略式起訴・略式命令とは?へずまりゅう切り身の窃盗罪で起訴!?

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弁護士 若林翔
2020年08月19日更新

スーパーで会計前の魚の切り身(刺身)を食べたとして窃盗罪で逮捕されていたYouTuberのへずまりゅう氏が起訴された。

万引き等の窃盗事案では,初犯であれば起訴されず,不起訴処分か略式で罰金となるのが通常だ。

なぜ,へずまりゅう氏は起訴されたのだろうか?

略式起訴・略式命令,略式手続きとはどのような手続きなのだろうか?

解説動画もご覧くださいな。

 

まずは,ニュースをみてみよう。

へずまりゅう窃盗罪で起訴のニュース

「へずまりゅう」起訴…魚の切り身、会計前に食べた窃盗罪

スーパーで会計前の商品を食べたとして、名古屋地検岡崎支部は18日、住所不定、無職の男(29)を窃盗罪で名古屋地裁岡崎支部に起訴した。

男は「へずまりゅう」の名で動画を投稿するユーチューバーとして活動している。

起訴状では、男は5月29日、愛知県岡崎市のスーパーで、魚の切り身1点(販売価格428円)を、代金を払う前に食べて盗んだとしている。

男は逮捕後、新型コロナウイルスの感染が確認され、逮捕前に訪れた山口県内で接触した大学生や、事件の捜査を担当した警察官らの感染が相次いで判明した。

讀賣新聞8/18(火) 22:37配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/1b88ec1148f312962c4fb342cb59b7ed8bdf2ee5

 

略式起訴・略式命令・略式手続とは?

略式手続とは検察官の請求により,簡易裁判所がその管轄する事件について公判手続(通常の刑事裁判手続き)によらないで100万円以下の罰金または科料を科す略式命令を発する裁判手続をいう。

100万円以下の罰金または科料という比較的軽微な事件を対象に,手続きの簡易迅速化を図る制度である。

被告人の出頭を必要とせず,非公開で,検察官が提出した書面に基づいて事実認定をして刑を科す手続きであって,直接主義,口頭主義,裁判の公開,反対尋問権の保障などの刑事訴訟法の原則の例外をなす手続きだ。

現状,罰金刑が科される事件のほとんどが略式手続きによりおこなわれている。

検察官が通常の裁判手続きを求める起訴ではなく,略式命令を求めることを略式起訴といい,略式起訴を受けた簡易裁判所が罰金刑等を科す裁判を略式命令という。

略式手続をおこなうためには,略式手続についての被疑者の同意(意義がないことの書面)が必要だ。

刑事訴訟法

第六編 略式手続
第四百六十一条 簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。

第四百六十一条の二 検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない
○2 被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。

第四百六十二条 略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない。
○2 前項の書面には、前条第二項の書面を添附しなければならない。

 

へずまりゅうが略式ではなく起訴された理由は??

前述のように,万引き等の窃盗罪において,初犯であれば不起訴ないしは略式手続での罰金処分というのが通常だ。

へずまりゅう氏の窃盗事件についても,万引き類似の犯行態様に思われる。

では,なぜ,へずまりゅう氏は不起訴処分でも略式手続での罰金処分ではなく,正式起訴がなされたのだろうか??

 

正確な理由は定かではないが,以下の3つの可能性が考えられる。

1つ目は,へずまりゅう氏が略式手続について同意をせず,異議を申し立てた可能性だ。

会計前に刺身を食べてしまってはいるものの,その後に会計はしていることなどから,窃盗罪について,その成立を争い,否認をしている可能性も考えられなくはない。また,否認していなかったとしても正式な裁判にて自身の主張を述べたいなどの考えがあるのかもしれない。

2つ目は,へずまりゅう氏の事件について,事案の悪質性を鑑みて,検察官起訴すべきだと判断した可能性だ。

へずまりゅう氏は,スーパーにて会計前の刺身を食べているところを動画に撮り,YouTubeにUPをしていた。その動画は炎上も含めて広く拡散された。また,へずまりゅう氏のマネをする人も現れるなど,社会に対して大きな悪影響を与えたと判断された可能性がある。

3つ目は,別件での追起訴が予定されている可能性だ。

へずまりゅう氏は,はじめしゃちょーさん,ラファエルさん,シバターさんなどの有名YouTuberに対して迷惑行為をしており,業務妨害罪やつきまといの罪が成立する可能性がある。また,コロナ自粛期間中に営業をしていたパチンコ店の店頭でその業務を妨害するような行為をしたり,沖縄の首里城公園の復興応援メッセージボードに自身のサインを書くという器物損壊罪に該当し得る行為をしたりしていた。

へずまりゅう氏がおこなっていた迷惑行為について,被害届の提出等の刑事事件化の動きもあったことから,これらの罪について,検察官が追起訴を予定している可能性がある。

ただ,それぞれの行為地が異なり,担当の警察署・検察庁が異なるであろうから,どこまで捜査機関側で連携が取れているのか定かではない。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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