落書きと器物損壊罪・威力業務妨害罪(へずまりゅう事件を踏まえて)

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弁護士 若林翔
2020年07月01日更新

迷惑系youtuberである「へずまりゅう」氏が,首里城復興応援のためのメッセージボードに自らのサインを落書きした。

落書き行為は器物損壊罪威力業務妨害罪にあたるのだろうか??

 

へずまりゅうが首里城公園メッセージボードに落書きのニュース

首里城復興願うメッセージ板に落書き 県外男性が行為の様子を動画投稿

焼失した首里城復興への思いを募ろうと、首里城公園の首里杜館地下1階に設置されたメッセージ板に、県外から訪れた自称ユーチューバーの男性落書きする動画をSNSで投稿し、批判を浴びている。指定管理者の沖縄美ら島財団は利用客から情報提供を受け、落書きを確認した上で26日に板を撤去した。同財団は警察に相談するとともに投稿者に削除を求めている。

男性が動画を投稿したのは25日午後。持参したとみられる黒色のペンで、書かれた応援メッセージの上から自身のサインを書く様子が映っており、第三者が撮影したとみられる。動画はツイッターやTikTokに投稿されている。コメント欄には「とても不快」「もう沖縄に来てほしくない」などと批判的な言葉が多い一方、一部で「おもろい」「いいゾ!」とあおるようなコメントもあった。

沖縄美ら島財団はSNSの運営者に迷惑行為として報告。投稿者にも削除を求めている。本紙はツイッターで投稿者に質問を送った。26日午後6時現在、返答はない。

琉球新報web 2020年6月27日 11:16

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1145725.html

 

落書きの状況(へずまりゅう氏(@hezuruy)のtwitterより)

 

首里城公園の公式HPでのアナウンス

http://oki-park.jp/sp/shurijo/information/detail/5241

 

落書きと器物損壊罪・威力業務妨害罪の弁護士解説動画

この事件について,解説動画をyoutubeにアップしているので,こちらも参照してほしい。

 

落書きと器物損壊罪について

器物損壊罪については,刑法261条に規定されている。

(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
器物損壊罪は,毀棄及び隠匿の罪であって,財産的価値を消滅させ,その利用を妨げる罪である。
「損壊」は物を対象としており,「傷害」は動物を対象としている。
「損壊」とは,物の効用を失わせる行為をいう。
器物損壊罪の故意としては,物の効用を失わせることの認識・認容が必要である。
これを本件についてみると。。
首里城公園の復興応援メッセージボードは,復興応援の寄せ書きをするためのもの
すでにたくさんの応援メッセージが書き込まれていた
へずまりゅう氏の落書きにより,既存の復興応援のメッセージが見えにくくなっている
サインは復興応援と関係なし

これらの事実からすれば,復興応援のメッセージボードとしての効用を失わせるものと評価することも可能ではないだろうか。

なお,客観的に価値が上がっても器物損壊に当たる(条解刑法834頁)と解されている。

落書きと威力業務妨害罪について

威力業務妨害罪は刑法234条に規定されている。
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
「威力」とは,人の意思を制圧するに足りる勢力,物の損壊等も含まれる(条解刑法697頁)。
前述の如く,首里城公園の復興応援メッセージボードを損壊し,沖縄県那覇市の業務を妨害したと評価しうる。
なお,八甲田山系の樹氷に落書きしたとして,威力業務妨害罪で20万円の罰金刑った事例がある。
八甲田山樹氷に「誕生日おめでとう」落書きしたミャンマー人に業務妨害罪で罰金

青森市の八甲田山系の樹氷などに落書きをしてロープウエー会社の業務を妨げたとして、青森区検は2日、威力業務妨害の罪で、飲食店に勤務するミャンマー人のゾー・ゾー・アウン従業員(29)=東京都新宿区=を略式起訴した。青森簡裁は同日、罰金20万円の略式命令を出した。

起訴状などによると、1月14日午前11時40分ごろから午後0時半ごろまでの間に、青森市の「八甲田ロープウェー」山頂公園駅近くの樹氷や付近の雪上に「誕生日おめでとう」などと中国語や英語でピンク色の蛍光スプレーを使って落書きし、同社職員に除去させて業務を妨害したとしている。

青森県警によると、逮捕時、「一緒に旅行していた女性が誕生日だったので、喜ばせたかった」と供述していた。

産経新聞news参照 2018.3.2 22:36

https://www.sankei.com/affairs/news/180302/afr1803020068-n1.html

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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