痴漢事件では、被害者がパニック状態にあるなかで、加害者である犯人の顔をみることなく「この人チカンです!」などと声を上げる場合があることや、客観的な証拠が乏しいことなどから、たびたび冤罪事件が発生しています。
冤罪だったとしても、駅員に連れて行かれ、現行犯逮捕されてしまうことがあります。
逮捕されてしまった後は、警察から、認めなければ留置場から外には出られず仕事を失うことになるなどと脅され、やってもいない痴漢について認めてしまうという事例も存在する。
今回は、そんな痴漢冤罪事件において、当法律事務所の弁護士が弁護を担当し、逮捕後3日以内の早期釈放と不起訴処分を獲得した解決事例をご紹介します。
痴漢事件における逮捕・現行犯逮捕、冤罪事件の対処法、示談金額の相場、不起訴率、痴漢での無罪判例や有罪時の量刑相場などについては、以下の記事をご参照ください。
《事件の概要と方針決定》
息子が通勤途中に電車内での痴漢で逮捕。
逮捕されてしまった息子さんのお母様から相談。
依頼を受けて、逮捕された当日に弁護士が警察署に向かいました。
弁護士が接見をしたところ、「痴漢行為はしていない、冤罪だ。」と。
その後、弁護士が詳細な事実について聞き取りました。
・電車に乗っていたときの状況
・被害者とされる女性との位置関係
・被疑者の手の位置
・その女性から手を掴まれた前後の状況
・逮捕されてしまうまでの経緯
・繊維鑑定の有無
などです。
詳細な事実を聞き取った結果、担当弁護士としても本件が冤罪事件であると考えました。
そして、ご本人と相談し、今後の方針として否認していくことに。
取調べでは、警察からの誘導で間違った事実を調書に取られないよう助言。
また、黙秘権や調書への署名を拒否する権利などがあることを伝えました。
《弁護活動》
逮捕の後に勾留となれば、最大20日間警察署に留置されてしまいます。
20日間もの長い間身体拘束をされてしまうと、当然職場には行けないので、場合によっては職を失ってしまう可能性もあります。
ですので、なんとしても勾留を阻止する必要があります。
勾留の流れとしては、
検察官は、逮捕後72時間の間に勾留請求をするかどうかを決定。
検察官から勾留請求がなされた場合、裁判官が、勾留をすべきかどうか決定をします。
そのため、検察と裁判所に対し、本件は勾留すべき事案でないことを主張していく必要があります。
具体的には、
・被疑者に前科前歴がないこと
・逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないこと
・勾留の必要性がないこと
などを具体的に記載した意見書を作成しました。
そして、ご本人の誓約書、両親の身元引受書を添付して、検察庁へ提出をしました。
しかし、残念ながら検察官からは勾留請求をされてしまいました。
もっとも、その後、迅速に裁判所へ同様に意見書等を提出。
弁護人は裁判官と面談をし、本件は勾留すべき事案ではないと強く伝えました。
結果、裁判所は勾留すべきではないと判断し、勾留請求が却下され、本人は無事に釈放されました。
釈放後、弁護人は検察官に対して本件は冤罪であり、不起訴にすべきである旨の意見書を提出。
最終的に、検察官としても冤罪の疑いがあるとのことで不起訴処分となりました。
《コメント》
痴漢冤罪事件が社会問題化された影響か、検察官、裁判官ともに冤罪事件の可能性がある事件については慎重に判断をするようになってきた印象があります。
かつては、痴漢事件で否認していると長期の身体拘束をされてしまうため、やってなくても認めて早く出られた方がいいなどと言われていたこともあったようです。
しかし、本件のように、痴漢冤罪事件の場合で否認をしていても、早期釈放、不起訴処分となる可能性は十分にあります。
やっていないことを無理に自白してはいけません。
そのときの状況や客観証拠としてどのようなものがあるかなどを冷静に自身で確認することが必要です。
そして、弁護人と相談し、どのような方針でいくのか決めていくべきでしょう。