薬機法(薬事法)の医薬品とは?イケハヤ氏のNMNサプリは違法?逮捕は?

弁護士 若林翔
2020年11月26日更新

YouTuber兼インフルエンサーのイケハヤことイケダハヤトさんが、NMNというサプリを販売していた。

それが医薬品にあたり、未承認医薬品の販売にあたるとして薬機法に違反するのではないかと話題になっている。

その件について、解説する。

イケハヤ(イケダハヤト)さんとは?

イケハヤさんは、「イケハヤ大学」を運営するYouTuberだ。

また、Twitterのアカウント「イケハヤ@仮想通貨大好き」(@IHayato)は、フォロワー数29万人超のインフルエンサーだ。

なお、『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、以下のように紹介されている。

イケダ ハヤト(1986年 – )は日本の情報商材販売員[3]、金融商品勧誘員[2][4]、アフィリエイター、ビックイシューオンライン編集[5]、YouTuber[6]。本名は漢字表記の池田勇人(いけだはやと)[7]。
高知県長岡郡本山町本山893番地1に拠点を置く合同会社日本の田舎は資本主義のフロンティアだ(法人番号:2490003001052)代表[7]。

そして、今回問題となり炎上しているのは、イケハヤ氏が販売しているNMNというサプリだ。

NMNサプリは、若返りの効果があるなどとして話題になっている。

イケハヤ氏は、自身のYouTubeチャンネルにて、「【堀江さんすみません】国内最安のNMNサプリを作ってます」を公開していた。

https://youtu.be/xDKm-iYdBwg

 

イケハヤ氏の薬機法違反疑惑

上記のNMNサプリの販売について、薬機法(旧薬事法、正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に違反するのではないかという指摘がなされている。

まず、「薬機法勉強マン」さんが、YouTube上にて薬機法違反を指摘した。

 

その後、医師である「やさしい皮膚科医(@S96405539)」さんが、Twitter上で、【イケハヤ氏が未承認医薬品を違法販売】と指摘し、厚生労働省への通報を呼びかけた。

イケハヤ氏の反論と争点整理

イケハヤ氏は、これらの薬機法違反の指摘に対して、反論する動画を公開している。

イケハヤ氏が販売をしていたNMNサプリは食品であり、医薬品ではないので、薬機法上の承認は必要がなく、何ら違法性がないというのがその要旨だ。

また、NMNサプリは多くの業者が通販等で販売をしていること、OEM業者に依頼をして製造しているところ、その販売が違法であるならばこのような状態にはなっていないだろうと主張している。

https://youtu.be/rF73cZ2xIbs

 

では、イケハヤ氏がNMNサプリを販売したことは違法なのであろうか?

薬機法は承認されていない医薬品の販売・広告を禁止しており、NMNサプリが医薬品にあたるとすれば、違法となるだろう。

そのため、争点は、NMNサプリが食品なのか、医薬品なのか

医薬品該当性の判断基準と関連して問題となる。

 

医薬品とは?定義と判断基準

医薬品の定義については、薬機法に規定されている。

要約すると、医薬品とは、人の疾病の診断、治療又は予防に使用されること及び身体の構造又は機能に影響を及ぼすことを目的とされているものをいう。

第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

一 日本薬局方に収められている物

二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)

三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

ただ、この薬機法上の定義は抽象的であり、具体的な事案への適用が困難なため、医薬品該当性の判断基準・解釈基準について、厚生労働省が通知を出している。

具体的には、以下の通知だ。

「医薬品の範囲に関する基準の一部改正について」薬生発0418第4号
「医薬品の範囲に関する基準 」昭和46年6月1日薬発第476号

この通知によると、

その物の成分本質(原材料)形状(剤型、容器、包装、意匠等をいう。)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法販売の際の演述等を総合的に判断すべきとされている。

具体的には、まず成分で判断をし、成分上医薬品といえるものではなくても販売方法等をみて医薬品と当たる場合があるという判断がなされる。

医薬品成分でなくても、 医薬品にあたる場合としては、以下の3種類に分けられる。

  • ① 医薬品的な効能効果を標ぼうするもの
  • ② アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの
  • ③ 用法用量が医薬品的であるもの

東京都福祉保健局の公表している以下の資料がわかりやすい。

 

イケハヤ氏のNMNサプリ販売は薬機法違反か?

以上のように、薬機法上の医薬品に該当するかどうかは、その成分のみならず、広告・販売時の説明方法等によっても判断される。

イケハヤ氏の場合はどうなるのであろうか?

③ 用法用量が医薬品的であるもの といえるか?

まず、前述の厚生労働省通知によると、使用方法として服用時期、服用間隔、服用量等の記載がある場合には、原則として医薬品的な用法用量とみなすとされている。

もっとも、食品であっても過剰摂取の注意等をする場合もあることから、栄養機能食品にあっては、時期、間隔、量等摂取の方法を記載することについて、医薬品的用法用量には該当しないこととして差し支えないとされている。

イケハヤさんのNMNサプリの記載は、「朝の空腹時に飲むと良いらしい」という程度である。
→飲み方のおすすめレベル
薬の服用指定とは異なる
医薬品的な用法用量の記載ではない

よって、これを理由として、医薬品であるとはいえないと考えられる。

 

① 医薬品的な効能効果を標ぼうするもの といえるか?

次に、厚労省通知によると、次のような効能効果が表示説明されている場合は、医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなすとされている。

具体的には、身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果があるもので、その例として以下のものもあげられている。
(例) 老化防止

イケハヤさんのNMNサプリの記載は、「抗老化成分」「アンチエイジング成分」だ。
→老化防止と同様に、身体の組織機能の一般的増強を与えると考えられる
→医薬品的な効能効果を標ぼうしている

よって、この点では、医薬品であると考えられる。

そのため、薬機法に違反すると考える。

 

以上の内容について、YouTube動画でも解説をしているので、こちらも参照して欲しい。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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