迷惑防止条例違反の痴漢は、比較的軽微な痴漢行為をした場合に成立する犯罪です。しかし、迷惑防止条例違反の痴漢であっても逮捕されるリスクはありますし、起訴されれば前科となってしまいます。
このようなリスクを回避するには、早期に被害者との示談をまとめる必要がありますので、痴漢をしてしまったという方は、一刻も早くグラディアトル法律事務所までご相談ください。