今回紹介するのは,前回に引き続いて本番トラブルに遭ってしまった男性の話だ。
本番禁止の箱型ヘルスを利用したさいに,相手の同意は得てはいたものの結果的に本番行為を強要してしまった形になった。
当初お店側からは刑事告訴も辞さないという態度ではあったが,弁護士が間に入ることによってなんとか示談まで持っていけたという事案。
目次
ヘルスでの本番トラブルに至るまでの経緯
今回本番トラブルが発生した舞台は群馬県の太田駅南口。
関東以外の方には馴染みのない地区だが,群馬県内においては比較的有名な風俗街だろう。
東武伊勢崎線(通称:東京スカイツリーライン)沿いの駅で,浅草から伊勢崎までを繋いでいる路線だ。
今回の相談者は,20代の群馬県内に居住する普通のサラリーマン。
風俗などはちょくちょく利用しており,今回は試しに箱型のヘルスに入ってみようということで,太田駅の南口に点在する中のヘルスを利用した。
年齢層も若く結構なあたりの店だったらしい。
ヘルスで本番行為を行うのは法律的にもグレーといえる。
とはいえ,ヘルス嬢との合意の上で本番行為を行っている店もそこかしこにあることだろう。
相談者的にもせっかくヘルスを利用したのだからと,ヘルス嬢に対して本番行為を行ってもよいかどうかを確認してみた。
もちろんヘルス嬢としてもそんな安々と本番行為に同意するはずもなく,相談者の提案を一度は断ったらしい。
そこでめげないのが男の性というのか,もちろん無理やり本番行為に及ぶなんてことはリスクが高すぎる。
そこで,機会を待って再度本番行為をヘルス嬢に持ちかけてみた。
ヘルス嬢も渋々といった形で本番行為に同意した?らしく,相談者としては相手と同意の上で本番行為に及んだとのことらしかった。
しかし,ここからがまずかった。
プレイの最中に避妊具が外れたまま行為を継続してしまった。相談者いわく付けてるものだとばかり思ってたためそのまま最後までしてしまった。
そんなことがあったものだから,女の子の内心も穏やかではないことは想像に難くない。
風俗トラブルの中でも本番トラブルというのは得てしてここからが始まりだ。
プレイが終わって相談者は家路に着いたが,見知らぬ番号から鬼のような着信があったそうだ。
女の子とは同意の上で本番行為に及んだのだから,相談者としてもこちらには何も非がないと最初は思っていたらしい。
避妊具が外れてしまっていたのはもはやどうしようもない。
一般的な男性視点でいえば,行為の最中に避妊具が外れてしまっていたのなら気付くはずのことだ。
女の子やお店の責任者としてもそのように思うだろう。
こうして,両者の主張は食い違いを見せていく。
今回の本番トラブルでいえば,同意がないのに本番行為に及んでしまったと疑いをかけられると,刑法における強制性交等罪に該当し,5年以上の懲役が科される可能性も出てきてしまう。
(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。引用|刑法
しかし,あまりにも見知らぬ番号からの着信の嵐に,相談者の気持ちも段々と傾いていったようで,どうにかこの本番トラブルを穏便に済ませたいということで当法律事務所に相談にきてくれた。
関連記事:被害届って何?出されたらどうなる?
本番トラブル時の弁護士との無料相談
当法律事務所では,風俗トラブルも数多く扱っている。
風俗トラブルというものはその特性上どうしても夜間に発生することが多く,通常の法律事務所であれば既に事務所を閉めているということもあり対応することが難しい。
そこで,風俗トラブルに迅速に対応できるように当法律事務所では24時間の電話対応を行っている。
24時間弁護士が対応できるかというとそれ自体は難しいが,まずは電話をしてもらって風俗トラブルの内容を相談者に話してもらうことで,少しでも不安を和らげてもらうという目的もある。
その日はたまたま弁護士がすぐに動ける状況だったため,電話をもらってすぐに弁護士との無料相談は始まった。
受付自体は電話でもメールでも対応しており,弁護士との無料相談は原則予約制ではあるが事案の内容によっては即座に対応することも可能なシステムとなっている。
電話を受けた弁護士は不安の募る相談者を安心させるため,まずはヘルスでの本番トラブルの概要を漏れがないように聴取していく。
事案の解決のためには,どのような経緯で本番トラブルが発生したのかを正確に把握することが重要となるため,弁護士といえどコミュニケーション能力は要求される。
相談者の説明の中に矛盾が含まれていないかどうかを確認する目的もある。
弁護士が聞いていて腑に落ちない点があるとすれば,その主張をそのまま相手に伝えたとしても受け入れてもらうことは難しいことだろう。
弁護士はあくまで相談者の味方なので,正直に本番トラブルの内容を話してもらうことで信頼関係を築いていく。
電話口であらかた本番トラブルの内容を聴取した弁護士は,今後の方針を相談者に説明していく。
ちなみに,弁護士費用として料金が発生するのは契約を締結したあとであり,電話しただけで料金が発生するようなことはないので安心してほしい。
風俗トラブルを扱っている弁護士の経験則も含めながら説明した方針としては,
①相手からの連絡を全て無視する
②弁護士を間に入れて相手の要求を全て突っぱねてもらう
③同じく弁護士を間に入れて相手との示談交渉を任せてみる
①②③それぞれにメリット・デメリットがあるため,それも含めて弁護士は相談者に提案していく。
弁護士を入れるとなるとそれなりの費用がかかってしまう。
そのため,相談者自身が②又は③を行うことも選択肢としては入ってくるだろう。
もっとも,風俗店側としても本番トラブルの当事者が強気に交渉してくるのと,弁護士が法的根拠を元に交渉を行ってくるのでは当然心証が異なってくるだろう。
あまり風俗店やヘルス嬢を刺激してしまうと,本当に警察のお世話になりかねない。
逮捕されるリスクを抑えつつ相手方の請求をブロックするなら,弁護士に頼んだ方が安全ともいえる。
これらの選択肢については,最終的には相談者自身が決めることもであり,それ以上弁護士が強く営業することもない。
今回の相談者は,電話番号と本名を相手に知られているため,警察にいかれてしまうリスクも考慮したうえで弁護士に依頼することを決めた。
風俗トラブルというのは職場や家族には決して知られたくない内容でもあるため,本名や電話番号から住所や職場を突き止められてしまうといったリスクを少しでも減らしたいと考えるのが普通の男性ではないだろうか。
もし,何よりもそういったリスクを避けたいというのであれば弁護士に間に入ってもらうことも有意義だろう。
本番トラブルを弁護士がどのように解決していくのか
本番トラブルにおける委任契約が締結され,弁護士は相手方との交渉に挑んでいく。
今回の事案でいえば,避妊具を付けない状態での本番行為をすることについては同意がないため,最悪の場合警察に被害届を出されて逮捕されてしまうリスクがあるというのは既に説明した。
風俗トラブルにおいて警察がヘルス嬢などからの被害届を受理することはあまり聞かないが,決してあり得ない話ではない。
まずは,相手方がどのような主張をするのか確かめるために,弁護士は風俗店に電話をかける。
電話に出たのはただの受付であったため,改めて責任者から電話をかけてもらうようにお願いして一旦電話を切る。
翌日,責任者を名乗る者から事務所に電話がかかってきた。
弁護士を入れたということで風俗店側も相当身構えている様子は見受けられたが,相手の主張を要約すると,
・本番行為が店の利用規約により禁止されているため,罰金を払ってもらいたい
・アフターピルや検査代など相談者が当然負担すべきものも支払ってほしい
・どういう形であれ謝罪の意思を見せてほしい
・このまま知らぬ存ぜぬで押し通すのであれば警察に行く
といった内容だった。
弁護士はあくまで依頼者の代理人として活動するため,相手からの主張は一旦持ち帰って依頼者に都度確認する。
もっとも,あまりに理不尽だったり倫理や道徳に反するような主張であればその場で反論はしているが。。
風俗店側の主張を依頼者に伝えると,依頼者的には「罰金は払えないが,その他の実費と謝罪であれば対応させてください」とのことだった。
風俗店が利用規約等で設定している罰金が法的にどうなるかという点は置いといて,弁護士は風俗店に対して,「罰金は払えないが,その他の点については誠実に対応させてください」との旨を伝えた。
風俗トラブルにおいてはよくある罰金の支払いだが,弁護士が入った場合には大体がうやむやになることが多い。
というのも,風俗店側としてもかたくなに罰金を支払えと主張し続けることで,法律の専門家でもある弁護士からホコリを叩かれたくないという思いもあるのだろう。
また,風俗店側としても「警察にいくぞ」という脅しは一般男性には有効だが,法律を熟知した弁護士にはあまり効果的ではない。
同意のもとの本番行為は強制性交罪に該当しないからだ。
そういった経験則もあり,警察にいくぞという話は流れて,結局のところ実費を含めた10万円での解決金と謝罪文を風俗店に渡すということで決着がついた。
弁護士が入ることで風俗店側も請求が尻切れトンボのように弱くなっていくこともあるにはあるが,今回のヘルス店はなかなかに頑なだった。
しかし,弁護士としてもある程度は強気に交渉していく必要があるため,解決金10万円と謝罪文が依頼者が譲れる最大の譲歩。それ以上は一切対応できないため,もし罰金等でそれ以上の請求をしたいのであれば裁判起こしてくださいよ,と伝えることで風俗店も請求を諦めたのだろう。
ちまたでは,すぐに「訴えるぞ」とか「裁判起こすぞ」などとよく耳にするが,実際に裁判を起こすとなるとこれがなかなかに面倒くさいと思うことだろう。
自分でやるのなら費用はかからないが,いかんせん勝訴判決まで持っていくための主張をすることは難しいように思う。
そういったこともあり,このような本番トラブルが裁判沙汰にまで発展することは少ない。
最後に,弁護士が作成した合意書に,依頼者と風俗店(責任者+ヘルス嬢)がともに署名・押印することで太田駅南口における本番トラブルは終結した。
こうして,依頼者は日常の平穏を取り戻したのだ。
https://www.gladiator.jp/criminal-case風俗トラブルで示談する5つのメリットと示談書/